« 2024年2月 | トップページ | 2024年4月 »

2024年3月

2024年3月31日 (日)

2024年3月のお仕事

2024年3月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※3月29日更新)

 

[WEB] 3月29日、「Rolling Stone Japan」にてインタビュー SUM 41が語る解散の経緯と30年の歩み、ポップパンクとメタルが共存する「最後の作品」が公開されました。

[WEB] 3月27日、「リアルサウンド」にてライブレポート トゲナシトゲアリ、無謀な挑戦を乗り越えたバンドの力 アニメ放送への弾みをつけた初ワンマンが公開されました。

[WEB] 3月19日、「リアルサウンド」にてインタビュー Little Glee Monsterが現体制初アルバム『UNLOCK!』で開いた扉 過去曲を再録して気づいた変化もが公開されました。

[紙] 3月19日発売日向坂46デビュー5周年記念公式BOOK「H46MODE vol.1」にて、齊藤京子 卒業ソロインタビュー、おみそしるコンビ(河田陽菜&丹生明里)対談、四期生 正源司陽子&藤嶌果歩 対談、「ハッピーオーラを感じるとき」ソロインタビュー(齊藤京子、河田陽菜、丹生明里、上村ひなの、髙橋未来虹、正源司陽子、藤嶌果歩)、TAKAHIRO インタビュー、CRE8BOY インタビューを担当しました。(Amazon

[WEB] 3月15日、「リアルサウンド」にてライブレポート 乃木坂46、乗り越えた“試練”を糧に進む13年目への一歩 全124曲披露した12回目の『バスラ』が公開されました。

[WEB] 3月15日、「SPICE」にてインタビュー 藤井隆、プロデューサーとしての後藤輝基2年ぶりの新譜への想い そして主宰として歩んだSLENDERIE RECORD10周年を語るが公開されました。

[WEB] 3月14日、「SPICE」にてライブレポート 自己最大キャパZepp DiverCity公演でammoがみせたリアリティ「まだ“ここ”じゃない。まだゴールじゃない。」が公開されました。

[WEB] 3月12日、「音楽ナタリー」にてインタビュー Technics×「RECORD STORE DAY」|今年のアンバサダーあのが語るレコードへの愛着が公開されました。

[WEB] 3月10日、乃木坂46『12th YEAR BIRTHDAY LIVE』のオフィシャルライブレポートを執筆。ニッポン放送NEWS ONLINEなど複数媒体で公開中です。

[WEB] 3月8日、「Billboard JAPAN」にてインタビュー 神はサイコロを振らない、新曲「May」と勢いが増す春夏ライブシーズンで新境地を開くが公開されました。

[WEB] 3月6日、「Rolling Stone Japan」にてライブレポート Crossfaithの「これまで」と「これから」をロングセットで体現、激情の単独公演レポが公開されました。

[紙] 3月4日発売「日経エンタテインメント!」2024年4月号にて、櫻坂46大園玲 連載「ミステリアスな向上心」および日向坂46上村ひなの 連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

[イベント] 3月1日からスタートした日向坂46展「WE R!」にて、館内展示年表の作成、展示用メンバーインタビューなどを担当しました(後日販売される図版にも掲載予定)。5月19日まで開催中です。

 

GREEN DAY『DOOKIE』(1994)

1994年2月1日にリリースされたGREEN DAYの3rdアルバム。日本盤は同年6月25日発売。

それまでインディーズのLookout! Recordsから作品を発表してきたGREEN DAYが、メジャーのReprise Reocrdsへ移籍して最初に発表した作品。本作からの「Longview」がBillboard Alternative Airplayで1位を獲得したのを筆頭に、「Basket Case」(同チャート1位)、「Welcome To Paradise」(同7位)、「When I Come Around」(同1位)とヒット曲を連発し、アルバムも最高2位まで上昇。セールス的には現在までに1000万枚を超える、キャリア最大のヒット作となりました。

当時のシーンを振り返ると、彼らのメジャーデビューはカート・コバーンNIRVANA)が亡くなる2ヶ月前のこと。つまり、アメリカで社会的現象を巻き起こしたグランジムーブメントが沈静化する直前のタイミングだったんです。サウンド的にはグランジ同様、シンプルで無駄のないバンドアンサンブルを軸にしているものの、そこに古き良き時代のパンクロックらしいメッセージ性、モノトーンな作風が中心だったグランジから一転して幾分カラフルでポップなメロディが、それまでの反動としてなのか、好意的に受け入れられた。特に、「Basket Case」などのMVで見せるシニカルさはグランジから地続きなところもあったので、すんなりと受け止められたのかなと思っています。

そして、彼らの人気を決定づけた要因のひとつに、1994年8月に開催された野外フェス『Woodstock '94』も挙げられるでしょう。1969年に行われた伝説のフェス『Woodstock Music And Art Fair』の25周年企画として実施されたこのフェスには、METALLICAAEROSMITHRED HOT CHILI PEPPERSNINE INCH NAILSなど当時のアメリカを代表するバンドも多数参加。GREEN DAYは公演3日目(8月14日)のサブステージ(South Stage)の5番手(ちょうど真ん中あたり)に登場し、客席から泥を投げ込まれたり観客がステージに乱入したりとかなりカオスな状況が今でも伝説として語られています。

当時、僕はこのアルバムを買った記憶がまったくないんですが、気づいたらなぜかCDが家にあったんです。当時の友人か彼女が上に忘れていったものかと思ったのですが、思い当たる人たちに聞いて回っても「自分のものじゃない。けど、お前の家でよく聴いてたよな」という返事ばかり。そういう不思議な縁で出会った1枚なんです。もちろん、ラジオで「Basket Case」や「Longview」は耳にしていたし、「Basket Case」のMVも面白いと思っていた。だけど、自分から進んで手にするかと言われたら、当時の自分は購入していなかったんじゃないかな。そういった意味でも、妙な縁でつながった1枚なんです。

また、その頃の自分はパンクといえばUKパンクのイメージが強く、USパンクはそこまで詳しくなかった。せいぜいRAMONESくらいだったかな(さらにそのルーツとなるようなアーティストも聴いていたけど)。だから、アメリカから生まれた新たなパンクと言われても「え、グランジがあるのに?」と消極的になってしまっていた。そう考えると、誰が置いていったのか、このアルバムを我が家に与えてくれたことは価値観をぶち壊す上でもかなり重要なトピックだったと思います。

RAMONES直系のポップでキャッチーなパンクチューンの数々は、そのRAMONES同様に50'sや60'sのUSポップやR&Bとの共通点が見受けられる。だけど、バンドアンサンブルは非常に尖っていて、歌詞に目をやるとグランジにも通ずるネガティブさも見受けられる(もっとも、家にあったのは輸入盤だったので、歌詞を理解したのはもっとあとのことですが)。決して彼らの台頭で時代が激変したのではなく、90年代初頭から続くダークなムードをそのまま引き摺りつつ、怒りの矛先が少しずつ変わっていった。そのターニングポイントを作ったのがGREEN DAYや、同時期にヒットを飛ばしたTHE OFFSPRINGのようなバンドたちだったんでしょうね。

ちなみに、彼らは次作『INSOMNIAC』(1995年)を発表したあと、1996年1月に初来日ツアーが実現。僕は当時晴海にあった会場でのスタンディングライブ(オープニングアクトにHi-STANDARDが出演)で、彼らのステージを初めて目撃しています。当時のエピソードについてはこちらのインタビューにも詳しく載っているので、併せてお読みくださいませ。

 


▼GREEN DAY『DOOKIE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2024年3月30日 (土)

GREEN DAY『SAVIORS』(2024)

2024年1月19日にリリースされたGREEN DAYの14thアルバム。

前作『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』(2020年)から約4年ぶりの新作。前作発表直後に新型コロナウイルスのパンデミック期に入ってしまったことで、同年3月末から予定されていた8年ぶりの来日は翌2021年3月に延期されるも、状況が緩和されることなくそのまま中止に。特に海外では3月以降ロックダウンに突入したことで身動きが取れなくなり、ビリー・ジョー・アームストロング(Vo, G)はYouTubeにカバー曲を公開し始めます。それがのちに“自身の人生のサウンドトラック”をテーマにしたカバーアルバム『NO FUN MONDAYS』(2020年)へとつながっていきます。

2021年に入るとバンドは「Here Comes The Shock」「Pollyanna」「Holy Toledo!」といった新曲、ライブアルバム『BBC SESSIONS』などを発表し、夏にはパンデミックの影響で延期されていたFALL OUT BOYWEEZERとのツアー『Hella Mega Tour』を実現させます。そして、同年末にいよいよ次作に向けてスタジオ入り。三部作アルバム(9th『¡UNO!』、10th『¡DOS!』、11th『¡TRÉ!』 )以来となるロブ・キャヴァロとの共同プロデュースにより2023年まで作業が続けられ、完成したのが本作となります。

原点回帰を狙った前々作『REVOLUTION RADIO』(2016年)、そこにソウルやモータウン、グラムなどのさらなる原点要素を加えつつ無駄を削ぎ落とした前作『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』と、セルフプロデュースによる2作を経て気心知れたロブとのタッグ復活。しかも、バンドにとってターニングポイントとなった3作目『DOOKIE』(1994年)、7作目『AMERICAN IDIOT』(2004年)からそれぞれ30年、20年という大きな節目に両作に携わったロブが制作に参加するということは、この新作がバンドにとってそれだけ大きな意味をもたらす作品になるであろうことは想像に難しくありません。

事実、ここで聴ける楽曲の数々は『REVOLUTION RADIO』ほど尖りすぎておらず、かといって『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』より実験色も強くない。『DOOKIE』や『AMERICAN IDIOT』といった名作(と、その間に発表してきたほかの諸作品)の延長線上にある「成熟したパンクロック」のあるべき形が提示されている、と受け取るのが正解でしょう。

アルバム冒頭の「The American Dream Is Killing Me」でみせるドリーミーでキラキラしたテイストを筆頭に、「Look Ma, No Brains!」や「1981」などのアンセミックなポップパンクチューン、「Bobby Sox」や「One Eyed Bastard」を筆頭とするルーツミュージックの香りを漂わせるパワーポップナンバーの数々、「Goodnight Adeline」あたりから感じられるパワーバラード的テイストなど、これまで彼らが培ってきたスタイルの総決算と呼べる楽曲がずらりと並ぶ。しかも、それらが単なる過去の焼き直しで終わっておらず、アーティストとしての成長や成熟ぶりもしっかり感じ取ることができる。GREEN DAYという名の下にすべきことを、最適なバランスで実現させたのが“救世主”という意味を持つタイトルを冠した本作なのです。

困難を伴う数年間を乗り越え、満を持して届けられたGREEN DAYの最新アルバムは、今を生きるすべての世代に向けた新たなバイブルになるのではないでしょうか。いや、そうなってほしいと願わずにはいられません。近年、オリヴィア・ロドリゴのような新世代アーティストがポップパンクをフィーチャーすることで、アヴリル・ラヴィーンが再評価されたりしましたが、2024年に入ってから発表されたこのGREEN DAYの新作やSUM 41のラストアルバム『HEAVEN :X: HELL』などを通じて、ロック低迷なアメリカで再び大きな波が戻ってくることを心の底から願っています。

 


▼GREEN DAY『SAVIORS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / 海外盤カセット / MP3

 

2024年3月29日 (金)

SUM 41『HEAVEN :X: HELL』(2024)

2024年3月29日にリリースされたSUM 41の8thアルバム。日本盤未発売。

前作『ORDER IN DECLINE』(2019年)から4年8ヶ月ぶりの新作にして、バンドにとって最後のオリジナルアルバム。2022年に「初期のポップパンク色の強い側面と、最近のメタリックなテイストを強めた側面からなる2枚組アルバムを制作する」とアナウンスしていた彼らですが、翌2023年5月9日に突如「このアルバムと、それに伴うワールドツアーをもって解散する」と宣言。今年2024年1月から翌2025年1月30日まで実施されるツアーをもって、バンドは30年近くにおよぶ活動に終止符を打つことになります。

『HEAVEN』サイドと呼ばれるDISC 1には、先述のポップパンク路線を軸とした全10曲を収録。こちらは初EP『HALF HOUR OF POWER』(2000年)や1stフルアルバム『ALL KILLER NO FILLER』(2001年)で示した、軽やかでキャッチーなパンクチューンが満載で、「Fat Lip」(2021年)以来に全米1位を獲得した「Landmines」(ともにBillboard Alternative Airplayチャートにて)を筆頭に、オープニングを飾るに相応しいファストナンバー「Waiting On A Twist Of Fate」、1分半のショートチューン「Johnny Libertine」など親しみやすいメロディを持つ楽曲がずらりと並びます。しかし、単に原点回帰を狙っただけの浅はかさは皆無で、過去20年間の活動で積み重ねてきた説得力と「ながら聴き」できないほどの求心力が感じられるほどの熟練味が味わえます。

個人的には、同サイドのラストを飾るミディアムナンバー「Radio Silence」にグッと引き込まれます。いわゆるポップパンクとは一線を画する作風ですが、この仰々しいほどのアンセム感こそSUM 41の魅力だと強く実感させる、珠玉の1曲ではないでしょうか。

一方、前々作『13 VOICES』(2016年)や前作『ORDER IN DECLINE』といった、デイヴ・バクシュ(G)復帰後の作品に漂うメタル臭が強調されたDISC 2=『HELL』サイドは、前ディスクの「Radio Silence」から自然な流れを作る異色の「Preparasi a Salire」を挟み、「Rise Up」からメタリックな色が際立つ楽曲で“こちら側”のリスナーをも楽しませてくれます。そもそも、2ndアルバム『DOES THIS LOOK INFECTED?』(2002年)や3rdアルバム『CHUCK』(2004年)など2000年代の作品からもモダンメタルのテイスト(=デイヴのカラー)は散りばめられており、デリック・ウィブリー(Vo, G)そういったデイヴの持ち味を存分に活かそうとした結果だったことは一聴瞭然。最初期のポップパンク色とこのメタル色は、今やSUM 41にとって欠かせない大きな2軸なわけですから、その両極端に振り切ったアルバムを最後に同時制作することは宿命だったのかもしれません。

先に挙げた2ndアルバムや3rdアルバム、あるいは近作のファンであったら絶対に受け入れられるであろう本ディスク。重心の低いミドルチューンや疾走ナンバーが交互に押し寄せる構成も非常に聴ききやすいものがあり、ギターソロに関しても『HEAVEN』サイドよりも速弾きが目立ちます。個人的には2000年代以降のモダンメタルに往年のクラシックメタル的要素を注入した「You Wanted War」が大のお気に入り。この曲のギターリフやフラッシーかつクラシカルなギターソロはぜひメタルファンにしっかりと確認してもらいたいな。

また、彼らのアルバムには珍しくカバー曲も用意されおり、THE ROLLING STONESの名曲「Paint It Black」をストレートに演奏してます。こちらはお遊び/おまけ感の強い1曲かな。単に好きだからやってみたくらいの感覚なのかもしれません。

つい先日『PUNKSPRING 2024』でのヘッドライナー出演を含むジャパンツアーを終えたばかりの彼ら。ニューアルバム発売直前でしたが、本作から披露されたのはすでに配信済みだった「Landmines」と「Waiting On A Twist Of Fate」にとどまったようです。ここから本作収録曲も小出しにされていくとは思いますが、フェアウェルツアーとなると過去曲に焦点が上がることになるだろうから、本作収録曲の多くがライブで演奏されないまま活動終了してしまうのかな。アルバムとしての完成度がどちらも高いだけに、少々勿体ない気もしますが……それもまた宿命なのかなと。

 


▼SUM 41『HEAVEN :X: HELL』
(amazon:海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2024年3月27日 (水)

GREEN DAY『AMERICAN IDIOT』(2004)

2004年9月21日にリリースされたGREEN DAYの7thアルバム。日本盤は同年9月23日発売。

前作『WARNING』(2000年)から4年ぶりという、彼らのそれまでのキャリア中もっとも長いインターバルを経て届けられた新作。前作以降に初のベストアルバム『INTERNATIONAL SUPERHITS!』(2001年)やシングルB面集『SHENANIGANS』(2002年)、さらにはGREEN DAYの覆面バンド(サイドプロジェクト)THE NETWORKのアルバム『MONEY MONEY 2020』(2003年)を発表しているとはいえ、ここまで新作に時間がかかってしまった理由には、2003年に当時完成直前だった“幻のアルバム”『CIGARETTES AND VALENTINES』のマスターテープが盗まれてしまったからというのが大きかったから。これにより、バンドは同作を再録することなく、新たな作品に着手することとなり、そうした偶然の副産物がこの傑作『AMERICAN IDIOT』だったわけです。

イラク戦争やそれを引き起こした当時のブッシュ政権、それを許したアメリカという国家に対する怒りや批判をテーマに制作された本作。『WARNING』がいわゆるパワーポップ的な作風だったのに対し、今作ではそうしたポリティカルなテーマやパンクバンドらしいアンチテーゼを表現するのにふさわしく、初期のストレートなパンクロックに回帰しているだけでなく、前作までのパワーポップ文脈、さらには往年のTHE WHOのようなロックオペラ的な組曲要素も取り入れるなど、バンドとして新章に突入したことを窺わせる充実ぶりを見せています。

アルバム冒頭を飾る「American Idiot」(米61位)のアンセム感や、キャリア最大のヒット曲となったミディアムチューン「Boulevard Of Broken Dreams」(同2位)、シャッフルビートが心地よい「Holiday」(同19位)、近作でのアコースティック路線をさらに追求した「Wake Me Up When September Ends」(同6位)と、初めて“Billboard Hot 100(=シングルチャート)”にランクインしたヒット曲の数々。そして、プログレッシヴな組曲調でありながらしっかりパンクロックとしての芯を失っていない「Jesus Of Suburbia」や「Homecoming」など、聴き応えのある楽曲が満載。「Are We The Waiting」から数曲におよぶ流れも組曲的な流れを作っており、リスナーに隙を一切与えない構成はさすがの一言です。

60分近くにおよぶ長尺なトータルランニングはもはやパンクロックとは呼べないかもしれません。が、それでも本作はブレイクのきっかけを作った『DOOKIE』(1994年)から道を外れているようにはまったく感じられないし、それと同時に『DOOKIE』から10年でパンクロックはここまで進化したんだという新たな気づきも与えれくれる。そうした意味では、革新的な1枚と言えるはずです。

GREEN DAYはこのアルバムで初の全米1位を獲得。現在までの600万枚以上を売り上げ、『DOOKIE』に次ぐヒット作となりました。また、第47回グラミー賞(2005年)で本作が最優秀ロック・アルバムを受賞し、第48回グラミー賞(2006年)では「Boulevard Of Broken Dreams」が主要4部門のひとつ・年間最優秀レコード賞をパンクバンドとして初めて受賞する快挙を成し遂げています。さらに、2009年には本作を題材にしたミュージカルも上演されています。

パンクバンドの在り方や為すべきこと、そしてパンクロックとしての進化や成長という点でも、本作はターニングポイントとなった重要作。そして、人気に翳りの見えたGREEN DAYにとっても新たな黄金期の始まりを告げる、第二のデビュー作と言えるのではないでしょうか。

 


▼GREEN DAY『AMERICAN IDIOT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2024年3月25日 (月)

BRUCE SPRINGSTEEN『BORN IN THE U.S.A.』(1984)

1984年6月4日にリリースされたブルース・スプリングスティーンの7thアルバム。日本盤は同年6月21日発売。

ギター弾き語り中心で内省的な作風だった前作『NEBRASKA』(1982年)から約2年ぶりの新作。当時、アメリカ位では発売2日で50万枚以上を売り上げ、たった4日でプラチナディスクを獲得。前々作『THE RIVER』(1980年)以来となる全米1位を記録したほか、連続84週トップ10入りを果たすという快挙を成し遂げ、現在までに1700万枚以上を売り上げるメガヒット作に。また、同作からは7曲ものシングルヒットが生まれ、「Dancing In The Dark」(米2位)、「Cover Me」(同7位)、「Born In The U.S.A.」(同9位)、「I'm On FIre」(同6位)、「Glory Days」(同5位)、「I'm Goin' Down」(同9位)、「My Hometown」(同6位)とそのすべてがチャート10位内にランクインしています。

パワフルなビートとファンファーレのようなシンセリフ、象徴的なタイトルをリピートするアルバムタイトルトラックからスタートする本作は、アメリカ人であることを誇りに思い、高らかに宣言する愛国歌……一聴するとそんな誤解をしてしまいがちですが、ここで歌われているのは80年代半ばに入っても依然ベトナム戦争がアメリカ人に及ぼし続ける苦悩について。世の中が好景気に向かう最中、それでも現実はそんなにハッピーばかりじゃない。お前らの幸せのため、アメリカを背負って戦ったのに、そんなアメリカから見捨てられた奴らがいることを忘れんじゃねえぞ……とボスは叫び続けます。

英語を完全に理解しきれていなかった中学生だった自分は、どこか派手な印象で本作を捉えていたところがありました。そこに土着的で翳りのあるアメリカンロック色が加わることで、「ああ、アメリカってこんななんだ」とバカみたいな夢想をしていた。だけど、実際はベトナム戦争はまだまだ日常の中で終わっていない(終われていない)、そういう悪夢から抜け入れていない人たちの日々の困難や、労働者階級者の日常生活における苦しさが、一般市民と同じ目線で歌われている。そんなヘヴィなアルバムなんだってことを、そこからより時間をかけて理解することになるのでした。

シングルカットされた楽曲はどれも素晴らしく、歌詞に関しても年齢を重ねるごとに深みが感じられるようになった(ぜひ対訳にも目を通してほしい)。個人的には「No Surrender」と「Bobby Jean」が大好きで、どちらも離れた友との友情や絆がテーマなのですが、前者はそこにベトナム戦争が絡んでくる。ビターな青春ソングといった印象が強いかな。大人になればなるほど、より沁みる楽曲群です。

のち同郷出身のBON JOVI『THESE DAYS』(1995年)で、彼ら世代の目線で当時のアメリカおよびアメリカ人の日常を表現しましたが、彼らがそのベースにしたのは間違いなくこのアルバムだと思うんです。それぞれベトナム戦争と湾岸戦争を軸に、ボスは時代が移り変わろうと傷は残り続けることを歌い、ジョン・ボン・ジョヴィは不景気でも前を向くことを忘れちゃいけないと語りかける。80年代と90年代という時代の変化と各ソングライターの手法の違い含め、比較しながら聴いてみるといろいろ気づきがあるかもしれません。

 


▼BRUCE SPRINGSTEEN『BORN IN THE U.S.A.』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2024年3月23日 (土)

THE BLACK CROWES『HAPPINESS BASTARDS』(2024)

2024年3月15日にリリースされたTHE BLACK CROWESの10thアルバム。

2019年にクリス(Vo)&リッチ(G, Vo)のロビンソン兄弟によって再々結成されて以降、カバーEP『1972』(2022年)は発表していたものの、スタジオアルバムとしてはアコスースティックセルフカバー集『CROWEOLOGY』(2010年)から13年7ヶ月ぶり、オリジナルアルバムとしては初のダブルアルバム『BEFORE THE FROST... UNTIL THE FREEZE』(2009年)から14年半ぶりの新作。現在の正式メンバーはクリス&リッチと、90年代後半からバンドに参加するスヴェン・パイピーン(B)の3人のみで、レコーディングには彼らのほかブライアン・グリフィン(Dr/JAMIE McLEAN BAND)、Nico Bereciaua(G)、エリック・ドイツ(Key)など、『1972』や現在のツアーに同行しているメンバーが参加しています。

プロデュースを手がけたのはジェイ・ジョイス(CAGE THE ELEPHANT、COHEED AND CAMBRIAHALESTORMなど)。土着的ながらも適度なモダンさを持つアメリカンロックアーティストに携わってきた方で、人選は間違いなかったようです。アルバムオープニングを飾る「Bedside Manner」は、イントロの軽快なリズム&ピアノとリッチのスライドギターが鳴り響いた時点で「これぞTHE BLACK CROWES!」と納得も仕上がり。しかし、クリスのボーカルが入ると……やはり加齢による衰えは否めません。以前ほど高めのキーを用いたメロディラインではなく、中音域から上へ抜けきらない、どこかモヤっとしたメロディの運びで曲は進行していきます。しかし、これも慣れればそこまで酷いというものではなく、これはこれで全然アリと思えるものです。

続く「Rats And Clowns」も同じ流れにあるアップテンポのロックチューンで、メロディ的にもそんな感じ。ワイルドなリフと厚みのあるゴスペル調コーラスのおかげもあって、気持ちよく楽しめます。以降もヘヴィブルース「Cross Your Fingers」、ポップで軽快なミドルチューン「Wanting And Waiting」と従来の、というか主に1stアルバム『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990年)や2ndアルバム『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』(1992年)で耳にすることができた「キャッチーだけど適度にレイドバックしていて日本人でも気持ちよく楽しめるアメリカンロック」に回帰している印象を受けます。メロディラインも冒頭2曲は地味さが目立ったけど、「Cross Your Fingers」以降はそこまで気にならないというか、むしろ今のクリスの声域をうまく活かしながら良質なメロディラインを作ることに成功しているんじゃないかと。まあ、頭2曲は勢い一発なところがあるから、これはこれでいいのかもね。

アメリカの若手女性カントリーシンガー、レイニー・ウィルソンをフィーチャーした「Wilted Rose」も、彼女の個性を存分に発揮させつつ、このバンドらしいダークさをにじませたカントリー/ソウルミュージックを確立させているし、豪快でファンキーなハードロック「Dirty Cold Sun」やブルースハープを前面にフィーチャーしたブルースナンバー「Bleed It Dry」、本作でもっともアップテンポのパーティチューン「Flesh Wound」、重心の低いヘヴィサザンロック「Follow The Moon」と緩急に富んだ流れで楽しませ、ラストはジョン・レノン テイストなスローバラード「Kindred Friend」で締めくくる。うん、上出来上出来!

3rdアルバム『AMORICA』(1994年)以降の彼らは初期のキャッチーさを薄め、良くも悪くも玄人好きする難解さを伴い始めますが、本作はそういったテイストも随所に残しつつ、より“外側”に向けて音を届けようとする意思が伝わってくる。ツアーバンド的な側面が強い存在なだけに、そういった姿勢がどこまで意識的かは正直わかりませんが、個人的には非常にポジティブに受け止められる、良質なアメリカンロックアルバムだと思いました。だって、気づいたら何度もリピートしてますからね。ロック低迷と嘆く声が多い現在のUSロックシーンですが、こういう作品が(90年代のように、とは言いませんが)正しい形で届くべきところに届いてほしいと願っています。

 


▼THE BLACK CROWES『HAPPINESS BASTARDS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

 

2024年3月21日 (木)

PRINCE & THE REVOLUTION『PURPLE RAIN』(1984)

1984年6月25日にリリースされたプリンスの6thアルバム。PRINCE & THE REVOLUTIONでは本作が最初の作品となります。

前作『1999』(1982年)が初の全米トップ10入り(最高7位)を記録したほか、同作からは「1999」(米12位)、「Little Red Corvette」(同6位)、「Delirious」(同8位)、「Let's Pretend We're Married」(同52位)とヒットシングルが多数誕生。そんな勢いづいた彼の人気の決定打となったのが、1984年に公開された自伝的映画『プリンス/パープル・レイン』と同作のサウンドトラック的役割を果たすアルバム『PURPLE RAIN』でした。

同アルバムからは「When Doves Cry」「Let's Go Crazy」という2つの全米No.1シングルが生まれ、このうち「When Doves Cry」は1984年のBillboard年間チャート1位。このほかにも「Purple Rain」(同2位)、「I Would Die 4 U」(同8位)、「Take Me With U」(同25位)と計5枚のヒットシングルが生まれ、アルバム自体も彼のキャリア中初の全米1位に輝き、現在までに1300万枚以上を売り上げる最大のヒット作となりました。また、映画自体の興行収入も週間ランキング1位、年間ランキングでも11位という好成績を残しています。

THE REVOLUTIONというバックバンドを携えているものの、「When Doves Cry」などを筆頭に基本路線としてはこれまでと変わらず。そんな中、「Let's Go Crazy」や「Take Me With U」「Purple Rain」などバンドサウンド色が強まった楽曲も含まれており、そうした側面が従来のリスナー層からさらに拡大させる鍵となったのかなと思います。事実、当時はそうした“聴きやすさ”が入り口として十分に役割を果たし、僕のような中坊にもしっかり届いたのですから。と同時に、プリンスという唯一無二の才能が適度な大衆性を取り入れたことで、結果的に『THRILLER』(1982年)が当時バカ売れし続けていたマイケル・ジャクソンにも匹敵する存在にまで登り詰めることになります。

取っ付きにくさを伴うかもしれないプリンスの作品において、実は本作が異色の存在であることは、その後のキャリアを見れば一目瞭然。しかし、彼の魅力の一端を知るという点では入門編としてもっともわかりやすい1枚なのも確か。本作や『SIGN O' THE TIMES』(1987年)、あるいは1990年代のTHE NEW POWER GENERATION期あたりから触れていけば、自然と馴染んでいけるのではないでしょうか。

あと、アルバムラストの「Purple Rain」で聴ける、プリンスのギタリストとしての腕前にもぜひ注目してもらいたい。以降もさまざな局面でその技量の高さを遺憾なく発揮してきましたが、この曲のギターソロは歴史に残すべき名演だと断言したいです。

ちなみに、2017年に発売されたデラックス・エディションには本作りリース後の1985年3月にニューヨークで行われたライブを収めたDVDが付属していので、こちらもオススメです(2022年には同ライブ映像がBlu-ray化、しかもライブCD付きで単独発売されていますが、それはまた別の機会に)。

 


▼PRINCE & THE REVOLUTION『PURPLE RAIN』
(amazon:国内盤CD / 国内盤3CD+DVD / 海外盤CD / 海外盤3CD+DVD / 海外盤アナログ / MP3

 

2024年3月19日 (火)

BERLIN『COUNT THREE & PRAY』(1986)

1986年10月13日にリリースされたBERLINの4thアルバム。テリー・ナン(Vo)を要する布陣での『PLEASURE VICTIM』(1982年)を正式な1作目とカウントするならは、本作は3作目に当たります(当時の日本盤には3rdアルバムとの表記あり)。日本盤は同年11月25日発売。

「No More Words」(米23位)というキャリア最大のヒット曲を生み出した前作『LOVE LIFE』(1984年)から2年半ぶりの新作。同アルバムは50万枚を超えるスマッシュヒットを記録しましたが、その後映画『トップガン』のサウンドトラックに参加したことを機に、その人気は最高潮に達します。同映画サントラからの2ndシングル「Take My Breath Away」は初の全米&全英1位を獲得。そんな高状況の中ドロップされたのが、このオリジナルアルバムとなります。

新たなプロデューサーとしてボブ・エズリン(ALICE COOPERKISSPINK FLOYDなど)を迎えた肝入りの本作。レコーディングはテリー、ジョン・クロフォード(B)、ロブ・ブリル(Dr)の3人にサポートメンバーを加えた形で制作されます。ギタリストとしてはデヴィッド・ギルモア(PINK FLOYD)やケイン・ロバーツ(当時ALICE COOPER BAND)のボブ・エズリン界隈に加え、テッド・ニュージェント(DAMN YANKEESなど)やエリオット・イーストン(THE CARS)などの個性的な面々が参加していますが、アルバムのクレジットには誰がどの曲に参加しているかまでは記されておらず。

ボーカル&リズム隊というアンバランスなメンバーが残ったこともあってか、アルバム冒頭を飾る「Will I Ever Understand You」や「Tras」、リードシングル「Like Flames」(米82位/英47位)はニューウェイヴを通過したハードロック的な、ビートの強い1曲に。特に「Will I Ever Understand You」ではタイトなドラムソロもフィーチャーされており、あくまで“テリー・ナン with リズム隊”ではないことを強くアピールします。

かと思えば、尺八や琴、琵琶といった和楽器がフィーチャーされた浮遊感の強い「You Don't Know」(英39位)、クラシカルなピアノフレーズが耳に残る「When Love Goes To War」などニューウェイヴ側に振った楽曲、前作の流れを汲むダンサブルなシンセポップ「Sex Me, Talk Me」なども含まれている。そんな中に、ジョルジオ・モロダーが手掛けた大ヒット曲「Take My Breath Away」まで収録されているもんだから、アルバムを通してやりたかったであろうハード&タイトな側面がぼんやりしてしまい、全体的にどっちつかずな方向性で終わってしまいます。

1986年後半というと、まもなくBON JOVI「You Give Love A Bad Name」で大ヒットを果たし、翌1987年にはハードロック新世代を迎えようとする過渡期。そんな来たる新世紀を予見したかのようなハードエッジなテイストを導入しつつも、それ以前のシンセポップやニューウェイヴも捨てきれない。さらにレーベル側のゴリ押しであろう「Take My Breath Away」という色の異なる異物まで打ち込む。そりゃ評価も分かれるわけで、大したヒットシングルも生まれず、アルバムは米61位/英32位(実はイギリスでは初のチャートイン)という結果で終わるわけです。

結局、バンドは1987年3月の初来日公演を含むワールドツアー終了後、解散することに。その10年後の1997年にテリー・ナンを中心に再結成を果たし、現在も細々と活動は続いているようです。本作を含むGeffen Records時代のアルバムはサブスクでは聴くことができませんが、MVなどはYouTubeでも視聴可能です。

 


▼BERLIN『COUNT THREE & PRAY』
(amazon:国内盤CD / 国内盤アナログ / 海外盤CD / 海外盤アナログ

2024年3月17日 (日)

THE HELLACOPTERS『GRANDE ROCK REVISITED』(2024)

2024年2月16日にリリースされたTHE HELLACOPTERSのリイシュー作品。

本作は1999年5月に発売された3rdアルバム『GRANDE ROCK』のリマスター盤(フィジカルではDISC 1、配信ではDISC 2)と、本作制作前に脱退し現在バンドに復帰しているドレゲン(G/BACKYARD BABIES)のプレイを追加し、パーカッションとピアノ。新しいバッキングボーカルを加えたリミックス盤(フィジカルではDISC 2、配信ではDISC 1)からなる2枚組作品。旧譜の復刻盤ではあるものの、ある意味では再結成後に制作された8thアルバム『EYES OF OBLIVION』(2022年)に続く“準”新作と受け取ることもできます。

思えば『GRANDE ROCK』制作時はニッケ・アンダーソン(Vo, G)以外のパーマネントギタリストが加入前で、本作の大半でニッケがギター演奏を担っていました(一部でキーボーディストの“ボバ・フェット”ことアンダース・ボバ・リンドストロームもプレイ)。その後、本作を携えたツアーからロバート・ストリングことロバート・ダールクヴィストが正式加入し、2008年の解散までのラインナップが完成することとなります。

ドレゲン在籍時の初期2作(1stアルバム『SUPERSHITTY TO THE MAX!』、2ndアルバム『PAYIN' THE DUES』)とカバー曲のみで構成された7thアルバム『HEAD OFF』(2008年)は現在まで国内ストリーミング未配信。実は本作『GRANDE ROCK』のオリジナル盤も2022年頃までストリーミング未配信および廃盤状態でした。しかし、新作『EYES OF OBLIVION』のリリースを機に『GRANDE ROCK』は現在の所属レーベルであるNuclear Blast Recordsから再発、同時にストリーミング配信も開始されました。

さて、補足はこれくらいにして。本作をこういう形でリイシューした理由に、「もっとギターがヘヴィなミックスにしたかった」というニッケやメンバーの意思があったとのこと(上記のドキュメンタリー映像参照)。確かに、オリジナル盤は前2枚の荒々しさからすると少々落ち着いた、品の良い形にまとめられている印象があります。それが当時の彼らにとってはある意味では正解だったのかもしれませんが、リスナー視点でも以降の作品と比べて本作が若干“弱く”感じてしまう瞬間も多々あり、そういった意味では「曲は良いのにどこか物足りない」1枚だったとも言えます。

そんな問題を解消したのが、本作のリミックス盤ではないでしょうか。ドレゲン自身も過去に自伝で「俺があのアルバムでギターを弾いていたらどうなっていたのか」と発言していたようですし、ゼロから関われてはいないものの多少はそうした夢も実現できているのかなと。ギターの厚みや荒々しさに関しては、新たに制作されたリミックス盤はオリジナル盤とは比にならないほどのカッコよさで、「そうそう、『PAYIN' THE DUES』の“次”ってこれだよね!」と納得できる仕上がり。ギターのみならずボーカルの厚みにも変化が生じており、全体的な“装飾”もより派手になっている。そういう点では「1999年の音」ではなく「2020年代の音」なのかもしれませんが、誰もが夢想した“IFの世界”を“準”新作として楽しめるという意味では、ファンやロックリスナーに幸せを与えてくれる1枚だと思います。

オリジナル盤よりもきめ細やかにバージョンアップされたリマスター盤と、新たに制作されたリミックス盤をこういう形で聴き比べることができるのも非常に興味深いですし、これはなかなかの好企画ではないでしょうか。この調子で『SUPERSHITTY TO THE MAX!』や『PAYIN' THE DUES』も再発していただけないかな……あ、下手なリミックスやリマスターは大丈夫なので(むしろあの2枚はオリジナル盤が完璧すぎますからね)。

 


▼THE HELLACOPTERS『GRANDE ROCK REVISITED』
(amazon:国内盤2CD / MP3

 

2024年3月15日 (金)

SAMI YAFFA『SATAN'S HELPERS, WARLAZER EYES & THE MONEY PIG CIRCUS』(2024)

2024年3月8日に配信リリースされたサミ・ヤッファの2ndアルバム。フィジカルは3月15日発売予定、日本盤は現在未発売。

HANOI ROCKSなどでお馴染み、現在は盟友マイケル・モンローのバンドメイトとして活動をともにしているサミ。40年以上におよぶ音楽キャリアにおいて初のソロアルバム『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』を2021年9月に発表しましたが、本作はそれに続く2年半ぶりの新作となります。

レコーディングには前作にも携わったヤンネ・ハーヴィスト(Dr)、リンデ・リンドストローム(G/ex. HIM)、バートン(Key/ex. HIM)といった地元スウェーデンの仲間たちが全面参加。さらにHANOI ROCKSのメンバーでもあるナスティ・スーサイド(G)やマイケル・モンロー(Vo, Sax)、BACKYARD BABIESTHE HELLACOPTERSの一員でもあるドレゲン(G)、そしてマイケル・モンローのバンドメンバーでもあるリッチ・ジョーンズ(G)&スティーヴ・コンテ(G)といった気心知れた友人たちもゲスト参加しています。

前作で得た手応えをもとに、フィンランドやスウェーデン、スペインなどで断続的に、数年かけて制作されたという本作。基本路線は前作の延長線上にあるものの、まずはオープニングのタイトルトラックに驚かされるのではないでしょうか。マカロニウェスタンを彷彿とさせるスローブルースでじわじわと熱量を高めていくスタイルは、インパクトに欠けると受け取られてしまう可能性もゼロではありませんが、独特の世界観を提供するための入り口としてはいい味付けになっていると個人的には感じました。

パンキッシュなアップチューン「Silver Or Lead」や「Shitshow」、HANOI ROCKSやマイケル・モンローの楽曲として披露されても何ら違和感のないマイナーキーの「Hurricane Hank」や「Crashing Down」、レゲエテイストを取り入れた「Death Squad」などいかにもな楽曲が多数収録される中、レイドバックしたアコースティックアンバー「Down Home」、ファンキーさが際立つ「Chemical Life」、スカテイストを強めたダウナーな「Far Star」などはアルバムのフックとして良い方向に作用している印象を受けます。ぶっきらぼうながらも大人の色気が漂うサミのボーカルも前作以上に馴染み始めており、昨年9月に還暦(!)を迎えたにも関わらずミュージシャンとしてなおも進化を続けようとする彼の前向きな姿勢にただただ脱帽するばかりです。

アルバムのクロージングナンバー「Faster Than Time」のアットホーム感も相まって、前作以上にリラックスして楽しんでいる様子が伝わる本作。酒をたらふく浴びながらまったり楽しみたい、そんな空気感の1枚ではないでしょうか。せっかくなので、クラブ規模でのライブも観てみたいなあ。

 


▼SAMI YAFFA『SATAN'S HELPERS, WARLAZER EYES & THE MONEY PIG CIRCUS』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

2024年3月13日 (水)

MARS ELECTRIC『BEAUTIFUL SOMETHING』(2000)

2000年3月14日にリリースされたMARS ELECTRICの1stアルバム。日本盤は同年5月24日発売。

MARS ELECTRICは1995年に米・アラバマ州バーミンガム出身で結成された4人組バンド。当時のメンバーはジェイコブ・バントン(Vo, G)、クリス・シモンズ(G)、カール・ホッパー(B)、マット・フィン(Dr)の4人で、結成当初はWISHという名前で活動ていたそうです。バンドは1997年にAtlantic Recordsと契約を結ぶものの、作品発表前に契約が破棄されることに。その後、1999年に伝説のA&Rジョン・カロドナーがHR/HM専門レーベルとして新設立したPortrait Records(ソニー傘下。再結成したRATTGREAT WHITECINDERELLAなどが在籍)と改めて契約を結び、同時期にデビューしたTHE UNION UNDERGROUNDとともにプッシュされました。

彼らが結成された1995年のロックシーンはグランジブームが下火になり、それと打って変わるようにニューメタル/グルーヴメタルが勢いを増していったタイミング。デビュー時期もLINKIN PARKPAPA ROACHなどの新興勢力と重なりますが、MARS ELECTRICはモダンなメタルサウンドに足を突っ込むことなく、グランジを通過しつつもオーソドックスなアメリカンハードロック鳴らしています。

パワフルなギターリフでグイグイ引っ張るよりは全体のアンサンブルを楽しむようなアレンジ、ハスキーで中音域をベースにしたジェイコブの歌声のせいもあってか、PEARL JAMあたりのアーシーなロックバンドと印象が重なる。しかし、それだけでは終わっておらず、随所に80年代のヘアメタルやパワーポップからの影響も感じられる。さすがジョン・カロドナーが惚れ込んだバンドというだけありますね。サウンドメイクこそハードロック的ですが、世が世ならSTONE TEMPLE PILOTSあたりと並べて語られてもおかしくなかったのかなという気がしないでもありません。

オープニングを飾る「Someday」を筆頭に楽曲のクオリティが高く、まったくB級感がない。これ、リリースが10年、いや5年早かったら、もっと日本でも評価されたんじゃないでしょうか。一時期のHAREM SCAREMのようでもあり、もっといえば3rdアルバム『3』(1995年)あたりのFIREHOUSEともイメージが重なるし。もっと言えば、同じグランジ通過組のNICKELBACKや3 DOORS DOWNあたりとの共通点もたくさん見つけられる。そういう普遍性の強いサウンド/楽曲が中心な本作、実は今のような時代こそ再注目されるタイミングなんじゃないかとも思うわけで。せっかくジェイコブがミック・マーズ(G/ex. MOTLEY CRUE)のソロアルバムに参加したんだから、ここでこのアルバムにも再び日の目が当たってほしいと思っているのは僕だけでしょうか。

ただ、その音像的に派手さは皆無だし山場となるようなキメ曲もない。全体的に平均点よりちょっと上くらいのクオリティなので、さらっと聴き流してしまう可能性もゼロではないことも付け加えておきます。聴く人が聴けばしっかり届く、中毒性の高い1枚だと思います。

なお、MARS ELECTRICは本作リリース後にSTONE TEMPLE PILOTSやMOTLEY CRUE(ここでミック・マーズと対面しているんですね)などのツアーに帯同するものの、リリースから1年経たずして解散。その後、ジェイコブはLYNAMというバンドを結成して、現在もそちらで活動を続けています。また、解散前に制作していた2ndアルバム用の音源が2003年にインディーズレーベルから『FAME AMONG THE VULGAR』と題して発表されているようです。こちらは配信されていないので未聴ですが、機会があったらチェックしてみたいと思います。

 


▼MARS ELECTRIC『BEAUTIFUL SOMETHING』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2024年3月11日 (月)

MICK MARS『THE OTHER SIDE OF MARS』(2024)

2024年2月23日にリリースされたミック・マーズの1stアルバム。日本盤は同年2月28日発売。

ご存知のようにミックはMOTLEY CRUEのギタリストですが、ニッキー・シックス(B)とともに結成以来常にバンドに残っていたものの、2022年10月に強直性脊椎炎の影響によりツアーから引退を発表。しかし、この引退発表についてミック自身は「ツアーから離れるだけ」、バンド側は「バンドから脱退する」という解釈の違いがあり、その後裁判騒ぎとなっています。MOTLEY CRUE側はミックの後釜としてジョン・5(ex. DAVID LEE ROTH、ex. MARILYN MANSON、ex. ROB ZOMBIEなど)を迎えて、昨年秋には久しぶりの来日公演も成功させたばかりです。

これまでもソロアルバムの噂はゼロではなかったし、バンド自体でもEP『QUATERNARY』(1994年)にソロインスト曲「Bittersuite」を発表した経験があります。しかし、こうしてバンドを離れたからこそ実現したソロ作でそんなことにトライするのか。それが実現のものとなろうとした頃から、その内容に自然と期待が高まっていました。

アルバムのプロデューサーには著名なマイケル・ワグナー(ACCEPTDOKKENSKID ROWなど。MOTLEY CRUEの1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』をメジャー再発する際にはリミックスを担当)を迎え、曲作りはWINGERのポール・テイラー(Key, G)、そして2000年代初頭にMARS ELECTRICとしてメジャーデビューし、現在はLYNAMの一員として活動を続けるジェイコブ・バントン(Vo)と中心に進めることに。レコーディングにもこの2名は全面的に参加し、ほかにはレイ・ルージアー(Dr/KORN)、クリス・コーリアー(B)、ブリオン・ガンボア(Vo)といった面々が名を連ねています。

内容的にはモダンメタルと呼ぶに相応しいテイストで、楽曲自体はMOTLEY CRUEで演奏したとしても何ら不思議ではないものばかり。ミックのギターはバンド自体よりもエッジの効いたサウンドで、72歳という年齢をまったく感じさせないほどに攻撃的。そんなギタープレイをレイを中心とするタイト&ヘヴィなリズムが下地を作り、そこにジェイコブのハスキーな中音域ボイスが乗ることで、フレッシュながらも安定感のある強固なアンサンブルを作り上げている。かつ、楽曲自体のクオリティも高いので、全10曲/約39分を最後まで心置きなく楽しむことができるわけです。

プロデューサー名や参加メンバーの名前から古き良きヘアメタルをイメージするかもしれませんが、そういう方には本作はちょっと退屈に映るのかな? 僕自身はセルフオマージュに走ることなく、新たなことにトライしようとするおじいちゃんの心意気に胸を打たれましたし、ミックの暴力的なギターサウンドを思う存分楽しめる『MOTLEY CRUE』(1994年)がもっとも好きなので、今作で試みていることに対して肯定的なんですよ。本家がいつまで経っても新曲にとりかからないし、アルバムなんて出す気配もなさそうなんだから、僕はこのアルバムを大歓迎しますよ。

個人的には全編で気持ち良い歌声を響かせているジェイコブのことを再評価する、いいきっかけをくれた1枚でもあります。MARS ELECTRIC、当時よく聴いていたんですよ。唯一のメジャー作『BEAUTIFUL SOMETHING』(2000年)はストリーミング配信も実施されているので、本作で興味を持った人はぜひチェックしてほしいな。

 


▼MICK MARS『THE OTHER SIDE OF MARS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2024年3月 9日 (土)

JUDAS PRIEST『INVINCIBLE SHIELD』(2024)

2024年3月8日にリリースされたJUDAS PRIESTの19thアルバム。

英米ともに5位という好記録を打ち立てた前作『FIREPOWER』(2018年)からちょうど6年ぶりの新作。その間にジャパンツアー(2018年11月)オジー・オズボーンの代役として急遽実現した『DOWNLOAD JAPAN 2019』でのヘッドライナー(2019年3月)と2回の来日が実現していますが、2020年以降はコロナ禍によりしばらく表立った動きが取れず。2021年には結成50周年を祝してコンピレーションアルバム『REFLECTIONS - 50 HEAVY METAL YEARS OF MUSIC』やボックスセット『50 HEAVY METAL YEARS OF MUSIC』を発表し、ツアーも始めてみたもののリッチー・フォークナー(G)がライブ中に救急搬送される大事件があり、一度動きが止まってしまいます。

しかし、リッチーの回復を待ってバンドは新作制作に突入。前作にも携わり、グレン・ティプトン(G)の代わりにツアーでギターをプレイしたアンディ・スニープ(ARCH ENEMYKILLSWITCH ENGAGEMEGADETHなど)が全体のプロデュースを務め、アルバム本編ラスト2曲(ボーナストラック除く)「Sons Of Thudner」「Giants In The Sky」のみ共同プロデューサーとしてプリーストの諸作品を手掛けてきたトム・アロムが名を連ねています。

オープニングを飾るリードトラック「Panic Attack」のイントロで、エレクトリック調SEからのスコット・トラヴィス(Dr)が叩く電子ドラム(エフェクトのかかったタムタム?)に「おおっ、『TURBO』(1986年)オマージュか!?」と驚くものの、楽曲自体は彼ららしいスピード感のあるメタルチューン。王者の風格すら感じさせるこの曲から、「The Serpent And The King」「Invincible Shield」のスピードナンバー3連発には圧倒されられるはず。しかも、3曲ともしっかりタイプが異なっており、かつ過去の楽曲の香りをさせつつもそれがセルフパロディで終わっていない。「The Serpent And The King」は新たなキラーチューンになり得るほどの輝きを放ち、「Invincible Shield」は『BRITISH STEEL』(1980年)期を思わせる要素が詰まっている。ああ、この時点で完全に前作を上回りましたわ。

その後も『KILLING MACHINE』(1978年)期を彷彿とさせるミドルヘヴィな「Devil In Disguise」、『SCREAMING FOR VENGEANCE』(1982年)あたりに収録されていても不思議じゃないメロウな「Gates Of Hell」と、とにかく良曲揃い。中盤以降はミディアムテンポで変化をつけながらじっくり聴かせるのですが、とにかく70年代から80年代の黄金期、さらには『PAINKILLER』(1990年)で迎えた変革期、そして『ANGEL OF RETRIBUTION』(2005年)ロブ・ハルフォード(Vo)が復帰して以降の流れもしっかり汲みつつ、50年以上のキャリアを総括しながらも現代的で刺激的で聴き応えのある新作に取り組む。その姿勢に脱帽の一言です。

ロブは昔みたいに金切り声だけで押しまくることなく(年齢的にそれも厳しいのですが)、魅力的な中音域を効果的に聴かせるメロディライン作りに励み、それがここ数作の中でもっともうまく作用している。ギターに関してもリフ、ソロ、ツインリードなど理想的なメタルフレーズを豊富に散りばめているものの、決して「あれ、これ以前聴いたことある?」とは思わせない。これを50年選手が実現させている事実に、ただ驚くばかりです。

あと、今作は(アルバム本編に関して)仰々しいメタルバラードが皆無なのも興味深かったな。強いて言えば「Trial By Fire」や「Giants In The Sky」あたりはその部類なのかもしれないけど、無理してバラードと呼ばなくてもいいミドルヘヴィチューンだしね。この潔さも素敵だし、ボーナストラックを除けば全11曲で約52分程度というトータルランニングもちょうどいいし、流れも完璧。最後までまったくダレず飽きず楽しめる傑作です。

ブック仕様パッケージのデラックス盤およびデジタル/ストリーミング版には、3曲のボーナストラックが追加されているのですが、こちらはアルバム本編よりほんの少しだけクオリティが落ちる気がしないでもないけど、それでも彼らの水準的にはかなり高いほう。ただ、どれもミディアムテンポなので蛇足に関してしまうかも。そんな中、ラストの「The Lodger」は80年代の「(Take These) Chains」(『SCREAMING FOR VENGEANCE』収録曲)や「Some Heads Are Gonna Roll」(『DEFENDERS OF THE FAITH』収録曲)を手掛けてきたボブ・ハリガン・Jr.作のバラード調ナンバー。これは本編に入っていてもよかったんじゃないかな?という気がしないでもないけど、緊張の糸が途切れてしまう可能性もあるのでなくて正解だったのか。まあ、ボーナストラックとして気楽に楽しんでいきたいと思います。

こうなると、2019年3月以来となる日本公演が非常に気になるところ。いや、こんな充実作を前にしたら早く新曲を生で聴きたくなるでしょ。ロブは「19という数字は中途半端なので、早く20作目に着手したい」なんて言ってるけど、その前に新作ツアーでお待ちしていますよ?

 


▼JUDAS PRIEST『INVINCIBLE SHIELD』
(amazon:国内デラックス盤CD / 国内盤CD / 海外盤デラックスCD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2024年3月 7日 (木)

ZAKK SABBATH『DOOMED FOREVER FOREVER DOOMED』(2024)

2024年3月1日にリリースされたZAKK SABBATHの2ndアルバム。日本盤未発売、デジタルリリースおよびストリーミングサービスでの配信なし。

前作『VERTIGO』(2020年)から3年半ぶりの新作。メンバーはザック・ワイルド(Vo, G/BLACK LABEL SOCIETYOZZY OSBOURNEPANTERA)、ブラスコ(B/OZZY OSBOURNE、ROB ZOMBIE)、ジョーイ・カスティロ(Dr/ex. QUEENS OF THE STONE AGE、ex. DANZIG、ex. EAGLES OF DEATH METALなど)と変わらず。

ザックの敬愛するBLACK SABBATHトリビュートの名目で結成した彼らですが、前作ではそのサバスの1stアルバム『BLACK SABBATH』(1970年)発売50周年を祝した完全カバー作でしたが、今作は続いてサバスの2ndアルバム『PARANOID』(1970年)と3rdアルバム『MASTER OF REALITY』(1971年)をまるまるカバーしたCD2枚組作品となっています。

DISC 1に『PARANOID』収録の8曲、DISC 2に『MASTER OF REALITY』収録の8曲がそれぞれ収められており、基本的なアレンジは原曲に忠実ながらもザックらしくほとんどの楽曲をダウンチューニングで演奏(「Planet Caravan」のようなアコースティックナンバーは原曲キーのまま)。トニー・アイオミ(G)へのリスペクトを表しつつ、随所で彼らしさを織り交ぜた個性的なプレイをたっぷり味わうことができます。

基本的にカバーというかコピーに近い演奏なので、原曲の雰囲気を損ねるようなことはないのですが、いかんせん1音とか1音半もダウンチューニングしているので、サバスの音に慣れた耳で聴くと若干の違和感は否めません。しかし、ザックの“なんちゃってオジー”風モノマネ歌唱が加わると、妙に納得して楽しめてしまうから不思議です。ザック、「War Pigs」の冒頭からノリノリですからね。

個人的には「Planet Caravan」で原曲にないハーモニーや、エンディングで聴けるエレキでのギターソロなどがフィーチャーされておりますが、このへんは現在PANTERAのツアーでこの曲に触れていることから触発されたものもあるのかもしれませんね。同じくスローナンバーの「Solitude」はピアノアレンジに変更されているのですが、レイドバック感を強調した「Hand Of Doom」同様どこかBLACK LABEL SOCIETY味があり新鮮に響きます。

そのほか、「Rat Salad」でのスリリングなアンサンブルや「Lord Of This World」や「Into The Void」での地を這うようなヘヴィさなど、この布陣ならではの名演が凝縮されているので、サバスの原曲を知らなくても十分に楽しめる内容だと思います。残念ながら、ZAKK SABBATHのアルバムはフィジカルでしか入手できない(聴くことができない)ので、ちょっとでも気になったらぜひ通販やCDショップで入手することをオススメします。

 


▼ZAKK SABBATH『DOOMED FOREVER FOREVER DOOMED』
(amazon:海外盤2CD / 海外デラックス盤2CD / 海外盤アナログ / 海外盤カセット

2024年3月 5日 (火)

KK'S PRIEST『THE SINNER RIDES AGAIN』(2023)

2023年9月29日にリリースされたKK'S PRIESTの2ndアルバム。

デビュー作『SERMONS OF THE SINNER』(2021年)からちょうど2年ぶりの新作。前作はEX1 Recordsからのリリースでしたが、今作ではNapalm Recordsへと移籍。その結果、日本盤も今作からビクター配給となりました。

参加メンバーは前作から変わらずK.K.ダウニング(G/ex. JUDAS PRIEST)、ティム・“リッパー”・オーウェンズ(Vo/SPIRITS OF FIRE、A NEW REVENGE、ex. JUDAS PRIEST、ex. ICED EARTH、ex. YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCEなど)、A.J.ミルズ(G)、トニー・ニュートン(B)、ショーン・エルグ(Dr)の5人。プロデュースは引き続きK.K.が担当し、ミックスおよびマスタリングを“現代メタルシーン最高峰のデンマーク人エンジニア”ことヤコブ・ハンセン(ARCH ENEMYDIZZY MIZZ LIZZYVOLBEATなど)が手掛けています。

全9曲(日本盤ボーナストラック除く)ですべて“歌モノ”。前作が全10曲で内1曲が短尺インスト(オープニングSE)だったので、ボリューム的にはほぼ一緒なのですが、前作はトータルで約50分あったの対して今作は約40分と非常にコンパクト。そういえば、前作は8〜9分の長尺曲が2曲もあったんでした。それと比べたら、今作は4分台の楽曲が中心で、長尺曲もラストの「Wash Away Your Sins」の約6分半のみ。

ティムの暑苦しいハイトーン&スクリームとK.K.の「弾きすぎ!」ってくらい詰め込みすぎなギタープレイのせいもあって、前作は50分という尺が長く感じられたのですが、今作はどうでしょう。基本的なスタイルはまったく変わっておらず、序盤3曲でやはり聴き疲れを感じずにはいられません。そういったところに好き嫌い分かれるところもありますが、ただタイトルトラック「The Sinner Rides Again」以降の後半で多少変化が付けられており、なんとか途中離脱することなく最後まで楽しめました。

そういった意味では、個人的ハイライトはラスト2曲の「Pledge Your Souls」「Wash Away Your Sins」かな(とはいえ、「Wash Away Your Sins」はエンディングをフェードアウトで終わらせず、もうちょっとやり方あったんじゃなかろうか)。ティム、もうちょっと緩急を付けた歌い方をしたらシンガーとしてパーフェクトなのに、この怒り一辺倒な歌い方がワンパターンすぎて本当に勿体ない。K.K.の指示もあるのかもしれないけど(この人が一番怒りに満ちているでしょうから)、これじゃあいつまで経っても“本家”には勝てないし、“ある時期”の二番煎じに甘んじたままではないでしょうか。

そろそろ“らしさ+α”でオリジナリティを確立させないと、短命に終わってしまう気もするんだけどなあ。けど、オールドスクールなメタルファンの皆さんはそういう変化を求めてないんですかね。メタル作品としてはクオリティは高いんだろうけど、今の自分の趣味嗜好からはちょっとだけズレる1枚かもしれません。

 


▼KK'S PRIEST『THE SINNER RIDES AGAIN』
(amazon:日本盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2024年3月 4日 (月)

ROBERT PALMER『RIPTIDE』(1985)

1985年11月にリリースされたロバート・パーマーの8thアルバム。

1985年、ロバートは当時DURAN DURANのメンバーだったアンディ・テイラー(G, Vo)&ジョン・テイラー(B)とCHICのトニー・トンプソン(Dr)とともに、“スーパーバンド”THE POWER STATIONとしてアルバム『THE POWER STATION』(米6位/英12位)やシングル「Some Like It Hot」(米6位/英14位)、「Get It On」(米9位/英22位)などをヒットさせたばかり。本来ならそのままツアーに臨む予定でしたが、ロバートはこの良い流れから自身のソロ活動へと移行し、バンドから離脱します。

こう聞くとバンドとの関係性が悪かったのではと邪推してしまいますが、1985年夏に制作された本作のプロデュースを手掛けたのはTHE POWER STATIONから引き続きバーナード・エドワーズ(CHICのベーシスト)。かつ、レコーディングにはアンディやトニーも参加しており、決して喧嘩別れしたわけではなかったことがわかります。

それまでのR&Bやソウル、ニューウェイヴ色の強かった作風から、本作ではTHE POWER STATIONで得た手応えをそのまま反映させたハードロックテイストで統一。自身最大のヒット曲となった「Addicted To Love」(米1位/英5位)を筆頭に、「Hyperactive」(米33位)や「Discipline Of Love」(米82位/英95位)、JAM & LEWISが手掛けたシェレールのデビューヒット「I Didn't Mean To Turn You On」のカバー(米2位/英9位)といったヒットシングルも多数生まれ、アルバム自体も米8位(200万枚)/英5位と好セールスを記録しました。

オープニングとエンディングを飾るルース・エッティング(1920〜30年代に活躍した米歌手・女優)のカバー「Riptide」や本作唯一のロバート単独作詞作曲楽曲「Get It Through Your Heart」こそ穏やかなスローチューンですが、ブルースシンガー&ギタリストのアール・キング「Trick Bag」のカバー含め、デジタル色の強いハードロックは大人の色気を強くにじませたロバートのボーカルに見事フィット。ただ、THE POWER STATIONのようにド派手なギター要素は少なめなので、そっち方面を重視するリスナーには少しだけもの足りないかもしれません。

とはいえ、ロバート・パーマーという稀代のシンガーによる名演の数々は、80’sロック&ポップスファンなら必聴もの。当時、MTVでヘヴィロテされたMVの数々と合わせて(むしろ、そういったヴィジュアル重視で)お楽しみください。

 


▼ROBERT PALMER『RIPTIDE』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

« 2024年2月 | トップページ | 2024年4月 »

カテゴリー