カテゴリー「Accept」の14件の記事

2024年4月 6日 (土)

ACCEPT『BLIND RAGE』(2014)

2014年8月15日にリリースされたACCEPTの14thアルバム。日本盤は同年8月13日発売。

前作『STALINGRAD』(2012年)から2年4ヶ月ぶり、3代目シンガーのマーク・トーニロ(Vo)加入後3作目のスタジオアルバム。マーク、ウルフ・ホフマン(G)、ハーマン・フランク(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・シュヴァルツマン(Dr)という再々結成後不動の布陣での最後のアルバムとなります。

プロデューサーはもはやお馴染みのアンディ・スニープ(ARCH ENEMYJUDAS PRIESTMEGADETHなど)。楽曲面においても過去の良い面を十分に残しつつ、それらを現代的にバージョンアップさせることに成功しており、もはや何の不安も感じられない。そういう意味でも、新たな黄金期を迎えつつあることが伺える良質なメタルアルバムに仕上がっています。

オープニングのファストチューン「Stampede」こそ彼らにしては若干平均点的な仕上がりですが、続く「Dying Breed」「Dark Side Of My Heart」のキラーチューンぶりには目を見張るものがあり、キャッチーなメロディラインや重厚で男臭いコーラスワーク、パワフルなギターリフとタイトなバンドアンサンブル、ウルフによるクラシカルかつメロウなギターソロといった、このバンドに必要不可欠な要素がすべて揃っている。文句の付けようがありません。

〈Oh Oh〜〉コーラスやロシア民謡的メロディを取り入れたミドルヘヴィ「Fall Of The Empire」、泣きメロパワーメタル「Trail Of Tears」、冒頭のアコギ含め哀愁味漂う「Wanna Be Free」、ギャロップビートが軽快な「200 Years」、ストレートなメタルチューン「Bloodbath Mastermind」など、楽曲のバリエーションも比較的幅広く、似たようなタイプの楽曲で固められることの多いこの手のバンドにしては、最後の最後まで飽きずに楽しめるのも本作の魅力。終盤に用意されたメタルバラード的な「The Curse」や、恒例のなったクラシックからの引用ギターソロ(今回はエドヴァルド・グリーグ『PEER GYNT(ペール・ギュント)』より「Morning Mood(朝)」)をフィーチャーした締めくくりに相応しい疾走ナンバー「Final Journey」までの全11曲、スルッと聴くことができるはずです。

ギターソロやちょっとしたアレンジのこだわりで1曲1曲が5分前後と、比較的長尺な楽曲が並び、トータルで60分近くあるので、本当に好きな人じゃないと厳しいかなと思いつつも、前半を難なく楽しめたなら最後まであっという間なはず。歴史に残るような名曲やバンドを代表するような1曲は見当たらないかもしれないけど、すべてが平均点もしくはそれ以上の完成度なので、結果としてアルバムの充実度は100点に近い。トニー加入後の第3期(80年代を第1期、90年代を第2期と大雑把に分けてます)における、この時点での代表作と断言してしまっていいと思います。

事実、本作は本国ドイツで初のチャート1位を獲得。アメリカでも35位と過去最高記録を樹立し、イギリスでも7thアルバム『RUSSIAN ROULETTE』(1986年。最高80位)以来のTOP100入り(85位)を果たしています。そんな好状況だっただけに、2014年末にハーマン、そしてステファンが相次いで脱退してしまったことは残念でなりません。

 


▼ACCEPT『BLIND RAGE』
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2024年4月 4日 (木)

ACCEPT『DEATH ROW』(1994)

1994年10月4日にリリースされたACCEPTの10thアルバム。日本盤は同年11月2日発売。

ウド・ダークシュナイダー(Vo)、ウルフ・ホフマン(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・カウフマン(Dr)という黄金期の4人が再び集結し制作した前作『OBJECTION OVERRULED』(1993年)に続く1枚。常にツインギター編成で活動してきた彼らでしたが、再結成後はライブにおいてもシングルギター編成だったこともあり、本作でもそのスタイルは継続。前作以上にシングルギターで聴かせるアレンジが施されています。

しかし、それ以上に本作が独特な作りなのは、その楽曲/サウンドのテイストの違いでしょう。1994年という時代もあってか、本作で聴くことのできる方向性はそれまでのオールドスクールなHR/HMとは一線を画する、グランジ以降のシンプルなアレンジ、およびMETALLICAPANTERAを通過したグルーヴメタルを踏襲した路線。オープニングを飾るタイトルトラック「Death Row」の作風に、多くのリスナーが当時腰を抜かしたものです(笑)。

あれから30年経った今聴くと、これはこれで面白いなと思えるのですが、当時は時代に迎合したと思われても仕方ないくらいに“今(90年代前半)風”に寝返っており、かつ彼らがこういうスタイルをやっても曲自体が面白くならないという事実が重くのしかかるだけでした。続くアップチューン「Sodom & Gomorra」もそういった傾向を踏襲しつつも、無理に80年代的疾走感を取り入れようとして、メロディにいまいち高揚感が足りない。お家芸といえるクラシックからの引用ギターソロ(ここではハチャトゥリアン「剣の舞」をフィーチャー)はあるものの、全体的にモノトーンで盛り上がりに欠けるアレンジが足を引っ張っている感は否めません。

では、本作が完全なる失敗作かと言われると、まったくそうも言えないんですよ。3曲目「The Beast Inside」では前作までの黄金サウンドが復調している。メロディラインや野郎臭いシンガロングなど含め、彼らに必要な要素がすべて揃っているんです。かと思えば、モダン色を強めつつも従来の彼ららしさが感じられるミドルヘヴィ「Dead On!」、軽快なファストチューン「Guns 'R' Us」、80年代にやっていたことをモダン化させたような「Like A Loaded Gun」と佳曲が続く……「意外」と言っては失礼かもしれませんが……「意外と聴き進めることができる」んです、このアルバム。

アルバム後半もグルーヴメタル的リフを用いながらも従来のACCEPTらしさも混在する「What Else」や「Stone Evil」、のちにカウフマンの健康上の理由からツアーに参加することになるステファン・シュヴァルツマン(Dr)が叩いた「Bad Habits Die Hard」や「Prejudice」、個人的には本作で「The Beast Inside」に次いでお気に入りのアップチューン「Bad Religion」、ジム・ステイシー(Vo)期の楽曲をリメイクした「Generation Clash II」、憂に満ちた泣きのバラード「Writing On The Wall」と、バラエティに富んだ楽曲が揃っている。ただ、ここで終わらせておけばよかったものの、ダメ押しで泣きの「Drifting Apart」とエドワード・エルガー「威風堂々」のカバーというインスト2連発をぶち込み、トータル71分強という我慢大会が展開されるわけです(苦笑)。

本作を駄作にしてしまっている最大の原因は、「歌メロやリフの弱さ」以上に「曲数が多い」ことではないでしょうか。正直、この15曲中5曲は削って、曲順を変えれば平均的な仕上がりにはなったはず(メロやリフの弱さはどうしようもないからね)。オープニングのタイトルトラックで聴き手をふるいにかけるのはいいんですが、そこからダラダラと山場のない楽曲群を聴かされ続けたら、そりゃ誰だって駄作って呼びたくなります。

曲単位では5点中4点を与えられるものがいくつか存在し、残りは2〜3点という残念な1枚ではありますが、先に述べたように嫌いにはなれないし、意外と面白いなという気づきも見つけられる、時間が経ったことで評価が変わりつつある“不運な時代の、不運なアルバム”ではないでしょうか(かといって傑作、良作とも言い難いんだけどな)。

 


▼ACCEPT『DEATH ROW』
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2024年4月 2日 (火)

ACCEPT『BALLS TO THE WALL』(1983)

1983年12月5日(欧州)にリリースされたACCEPTの5thアルバム。北米では1984年1月、日本でも1984年に入ってから発売されたので、世界的に見て「1984年のアルバム」と捉えることができるでしょう。

前作『RESTLESS AND WILD』(1982年)が北米では1983年に、メジャーのPortrait Records(Epic Recordsの姉妹レーベル)から発売されたこと、また当時のUSシーン的にもHR/HMに注目が集まっていたタイミングで、先に同郷のSCORPIONSが成功を収めていたことから、続くACCEPTにも期待が寄せられていました。事実、本作のタイトルトラックはMVも制作され、当時MTVでヘヴィローテーションされたと聞いています。結果、このアルバムは本国で初チャートイン(最高59位)しただけでなく、アメリカでも最高74位まで上昇し、キャリア唯一のゴールドディスク(50万枚以上)を獲得しています。

本作はウド・ダークシュナイダー(Vo)、ウルフ・ホフマン(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・カウフマン(Dr)、前作完成後にバンドに加入したハーマン・フランク(G)という布陣で制作された唯一のアルバム。ハーマンは本作完成後に脱退し、前任のヨルグ・フィッシャー(G)が再加入することになります。プロデュースはバンド自身が務め、ミキシングエンジニアを過去数作から引き続きマイケル・ワグナー(DOKKENSKID ROWWHITE LIONなど)が担当。切れ味の強かった前作にさらなる重みを加えることで、バンドの個性が本格的に確立された1枚と言えるでしょう。

メタルアンセムと呼ぶに相応しいタイトルトラック「Balls To The Wall」は、スピード感を除くこのバンドの魅力がすべて詰まった究極の1曲。「ACCEPTってどんなバンド?」と質問されたら、この曲を聴かせればいい。それくらい“らしい”1曲と言えるのではないでしょうか。

もちろん、本作はそれ以外にも良曲揃い。「Balls To The Wall」にも匹敵するミドルテンポのメタルアンセム「London Leatherboys」、疾走感に満ち溢れた「Fight It Back」、次作『METAL HEART』(1985年)のタイトルトラックと同じテンポ感/リズム感を持つメロウな「Head Over Heels」、このバンドらしい魅力的なギターリフ&メロディを持つミディアムナンバー「Losing More Than You've Ever Had」と、アルバム前半の充実ぶりは前作以上。トータルでの流れ/テンポも良いのでスルスル聴き進められます。

アルバム後半もその傾向は引き継がれており、軽快なアップチューン「Love Child」を筆頭に、ノリの良いミドルナンバー「Turn Me On」、ザクザクしたリフとスピード感が心地よい「Losers And Winners」、欧州のバンドらしい憂いがにじみ出た「Guardian Of The Night」、彼ら流のメタルバラード「Winter Dreams」で綺麗に締めくくります。

キャッチーさやキラーチューンの多さで言えば次作『METAL HEART』が勝るところでしょう。しかし、ヘヴィメタルアルバムとしてのトータルバランスや全体の空気感、“らしさ”においては本作がベスト。「ACCEPTの代表作は?」と質問されたら、『METAL HEART』よりも本作『BALLS TO THE WALL』を挙げるメタルリスナーが多いのは、そういった理由からかもしれません。

自分は『METAL HEART』からACCEPTに触れた人間なので、思い入れ的には同作のほうが断然上ですが、やはり「ACCEPTのアルバムで最初に聴くなら」と問われたら『BALLS TO THE WALL』をピックアップすると思います。

 


▼ACCEPT『BALLS TO THE WALL』
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2022年11月 5日 (土)

V.A.『RANDY RHOADS TRIBUTE』(2000)

2000年2月23日にリリースされたランディ・ローズ(ex. OZZY OSBOURNE、ex. QUIET RIOT)のトリビュートアルバム。日本限定で制作されたものですが、海外では韓国でも発売されていたようです。

プロデュースや制作の総指揮を担当したのは、SKID ROWACCEPTMETALLICAなどのプロデュースやエンジニアリングで知られるマイケル・ワグナー。それもあってか、参加ミュージシャンは過去に彼と仕事をしたことがあるHR/HM系アーティストが多数名を連ねています。

そのメンツもセバスチャン・バック(Vo/ex. SKID ROW)、ロブ・ロック(Vo/IMPELLITTERI)、ジョー・リン・ターナー(Vo/ex. RAINBOWなど)、マーク・スローター(Vo/SLAUGHTER)、ウルフ・ホフマン(G/ACCEPT)、ジェイク・E・リー(G/RED DRAGON CARTEL、ex. OZZY OSBOURNE、ex. BADLANDS)、ケイン・ロバーツ(G/ex. ALICE COOPER)、ロイ・Z(G/WEST BOUND、TRIBE OF GYPSIES、HALFORDなど)、ジョージ・リンチ(G/ex. DOKKENなど)、山本恭司(G/BOW WOW)、クリス・インペリテリ(G/IMPELLITTERI)、アル・ピトレリ(G/SAVATAGE、ex. MEGADETHなど)、ダイムバッグ・ダレル(G/ex. PANTERA)、チェット・トンプソン(G/ex. HELLION)と、ピュアHR/HM界隈には非常に豪華なもので、曲ごとに異なる組み合わせで華を添えています。なお、リズム隊はマイク・ブリグナーデロ(B/GIANT)&マイケル・カーテロン(Dr/ex. DAMN YANKEES)が固定で担当しています。

日本のレーベル主導ということもあり、その人選こそ日本のメタルファンが好みそうなものですが、内容的には可もなく不可もなくといった印象。そもそも取り上げられている楽曲がオジー・オズボーンの初期2作からなので、選曲も限定されますし、そりゃあこうなるわなといったところでしょうか。だって、前半5曲が『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)、後半5曲が『DIARY OF A MADMAN』(1981年)からで、冒頭4曲に関しては『BLIZZARD OF OZZ』とまったく同じ流れですし、耳馴染み良すぎるというか聴き飽きたものがありますから。

ワールドワイドリリースが実現した『IMMORTAL RANDY RHOADS - THE ULTIMATE TRIBUTE』(2015年)と比べると、聴きやすさや安定感は今作のほうが勝るものの、繰り返し聴きたくなるかと言われるとそれはまた別の話。初期QUIET RIOT時代の楽曲を含むこと、サージ・タンキアンSYSTEM OF A DOWN)やトム・モレロRAGE AGAINST THE MACHINE)みたいにアクの強いアーティストを含むという点で、個人的には『IMMORTAL RANDY RHOADS - THE ULTIMATE TRIBUTE』のほうが好みかな。あくまで僕個人の視点ですが。

ただ、多くのHR/HMリスナーにとってはこの『RANDY RHOADS TRIBUTE』のほうが正義なんでしょうね。その理由も理解できますが。

過去にオジーバンドに在籍したジェイクが大切な「Crazy Train」のソロを崩しまくっていたり、ジョージ・リンチはジョージ・リンチのままだったり、クリス・インペリテリもクリス・インペリテリのままだったりと、まあ面白いっちゃあ面白いんですが、そんな中でランディに対する敬意がしっかりプレイに表れた山本恭司やダイムバッグ・ダレルのソロは、すべてを超越した正義感が伝わります。

シンガーに関しても、もうひとりふたり意外性の強い方が参加していたら、もうちょっと印象が変わったのかも。そもそも、オジーが歌う楽曲ですから、そこまで歌唱力/表現力の高いシンガーを必要するわけではないですから、アクの強さで勝負する人がいてもよかったんだけどな……というのも、ごく個人的な感想です。まあ、この4人(バズ、ロブ・ロック、ジョー・リン・ターナー、マーク・スローター)だと不思議と統一感も伝わったので、全然アリっちゃあアリなんですけどね。

先の『IMMORTAL RANDY RHOADS - THE ULTIMATE TRIBUTE』と違って日本限定作品ということもあり、現在は廃盤状態であり、サブスクでも聴くことができない代物。中古盤ショップを回れば意外と簡単に、かつ安価で入手できますので、気が向いたらチェックしてみてはどうでしょう。

 


▼V.A.『RANDY RHOADS TRIBUTE』
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2022年2月 9日 (水)

ACCEPT『STALINGRAD』(2012)

2012年4月6日にリリースされたACCEPTの13thアルバム。日本盤は同年5月2日発売。

前作『BLOOD OF THE NATIONS』(2010年)から1年8ヶ月ぶり、アメリカン人シンガーのマーク・トーニロ(ex. T.T. QUICK)を迎えた新編成での第2弾アルバム。マーク、ウルフ・ホフマン(G)、ハーマン・フランク(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・シュヴァルツマン(Dr)という前作と同じメンバー、プロデューサーもアンディ・スニープ(ARCH ENEMYJUDAS PRIESTMEGADETHTESTAMENTなど)と前作から引き続きと、ほぼ成功が約束されたような布陣で制作。本国ドイツで最高6位、アメリカでは名作『METAL HEART』(1985年。最高94位)以来27年ぶりとなるTOP100入り(81位)を果たしました。

前作の時点で80年代のACCEPTを踏襲しつつもマークらしさをふんだんに取り入れた作風でしたが、今作ではそのスタイルにより磨きがかかり、バンドとしても非常に脂が乗った状態に。かつメロディアスさも前作以上の仕上がりで、メロディアスなパワーメタルとしては最高峰と言える完成度ではないでしょうか。アルバム冒頭を飾るドラマチックなファストチューン「Hung, Drawn An Quartered」からミドルヘヴィ「Stalingrad」への流れも完璧で、以降も緩急に富んだ構成で聴き手を惹きつけ続けます。

個人的ピークは、アルバムのおへそ部分(M-5)に配置されたメロウなミドルチューン「Shadow Soldiers」。この曲で聴くことができるウルフ・ホフマン(G)の流麗なギターソロは圧巻の一言で、これを聴くためだけに本作を手に取っても間違いじゃないくらい。もちろん、そのほかの楽曲も出色の仕上がりで、同曲の余韻を引きずりながら始まる「Revolution」や、これまでありそうでなかったタイプの「Against The World」の「Twiste Of Fate」、ボーナストラック(DVD付きデラックス盤と配信のみ)にしておくには勿体ない仕上がりの「Never Forget」、約7分半におよぶグルーヴィーなミドルナンバー「The Galley」と聴きどころ満載です。

前作には「Kill The Pain」のようなスローバラードが収録されていましたが、今回はバラードタイプの楽曲は皆無。しかし、そこに対して不満を一切感じさせないほど、本作の内容は非常に充実しているのです。アップチューンひとつとっても、どれもタイプが異なりますし、ミディアムテンポの楽曲もBPMやリズム、メロディラインやコーラスワークでひと工夫もふた工夫も施されており、どれひとつとして同じような楽曲が存在しない。マークの歌唱スタイルも基本的には前任のウド・ダークシュナイダー(現U.D.O.)を倣ったもので、ある意味では単調な歌唱法なのですが、そんな歌い方でもまったく飽きさせない内容になっているのだから、本当に楽曲が充実しているという表れなのでしょう。

この充実作を携えたワールドツアーを経て、バンドは次作『BLIND RAGE』(2014年)でついに初の本国チャートで1位を獲得。アメリカでも過去最高の35位を記録したほか、UKチャートでも『RUSSIAN ROULETTE』(1986年)以来となるTOP100入り(85位)という快挙を成し遂げるのでした。

 


▼ACCEPT『STALINGRAD』
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2021年2月 1日 (月)

ACCEPT『TOO MEAN TO DIE』(2021)

本来1月は連続更新をストップしようと考えていたんですが、急に思い立って70年代前半から1991年まで、毎日1枚ずつその年にリリースされた作品から個人的に思い出に残るものをピックアップして紹介する形で、なんとかモチベーションをつなぐことができました。できることなら新譜中心に紹介していきたいという気持ちも強いんですが、たまにはこういう息抜きもいいな。気が向いたら1992〜2001年、2002年〜2011年みたいに10年区切りでまたやってみたいと思います。

さて、というわけで2月に入ったので新譜を中心にまた紹介していこうかなと。2021年最初の新譜紹介は、今年1月29日にリリースされたばかりのACCEPTのニューアルバムです。

前作『THE RISE OF CHAOS』(2017年)から約3年半ぶりの通算16作目、再々結成後5枚目のスタジオアルバム。前作のツアー後にオリジナルメンバーのひとり、ピーター・バルデス(B)が脱退するという一大事が発生しましたが、残された唯一のオリメンであるウルフ・ホフマン(G)は歩みを止めることなく、新たなベーシストとしてマルティン・モイックを迎えるのみならず、“3人目のギタリスト”としてフィリップ・ショウズを加えたトリプルギター/6人編成で新作制作へと臨みます。

『BLOOD OF THE NATIONS』(2010年)以降の4作品を手がけてきたアンディ・スニープ(ARCH ENEMYKILLSWITCH ENGAGEOPETHなど。最近ではJUDAS PRIESTの2ndギタリストとしてもツアーに参加)がプロデュースを手がける本作は、安心・安定の“ACCEPTらしいヘヴィメタル”を楽しめます。もはやウド・ダークシュナイダー(Vo)の影もちらつくことなく、“らしさ”が強く伝わるマーク・トーニロのボーカルも絶好調だし、前作から加わったクリストファー・ウィリアムズ(Dr)のドラミングも派手でパワフル。ギターが3人編成になった効果はレコーディング音源からはほぼ伝わりませんが、おそらく今後のツアーでその効果を発揮することになるはずなので、今回の評価からは割愛します。

冒頭2曲に圧倒的なファストチューン「Zombie Apocalypse」「Too Mean To Die」を並べることで掴みはバッチリ。その次に従来のACCEPTらしさが強調された「Overnight Sensation」……もうこの3曲だけで、本作が紛れもなく良作であることに気づくはずです。その後もドラマチックなギターフレーズが印象的な「No Ones Master」やACCEPTならではのシンガロングをフィーチャーしたヘヴィチューン「The Undertaker」、ノリの良い「Sucks To Be You」、ライブで聴いたらギター3人の効果がより際立つはずの「Symphony Of Pain」など、緩急に富んだ構成で飽きさせません。

かと思えば、終盤には哀愁漂うバラード「The Best Is Yet To Come」、グルーヴィーなシャッフルビートが心地よい「How Do We Sleep」といった変化球が登場。場の空気がピリッとしたあとに、王道のファストチューン「Not My Problem」、エキゾチックなギターフレーズとクラシックの名曲からの引用にACCEPTの真髄が透けて見えてくるインスト「Samson And Delilah」で締めくくり。全11曲で50分強というボリュームもちょうど良い、2021年の幕開けにふさわしい傑作と言えるのではないでしょうか。

コロナの影響もあってか、リリース日が当初の1月15日から2週間後ろ倒しとなり、話題性的には同日発売のMSGなどに押され気味かもしれません。しかし、そのMSGの新作にも負けず劣らずの「メタルファン必聴の1枚」だと断言したくなる、そんな本作。ここ最近の「最近作こそベスト」を更新し続けるACCEPTの男気、大音量で満喫してください。

 


▼ACCEPT『TOO MEAN TO DIE』
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2020年9月 6日 (日)

U.D.O. & Das Musikkorps der Bundeswehr『WE ARE ONE』(2020)

2020年7月17日にリリースされたU.D.O.の17thアルバム(でいいのかな?)。日本盤は同年7月22日に発売されています。

前作『STEELFACTORY』(2018年)からほぼ2年ぶりに発表された本作は、通常のオリジナルアルバムとは趣向の異なる内容。アルバム全編にわたりドイツ連邦軍軍楽隊(Das Musikkorps der Bundeswehr)とのコラボレーションが展開されており、曲作りとアレンジをバンドと軍楽隊のクリストフ・シャイブリング中佐が担当し、さらにACCEPT時代の盟友ピーター・バルテスと、ACCEPTのみならずU.D.O.でも活動をともにしたステファン・カウフマン、ドイツ軍の作曲家たちも作曲に参加した、企画色が強く豪華な作りなのです。

ミディアムテンポ中心の曲作りは従来のU.D.O.らしいものですが、そこに軍楽隊の演奏が加わることで、楽曲の持つドラマチックさがより強調され、さらにへヴィメタルの重厚感と管楽器やストリングスなどの生楽器の繊細さの融合から生まれる躍動感に胸を打たれる。オーケストラとメタルの融合というと、最近ではMETALLICA『S&M2』(2020年)が思い出されますが、それとも違ったテイスト……オーケストラ曲としても成立する構造を持つ楽曲の数々に、新たな可能性を感じずにはいられません。

そのドラマチックさを強調するために、またU.D.O.らしい(いや、ある意味ACCEPTらしい?)シンガロングのパートにはバンドメンバーのみならず女性コーラスまで加えられている。さらには、「Blindfold (The Last Defender)」のように女性ボーカルがリードを取ることもあるし、「Neon Diamond」みたいにウド・ダークシュナイダー(Vo)とデュエットすることもある。こういう柔軟さ、繊細さが加わることで、ただ男臭さ一辺倒だった従来のスタイルに幅を持たせることにも成功しています。

楽曲の内容的には気候変動や環境汚染、さらには難民問題など近年のドイツ、さらには世界各国で直面している社会問題を扱ったものばかり。中には東西ドイツ統一から30年を祝う「Rebel Town」のような楽曲も用意されており、そういった面からもこのコラボレーションが意味することが伝わるし、さらに「伝えたいこと」をわかりやすい形、伝わりやすい形にすることでより幅広い層に届けようという強い意思も感じられます。

全15曲で約75分という、アナログ盤だったら2枚組確実の大作ですが、2組のコラボレーションからこれだけたくさんのメッセージ/曲が生まれたという点においては素晴らしさを感じずにはいられません。すべてが歌モノではなく、「Blackout」のようなドラマチックなインストナンバーも用意されているので、意外と最後まで楽しみながら聴けてしまうのではないでしょうか。1日に何度もリピートするような気軽さを持った作風ではありませんが、じっくり腰を据えて向き合いたい力作であり、ウド・ダークシュナイダーのACCEPT〜U.D.O.の集大成とだと力説したいと思います。

 


▼U.D.O. & Das Musikkorps der Bundeswehr『WE ARE ONE』
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2020年9月 5日 (土)

ACCEPT『RESTLESS AND WILD』(1982)

1982年10月にリリースされたACCEPTの4thアルバム。本国ドイツやヨーロッパ諸国での発売から遅れて1983年には、アメリカや日本でも発売されています。

前作『BREAKER』(1981年)で“突き抜ける”一歩手前まで到達したACCEPTが、本作によりついに“突破”。ワールドワイドな人気を獲得する足がかりとなる成功を収めることになります。実際、本作はイギリスで初のTOP100入り(最高98位)、スウェーデンで最高7位という数字を残し、本国より先に小ブレイクを果たすわけです。

まあ、その理由もアルバムを聴けばよくわかりますよね。オープニングの「Fast As A Shark」のカッコよさといったら、何ものにも変えがたいものがありますし。冒頭、いきなり牧歌的なドイツ民謡が始まり「あれ、レコード(もしくはCD)間違えた?」と思わせておいて、レコードを止めるスクラッチ音とウド・ダークシュナイダー(Vo)の金属的なシャウト、スピード感のあるメタルサウンドへとなだれ込む。最高のオープニングじゃないですか。曲自体も最高のシンガロングパート(サビ)があり、ギターソロもツインリード含め非常にわかりやすいフレーズ満載。これにハマれなかったら、あなたにはへヴィメタルは向いていません!と断言できるくらい、王道中の王道。リリースから38年(!)経った今聴いても、その魅力はまったく色褪せていません。

続くタイトルトラック「Restless And Wild」の重量感と男臭さといい、「Neon Nights」の男泣き感、「Flash Rockin' Man」のロックンロールテイスト、エンディングでのロシア民謡を彷彿とさせるシンガロングが魅力の「Princess Of The Dawn」における最後のブツ切り(ここは賛否分かれますが、「Fast As A Shark」でのオープニングを考えれば、まあ納得の構成かな。でも、できればスタジオ版フルバージョンも聴いてみたい!)。すべてが名曲とは言い難いものの、全体を通して聴いたときに平均点以上の仕上がりと感じられる内容ではないでしょうか。

そういう意味では、ワールドワイドなメジャーバンドへと駆け上がる前に見せる、最後のB級感満載の1枚と受け取ることもできるかな。もちろんこれは良い意味でのB級感ですが。彼らはここから、続く『BALLS TO THE WALL』(1983年)で初の本国TOP100入り(最高59位)を果たしただけでなく、全米74位(ゴールドディスク獲得)という成功を収めることになります。

僕が本作に初めて触れたのは、アナログからCDに移行した1990年。すでにバンドが解散してからでした。『METAL HEART』(1985年)以降はリアルタイムで聴いていたものの、なかなか手が伸びずにいた本作、もっと早くに聴いておけばよかったと何度思ったことか(田舎のレンタル店にレコードもCDも置いてなかったから仕方ないんだけど)。今はこうやってストリーミングで手軽に楽しめるなんて、本当にいい時代になりましたね(遠い目)。

 


▼ACCEPT『RESTLESS AND WILD』
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2020年5月 3日 (日)

ACCEPT『BLOOD OF THE NATIONS』(2010)

2010年8月下旬にリリースされたACCEPTの12thアルバム。日本盤は同年9月初頭に発売されました。

二度目の解散を迎える直前に発表された前作『PREDATOR』(1996年)から14年7ヶ月ぶり、2005年のウド・ダークシュナイダー(Vo)を含む黄金期ラインナップによる期間限定復活を経て、新たにアメリカン人シンガーのマーク・トーニロ(ex. T.T. QUICK)を迎えた新編成による二度目の正式再結成後最初のオリジナルアルバム。本国ドイツでは7thアルバム『RUSSIAN ROULETTE』(1986年)以来となるTOP10入り(最高4位)、アメリカでも8thアルバム『EAT THE HEAT』(1989年)以来のチャートイン(最高187位)を果たす、最高のカムバック作となりました。

レコーディング時のメンバーはマークのほかウルフ・ホフマン(G)、ハーマン・フランク(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・シュヴァルツマン(Dr)という、マーク以外は2005年復活時の面々。楽曲・サウンド的には80年代の黄金期幕開けを飾る4thアルバム『RESTLESS AND WILD』(1982年)から先の『RUSSIAN ROULETTE』までのACCEPTをなぞった、誰もが納得する「そうそう、これ!」感の強い良曲がずらりと並びます。基本的にはミドルテンポ中心ですが、適度にアップチューンも用意され、70分前後におよぶ長尺ながらも最後まで飽きずに楽しむことができる仕上がりです。

気になるマークの歌声ですが、パッと聴いた感じではウドの雰囲気を持った声質で、『EAT THE HEAT』におけるデヴィッド・リース(Vo)のときみたいな違和感はほぼないかと思います。事実、リードトラック「Teutonic Terror」のMVで初めてマークのボーカルパフォーマンスを耳にしたとき、「モノマネかよ!」と驚きを通り越して苦笑したくらいですから。

もちろん、全編において完全なるモノマネで通すことなく、例えばメロウな要素や歌い上げるようなメロディを持つ楽曲では、哀愁味漂う男臭い歌声を聴かせてくれます。特に「Kill The Pain」みたいなスローバラードでは、ウルフのギターソロ同様に“泣き”まくっており、個人的には好印象。と同時に、しっかり聴き込めば彼のボーカルは歌唱スタイルこそウドのそれに通ずるものがあるものの、金属的だったウドの声とは異なるねっとり感と湿り気を持った別モノであることにも気づかされるはずです。どっちが優れているとかどっちが良いとかそういう問題ではないですが、僕自身は非常に好みの声であることには間違いありません。

タイトルトラック「Blood Of The Nation」や先の「Kill The Pain」はもちろん、「Rollin' Thunder」や「Pandemic」などキラーチューン満載の本作は、9thアルバム『OBJECTION OVERRULED』(1993年)で果たせなかった第二の黄金期確立を見事に達成させた代表作のひとつと言えるでしょう。

それにしても、同郷の先輩SCOPRIONSが解散を決意したタイミングに、もうひとつのジャーマンメタルの雄が輝かしい復活を遂げた2010年は、振り返ってみると大きな節目の1年だったんですね。

 


▼ACCEPT『BLOOD OF THE NATIONS』
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2018年12月 4日 (火)

ACCEPT『SYMPHONIC TERROR - LIVE AT WACKEN 2017』(2018)

ACCEPTからピーター・バルデス(B)脱退、という衝撃的なニュースが届いたのが数日前。正直、ウルフ・ホフマン(G)とピーターはバンド創世記からACCEPTに関わってきたメンバーだけに、この2人さえいればACCEPTは安泰……そう信じてきただけに、本当に驚きました。

今回紹介するライブ作品は、そのピーター在籍時最後のアイテムとなります。2017年8月3日、ドイツ最大級のメタルフェス『WACKEN OPEN AIR』の初日公演でACCEPTが披露した、オーケストラとの共演ステージが2時間まるまる収められた2枚組CDと、同CDに映像版のBlu-ray or DVDを同梱したパッケージ作品です。

当日は3部構成のライブとなっており、第1部の5曲がACCEPTのみでのライブパフォーマンス。当日はまだリリース前だったニューアルバム『THE RISE OF CHAOS』(2017年)からの楽曲がいち早く披露されており、セットリスト的にも「Restless And Wild」以外はマーク・トニーロ(Vo)加入後の楽曲のみという、現地での人気ぶりを示す内容です。正直、「Restless And Wild」よりもカッコいいと思える楽曲ばかりが並ぶし、前任のウド・ダークシュナイダーそっくりと言われてきたマークのボーカルも、もはや比較云々が気にならないくらい“そこにあるのが当たり前”になっているし。うん、すごく良いと思います。

第2部はウルフが2016年にリリースしたソロアルバム『HEADBANGERS SYMPHONY』からの楽曲を中心とした、全6曲のクラシックカバー。ここからオーケストラが加わり、ムソルグスキー「禿山の一夜」、ベートーヴェン「スケルツォ」「悲愴」、モーツァルト「交響曲第40番」などといった誰もが一度は耳にしたことのあるクラシックの名曲が、ACCEPTの演奏+オーケストラという極上の編成でメタリックに演奏されていきます。正直、この手のインストって個人的には退屈に感じることが多いのですが、これは素直に楽しめました。それもこれも、ACCEPTというバンド自体が80年代からクラシックの名フレーズを自身の楽曲に取り込んできたことも大きいのでしょう。

そして、第3部がACCEPT with Orchestraということで、ACCEPT新旧の名曲群がオーケストラを加えたダイナミックなアレンジで披露されていきます。ここでも「Princess Of The Dawn」「Breaker」「Fast As A Shark」などといった80年代の代表曲に加え、「Stalingrad」「Dying Breed」などマーク加入後の楽曲も織り交ぜられたオールタイムベスト選曲で、再々始動後のACCEPTの楽曲がドイツのメタルファンの間にしっかり根付いていることを実感させられました。

やはり圧巻なのは、クライマックスの「Fast As A Shark」から「Metal Heart」へと続く流れと大ラスの「Balls To The Wall」、そしてその間に挟まれたマーク加入後の「Teutonic Terror」という4曲でしょう。正直、トラックリストを見たときは「Teutonic Terror」だけ浮いてる?と思ったけど、通して聴いたらそんな違和感なんて皆無。観客の盛り上がりもそのほかの楽曲と変わらないし、偏見を持ってるのって実は日本人くらいなんじゃないか……そんな気すらしてきました。

本当は映像とともに大音量で楽しみたい作品ですが、ライブアルバムとしてもメタル史に残したい名演集だと思うので、こういう形で取り上げることにしました。いや、まずはストリーミングで音源を堪能して、そこから映像に手を出してみてはどうでしょう。必然的にCDも付いてきますし、メタルファン一家に1セットあっても不思議じゃない力作です。



▼ACCEPT『SYMPHONIC TERROR - LIVE AT WACKEN 2017』
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