VOW WOWのライブを初めて、そして最後に観たのは、結果として現役活動中最後のライブとなった1990年5月末の日本武道館公演。80年代半ばからイギリスを中心に活動していた彼らが、その拠点をアメリカに移して米レーベルとの契約に着手したものの、結果が思うように結びつかず、この武道館ライブを最後にバンドは同年末に解散。その後はBOW WOW(現在BOWWOW G2)が新たな編成で復活するなどありましたが、個人的には人見元基(Vo)のボーカルに惹かれていたこともあり、こちらには食指が動かず。
その後、2009年12月と2010年12月に一時的復活ライブが実施されたものの、仕事の都合で断念(そもそもチケットが取れていないのでどうにもならない)。ところが、そこから14年。解散から数えても34年(笑)という歳月を経て、再びVOW WOWとしてステージを行うことが発表された。これは「V」名義でのデビューアルバム『BEAT OF METAL MOTION』(1984年)発売40周年記念と同時に、2023年5月にこの世を去った新美俊宏(Dr)の一周忌追悼で実現したもので、山本恭二(G)、厚見玲衣(Key)、人見元基のオリジナルメンバーに永井敏己(B/VIENNA、DEAD CHAPLIN、GERARDなど)、岡本郭男(Dr/スペクトラム、AB'S、SHŌGUNなど)をゲストプレイヤーに迎えて実施。これは行かねば後悔する……そう思って抽選に申し込むも、最初は落選。二度目の抽選でギリギリ滑り込み、2公演(6月29日、30日)あるうちの30日公演を確保することができました。
ソールドアウト公演とはいえ当日は雨模様ということもあり、開場時間から30分遅れで到着。整理番号も後半も後半だったので、待ち時間10分ほどで会場入り。年齢層は非常に高く、自分らが年少組に入るんじゃないか?と思えるほど。モッシュやクラウドサーフで慣れ親しんだクラブチッタだけど、無茶する大人も少ないだろうし、フロアの真ん中上手壁あたりに陣取ることに。
ステージ上手側には高台に乗った「V」仕様の新美ドラムセットが陣取るも、これは単なる演出として設置されたもの。定刻を過ぎた頃にSEに導かれるようにメンバーが次々と入場。前日は『BEAT OF METAL MOTION』のオープニングを飾る「Break Down」から始まることを知っていたので構えていると……印象的な“あの”3声ハーモニーが響き渡るわけです。ああ、やられた。今日は「Beat Of Metal Motion」始まりか、と。確かに、ライブの幕開けとしてはこちらのほうがアガるもんね。演奏はもちろんのこと、人見のボーカルの衰えなさに驚く。いや、引く。現役を引退して、千葉県内で英語教師をしていたことはもちろん知っていたし(いとこが教わってましたから)、その合間を縫ってレコーディングやライブにスポット参加していたわけですが、60代後半の彼がここまで現役感満点の“メタルボーカル”を聴かせてくれるとは……素直に感動してしまいました。
『BEAT OF METAL MOTION』40周年とはいえ、セットリストは同作中心というわけではなく、非常に幅広くピックアップされており、個人的には大満足。ライブよりも音源で馴染んできた名曲たちを、これまた現役感の強い山本&厚見と鉄壁のサポート陣による演奏で楽しめるわけですから、悪いわけがない。曲間には懐かしの“人見節”炸裂なMCも飛び出し、ほっこり。何もかも最高だ。そう思っていたんですよ……。
ところが、ライブ中盤。山本の口から「人見から『ベストな状態を保ちたいから2部制にしたかったんだけど、会場側から断られた。なので、人見を一時休ませるために自分と厚見で数曲やる」との趣旨の発言があり、ギターとピアノのみによるブレイクタイムへ突入します。これ自体はまったく問題ないんだけど……実はそのちょっと前から立ちくらみというか、若干“ブラックアウト”気味状態になってしまいまして。スタンディングライブでこんな体調崩すなんて一度もなかったんだけど……結局、山本&厚見セッションが始まってすぐにフロアを退出。ロビーに座り込んで冷たい水を補給しながら回復を待ちました。山本&厚見セッション自体は決して激しいものではなかったので、体調を整える上でのBGM(大変失礼)として重宝させていただきました。
15分くらい休んでなんとか復調したので、再びフロアへ。再度体調悪化した場合を見越して今度は後方扉付近を陣取り、人見の再登場を待ちます。後半戦はいきなり「Don't Tell Me Lies」「Don't Leave Me Now」の連発で完全に心奪われ、貴重な「Mountain Top」や激エモな「Pains Of Love」、クライマックスに相応しい「Hurricane」や「Shot In The Dark」と代表曲揃いで完全にノックアウト(体調的にではなく精神的にね)。人見のボーカルも曲を追うごとに掠れたり声量が落ちたりということも皆無で、すべての曲においてCDレベル、いやそれ以上に進化した唯一無二の歌声を響かせまくります。気持ちいいったらありゃしない。
アンコールではこれまた劇的なメタルバラード「Shock Waves」という名曲をお見舞いされ、気づいたら涙が。もう、すげえよ……これ、60代後半のおじいちゃんたちなんだよ? 信じられないわ。80年代後半の若々しさ(主にビジュアル面)も捨てがたいけど、自分よりもひとまわり以上も上の世代がここまでやってる現実を目の当たりにしたら、そりゃあこっちを取りますって。
本来はここで終了の予定が、最終日らしいサプライズを用意。なんと「B」のメンバーである斉藤光浩(G, Vo)をステージに呼び込みます。え、それってアリなの? 「B」と「V」は演奏する楽曲含め交わり合うことはないと思ってたのに、奇跡のコラボが2024年に実現するなんて……これも新美が“向こう”から用意したプレゼントなのかもね。ってことで、最後は「B」時代にもよく演奏していた(「V」初期にもプレイされた)「Summertime Blues」を全員でセッションして終了。本編だけでも十分にお釣りがくるほどの内容だったのに、さらにボーナスまでいただいてしまって……途中で自分が体調を崩すハプニングこそあったものの、それを除けば最高以外の何ものでもない奇跡の3時間でした。
来年1月にTOKYO DOME CITY HALLで再び「V」でのライブを開催することもアナウンスされていますが……個人的には「いい思い出」としてここで止めておいてもいいかな、と思ったり。でも、今回やらなかった曲も次はやるだろうから……結局行っちゃうんだろうな(チケットが取れたらだけど)。
セットリスト
01. Beat Of Metal Motion
02. Eclipse 〜 Siren Song
03. Break Down
04. I Feel The Power
05. Too Late To Turn Back
06. Rock Me Now
07. Helter Skelter
08. I've Thrown It All Away
09. I'm Gonna Sing The Blues [山本恭司&厚見玲衣]
10. Cry No More [山本恭司&厚見玲衣]
11. I'll Wait A Lifetime [山本恭司&厚見玲衣]
12. Somewhere In The Night [山本恭司&厚見玲衣]
13. Don't Tell Me Lies
14. Don't Leave Me Now
15. Mountain Top
16. Pains Of Love
17. You're The One For Me
18. Nightless City
19. Premoniton 〜 Hurricane
20. Shot In The Dark
アンコール
21. Shock Waves
22. Summertime Blues [Guest: 斉藤光浩]