AC/DC『DIRTY DEEDS DONE DIRT CHEAP』(1976)
1976年9月20日に本国オーストラリアでリリースされた、AC/DCの3rdアルバム。
海外では同年11月12日に、ヒプノシスが手がけた現行のジャケットに差し替えて、『HIGH VOLTAGE』(1976年)に続く2作目として発表されました。ただ、アメリカでは当時発売されておらず、ボン・スコット(Vo)の死去をきっかけに1981年に入ってから発売され、『BACK IN BLACK』(1980年)の大ヒット(全米4位)に続いて最高3位を記録しています。
オーストラリア盤とインターナショナル盤とでは収録内容が一部異なりますが、ここでは現行のインターナショナル盤について話を進めていきます。
ボン・スコット、アンガス・ヤング(G)、マルコム・ヤング(G)、マーク・エヴァンス(B)、フィル・ラッド(Dr)という初期のメンバーがようやく安定したタイミングで、楽曲の勢いや充実度も一気に高まったのが本作。ライブには絶対に欠かせない、多くのアーティストによってカバーし続けられているタイトルトラックや、「Rocker」「Problem Child」といった以降のライブでの定番曲を複数含み、ハードロックならではの派手なサウンドとパンクロックにも通ずる精神性が表れた歌詞などが、当時の若者に支持されたのも理解できる、とにかく大音量で楽しみたい内容です。
かと思えば、アナログB面(M-6以降)は「There's Gonna Be Some Rockin'」みたいなノリノリのブギー、7分近くにもおよぶパンク抒情詩のようなドラマチックなロックンロール「Ain't No Fun (Waiting Round To Be A Millionaire)」、地味ながらも味わい深いスローブルース「Ride On」、黒っぽいノリを持つグルーヴィーなロックンロール「Squealer」と変化球揃い。前半(M-1〜5のアナログA面)のストロングスタイルと比較すると、バンドとして創作意欲がかなり高まったことか若干の迷いも見せていることが窺える。ここでいろいろ試した結果が、続く『LET THERE BE ROCK』(1977年)での開き直りにつながるのかもしれません。
ハードロックとはいっても、本作まではロックンロール色のほうがまだまだ濃厚。バンドとしてより強靭なアンサンブルを次作で獲得することで、一気に化けていくと考えると、この充実ぶり/前のめり感が過渡期のようにも映るわけです。もちろん、良い意味でですけどね。
日本では『悪事と地獄』の邦題で親しまれてきた本作。ほかのヒット作と比較すると、どうしても地味な印象がありますが(ヒプノシスによる新たなアートワークの影響も強いのかな)、アメリカでは現在までに600万枚以上を売り上げ、『BACK IN BLACK』の2,500万枚、『HIGHWAY TO HELL』(1979年)の700万枚に続くセールスを誇る代表作のひとつとして愛され続けています。
▼AC/DC『DIRTY DEEDS DONE DIRT CHEAP』
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