ACCEPT『STALINGRAD』(2012)
2012年4月6日にリリースされたACCEPTの13thアルバム。日本盤は同年5月2日発売。
前作『BLOOD OF THE NATIONS』(2010年)から1年8ヶ月ぶり、アメリカン人シンガーのマーク・トーニロ(ex. T.T. QUICK)を迎えた新編成での第2弾アルバム。マーク、ウルフ・ホフマン(G)、ハーマン・フランク(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・シュヴァルツマン(Dr)という前作と同じメンバー、プロデューサーもアンディ・スニープ(ARCH ENEMY、JUDAS PRIEST、MEGADETH、TESTAMENTなど)と前作から引き続きと、ほぼ成功が約束されたような布陣で制作。本国ドイツで最高6位、アメリカでは名作『METAL HEART』(1985年。最高94位)以来27年ぶりとなるTOP100入り(81位)を果たしました。
前作の時点で80年代のACCEPTを踏襲しつつもマークらしさをふんだんに取り入れた作風でしたが、今作ではそのスタイルにより磨きがかかり、バンドとしても非常に脂が乗った状態に。かつメロディアスさも前作以上の仕上がりで、メロディアスなパワーメタルとしては最高峰と言える完成度ではないでしょうか。アルバム冒頭を飾るドラマチックなファストチューン「Hung, Drawn An Quartered」からミドルヘヴィ「Stalingrad」への流れも完璧で、以降も緩急に富んだ構成で聴き手を惹きつけ続けます。
個人的ピークは、アルバムのおへそ部分(M-5)に配置されたメロウなミドルチューン「Shadow Soldiers」。この曲で聴くことができるウルフ・ホフマン(G)の流麗なギターソロは圧巻の一言で、これを聴くためだけに本作を手に取っても間違いじゃないくらい。もちろん、そのほかの楽曲も出色の仕上がりで、同曲の余韻を引きずりながら始まる「Revolution」や、これまでありそうでなかったタイプの「Against The World」の「Twiste Of Fate」、ボーナストラック(DVD付きデラックス盤と配信のみ)にしておくには勿体ない仕上がりの「Never Forget」、約7分半におよぶグルーヴィーなミドルナンバー「The Galley」と聴きどころ満載です。
前作には「Kill The Pain」のようなスローバラードが収録されていましたが、今回はバラードタイプの楽曲は皆無。しかし、そこに対して不満を一切感じさせないほど、本作の内容は非常に充実しているのです。アップチューンひとつとっても、どれもタイプが異なりますし、ミディアムテンポの楽曲もBPMやリズム、メロディラインやコーラスワークでひと工夫もふた工夫も施されており、どれひとつとして同じような楽曲が存在しない。マークの歌唱スタイルも基本的には前任のウド・ダークシュナイダー(現U.D.O.)を倣ったもので、ある意味では単調な歌唱法なのですが、そんな歌い方でもまったく飽きさせない内容になっているのだから、本当に楽曲が充実しているという表れなのでしょう。
この充実作を携えたワールドツアーを経て、バンドは次作『BLIND RAGE』(2014年)でついに初の本国チャートで1位を獲得。アメリカでも過去最高の35位を記録したほか、UKチャートでも『RUSSIAN ROULETTE』(1986年)以来となるTOP100入り(85位)という快挙を成し遂げるのでした。
▼ACCEPT『STALINGRAD』
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