BERNARD BUTLER『GOOD GRIEF』(2024)
2024年5月31日にデジタルリリースされたバーナード・バトラーの3rdアルバム。海外でのフィジカル(CD、アナログ)リリースは同年7月5日を予定、日本盤の発売は現時点で予定なし。
純粋なソロアルバムとしては、前作『FRIENDS AND LOVERS』(1999年)から約25年ぶり。2000年代以降はプロデューサーとしての活躍が目立ったバーニーですが、THE ANCHORESSことキャサリン・アン・デイヴィスとのコラボアルバム『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020年/制作自体は2014年。同時期にバーニーはTRANSという短命プロジェクトも始動)を発表したのを機に、徐々に創作意欲が高まっていきます。2022年には女優ジェシー・バックリーとのコラボアルバム『FOR ALL OUR DAYS THAT TEAR THE HEART』をリリースし、こちらは全英23位という好記録を残しています。さらにこれと前後して、ソロデビュー作『PEOPLE MOVE ON』(1998年)のリイシューを計画し、オリジナル盤に自身が新たに歌い直したテイク、当時のシングルカップリング曲などをまとめたCD4枚組デラックス盤も発表するなど、自身がフロントマンとして活動する機会が徐々に増えていきました。
こうした活動の中で、自身のための新曲制作にも着手。先に小規模のライブを複数行ったことも、こうしたソロセッションに対する前向きさにつながり、2023年の数ヶ月を通じて本作に収められている9曲を完成させました。
基本的な路線は『FRIENDS AND LOVERS』などでにじませていたディープな歌モノスタイルの延長線上にあります。と同時に、90年代のアレンジとは異なるシンプルさ、生々しさが強まっており、そこが良い意味で現代的と受け取ることもできる。そこに、ギタリストとして大人の表現を手に入れたバーニーが、1音1音の存在感が強いプレイで自分以外の何ものでもない表現を提示しており、派手さは皆無ながらも聴き手をグイグイと音世界へと引き込んでいく。その説得力の強さはさすがの一言です。
また、前作発表時は30歳前後だった彼も現在は50代半ばに差し掛かろうとしており、そういった加齢による歌声の変化/成長も作品にダイレクトに反映されている。これは年相応のものへと深化した、というのが正解なのでしょう。90年代の2作ではシンガーとして最初に一歩を踏み出した時期ということもあり、瑞々しさもしっかり感じられましたが、今作では本来彼が表現しようとしていた音楽を歌うに最適な歌声/声質になったことで、楽曲にもたらす説得力が段違いとなっている。この変化/進化は本作を評価する上でかなり大きな要素と言えるでしょう。
稀代のギタリストの新作というよりは、名ソングライター/プロデューサーが久しぶりに自身と向き合って、自分のためだけの楽曲集を完成させた。本作はそんな1枚ではないかと解釈しております。「Pretty D」や「London Snow」といった楽曲たちは、間違いなく「Stay」や「Not Alone」、あるいは「You Must Go On」などといったヒットシングルに匹敵する完成度を誇る名曲ですしね。
とはいえ、全体のトーンはかなり落ち着いたものであるのは事実。これを地味と受け取るか、あるいは大人の渋みと受け取るかで、本作への印象もだいぶ異なるのではないでしょうか。
▼BERNARD BUTLER『GOOD GRIEF』
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