2017/11/01

AEROSMITH『ROCK IN A HARD PLACE』(1982)

AEROSMITHが1982年夏に発表した通算7枚目のスタジオアルバム。前作『NIGHT IN THE RUTS』(1979年)制作途中でジョー・ペリー(G)が脱退し、さらに本作制作前にはもうひとりのギタリスト、ブラッド・ウィットフォード(G)も脱退して、オリジナルメンバーはスティーヴン・タイラー(Vo)、トム・ハミルトン(B)、ジョーイ・クレイマー(Dr)のみとなってしまいました。ジョーの後釜にはジミー・クレスポ、ブラッドの後任にはリック・デュファイを迎えて完成させたのが、この『ROCK IN A HARD PLACE』という作品です。

プロデュースには前々作『DRAW THE LINE』(1977年)までのバンドの代表作に携わったジャック・ダグラス、そしてジョン・ボン・ジョヴィ(BON JOVI)のいとこトニー・ボンジョヴィが携わり、大半の楽曲をスティーヴンとジミーの共作で完成させています。前作『NIGHT IN THE RUTS』はメンバーのドラッグ問題やジョーの制作への関与が希薄だったこともあり、3曲もカバー曲が含まれていましたが、本作は全10曲中カバーが1曲。しかもジャズのスタンダード「Cry Me A River」をセレクトするという、非常に興味深い内容となっています。

いわゆる世間の評価的には本作、あまり高くないのですが、改めて聴いてみると悪くないんですよ。むしろ前作『NIGHT IN THE RUTS』や、オリジナル編成が復活した次作『DONE WITH MIRRORS』(1985年)よりも楽曲制作面で工夫が施されているんじゃないかと思っています。起死回生を狙った攻めのファストチューン「Jailbait」は単調と言われたらそれまでですが、僕は嫌いじゃないし、続く「Lightning Strikes」もシンセを導入した非常にキャッチーな作風でなかなかの出来だと思いますし。先の「Cry Me A River」のカバーも非常に“らしく”て好印象。当時のテクノロジーを彼らなりに駆使したインタールード「Prelude To Joanie」から続く「Joanie's Butterfly」の流れも実はかなり彼ららしい仕上がりなんですよね。

そしてワイルドなタイトルトラック「Rock In A Hard Place (Cheshire Cat)」は初期のエアロを彷彿とさせるし、ヘヴィな「Jig Is Up」、ブルースハープをフィーチャーしたブルージーなバラード「Push Comes To Shove」と、昔からのファンなら絶対に響く曲が豊富なのに、結局「ジョーがいない、ブラッドがいない」という理由で正当な評価が下されない。本当に勿体ない、不遇の1枚だと思っています。

もちろん、本作を『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)『ROCKS』(1976年)といった傑作たちと並べて「これは名作です」なんて無理矢理宣言するつもりはありません。ただ、オリメンじゃないからといってスルーするには出来が悪くないなんじゃないか、と言いたいだけ。変なレッテルに惑わされず、まずは無心で本作と接してみることをオススメします。



▼AEROSMITH『ROCK IN A HARD PLACE』
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投稿: 2017 11 01 12:00 午前 [1982年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/07/28

AEROSMITH『NIGHT IN THE RUTS』(1979)

1979年晩秋に発表された、AEROSMITH通算6作目のスタジオアルバム。前作『DRAW THE LINE』(1977年)から2年ぶりの新作となりますが、その間には初の2枚組ライブアルバム『LIVE! BOOTLEG』(1978年)のリリースもあったので、意外と久しぶりという感じはないかもしれませんが、この2年というのはこのバンドにとって生死を分ける重大なタイミングでした。

ご存知のとおり、この頃のAEROSMITHはメンバーの多数がドラッグまみれ。これによりメンバーの人間関係も悪化していくわけです。また、ドラッグの悪影響により、レコーディングも思うようには進まない状況に。スティーヴン・タイラー(Vo)が思うように歌えなかったり歌詞が書けなかったりで、レコーディングは長期化。ジョー・ペリー(G, Vo)もスティーヴンとの関係悪化のため、スティーヴンがスタジオにいない間にギターをレコーディングし、自分の仕事が終わればすぐにスタジオを後にするという、バンドとしての機能がほぼ停止した状態の中無理やり制作が続けられました。

また、前作までの黄金期を支えたジャック・ダグラスと決別し、新たにゲイリー・ライオンズをプロデューサーに迎えて制作。心機一転を狙ったのでしょうが、アルバムはこれも思うように機能していないように感じる仕上がりです。

1曲1曲はなかなかの出来だと思うのですが、全9曲中3曲がカバーというのはいただけない。間違いなくスティーヴンが歌詞を書けなかった、あるいはタイラー/ペリーのソングライティングチームが破綻したことが大きく影響していると思われます。

本作から唯一シングルカットされたのが、THE SHANGRI-LASのカバー「Remember (Walking In The Sand)」。原曲まんまですが、これはこれで悪くない。「Reefer Head Woman」は1940年代にTHE BUSTER BENNETT TRIOが発表したブルースソング、「Think About It」はジミー・ペイジ在籍時のTHE YARDBIRDSのカバーとなります。

で、気になるオリジナル曲ですが、前作『DRAW THE LINE』や前々作『ROCKS』(1976年)にあったような“ヒリヒリした緊張感”が若干弱いかなと。タイラー/ペリー名義による「Chiquita」「Three Mile Smile」「Bone To Bone (Coney Island White Fish Boy)」あたりには前作までの片鱗を感じますが、今でもライブで披露される機会が多めの「No Surprize」はこれまでだったらアルバムのオープニングを飾るような1曲ではないよなと。このあたりにも、当時の彼らのちぐはぐさ/混乱ぶりが感じられます。結局、曲順があんまり良くないのかな。

結局本作制作途中でジョーがバンドを脱退。ソングライティングの共作者としておなじみのリッチー・スパや後に正式加入するジミー・クレスポが穴埋めをして完成までたどり着くのでした。ちなみに、先の「Three Mile Smile」でリードギターを手がけたのがジミー・クレスポ。なんだ、ジョーじゃないのかよ、と。

本作は全米14位、100万枚を売り上げますが、スティーヴンのドラッグ癖は治ることなく、『DRAW THE LINE』までギリギリのバランスを保っていたバンドはジョー脱退を機に、崩壊のスピードを速めていくのです。



▼AEROSMITH『NIGHT IN THE RUTS』
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投稿: 2017 07 28 12:00 午前 [1979年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/04/16

AEROSMITH『LIVE! BOOTLEG』(1978)

1978年にリリースされた、AEROSMITHキャリア初のライブアルバム。CDでは1枚のディスクにまとまってますが、アナログ盤は当時2枚組でリリースされています。

音源の大半は1977〜78年に、当時の最新作『DRAW THE LINE』(1977年)に伴うツアーで録音されたもの。つまり、バンドとしてはドラッグまみれで臨界点に達しつつあるか、達してしまってあとは落ちていくだけ……という絶妙なタイミングのライブなのです。選曲も1st『AEROSMITH』(1973年)から『DRAW THE LINE』までのベストセレクションといった内容。実際のライブのセットリストとは異なるものの、「Back In The Saddle」からヘヴィに始まり、そのままサイケデリックな「Sweet Emotion」へと流れていく構成はさすがの一言。演奏が進むに連れて演者の熱量が一気に上がり、それに伴いテンポも上がっていくという生々しさは、現代の“クリック重視”のライブとは一線を画するものがあります(ってこれ、現在のエアロを否定しているわけじゃないですよ。念のため)。

また本作にはスタジオアルバム未収録のオリジナル曲「Chip Away The Stone」やTHE BEATLESのカバー「Come Together」も収録。スタジオ音源は7インチアナログ盤やコンピ盤でしか聴けない貴重な楽曲を、当時のエアロらしいルーズだけど尖った歌と演奏で楽しむことができます。

さらに、本作の聴きどころのひとつとして、アナログ盤でいうところのD面(ディスク2のB面)、CDだとトラック14以降にとても貴重な音源が含まれています。それは、本作で最古の音源となる1973年のライブから「I Ain't Got You」「Mother Popcorn」の2曲。前者はジミー・リードやYARDBIRDSなどで知られるブルースのスタンダード、後者はジェイムズ・ブラウンのそれぞれカバーです。デビュー間もない頃のエアロはこういったカバー曲をかなりライブで披露しており、その音源はブートレッグなどでも確認することができます。ギリギリのところで正気を保っていた1977〜78年のエアロと、メジャーデビューして明るい未来を思い浮かべていた1973年のエアロ。これを並列で語っていいものか気になりますが、あの時点でこういう形でバンドの原点を思い出させてくれるのはエアロにとっても、そしてファンにとっても非常に意味のあることだったのではないでしょうか。

ちなみに、この2曲の後には1978年のライブから「Draw The Line」へとなだれ込むのですが、実はアルバムジャケットやブックレットには本来この曲はクレジットされていません。つまり、シークレットトラックとして収められているわけですね。これ、アルバムタイトルからもわかるように、当時横行していた海賊盤(Bootleg)に真っ向から対抗したもので、このクレジット漏れも“海賊盤によくあること”としてバンド側がちょっとした遊び心で手がけたんだとか。

このアルバムについては語りたいことが山ほどあるはずなのに、だけど無駄なことはあまり語りたくない気持ちもある。自分のロック人生を最初に変えてくれた、それくらい大切な1枚なんです。もし「AEROSMITHで一番好きなアルバムは?」と質問されたら、間髪入れずにこのアルバムを挙げることでしょう。



▼AEROSMITH『LIVE! BOOTLEG』
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投稿: 2017 04 16 12:00 午前 [1978年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/04/12

STEVEN TYLER with THE LOVING MARY BAND: LIVE IN JAPAN 2017@日本武道館(2017年4月11日)

正直、スティーヴン・タイラーのソロアルバム『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』がリリースされると決まったときはネガティブな感情しかなかったし、聴いてみたら実際良い内容だったけども、リリースから時間が経った今思うのは「やっぱりなぁ……」というどうしようもなくネガティブな気持ち。この感情を払拭するには、やはり4月に決定したソロ来日公演に行くしかないよな……ということで、発表された直後にチケットを確保したのでした。

武道館でAEROSMITH。正確にはエアロではなくスティーヴンのソロなんだけど、武道館で彼のパフォーマンスを観るのは、おそらく1994年の『GET A GRIP TOUR』以来。あのときは武道館で10公演近くやったり、横浜アリーナでもやったりと、本当に大成功ツアーだったよね。ちょうど春先だったんじゃなかったっけ? 僕も武道館に3回くらい足を運び、横浜アリーナにも行った記憶があるなぁ。

あいにくの雨の中、近場で18:40まで取材をしており、正直「ああ、オープニングには間に合わないなぁ……」と思っていたら、開演が20分近く遅れてくれたことで、余裕を持って席に着くことができました。1階席南東A列。限りなく南(真正面)寄りの最前列。最高じゃないですか。ブルースやカントリーに混ざりジョニー・キャッシュ「One」(U2のカバー)が流れた……と思ったら会場暗転。スクリーンにはスティーヴンのインタビュー映像などが映され、気付いたらステージ上にはバンドメンバーの姿が。そして、これまで何万回と聴いてきたあのベースのフレーズが……そう、1曲目はエアロの「Sweet Emotion」。ギター2人、リズム隊(ともに女性)という、バンジョー、そしてギターやハーモニカ、ピアノなどをプレイするマルチプレイヤー(女性)からなるTHE LOVING MARY BANDを携えたタイラー翁(あえてこう呼びたい)は、どこからどう見ても僕らがよく知ってる、あの“AEROSMITHのスティーヴン・タイラー”そのものでした。

さて、ここからはざっくばらんに感想を書いていきます。

僕が観たものは思ってた以上に、完全にAEROSMITHでした。正確には「AEROSMITHっぽい」、もっと正確に言うなら「タイラー翁が有能な若手ミュージシャンたちと、AEROSMITHの名曲たち(比較的ソフト路線)を愛でながら、時々ビートルズやらジャニスやらツェッペリンをカバーして、その合間にカントリー調のオリジナル曲を申し訳程度に演奏する宴」(やたら長い)という内容。そりゃあ悪い訳がない。当初思っていた以上に良かったし楽しかったです。

“AEROSMITHの名曲たち(比較的ソフト路線)”ということで、カバーされたのは80年代後半〜90年代の「売れ線ヒットシングル連発」期の楽曲ばかり。それが良い悪いではなく、ソロアルバムでやろうとしていることにもっとも近かった。だからこのセレクトは間違いないわけです。そこに「Sweet Emotion」と「Walk This Way」が入ることで、ライブにメリハリをつける。なんなら「Train Kept A Rollin'」もあるし、どうせカバーやるならツェッペリンもやっちゃおう!ってことで、「Walk This Way」からメドレー的に「Whole Lotta Love」までやっちゃう(しかもそれでライブを締めくくる)。タイラー翁が心のそこから楽しもうと思って、このツアーを計画したことがなんとなく理解できました。

バンドメンバーも素晴らしかった。6人中半分、しかもリズム隊が女性っていうのも良かったし、コーラス(主にベーシストとマルチプレイヤーの女性2人)もコーラスの域を超えたうまさ。で、タイラー翁がちゃんと彼女たちの見せ場を作ってあげたのも良かったと思う。

タイラー翁の調子はまずまず。以前と比べれば声は比較的出てたほうだと思います。高音が出切らずに要所要所ごまかすパートもあったけど、決めるべき箇所でちゃんと決めてたからしっかり歌えているように見えた(聞こえた)し、特に大きな問題なし。なにより現在69歳なのにここまでフロントマン然としたじいちゃん、数える程しかいないよね。圧巻です。

セトリは多分大阪とあまり変わらないのでは。序盤、日本のみでリリースされたソロ曲「Love Lives」(キムタク版ヤマトの主題歌)に客が無反応だったのには苦笑い。あと、エアロでもやってたことがある「Home Tonight」〜「Dream On」のメドレーはズルいし、ツェッペリン「Whole Lotta Love」の完コピは微笑ましかった。完コピといえば、バンドメンバーのエアロナンバーのコピー具合も目から鱗。散々聴き飽きた楽曲も、この編成で聴くのは悪くなかったよ。というか、愛が感じられましたし。と同時に、自分が思ってる以上に自分は今AEROSMITHのことを求めているんだと実感できた一夜でした。別にこのライブを観て「やっぱりスティーヴンの隣にはジョー・ペリーがいなくちゃ!」とか文句を言いたいわけじゃなくて、これはこれとして理屈抜きで楽しめました。

1時間45分くらいと、AEROSMITHの通常公演と比べたら若干短いけど、この程よさが今回はちょうど良かったと思います。これでソロアルバムを枚数重ねていったらソロ曲が増えて、ライブ自体が長くなりそうですしね。


[SETLIST]
01. Sweet Emotion [AEROSMITH]
02. Cryin' [AEROSMITH]
03. I'm Down / Oh! Darling [THE BEATLES]
04. Come Together [THE BEATLES]
05. Love Lives
06. Jaded
07. Love Is Your Name
08. I Make My Own Sunshine
09. Mercedes Benz [JANIS JOPLIN] / Piece Of My Heart [ERMA FRANKLIN]
10. Livin' On The Edge [AEROSMITH]
11. We're All Somebody From Somewhere
12. What It Takes [AEROSMITH]
13. My Own Worst Enemy
14. Home Tonight / Dream On [AEROSMITH]
15. Train Kept A Rollin' [TINY BRADSHAW / AEROSMITH]
--ENCORE--
16. Janie's Got A Gun [AEROSMITH]
17. Only Heaven
18. Walk This Way [AEROSMITH] / Whole Lotta Love [LED ZEPPELIN]



▼STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』
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投稿: 2017 04 12 12:19 午前 [2017年のライブ, Aerosmith, Steven Tyler] | 固定リンク

2017/04/07

AEROSMITH『DRAW THE LINE』(1977)

前作『ROCKS』(1976年)は、その前の『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)が持つ全米11位を超える、全米3位という過去最高位を記録。この数字は1993年の『GET THE GRIP』が1位を獲得するまで破られることはありませんでした。それくらい強烈なインパクトを残し、“AEROSMITHここにあり”と高らかに宣言したのが『ROCKS』だったわけです。

がしかし。前回のレビュー終盤にも書きましたが、この頃になるとバンドは手にした大金をすべてドラッグに変換し、快楽に溺れていきます。いや、快楽に溺れるというよりも現実逃避すると言ったほうが正しいのかもしれません。バンドとしても、そしてひとりの人間としても『ROCKS』という作品で臨界点を迎え、そこを超えた先には何があるのか……この5枚目のオリジナルアルバム『DRAW THE LINE』からはその“片鱗”を垣間見ることができます。

バンドと盟友ジャック・ダグラスでプロデュースされた本作は、ニューヨーク近辺にある廃修道院で録音されたもの。いわゆるナチュラルエコーを多用したサウンドは、前作『ROCKS』で聞けた密度の高いヘヴィロックとも異なるものに仕上げられています。また楽曲自体も2nd『GET YOUR WINGS』(1974年)と3rd『TOYS IN THE ATTIC』の中間に位置する、シンプルなアレンジでロック&ブルースをストレートに表現したものが大半を占めます。

アルバムのオープニングを飾るタイトルトラック「Draw The Line」はオープンチューニングによるスライドギターが登場しますが、メインリフは6弦ベースで弾かれた(と思われる)太いサウンドで表現。ドラッグ漬けで人間としては最悪の状況だったにも関わらず、いや、そんな状況だったからこそ表現できたギリギリ感なのかもしれません。この危うさもまた“ロックそのもの”なんですよね。

ただ、その後は決してベストとは言い難い楽曲もちらほら登場します。初めてジョー・ペリーがリードボーカルを務めた「Bright Light Fright」や、バンドとしての新たな可能性を感じさせるドラマチックな「Kings And Queens」といった聴きどころもあるにはありますが、全体的にはあまりパッとしない内容というのが正直な感想。確かに「Critical Mass」も「Get It Up」も「Sight For Sore Eyes」も悪くないけど、前作までにあったキャッチーさは薄まっている。悪くいえば地味なんですよね。しかもラストはロバート・ジョンソンやエルヴィス・プレスリーで知られるブルーススタンダードのカバー「Milk Cow Blues」で締めくくり。この選曲も地味だし、ノッてるバンドならではのナイスなカバーとは言い難い。本当にどこまでも中途半端な1枚なんですよね。

だけど、聴き始めると不思議と最後まで通して聴いてしまう。そんな不思議な魅力があるのも、本作の面白いところ。きっとその魅力って……悲しいけど、“バンドが、いや人間が臨界点を超えたときにどうなるのか”を端的に表しているからなんでしょうね。そのすべてが、『DRAW THE LINE』というタイトル(「一線を引く」「境界を定める」「けじめをつける」以外にも、「コカインで線を引いてそれを吸う」という意味がある)に集約されているんだから、驚きを超えて怖さすら感じます。



▼AEROSMITH『DRAW THE LINE』
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投稿: 2017 04 07 12:00 午前 [1977年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/04/06

AEROSMITH『ROCKS』(1976)

『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)が全米11位まで上昇するヒット作となり、一流バンドの仲間入りを果たしたAEROSMITH。彼らは精力的なツアーへ経て、前作から1年で続く4thアルバム『ROCKS』を1976年5月にリリースします。

プロデュースは前作、前々作から引き続きジャック・ダグラスが担当。サイケながらも音の太い2nd『GET YOUR WINGS』(1974年)、楽曲の幅が一気に広がったキャッチーな3rd『TOYS IN THE ATTIC』を経てバンドが向かった先は、なんと“純度の高いヘヴィロック”。1音1音のヘヴィさは『GET YOUR WINGS』とは質感が異なり、今作のほうがより音の密度が高い印象を受けます。それはより大きな音で今作を聴いたときに、よりご理解いただけるのではないかと。ぜひ一度、ヘッドフォンではなくスピーカーを通して、爆音で聴き比べてみてください。本当に違うので。

オープニングを飾る「Back In The Saddle」の不穏なイントロ、その空気を切り裂くかのように響き渡るスティーヴン・タイラーのシャウト、あえて6弦ベースを使ってヘヴィさを表現したジョー・ペリーのプレイ、どれもが過去3作とは異なる気迫を感じさせます。続く「Last Child」はイントロでこそバラードかと思わせておいて、すぐに引きずるようなファンク&ヘヴィなロックへと一変。そこから間髪入れずに攻撃的なファストチューン「Rats In The Cellar」へと続きます。この曲も同じアップテンポなのに、前作における「Toys In The Attic」とはまったく異なる輝きを見せます。「Toys〜」がキラキラ輝く宝石だとしたら、「Rats〜」は鈍い光を放つ鉱石……というのは言い過ぎでしょうか。

もちろんその後も「Combination」「Sick As A Dog」といったラフでルーズなロックンロール、ヘヴィメタルと呼んでも差し支えのない「Nobody's Fault」、ハネ気味のリズムが心地よい元祖ファンクメタル「Get The Lead Out」、軽快かつストレートなロックチューン「Lick And A Promise」、エモーショナルなピアノバラード「Home Tonight」と名曲目白押し。前作とはカラーは異なるものの、今作も捨て曲なしのロックアルバムと断言できます。

地を這うようなリズム隊と、鋭いソロプレイを聴かせるジョー・ペリー&ブラッド・ウィットフォードのギタリストチーム、そこに激しいシャウトを乗せていくスティーヴン・タイラー。まさにここがAEROSMITHの臨界点と言わんばかりに、目が離せないほどの眩い光と危うさが同居しているのが、この『ROCKS』という傑作の魅力ではないでしょうか。“ロックってアブナイものなんだよ”というのを体現した、70年代を代表する1枚です。事実、この時期からメンバーはドラッグまみれだったようですしね……。



▼AEROSMITH『ROCKS』
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投稿: 2017 04 06 12:00 午前 [1976年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/04/05

AEROSMITH『TOYS IN THE ATTIC』(1975)

Geffen Records移籍以降の全スタジオ作品は紹介しておきながら、70年代のアルバムは2nd『GET YOUR WINGS』(1974年)止まりだったことに改めて気づいた今日この頃。スティーヴン・タイラーのソロ来日公演も近づいておりますし、ここらでひとつAEROSMITHの全アルバムレビューを完成させたほうがいいのではないかという気がしております。

ということで、手始めに1975年の出世作『TOYS IN THE ATTIC』から取り上げていきましょう。本作はAEROSMITH通算3作目のオリジナルアルバムで、「Sweet Emotion」(全米36位)、「Walk This Way」(全米10位)というヒットシングルを生み出しています。また、本作のヒットに導かれるように、1stアルバムからのシングル「Dream On」も再発されて全米6位というヒット曲になりました。

ミディアムテンポのヘヴィでサイケなロックンロールが中心だった前作『GET YOUR WINGS』から一変、本作では非常に軽やかかつハードなロックンロールを聞かせてくれます。オープニングのアップチューン「Toys In The Attic」の時点で、その違いは一聴瞭然。続く「Uncle Salty」は前作の流れにあるサイケデリックな香りのするロックナンバーですが、前作までとは違って“もったり”感が消え、より軽やかさが増している。それは3曲目「Adam's Apple」にも言えることで、この2曲は前作に入っていても不思議じゃないのにどこか違う次元に思えてしまう。プロデューサーも前作から引き続きジャック・ダグラスが務めているのに、どこか違って聞こえるのだから不思議なものです。

そして、本作がこれまでとは大きく違っていることを決定付けるのが「Walk This Way」「Sweet Emotion」、さらに「You See Me Crying」といった楽曲群です。「Walk This Way」でのファンキーなプレイ&サウンドは、のちのエアロにとって重要な要素になり、80年代にはヒップホップとの邂逅へと導く礎となります。「Sweet Emotion」でのサイケデリックな味付けは前作とはまた違ったものがあり、サイケさの中にも重心の低いゴリゴリしたサウンドが存在しており、バンドの体質がここまで変化したかと驚かされます。さらに「You See Me Crying」のような美しいピアノバラードが加わったことは、このバンドの楽曲の幅を一気に広げていくひとつのきっかけになるわけです。とはいえ、この曲を作った頃にはその20数年後に他人が書いたバラードで全米1位を獲得するとは、夢にも思ってないでしょうけどね。

この他にも軽快なブギー「Big Ten Inch Records」、イントロのアルペジオが印象的なポップロック「No More No More」、次作への片鱗を感じさせるヘヴィな「Round And Round」と楽曲のバラエティさが一気に加速していることが伺えます。完全に確変したことが伺えるし、そりゃヒットするわなと思わずにはいられない傑作。ここからエアロにとって最初の快進撃がスタートするわけです。



▼AEROSMITH『TOYS IN THE ATTIC』
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投稿: 2017 04 05 12:00 午前 [1975年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/01/08

個人的に気になるメタル系職業作家15選

先日KIX『BLOW MY FUSE』を紹介した際、知人が文中に登場したテイラー・ローズやボブ・ハリガンJr.といった職業作家に興味を持ったらしく、「デズモンド・チャイルドやホリー・ナイトあたりは調べたことあるんですが、メタル職業作家の存在すごく気になります」というコメントをいただきました。

実際、80年代後半以降、特にBON JOVIやAEROSMITHの大ヒット以降こういった職業作家の存在はメタル系アーティストにとっても欠かせない存在になっています。90年代に入ると、SCORPIONSやオジー・オズボーンといった大御所ですら採用し始めるわけですからね。それまでバンドの力だけですべてをまかなおうとしていたところ、「もっといい曲を!」というバンド自身の姿勢から積極的に、もしくはレコード会社からの圧力からイヤイヤこういったアクションに行動を移すようになったのかもしれません。

また、職業作家の楽曲をアーティストが取り上げるケースには幾つかのパターンがあり、


①作家が以前発表した楽曲をカバー。
②作家とアーティストが共作(アーティストが書いた楽曲をテコ入れする、あるいは逆のケース)。
③プロデューサーとして制作に加わり、楽曲制作にも携わる。
④作家が書いた新曲をそのまま取り上げる。


の4つが考えられるかと。現在のメタルシーンでは多くの場合②が主流だと思いますが、まれに③で大ヒットを飛ばすケースも見受けられます(AEROSMITHの「I Don't Want To Miss A Thing」など)。

そこで今回は、CDのブックレットでよく目にする作家さんをピックアップしつつ、その中から個人的にピンとくる方々をここで紹介。作家の特性を上記の①〜④で分類し、代表曲な楽曲を紹介していきたいと思います。


<70年代〜>

●ラス・バラード(特性:①②)
この人の場合は楽曲提供というよりも、彼が自身のバンドや他のアーティストに提供した曲をメタル系アーティストがカバーしたことにより、その名が知られるようになったと言ったほうがいいかもしれません。きっかけはグラハム・ボネット期のRAINBOWがカバーした「Since You Been Gone」ですよね。RAINBOWは続くジョー・リン・ターナー期にも「I Surrender」をカバーしてますし。そのRAINBOWの数年前に、当時KISSのエース・フレーリーもラス・バラッド作「New York Groove」をカバーして全米トップ20入りのヒットを記録。KISS自身も90年代に「God Gave Rock And Roll To You」を「God Gave Rock And Roll To You II」と改題してカバーしてますしね。それと今回いろいろ調べて初めて気づいたのですが、NIGHT RANGERが最初の解散前に発表したアルバム『MAN IN MOTION』からのリード曲「I Did It For Love」もラス・バラッド作。加えて、これも全然気にしてなかったんですが、BAD ENGLISHのラストアルバム『BACKLASH』収録曲「So This Is Eden」はジョン・ウェイト(Vo)、ジョナサン・ケイン(Key)との共作曲。時代的に90年代に入ってからの作品なので、世の中的に職業作家との共作が当たり前になった時期にそれまでのカバーとは違った形でのコラボレーションが実現したわけです。

代表作品:ACE FREHLEY「New York Groove」「Into the Night」、BAD ENGLISH「So This Is Eden」、GRAHAM BONNET「Liar」「S.O.S.」、KING KOBRA「Dream On」、KISS「God Gave Rock And Roll To You」、NIGHT RANGER「I Did It For Love」、PETER CRISS「Let Me Rock You」「Some Kinda Hurricane」、RAINBOW「Since You Been Gone」「I Surrender」


●リチャード(リッチー)・スパ(特性:①②④)
AEROSMITH「Chip Away The Stone」の作者として知られる彼は、もともとソングライター兼ギタリストとして活動していたアーティスト。ソロアーティストとして70年代にアルバムも発表しており、この中からジョニー・ウィンターが「Stone County Wanted Man」をカバーしています。また、エアロにはその後も楽曲提供を幾つかしているだけでなく、ジョー・ペリーが脱退した際にはレコーディングにも参加(1979年のアルバム『NIGHT IN THE RUTS』収録の「No Surprize」「Mia」)。それ以外に目立った共演は、元BON JOVIのリッチー・サンボラの2ndソロアルバム『UNDISCOVERD SOUL』での共作ぐらい。メタル系以外では、P!NKやMIKAといったアーティストにも楽曲提供しています。

代表作品:AEROSMITH「Chip Away The Stone」「Lightning Strikes」「Amazing」「Pink」、OZZY OSBOURNE「Back On Earth」、RICHIE SAMBRA「Hard Times Come Easy」


<80年代〜>

●ジム・ヴァランス(特性:②)
この人はブライアン・アダムスとの共作者としての印象が強いですが、そのブライアンと一緒に書いた2曲がKISS『CREATURES OF THE NIGHT』に収録されたのが、メタル系との最初の接触でしょうか。その後、80年代半ばにはHEART「What About Love」の全米ヒットを皮切りに、AEROSMITH「Rag Doll」を機にエアロとの仕事が増えていきます。ちょうど80年代後半になると、ブライアンとジムの関係も一時的に疎遠になり、メタルのみならず幅広いジャンルのアーティストと共作を重ねていきます。

代表作品:AEROSMITH「Rag Doll」「Eat The Rich」、ALICE COOPER「Die For You」「Lullaby」、HEART「What About Love」、KISS「War Machine」、OZZY OSBOURNE「I Just Want You」、SCORPIONS「Tease Me Please Me」


●デズモンド・チャイルド(特性:②③④)
BON JOVI「You Give Love A Bad Name」「Livin' On A Prayer」でのイメージが強い彼ですが、実は70年代末にKISS「I Was Made For Lovin' You」をポール・スタンレー、ヴィニ・ポンシア(KISS作品でのコラボレーションが有名なソングライター)と共作しています。なので、上の世代の方々はBON JOVIがヒットした際に「KISSのラヴィン・ユー・ベイビーの人」と思ったかもしれません。BON JOVIでの大成功後、AEROSMITH、アリス・クーパーから引っ張りだこ。そのすべての楽曲がヒットにつながっています。興味深いところではRATTの5thアルバム『DETONATOR』のプロデュースおよび楽曲制作、DREAM THEATERへの楽曲提供といったものもあります。また、HR/HM以外にもジョーン・ジェット「I Hate Myself for Loving You」、リッキー・マーティン「Livin' la Vida Loca」、ZEDD「Beautiful Now」、WEEZER「Trainwrecks」といったところでも名前をみかけます。

代表作品:AEROSMITH「Dude (Looks Like A Lady)」「Angel」「Crazy」、ALICE COOPER「Poison」、BON JOVI「You Give Love A Bad Name」「Livin' On A Prayer」「Bad Medecine」、DREAM THEATER「You Not Me」、KISS「I Was Made For Lovin' You」「Heaven's On Fire」、MEAT LOAF「The Monster Is Loose」、RATT「Shame Shame Shame」「Lovin' You's A Dirty Job」、RICHIE SAMBRA「Rosie」


●ダイアン・ウォーレン(特性:②④)
カナダ出身の女性ソングライターで、80年代前半から作家としての活動を開始。最初にヒット曲はローラ・ブラニガン「Solitaire」でした。メタル系では80年代後半、HEART「Who Will You Run To」、BON JOVI「Wild Is The Wind」あたりで最初に名前を目にするようになったと記憶しています。が、メタルシーン彼女の名が本当の意味で知られるようになるのは、その10数年後に発表された映画『アルマゲドン』のテーマソングであるAEROSMITH「I Don't Want To Miss A Thing」でのこと。このインパクトは強かったと思います。しかし、非メタルシーンではホイットニー・ヒューストン、ビヨンセ、マライア・キャリーといったアーティストへの楽曲提供ですでにキャリアを積んでおり、中でも「Because You Loved Me」をはじめとするセリーヌ・ディオンとのヒットは「I Don't Want To Miss A Thing」と同じくらい大きなものでした。

代表作品:AEROSMITH「I Don't Want To Miss A Thing」「We All Fall Down」、ALICE COOPER「Bed Of Nails」、BON JOVI「Wild Is The Wind」「Thank You For Loving Me」、CHEAP TRICK「Ghost Town」「Wherever Would I Be」、HEART「Who Will You Run To」「I Didn't Want To Need You」、KISS「Turn On The Night」、MEAT LOAF「I'd Lie For You (And That's The Truth)」「Not A Dry Eye In The House」、RICHIE SAMBRA「Rosie」


●ホーリー・ナイト(特性:②④)
ダイアン・ウォーレンと同時期に名前を目にする機会が増えた、同じく女性ソングライター。そして、自身もシンガーとしての活動をしています。ティナ・ターナーやパット・ベネターといったポップ/ロック系を経て、HR/HM系ではHEART「Never」が最初だったのかな。そこからAEROSMITH「Rag Doll」、BON JOVI「Stick To Your Guns」でメンバーや他の職業作家と共作を繰り広げます。CHEAP TRICKやKISS、オジー、MEAT LOAFといった面々から想像される、ポップで親しみやすい楽曲作りがメイン。とはいえ、OTEPといったモダンラウド系へも楽曲提供しているから、なかなかあなどれません。

代表作品:AEROSMITH「Rag Doll」、BON JOVI「Stick To Your Guns」、CHEAP TRICK「Space」、HEART「Never」「There's The Girl」、KISS「Hide Your Heart」「I Pledge Allegiance To The State Of Rock & Roll」「Raise Your Glasses」、LITA FORD「Stiletto」、LOU GRAMM「Just Between You and Me」、MEAT LOAF「Monstro」「Alive」、OTEP「Perfectly Flawed」「UR A WMN NOW」、OZZY OSBOURNE「Slow Burn」、PAUL STANLEY「It's Not Me」


●ロバート・ジョン・マット・ラング(特性:②③④)
ソングライターというよりもプロデューサーのイメージが強い存在ですよね。古くはAC/DCやFOREIGNER、そしてDEF LEPPARD、90年代にはブライアン・アダムス、2000年代はNICKELBACKやMUSE、さらにはLADY GAGAあたりも手掛けております。主にDEF LEPPARDのメガヒット作『HYSTERIA』において、全曲にクレジットされているところから、曲作りの面においてもある程度コントロールしながらプロデュースしていくタイプなんでしょうね。他にはHEART、LOVERBOYの楽曲制作にも携わっているようです。

代表作品:DEF LEPPARD『HYSTERIA』全曲、「Promises」「It's Only Love」、HEART「All I Wanna Do Is Make Love To You」「Will You Be There (In The Morning)」、LOVERBOY「Lovin' Every Minute Of It」


●ジャック・ポンティ(特性:②③④)
BON JOVIのデビュー作に収録された「Shot Through The Heart」でその名を目にして以降は、BONFIRE、DORO、KEELとB級バンドとの仕事が多いイメージ。90年代に入るとNELSON、アリス・クーパーへの楽曲提供で再びその名を目にするようになります。彼自身はプロデューサー業も行っており、BATON ROUGEやDOROといった正統派からKITTIE、OTEPなどのモダン系まで幅広く手掛けています。

代表作品:ALICE COOPER「Hey Stoopid」「Love's A Loaded Gun」、BABYLON A.D.「The Kid Goes Wild」、BATON ROUGE「The Price Of Love」、BONFIRE「Sweet Obsession」「Hard On Me」、BON JOVI「Shot Through The Heart」、DORO「Eye On You」「Ceremony」、KEEL「Somebody's Waiting」、NELSON「We Always Want What We Can't Get」


●ボブ・ハリガン・Jr.(特性:②④)
自身もシンガーとして活動するソングライター。メタル系アーティストへの楽曲提供がメインで、JUDAS PRIESTのアルバム『SCREAMING FOR VENGEANCE』に収録された「(Take These) Chains」で始めてその名を目にした人がほとんどでは? プリーストには次作でも「Some Heads Are Gonna Roll」を提供したほか、ロブ・ハルフォードのHALFORDにも「Twist」を提供しています。また、80年代末にKIX「Don't Close Your Eyes」のヒットによって、さらに知名度を高めることに成功。90年代には自身のソロアルバムも2枚制作しているようです。

代表作品:BLUE OYSTER CULT「Beat 'Em Up」「Make Rock Not War」、BONFIRE「Bang Down The Door」、HALFORD「Twist」、HELIX「Rock You」、ICON「Danger Calling」、「Raise The Hammer」、JUDAS PRIEST「(Take These) Chains」「Some Heads Are Gonna Roll」、KISS「Rise to It」「Read My Body」、KIX「Midnite Dynamite」「Don't Close Your Eyes」


<90年代〜>

●テイラー・ローズ(特性:②④)
88年発売のKIX「Cold Blood」でその名を目にしたのが最初で、本格的に活躍し始めたのは90年代に入ってから、AEROSMITHとのコラボレーションが活発化して以降のこと。「Cryin’」というヒットシングルがひとつのきかっけになったことは間違いありません。

代表作品:AEROSMITH「Cryin'」「Blind Man」「Full Circle」、CHEAP TRICK「Back 'n Blue」、JOURNEY「All The Way」、KIX「Cold Blood」「Hot Wire」、LOVERBOY「Love Will Rise Again」、OZZY OSBOURNE「Back On Earth」、TORA TORA「Amnesia」「Faith Healer」、Y&T「Contagious」


●マーク・ハドソン(特性:②③)
シンガーソングライター、TVパーソナリティなどを経て、プロデューサーや職業作家としての道を進み始めます。AEROSMITH「Livin' On The Edge」でその名を広く知らしめ、グラミー賞も受賞しました。エアロとの仕事はアルバム『JUST PUSH PLAY』でスティーヴン・タイラー&ジョー・ペリー、次に触れるマーティ・フレデリクセンとのチームで「Boneyard Boys」と名乗り、プロデュースやソングライティングを行いました。他にはアリス・クーパー、オジー・オズボーン、BON JOVI、SCORPIONSと大御所ばかりと共作。他にはリンゴ・スターとのコラボレーションも有名どころです。

代表作品:AEROSMITH「Livin' On The Edge」「Gotta Love It」「The Farm」、ALICE COOPER「Cleansed by Fire」、BON JOVI「Two Story Town」、OZZY OSBOURNE「Ghost Behind My Eyes」「Denial」、SCORPIONS「No Pain No Gain」


●マーティ・フレデリクセン(特性:②③)
AEROSMITHのアルバム『NINE LIVES』で頭角を表して以降、同バンドとのコラボレーションを重ねていきます。上のマーク・ハドソンでも触れたように、スティーヴン・タイラー&ジョー・ペリー、マーク・ハドソンとの4人で「Boneyard Boys」というチームで、続くアルバム『JUST PUSH PLAY』のプロデュースやソングライティングも手掛けました。以降はBUCKCHERRY、MOTLEY CRUE、DAUGHTRYなどへの楽曲提供、DEF LEPPARD『X』のミキシングといったHR/HM系仕事のほか、キャリー・アンダーウッド、フェイス・ヒルとの共作でも知られています。

代表作品:AEROSMITH「Nine Lives」「Jaded」「Fly Away from Here」「Sunshine」、BUCKCHERRY「Next 2 You」「Sorry」、THE CULT「Breathe」、DAUGHTRY「Crawling Back To You」「Outta My Head」、JAMES DURBIN「Higher Than Heaven」「Love Me Bad」、MOTLEY CRUE「Saints of Los Angeles」「Mutherfucker Of The Year」、OZZY OSBOURNE「Dreamer」「That I Never Had」、RICHIE SAMBRA「Who I Am」、SCORPIONS「10 Light Years Away」「We Were Born To Fly」、STEVEN TYLER「(It) Feels So Good」


●グレン・バラッド(特性:②③)
この人は90年代中盤、アラニス・モリセット『JAGGED LITTLE PILL』のプロデュース&楽曲制作で一気に名を馳せることになりますが、それ以前にもソングライターやミュージシャン、プロデューサーとしてマイケル・ジャクソン、ポーラ・アブドゥル、WILSON PHILLIPSなどの代表作に参加して経験を積んできました。アラニスの成功により、AEROSMITHが1997年のアルバム『NINE LIVES』のプロデューサー兼コラボレーターとして白羽の矢を立てるのですが、その内容に納得できずに制作途中でコラボを解消。結果的には一部の楽曲をケヴィン・シャーリーのプロデュースで再録音したり新たに楽曲を書き足したりして、現在の形にまとまるという、エアロファンには忘れられない事件を引き起こします。以降、HR/HM系アーティストとの共作はほとんどなく、エアロ以前にVAN HALENにデイヴ・リー・ロスが一時復帰した際の新曲に携わった程度でしょうか。本来ならここで取り上げるまでもない存在なのですが、トピック的に面白かったので残してみました。

代表作品:AEROSMITH「Falling in Love (Is Hard on the Knees)」「Taste of India」「Pink」、VAN HALEN「Me Wise Magic」「Can't Get This Stuff No More」


<2000年代〜>

●アンドレアス・カールソン(特性:②)
スウェーデン出身のプロデューサー、ソングライター。現在40代前半と、上記の作家陣と比べると若手の部類に入ります。ということで、彼が活躍し始めたのも2000年前後から。一番の出世作はBACKSTREET BOYS「I Want It That Way」でしょうか。彼はブリトニー・スピアーズやWESTLIFE、NSYNCと当時のアイドルを手がけることが多かったのも特徴です。そういったポップフィールドでの活躍が評価されて、2002年にBON JOVIがアルバム『BOUNCE』で「Everyday」「Misunderstood」など、DEF LEPPARDがアルバム『X』で「Unbelievable」を共作します。同じタイミングにこの2バンドが彼を採用したことで、僕も印象に残っていました。HR/HM系では他にもポール・スタンレーのソロアルバム『LIVE TO WIN』、EUROPEの異色作『LAST LOOK AT EDEN』にも参加しています。

代表作品:BON JOVI「Everyday」「Misunderstood」「All About Lovin' You」、DEF LEPPARD「Unbelievable」、EUROPE「Last Look At Eden」「New Love in Town」、PAUL STANLEY「Live To Win」「Wake Up Screaming」「Bulletproof」


●ジェイムズ・マイケル(特性:②③)
プロデューサーやソングライターとしてより、現在はニッキー・シックス(元MOTLEY CRUE)とのバンド、SIXX: A.M.のフロントマンとして有名かな。さまざまなバンドを経て、2000年にソロデビュー。ちょうどこのころにニッキー・シックスと出会い、MOTLEY CRUEのトミー・リー不在アルバム『NEW TATTOO』にソングライターとして参加します。以降は同じくニッキーが参加したBRIDES OF DESTRUCTION、そしてSIXX: A.M.へと続いていくわけです。他にはPAPA ROACH、HALESTORM、ジェイムズ・ダービンといったモダンなアーティストのほか、SCORPIONS、MEAT LOAFなどの大御所との共演も実現しています。またプロデューサー/エンジニアとしてはHAMMERFALLのアルバムも手掛けています。

代表作品:BRIDES OF DESTRUCTION「Brace Yourself」「Natural Born Killers」、HALESTORM「Private Parts」、JAMES DURBIN「Higher Than Heaven」、MEAT LOAF「Couldn't Have Said It Better」「Did I Say That?」、MOTLEY CRUE「New Tattoo」「Sick Love Song」「Saints of Los Angeles」、PAPA ROACH「I Almost Told You That I Loved You」、SCORPIONS「Hour I」、SIXX: A.M.「Life Is Beautiful」「Lies of the Beautiful People」「Gotta Get It Right」


以上、15名を独断と偏見で挙げてみました。やはり80年代中盤、アメリカでHR/HMが大ヒットしたことがメタル系職業作家の繁栄につながったと言って間違いなさそうですね。正直2000年代以降はどういった人たちが主流なのかいまいち調べきれず、こういう形になってしまいました。

改めて思ったのは、BON JOVIやAEROSMITHといった先駆者たち、そしてオジーやSCORPIONSなどの大御所アーティストが新作を出すたびにクレジットに注目しておくのが、一番手っ取り早いなと思いました。

そういう意味でも、この(↓)アルバムは歴史を変えた重要な1枚かもしれませんね。



▼BON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』
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投稿: 2017 01 08 12:00 午後 [Aerosmith, Alice Cooper, Bon Jovi, Buckcherry, Def Leppard, Europe, Heart, Kix, Night Ranger, Ozzy Osbourne, Richie Sambora, Scorpions, Sixx:A.M., Van Halen, 「分析ネタ」] | 固定リンク

2016/12/20

STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』(2016)

聴く前からこんなにも不安でネガティブな気持ちになったソロアルバムって、自分の経験上そんなになかったんじゃないかな。だって、これが世に出るということは、バンドとしてしばらく機能しないということを示すわけだから。

そんな気持ちで接した、AEROSMITHのフロントマン、スティーヴン・タイラー初のソロアルバム『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』。カントリーレーベルからのリリースということで、最初は「年寄りが趣味でやるんでしょ。はいはい」くらいの気持ちでいたんです。そもそも、アルバムの1年前に発表されたリードトラック「Love Is Your Name」がポップだけどレイドバックしまくりだったから、余計にね。いや、悪い曲じゃないんですよ。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』の楽曲よりも優れてると思ったし。いやいや、比べるのは違うか。

ここ数年、以前ほど高音が出にくくなって、声質もカサカサになってきたスティーヴンの声には、こういうサウンドが意外と合うんだな。そう前向きなことも考えました。でも、自分が聴きたいのはジョー・ペリーと並ぶスティーヴンの姿。ジョーがソロをやるのとは意味が違うんですよ。

ところが。不安を抱えたままアルバムと接すると……いいんです、これが。楽曲がどれも優れているというのは言うに及ばず、スティーヴンのボーカルワークも非常に素晴らしい。無理にシャウトせず淡々と歌っているんだけど、それでも存在感が溢れてしまう感じといいましょうか。サウンド的にもカントリーを軸にしてはいるものの、もっとアメリカンポップス寄り。そもそもスティーヴンの性分を考えれば、こうなるのも納得なわけで、古き良き時代のアメリカンポップスやカントリー、ブルース、そして適度にロックで適度にサイケ。思えばエアロの楽曲の大半はスティーヴンがジョーと一緒に書いてきたもの。こういう作風になるのは当然であり、演奏している人間が異なるんだからエアロにならないのも当たり前。なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろうと、聴き終えた後に反省しました。そんなフラットな気持ちで接すれば、「Janie's Got A Gun」のアーシーなセルフカバーも素直に受け入れられるわけです。

もしかしたらこの人は、もっと新曲をレコーディングしたかったのかな。でも、それが今のエアロでは叶わないというなんらかの障害が存在する。だったら自分の好きなように1枚作ろうと。そう納得することにしました。事実、このアルバムを出した後にはエアロはショートツアーも行っているわけで、以前ほど大々的な活動はないものの、今後もよきタイミングでライブをしてくれるはず、と。

そんなことを考えていたところに、来年のツアーを最後にAEROSMITHの活動終了という話が飛び込んできたり。さらに来春にはスティーヴンのソロ来日公演も決定。もう何が正しくて、何が間違っているのか判断がつきませんが……ひとまず武道館でのソロライブには行きます。夏にはエアロでフェスに出たりツアーをしたりするようなので、そちらでの来日にも期待したい。そして……せめてバンドでもう1枚アルバムを作ってください。それだけが僕の望みです。その夢が実現するまで、このソロアルバムやここ数年発表されたライブ作品を目に耳にし続けていこうと思います。



▼STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』
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投稿: 2016 12 20 12:00 午後 [2016年の作品, Aerosmith, Steven Tyler] | 固定リンク

AEROSMITH『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012)

スタジオアルバムとしては2004年の『HONKIN' ON BOBO』以来8年半ぶり、オリジナル楽曲によるアルバムとしては2001年の『JUST PUSH PLAY』以来実に11年半ぶりの新作。『HONKIN' ON BOBO』以降はとにかくバンド内の不仲やらスティーヴン・タイラーやジョー・ペリーのソロ活動で、ライブはときどきやるものの制作に関しては思うように進まない。AEROSMITHにとっての2000年代後半はそういった苦難の時期だったように思います。

事実、この15枚目のスタジオアルバム『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』もリリースが二転三転。2012年春に今作からのリードトラック「Legendary Child」が公開されたときは、誰もが「やっと……!」と思ったのに、結局アルバムは半年先までお預け。「Lover Alot」「What Could Have Been Love」とシングルを切り刻んで、同年11月にようやくファンの手元に届けられたのでした。

オリジナルアルバムとしては11年半も待たされたこのアルバム。15曲68分という大作なのに、日本盤はここにボーナストラック2曲(ともにカバー)を加えた17曲76分という、時代が時代なら2枚組アルバム並みのボリューム。さらに、今作にはデラックスエディションも用意されており、アルバム本編未収録の新曲3曲入りディスク2と、ライブ映像やメンバーインタビューが収録されたDVDが付いた3枚組仕様という、過剰なサービスぶりが発揮されています。

さすがに新録曲が一気に20曲も届けられるとは思ってもみなかったので、最初は嬉しかったものの、何度か聴き返すと……印象に残る曲が少ないというのが正直なところ。『JUST PUSH PLAY』の流れにあるオープニングトラック「Luv Xxx」もどこか覇気が感じられず、いまいちパンチに欠ける。無駄をそぎ落としまくったストーンズライクなロックンロール「Oh Yeah」、グルーヴィーでストレンジな雰囲気の「Beautiful」、カントリーテイストのバラード「Tell Me」と、どれも悪くないんだけど決定打に欠けるというか……それは先行シングルの「Legendary Child」や「Lover Alot」にも言えることで、10年前後も待たされたゆえの期待値の高さがあったとはいえ、80年代後半〜90年代半ばの黄金期を知っているだけに、なんとも言えないむず痒さを覚えたわけです。

いや、悪くなんですよ。実際、最初に聴いたときは「これこそエアロ! ちょっと70年代テイストも戻ってきていて、いいじゃないか!」と両手を上げて喜んだのも事実だし。けど、過去の作品のように何10回も繰り返し聴くかと言われると「たまにでいいです」と返したくなるし、「これだったら『JUST PUSH PLAY』聴くし」と思ってしまう。「Out Go The Lights」や「Street Jesus」、「We All Fall Down」、「Another Last Goodbye」などは個人的にもグッときたんだけど、いわゆるキラーチューンが……前作でいえば「Jaded」や「Just Push Play」みたいな曲がひとつでもあれば、また全体の印象も変わったんでしょうね。あるいは、12曲程度に絞って勝負すれば、まだここまで散漫な印象は受けなかったのかも。

本作リリースからしばらくして、トム・ハミルトンが「もうアルバムは作らない」なんて発言をして物議を醸し出し、最近では「来年のツアーをもって解散」という噂も後を絶たないAEROSMITH。実際、スティーヴン・タイラーもとうとうソロアルバムを作ってしまい、こちらのツアーも行っているわけで。本当にどうなってしまうのか……できることなら、最後の最後に完全無欠のロックアルバムを作って、それで有終の美を飾ってほしいな。「やっぱりカッコよかったよね、エアロって」って言いたいもの。



▼AEROSMITH『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』
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【AEROSMITH ディスクレビュー一覧】
『AEROSMITH』(1973)
『GET YOUR WINGS』(1974)
『DONE WITH MIRRORS』(1985)
『PERMANENT VACATION』(1987)
『PUMP』(1989)
『GET A GRIP』(1993)
『BIG ONES』(1994)
『NINE LIVES』(1997)
『JADED EP』(2001)
『JUST PUSH PLAY』(2001)
『HONKIN' ON BOBO』(2004)
『ROCKIN' THE JOINT』(2005)
『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012)

【AEROSMITH ライブレポート一覧】
2002年2月2日@東京ドーム
2002年2月3日@東京ドーム


投稿: 2016 12 20 02:30 午前 [2012年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『BIG ONES』(1994)

Geffen Recordsから約10年で4枚のオリジナルアルバム(『DONE WITH MIRRORS』『PERMANENT VACATION』『PUMP』『GET A GRIP』)を発表し、作品ごとにセールスを上げていったAEROSMITHの、同レーベルへの(結果として)置き土産となったベストアルバム。収録曲は4枚のアルバムから……と言いたいところですが、ヒット曲に恵まれなかった『DONE WITH MIRRORS』からは未選出で、『PERMANENT VACATION』以降のヒットシングルを軸に構成されています。

改めて復活後のエアロはヒット曲作りと真剣に向き合ったんだなというのがわかる内容で、ライブでおなじみのナンバーが目白押し。70年代の代表曲で固められた『GREATEST HITS』(1980年)と比較するのは野暮ですが、あの頃にあったアクの強さは皆無といっていいでしょう。一方で、いかがわしさや危うさと引き換えに手に入れた強靭なサウンドと巧みなアレンジのすごさも、このアルバムからたっぷり感じられるのではないでしょうか。

本作には2曲の新曲(「Walk On Water」「Blind Man」)と1曲のアルバム未収録曲(「Deuces Are Wild」)も収録。新曲は『PERMANENT VACATION』『PUMP』『GET A GRIP』でおなじみのブルース・フェアバーンの手によるものではなく、新たにマイケル・ベインホーン(レッチリやSOUNDGARDENなど)を起用しているのも興味深いところ。デッド感の強いサウンドとグルーヴィーなアンサンブルのミックスが絶妙な「Walk On Water」に、「エアロのこの先」を少なからず感じたのも、今となっては懐かしい思い出です。

そういえばこのアルバム、曲順も素晴らしいと思います。特に「Eat The Rich」のゲップの後に「Angel」が続くあたりは真骨頂ではないかと。



▼AEROSMITH『BIG ONES』
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投稿: 2016 12 20 02:00 午前 [1994年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『GET A GRIP』(1993)

前作『PUMP』が全米アルバムチャート5位(TOP5入りは1976年の『ROCKS』以来13年ぶり)、現在までに700万枚も売り上げるという大成功を収めたAEROSMITH。『PUMP』を携えたワールドツアーを終えた後もソニー時代のボックスセット『PANDORA'S BOX』(1991年)発表や、MTV10周年イベントでマイケル・ケイメンと「Dream On」をオーケストラ共演、GUNS N' ROSESのライブにゲスト出演(スティーヴン・タイラーとジョー・ペリーのみ)など話題に事欠きませんでしたが、その裏側では『PUMP』を超えるアルバムを作り上げようと試行錯誤していました。その結果、前作から約4年という歳月を経て通算11枚目のオリジナルアルバム『GET A GRIP』は完成したのです。

今作は一度12曲程度でまとめあげられたものの、メンバーやスタッフが客観的にアルバムを聴いて「何か足りたい」として新たに楽曲を制作。そういう経緯を経て、全12曲(イントロ&アウトロおよびボーナストラックを除く)で60分強という大作が完成したわけです。スティーヴンのラップボーカルをフィーチャーしたイントロから「Eat The Rich」へと流れるオープニング、そのままほぼ曲間なく「Get A Grip」「Fever」「Livin' On The Edge」へと続く構成は、前作『PUMP』にも匹敵するもので、緊張感だけで言えば今作のほうが優っていると個人的には思っています。

バンドとしての熱量は全キャリア中でも『ROCKS』に匹敵するものだし、そこに絶妙なバランスで“枯れ”具合が混在する。1曲1曲の完成度も非常に高く、「カッコいいロック」よりも「単純にいい曲」を目指したかのようなヒットシングル「Livin' On The Edge」(全米18位)、「Cryin'」(同12位)、「Amazing」(同24位)、「Crazy」(17位)も目白押し。久しぶりにジョー・ペリーがリードボーカルを取った「Walk On Down」も箸休めで終わっておらず、頭から終盤まで一切の隙なし。だからこそアウトロとして収録されたお遊び的インスト「Boogie Man」までたどり着くと、肩の力を抜いてホッとできるわけです。

人間の集中力が持続するのは30〜40分程度、なんてよく言われますし、昔の名盤は(アナログ盤の収録状況なども要因ではあるものの)大半が30〜40分前後の作品ばかり。60分前後のアルバムとなると数曲は印象に残らないことも多いのですが、こうやって最後まで集中して楽しめる、引き込まれる長編ハードロックアルバムはDEF LEPPARD『HYSTERIA』と本作ぐらいじゃないか……と思うのですが、いかがでしょう?

2016年現在、彼らの全アルバムを振り返ると、初の全米No.1を獲得したこの『GET A GRIP』こそが第2のピークだったのは間違いない事実。彼らが80年代後半から目指したサウンドもここで一度完成を見るわけです。だからこそ、ここから長い試行錯誤が再び続くことになるのでした。そういう意味では、『GET A GRIP』は非常に罪深いアルバムでもあるのです。



▼AEROSMITH『GET A GRIP』
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投稿: 2016 12 20 01:30 午前 [1993年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『PUMP』(1989)

前作『PERMANENT VACATION』で文字通り完全復活を果たしたAEROSMITHが1989年秋、前作から2年ぶりに発表したのがこの通算10枚目のオリジナルアルバム。プロデュースにブルース・フェアバーン、エンジニア&ミックスにマイク・フレイザー、ソングライティングにデズモンド・チャイルド、ジム・ヴァランスという前作からの布陣を迎えた今作は、前作での成功をそのまま引き継ぐかと思いきや、よりアグレッシヴで肉感的、それでいてしっかり聴かせる要素も含むという、「90年代のエアロ」のプロトタイプ的1枚となっています。

アップテンポで攻めまくるオープニングの「Young Lust」から前作にはなかった色合いですし、楽曲そのものに70年代の彼らにあった危うさが復活。そのまま間髪入れずに「F.I.N.E.」へと続くのですが、この曲もヒットシングル「Dude (Looks Like A Lady)」の流れにあるものの、躍動感は前作と比べものにならないほど。そして今作からのリードシングル(全米5位)「Live In An Elevator」でヘヴィさとキャッチーさを兼ね備えた新たなエアロをアピールします。特にこの曲では中盤のジョー・ペリーによるギターソロが圧巻。この頭3曲で完全にノックアウトさせられるはずです。

その後もサイケデリックでポップなミディアムナンバー「Janie's Got A Gun」(全米4位)、ブラスの音色が気持ちよいソウルフルなロック「The Other Side」(同22位)、「Angel」とは異なりアーシーさに満ち溢れたカントリーバラード「What It Takes」(同9位)といったヒットシングル、小気味良いテンポ間の「My Girl」、ブルージーな色合いをモダンなサウンドで表現した「Don't Get Mad, Get Even」、トム・ハミルトンのブリブリしたベースがカッコいい「Voodoo Medicine Man」など良曲満載。アルバムトータルとしても(日本盤ボーナストラック「Ain't Enough」を除くと)全10曲で約47分と非常に聴きやすく、何度も聴き返したくなる1枚ではないでしょうか。事実、この曲を「復活後、最高の1枚」に挙げるリスナーも少なくないようで、僕自身も日によって『GET A GRIP』か『PUMP』のどちらかを「復活後、最高の1枚」にピックアップしています。

先に「90年代のエアロ」のプロトタイプ的1枚と書きましたが、その後の作風(サイケデリックさの急増、アルバム1枚の曲数が一気に増える、1曲が長くなる、etc.)を考えると、本当の意味でのAEROSMITHのターニングポイントはこのアルバムだったのかもしれません。



▼AEROSMITH『PUMP』
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投稿: 2016 12 20 01:00 午前 [1989年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『PERMANENT VACATION』(1987)

オリジナル編成で復活したAEROSMITHSが、同布陣で6年ぶりに制作した前作『DONE WITH MIRRORS』(1985年)から2年を経て完成させた、通算9枚目のオリジナルアルバム。『DONE WITH MIRRORS』では70年代のエアロが持ち合わせていた危うさとラフさに焦点を絞って制作されたものの、いかんせん楽曲がイマイチで大きなヒットには結びつかず、「エアロ大復活!」を完全アピールするに至りませんでした。

続く復活2作目となる今作では、前年にBON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』で一気に知名度を上げたブルース・フェアバーンをプロデューサーに起用。エンジニアにボブ・ロック、マイク・フレイザーという、のちに名プロデューサーへと成長するブルース界隈の人脈を迎え、さらにソングライティング面でも先のBON JOVI同様にデズモンド・チャイルド、ジム・ヴァランス、ホリー・ナイトといった職業作家とバンド(主にスティーヴン・タイラー&ジョー・ペリー)との共作を強いることになります。が、これが吉と出て、「Dude (Looks Like A Lady)」(全米14位)、「Angel」(同3位)、「Rag Doll」(同17位)とヒットシングルを連発。アルバム自体も最高11位まで上昇し、当時だけでもダブルプラチナム、現在までに500万枚を超える、まさしく「エアロ大復活!」を宣言するにふさわしい1枚となりました。

さて、ここまで書いてお気づきかと思いますが、「BON JOVI的HRサウンド」「職業作家の起用」などが70年代に「危うさとラフさ」を信条としていたバンドに結びつくのか、と。リアルタイムでこのアルバムからエアロに入ったというリスナーには非常に聴きやすく、しかもハードロックへの入り口には最適な1枚だったと思います。しかし、70年代から彼らを追うオールフォファンには驚愕の内容だったのではないでしょうか。事実、『LIVE BOOTLEG』からエアロに入った僕自身もアルバム全体を覆う派手な装飾に気持ち悪さを感じ、特に「Angel」のような“いかにも80年代HR”的バラードに対して長きに渡り嫌悪感がありましたから(その呪縛から解き放してくれたのが、あの「I Don't Want To Miss A Thing」というのも皮肉な話ですが)。

間もなくリリースから30年を迎えようという今、このアルバムを聴いてみると……さすがに自分も大人になったからか(というか老いたからか)、これを素直に受け入れられるし、純粋にいい曲が多くてカッコいいアルバムだなと思います。が、その後の快進撃を考えると「ベターだけどベストではない」という1枚かなと。終盤2曲(クセのないビートルズカバー「I'm Down」と無意味さすら感じるインスト「The Movie」)の捨て曲っぷりが本当に勿体ないなと。しかしながら、個人的にはアルバム中盤(「Dude (Looks Like A Lady)」から「Girl Keeps Coming Apart」まで)の流れは気に入っております。



▼AEROSMITH『PERMANENT VACATION』
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投稿: 2016 12 20 12:30 午前 [1987年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『DONE WITH MIRRORS』(1985)

70年代末にジョー・ペリー、そして80年代に入るとブラッド・ウィットフォードが脱退し低迷期に突入したAEROSMITH。しかし1984年にジョーとブラッドがバンドに復帰し、黄金の布陣でツアーを行い成功を収めます。その勢いのままスタジオ入りし、完成させたのがこの8thアルバム『DONE WITH MIRRORS』。プロデューサーにVAN HALENなどで知られるテッド・テンプルマンを迎え、往年のアグレッシヴなサウンドを目指して制作されました。

アナログ盤は全8曲、CDでは1曲追加の全9曲入りで、トータル35分程度という70年代のエアロにも通ずる作風。中身もキャッチーなメロディが軸にあるものの、サウンド自体は無骨で隙だらけのシンプルなロックンロール。この8年後に発表される『GET A GRIP』とは正反対の内容です。

アルバムのオープニングを飾るのは、ジョー・ペリーが自身のTHE JOE PERRY PROJECTで発表した楽曲の歌詞と歌メロを改変した「Let The Music Do The Talking」。この曲だけを聴けば「俺たちのエアロが帰ってきた!」とガッツポーズを取りたくなるはずです。特に終盤のスティーヴン・タイラーのシャウトには、どんなロックファンだって胸が熱くなることでしょう。

しかし、アルバム内でキラーチューンと言えるのはこの1曲のみ。2曲目「My Fist Your Face」も悪くないものの、その後はシンプルが災いして退屈さすら感じる「Shame On You」を筆頭に「今ひとつ、いや、今ふたつ」な楽曲が続きます。どの曲にもどこか“抜けきれない”もどかしさが付きまとっており、モヤモヤしたまま(CDでの)ラストナンバー「Darkness」を迎えます。ちなみにアナログ盤には「Darkness」は未収録で、勢いあるブギーナンバー「The Hop」で終了。個人的には(モヤモヤは残るものの)「Darkness」で締めくくる構成のほうが好きです。

このアルバムから現在もライブで披露される機会があるのは、先の「Let The Music Do The Talking」程度。メンバーもこのアルバムに関しては否定的な意見をとることが多いようです。時期的にもオリメンには戻ったものの、まだドラッグから抜けきれてないメンバーもいたりで、どことなく気持ちがひとつに固まってない頃だったのでしょうか。以降の一枚岩のような作風を考えると、第二のデビュー作『PERMANENT VACATION』へ到達するための過渡期的作品なのかもしれません。

ただ、個人的には「嫌い」と切り捨てられないのもこのアルバム。このモヤモヤした感じこそ、実は70年代から彼らが引きずってきたものであり、その片鱗が残っている今作を嫌いになれるはずもなく。今でも忘れた頃に引っ張り出しては、そのモヤモヤに浸ることもある……そんな1枚です。



▼AEROSMITH『DONE WITH MIRRORS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 20 12:00 午前 [1985年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2005/11/02

AEROSMITH『ROCKIN' THE JOINT』(2005)

 AEROSMITHの公式ライヴアルバムって実は3枚しか出てないんじゃないかな。個人的には「CLASSICS LIVE」って余り公式盤って認めたくないんだよね。実際1枚目の方はレコード会社が勝手に出したものだし(2枚目はメンバーが関わったそうだけど、あの音の悪さはどうしようもなく、公式盤とは認めたくないって気持ちが強くてさ)。となると‥‥'78年の「LIVE BOOTLEG」、'98年「A LITTLE SOUTH OF SANITY」に続く通算3作目の公式ライヴアルバムとなるのが今回の「ROCKIN' THE JOINT」だという認識で今後いきたいと思います(誰に対する表明だよ)。

 去年「YOU GOTTA MOVE」という、同年春のライヴを収めたライヴDVD(正確にはライヴドキュメンタリー+おまけライヴCD)が出た後だけに、「またライヴ盤関係?」という声も多いだろうけど、今回収録されているライヴは前々作「JUST PUSH PLAY」に伴うツアー時の音源。2001年末にラスベガスの小規模小屋で行われたスペシャルライヴの模様をCD1枚に収めたもの。「へっ、1枚ものなの!?」とリリース情報が発表された時、ファンなら誰もが疑問に思ったはず。当然ながら、エアロのライヴって2時間、下手したらそれ以上あるはずで、この日のライヴだって相当数の楽曲が演奏されたはず。しかし、アルバムに収録されているのは12曲。しかも1曲目はスティーヴン・タイラーのMCなので、実質11曲。今時11曲しか入ってないライヴアルバムなんて買う奴いるの!?ってくらいに懐疑的だったんだわ。日本盤には更に2曲のボーナストラックが収録されてるから、トータル13曲に繰り上がったけど、それでも‥‥6〜7曲は足りないよね?

 けど、このライヴ盤にはそれを補う「おまけ」が付いていて‥‥同日の模様を収めたライヴDVDが付いてるのですよ!(US盤はDUALDISC、日本盤は別添DVDとしてそれぞれ収録。但し日本盤のみ初回限定なのでご注意)おお、そっちがメインになるのか!!‥‥思ったのものの、実はこっちも「たった」4曲しか入ってないという、ホント「おまけ」以外の何ものでもないわけで(日本盤には更に2曲追加収録されて計6曲になってるけどさ)。一応CDに収録されなかった曲も入ってるから、ちょっと得した気分にはなるけど‥‥正直、こんなの聴いたって悶々とするだけだよファンは!

 実際に聴けば演奏のクオリティは高いし(特にジョー・ペリーとブラッド・ウィットフィールドのギターはハンパなく凄い!)、収録された曲も'70年代の曲が殆どで、ライヴアルバムには初収録となる "No More No More" とか "Seasons of Wither"、"Big Ten Inch Record"、更には8分以上にも渡る名カバー "Rattlesnake Shake" なんかも収録されてるので、それなりに聴き応えはあるのね。勿論ファン以外にもアピールする "Walk This Way" や "Draw The Line"、更には最大のヒット曲 "I Don't Want To Miss A Thing" のライヴ音源も入ってるので、これからエアロかじろうって人にもそれなりにアピールする、かも。

 '80年代〜'90年代前半の‥‥所謂「PERMANENT VACATION」「PUMP」「GET A GRIP」からの大ヒットシングル曲を完全排除し(ていうか正直聴き飽きたし。でも日本盤ボートラには唯一 "Livin' On The Edge" 収録)'70年代の、およそ代表曲とは呼べないようなマニアックな曲を多めに入れたのは評価に値するんだけど、やはり物足りない。当時の新作「JUST PUSH PLAY」の曲もたった2曲しか入ってないし(実際には "Jaded" や "Just Push Play" 等、もっとプレイしてるはず)‥‥正直何故この時期に、こんなにも中途半端な「コレクターズ・アイテム」を発表するのか、理解に苦しみます。

 が‥‥これって、結局はUSツアー用にリリースしたかったんだろうね。ご存じの通り、エアロは昨年7月の日本公演を最後に、長期間の活動休止に突入、何時まで休むとかそういったアナウンスが一切されてなかったんだよね。ところがこの春にジョー・ペリーが久し振りのソロアルバムをリリースした際に「もうすぐエアロとして動く」とコメントし、この秋から小規模ながらUSツアーをすると発表、その後新作のレコーディングに入ることが明らかになったわけで‥‥ただツアーするんじゃなくて、その「いいわけ」を作りたかったのかなぁ、と。バンドとしてではなく、レコード会社としてね(多分「出そう」って言い出したのはレコード会社の方でしょう)。そんな気がするよ。

 今度のツアー、ファンからの人気投票で「アルバム丸ごと、曲順通りにライヴで聴きたい作品」を集ったことから、古めのアルバムがライヴで完全再現される可能性がある‥‥だからこういう選曲('70年代の曲多め)なのかなぁ、と。単なる憶測ですけど。

 けどまぁ‥‥悪くないですよ。悪いわけがない、今のエアロが。第二次絶頂期、まだ続いてますからね。ホント、凄いバンドだよ。呆れるくらいに。



▼AEROSMITH『ROCKIN' THE JOINT』
(amazon:日本限定盤日本通常盤US盤DUALDISC


【AEROSMITH ディスクレビュー一覧】
『AEROSMITH』(1973)
『GET YOUR WINGS』(1974)
『NINE LIVES』(1997)
『JADED EP』(2001)
『JUST PUSH PLAY』(2001)
『HONKIN' ON BOBO』(2004)
『ROCKIN' THE JOINT』(2005)

【AEROSMITH ライブレポート一覧】
2002年2月2日@東京ドーム
2002年2月3日@東京ドーム

投稿: 2005 11 02 08:24 午後 [2005年の作品, Aerosmith] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/03/22

熱く語りたいお年頃。

エアロスミスのジョー・ペリー、新作ソロはDual Discでも発売!(CDJournal.com)

 そういえば、もう来月頭じゃないですか、ジョー・ペリーのソロアルバムが出るの! すっかり忘れてたわけですが(こらこら‥‥)、これはかなり期待してるんですよね。

 いろんな所で語られてるように、ジョーがソロアルバムを発表すること自体22年振りのことだし、更にジョーのソロって全部エアロ脱退中のリリースなんですよね。つまり再結成‥‥所謂オリジナルの5人に戻ってから、第二の全盛期突入後は誰一人としてソロアルバムは出してないわけで、今回の活動休止を機にまずジョーが動いた、と。

 ご承知の通り、前作「HONKIN' ON BOBO」というブルーズ・カバー作はジョー主導で制作されたアルバムで、完成後の作品を聴いた他のメンバーが「録音し直そう」と申し出たにも関わらず、ジョーがこのままで行こうとゴリ押しした、それが原因でメンバー間がギクシャクして昨夏の日本公演終了後にしばしの活動休止となった‥‥なんて囁かれる程、あの作品ってのは「ギタリストによるアルバム」だったわけですよ。ギタリスト特有の空気感であり、特有のリズム感であり、そういったものが凝縮された非常に濃ゆいアルバムだったわけです(ストーンズでいえば、キース主導だった「DIRTY WORK」が同じような空気感を持っていたように思います)。シンプルな楽曲が大半の中(ま、ルーツ的な楽曲のカバー集ですしね)、だからこその集中力と緊張感が漲る作風は、それまでの歌モノ中心な作風(=スティーヴン主導?)とはある意味で対極にあると言えるかもしれません。そういう点からも、このアルバムが初期の「ROCKS」や「GET YOUR WINGS」と比較される所以なのかもしれません。

 巷ではブルーズ・ベースの作品になると言われていますが、

エアロスミスのジョー・ペリー、22年振りのソロ作 【続報付】(CDJournal.com)

この曲目を見る限りでは(特にDOORSやウディ・ガスリーのカバー)あまりその辺には拘ってないんじゃないか、むしろもっと自由度の高い、ある意味で今のエアロに近い作風になるんじゃないか‥‥そう勝手に解釈してます。

 アメリカでのリリースは3月末から5月に延期されてしまいましたが、日本盤は当初の予定通り4/6に先行リリースされるそうです。まぁ本体程のヒットは記録するわけないでしょうけど、ファンには堪らない1枚になるはず。俺はすっげー期待してますよ。

 ちなみにジョーはこのアルバムの為のソロ・ツアーはやらないそうです。それどころか、この夏には再びエアロの5人が再集結して、ライヴやら新作の準備を予定してるそうですよ‥‥やっぱり最初っから計画されてたことみたいですね。



▼JOE PERRY「JOE PERRY」(amazon

投稿: 2005 03 22 11:34 午後 [Aerosmith] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/12/04

まだまだあるよ、ボックスセット

 昨日のエントリで、年末商戦に合わせてボックスセットをリリースするアーティストが多いというお話をしましたが、前回挙げた他にもまぁボックスとまではいかないまでも、CD複数枚+DVD、あるいはCD+DVDというセット販売をする企画盤、結構あるんですよね。

 んで、最近話題になってるものをまた幾つか紹介してみようかと。大半が輸入盤ですが、モノによってはDVDがリージョンコード1で普通の家庭用プレイヤーで観れない代物もあるかと思いますので(PCでは観れるってのが多いのかな?)、それ目当てで購入を考えてる人はご注意を。


▼AEROSMITH「YOU GOTTA MOVE」[DVD+CD](amazon

 今年のツアーの模様を収めた、'80年代以降初の本格的ライヴDVD。実は復活後初?という貴重な代物。しかも今春MTVで放送されたドキュメント番組(90分)まで収録され、おまけにライヴテイク6曲+ "You Gotta Move" のリミックスによるCDまで付いてくる。未だに日本版リリース決まらないだけに‥‥けどリージョン1。くそー。



▼LINKIN PARK & JAY-Z「COLLISION COURSE」[CD+DVD](amazon

 MTVの企画でこの夏実現した奇跡のコラボレートのライヴDVD(MTVでのドキュメント映像付き)と、新たにスタジオセッションで録音したCDによる2枚組。最近ライヴ盤とかリミックスとか、この手の企画盤が多いLINKIN PARK、そろそろ純粋な新作が聴きたいところですな。



▼EVANESCENCE「ANYWHERE BUT HOME」[CD+DVD](amazon

 こちらも新作が待ち遠しいニューメタルバンドの、ライヴアルバム+ライヴDVD。KORNのカバー "Thoughtless" がちょっと楽しみ。ライヴでよくやってたスマパン "Zero" も入れて欲しかったなぁ。CDには未発表のスタジオ録音新曲 "Missing" も収録。これ聴いて来年の新作まで待てってことか。



▼A PERFECT CIRCLE「aMOTION」[DVD+CD](amazon

 先日リリースされたカバー+新曲によるアルバム「eMOTIVe」と対となる映像集に、リミックス音源を集めたCDが付いた作品集。全PVが収録されてるし、未公開映像もあるようなんですが‥‥これ、リージョン1なんですよね。購入にはくれぐれもご注意を。



▼「AXIS OF JUSTICE : CONCERT SERIES VOL.1」[CD+DVD](amazon

 SYSTEM OF A DOWNのサージやAUDIOSLAVEのトム・モレロが中心となって開催されたイベントの模様を収めたCD&DVD。クリス・コーネルやブラッドといった他のAUDIOSLAVEメンバーやレッチリのフリー、TOOL/A PERFECT CIRCLEのメイナード、MC5のウェイン・クレイマーがU2やエルヴィス・コステロ、ボブ・マーリーの曲をカバーしてるだけでなく、トム・モレロのアコースティックユニットの曲も収録されてるんですね。



▼ERIC CLAPTON「SESSIONS FOR ROBERT J.」[CD+DVD](amazon

 この春に出た「ME AND Mr.JOHNSON」CDに、そのリハーサル風景&セッションを撮影したDVDがセットになったもの。だったら最初に出せって話ですよね。これだけのために買っちゃいそうな内容ならいんですが。ま、クラプトンのファンは金持ってるオッサン多そうだし、問題ないか‥‥



▼SIMON & GARFUNKEL「OLD FRIENDS : LIVE ON STAGE」[2CD+DVD](amazon

 先にリリースされた2枚組CDに、同内容の映像版DVDを付けたデラックス・エディション。アート・ガーファンクルの麻薬所持逮捕でミソが付いてしまった感もあり、結局来日も実現せず幻となった再結成ツアー。これ観て(聴いて)泣いてください‥‥


投稿: 2004 12 04 12:05 午前 [2004年の作品, A Perfect Circle, Aerosmith, Evanescence, Linkin Park] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/08

とみぃ洋楽100番勝負(82)

●第82回:「Amazing」 AEROSMITH ('93)

 多分このアルバムからエアロに入ったという、現在20代の洋楽ファン、多いんじゃないかな? 今でこそ映画「アルマゲドン」の主題歌("I Don't Want To Miss A Thing")やコカ・コーラのCMソング("Jaded" 等)といった「誰もが一度は耳にしたことがある洋楽ソング」の仲間入りを果たしている彼等だけど、そういう意味での「一般層への知名度アップ」は多分この「GET A GRIP」という初の全米ナンバー1アルバムと、このアルバムを引っ提げて敢行された'94年4〜5月の来日ツアーのお陰だったんじゃないかな、と。何せ武道館&横浜アリーナで計10回近くの公演を全てソールドアウトにしたわけですからね‥‥

 そして。俺にとっても「GET A GRIP」というアルバムは初心を思い出させてくれた、思い出深い1枚なんですね。丁度学校も卒業した頃にリリースされて、フリーター生活も始まって。でも順調にいくはずだったバンドが空中分解して、ひとりぼっちになってしまって。あーこんなはずじゃなかったのに、人生どこで間違えたんだろう‥‥って初めて自分の選択を(一瞬だけど)後悔した時期でさ。バイトが終わると、とりあえずスタジオに行って個人練習で発声練習と簡単な弾き語りで歌をうたって。夜に家に戻って、ひとりコンビニ弁当食べながらテレビ観て音楽聴いて‥‥泣きはしなかったけど、あぁ何か違うなぁ‥‥って。

 珍しく対訳を読みながらこのアルバムを聴いててさ。最後の曲であるこの名バラード "Amazing" の歌詞を読んで、ハッとして。正に今の俺だったのよ、この歌詞は‥‥

It's amazing / with the bling of an eye you finally see the light / It's amazing / when the moment arrives that you know / you'll be alright / It's amazing / and I'm sayin' a prayer / for the desperate hearts tonight

 あー俺、まだ何にも始まってなかったよな。始まった気になってたけど、何も始めてなかったよな、って。そう思ったら泣けてきてさ。涙が止まらなくてねぇ‥‥自分の足下を見つめ直して、気持ちも新たに前を向いた瞬間に立ち会ってくれたのが、俺のロック童貞を奪ったオヤジ共だったと。

 この曲には他にもすっげー好きな歌詞があってね。

Life's a journey not a destination

あーホントそうだよなぁって、凄く納得させられて。父親のいない自分にとっては、正に「親父からの格言」みたいなもんでさ。この曲の歌詞の一言一句を噛み締めて、次の日からまた音楽活動に積極的になったんだよね。路上に出たり、ギター1本でも歌わせてくれるイベントに出させてもらったりしながら、新しいバンドを組もうと試行錯誤を繰り返し‥‥



▼AEROSMITH「GET A GRIP」(amazon:限定盤通常盤

投稿: 2004 11 08 12:00 午前 [1993年の作品, Aerosmith, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/09/18

とみぃ洋楽100番勝負(30)

●第30回:「Walk This Way」 RUN D.M.C. ('86)

 2度目のエアロ‥‥ってことになるのかしら。ま、この場合は単純に「エアロだったから」以上の要素が多いと思うんですが。

 ファルコの時に「初ラップ体験」を書きましたが、となるとここでは「初ヒップホップ体験」ってことになるんでしょうね。アルバム「RAISING HELL」もレンタルで借りてきて、そのカッコ良さが完全には理解できなかったものの、「要するに『ノリ』でしょ?」と判ったようなことを言ってた中3の夏。まだ「B-BOY」なんて言葉が日本で一般的になる前のお話ですよ。

 そうそう、RUN D.M.C.と出会ったからアディダスのスニーカーとかジャージを無理して買ったりしたなぁ(このアルバムにも "My Adidas" なる曲までありますからね)‥‥そう、俺のヒップホップ初体験は完全に「形から」だったんですよね(それは翌年のBEASTIE BOYSとの出会いにまで続く)。

 あ、エアロにも触れておかなきゃ。この前の年にエアロは「DONE WITH MIRRORS」というアルバムで復活するわけですが(当然買いました)、ガキの俺からしてもそんなに良いとは思えなかったのね。半分好きだけど、半分イマイチ、みたいな。けど、このRUN D.M.C.との共演は違ったわけ。当たり前だよ、小学生の頃から散々聴いてきた "Walk This Way" を更にカッコ良くやってるわけだから。アレンジ云々よりも、ジョー・ペリーのギターが相変わらずカッコ良かったのと、スティーヴン・タイラーの声が「DONE WITH MIRRORS」の時以上にロックしてること。これが衝撃だったんだよね。ここで完全に俺内エアロ熱が再発したもの。ま、エアロ完全復活までには、もう1年かかるんだけどね‥‥

 この年の12月には渋公だったかNHKホールだったか忘れたけど、初来日公演にも行きましたよ。エアロの方じゃなくて、RUN D.M.C.のね。だってさ、てっきりゲストでスティーヴンとジョーが来ると思ってたから。そんなわけないのにね。だからさ、アンコールだったか本編最後だったかでやった "Walk This Way" に思いっきり肩すかしを食らったんだよね‥‥まだガキだったからさ。そこが『本質』じゃなかったのにね。その後、彼等を観る機会はなかったんだけど(彼等が出演した時のフジロックにも行ってないしな。その後の悲劇を思えば、やはり無理してでも行くべきだったなぁ)、やっぱりいろいろ判ってきた今だからこそ、改めて観たかったよなぁ‥‥



▼RUN D.M.C.「RAISING HELL」(amazon

投稿: 2004 09 18 12:00 午前 [1986年の作品, Aerosmith, Run D.M.C., 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/08/22

とみぃ洋楽100番勝負(3)

●第3回「Back In The Saddle」 AEROSMITH('76/'78)

 多分、初めて聴いたエアロ・ナンバーがこれ。しかもスタジオ盤 「ROCKS」の方じゃなくて、ライヴ盤「LIVE! BOOTLEG」の方ね(両方共、アルバム1曲目がこの曲)。

 小学生時代、洋楽を聴くことが凄くカッコ良く思えてちょっとだけ背伸びしたかった俺は、5つ離れた兄貴のいる友人の家に入り浸って、そいつん家のリビングにあるステレオ(コンポじゃなくて、立派なステレオシステムな)で毎日毎日、あれやこれやと洋楽のアルバム/シングルを聴きまくってたのね。勿論、そいつの兄貴所有のものなんだけど。その兄貴もガキ相手に快くアナログ盤を貸してくれたのよ、傷とか汚れとか全然気にせずにさ。

 で、俺に「ギターとか弾いてみれば?」と勧めてくれたのも、その兄貴で。当時既にピアノとかエレクトーンを習ってたんで楽譜とか普通に読めたし、ギター弾くことに興味を持ってたのが唯一俺だけでね。そんで「とりあえずこれ聴いてみ。ギターがすっげーカッコいいから」といって手渡されたのが、前述の「LIVE! BOOTLEG」。

 多分ロックを聴いて衝撃を受けるとか小便チビるとか、そういった陳腐な表現じゃ収まりきらない程のショックを生まれて初めて受けたのが、このアルバムをプレイヤーにのせて針を落とした後だと思う。その後もいろんなバンドや音との出逢いに衝撃を受けたけど、後にも先にもこれを超えるような衝撃はないと思う。それくらい自分の中で何かが壊れた瞬間。童貞失った時でもそんな衝撃とか受けなかったしなー。あれか、しいて例えるなら「女性器を初めて直に見た時」の衝撃に近い‥‥のか?(苦笑)

 まーとにかく。俺の中にあったそれまで(といってもたかだか11〜2年程度だけど)の価値観を見事にぶち壊してくれたのがエアロであり、「LIVE! BOOTLEG」であり、この "Back In The Saddle" という曲であった、と。イントロの妖しさ満開なギターリフと、その後に訪れる驚異的なシャウト。そしてブッといリズム。これが全て。初めてエアロの写真を見た時なんて嬉しかったなぁ。「あー、音からイメージできる、まんまの恰好だ!」って。

 結局33才にもなって未だにロックというものに「華やかさ」とか「エンターテイメント性」とか「妖しさ」とかそういったモノを求めてしまうのは、きっとMONKEESとかそういったポピュラリティーある音楽からスタートして、このエアロで全てを悟ってしまったからなのかな‥‥じゃなきゃあれから20年以上経った現在も、こうやって「LIVE! BOOTLEG」を聴いてないよな‥‥

 小5の頃だったかな‥‥'82〜3年か。エアロはジョー・ペリーもブラッド・ウィットフィールドも脱退して瀕死状態だった頃だね。そして中学に入ると同時にオリジナルメンバーで復帰。その後の躍進については皆さん知る通り。

 多分、洋楽云々じゃなくて、俺の「ロック感」の根元を形成してるのは、このライヴ盤であり、そのスタート地点がこの曲なんですよ。だから今でも生でこの曲を聴くと否が応でも鳥肌が立つ。そんな忘れられない「ロック童貞」を奪った1曲。



▼AEROSMITH「LIVE! BOOTLEG」(amazon

投稿: 2004 08 22 10:14 午後 [1976年の作品, 1978年の作品, Aerosmith, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/04/13

AEROSMITH『HONKIN' ON BOBO』(2004)

前作『JUST PUSH PLAY』から丁度3年振りに発売された、AEROSMITHのスタジオ・アルバム14作目にあたる今作品は、10年くらい前から出る出ると噂されてきたブルーズのカバーアルバム。偶然にも同時期にエリック・クラプトンもかのロバート・ジョンソンのブルーズ・カバーアルバムをリリース、英米を代表するブルーズをベースにしたロック・ミュージシャンが、それぞれの個性をどう活かし、どうオリジナリティを確立するかが非常に興味深い「対決」となってしまいました。ま、本人達には競うなんて気持ち、全然ないでしょうけどね。で、俺も「同じブルーズを扱っても、絶対に別物になるだろう」って判ってたので、特に意識しなかったですけど‥‥

『GET A GRIP』リリース後暫くして「ソニー移籍前に、古巣のゲフィンでブルーズ・アルバムを出して、契約満了」という噂が出回ったのが最初でしょうか? このアルバムのツアーからジョー・ペリーが必ずステージでジミ・ヘンドリクスの「Red House」をプレイするようになったんだよなぁ(ま、それ以前からちょこちょこやってはいましたが)。だから余計に信憑性を感じてしまったりしてね。

その後、新作が出て、ツアーが終わる度に「次作はブルーズ・アルバム!」なんていう話があったよな気がするんですが、結局毎回ライヴ盤だったりベスト盤だったりで、いっこうに取りかかる気配は感じられず。ま、それ以上に「オリジナルの新曲」に力を注いでくれていたので、特に残念とは思いませんでしたけど。

前作『JUST PUSH PLAY』がある意味「従来の色(=80年代半ばの復活以降の色合い)」と「未来(=同時代性だったりテクノロジーだったりを導入)」とを結びつける意欲作だったこともあり、またその後に2枚組のオールタイム・ベストでとりあえずひと区切りついたこともあってか、ここでようやく本格的にブルーズ・アルバムに取りかかることになったのでした。前作から3年というインターバルも、ここ10年で一番短いし、何よりも前作から今作の間にベストがあったり2度の来日があったりで、そんなに間が空いたように感じなかったのも良かったですしね。

実は俺、ここに収められている11曲のルーツソング(ブルーズだけに拘らず、ルーツロック的なナンバーからゴスペルまで、意外と幅広いんですよね)の大半は、オリジナルの方を知ってたもんで、選曲には特に意外性は感じなかったものの、「一体どういう風に料理するんだろう?」というエアロらしさの表現方法/アレンジが非常に気になってたんですよね。まんま“どブルーズ”してしまうのか、それともアレンジしまくるのか‥‥。

実際に出来上がったカバー曲達は‥‥多分原曲を知らなかったら全部エアロのオリジナル新曲に聴こえてしまうんじゃないか?と思える程、完全に自分達のものにしてしまってるんですよ。どこからどう聴いても、正真正銘のエアロ節。原曲を完全に崩してしまったものもあれば、比較的オリジナルに近いものもある。ユルユルな曲もあれば、鬼気迫る緊張感を感じさせるテイクもある。完全に楽しんでるな、ってのがそのサウンドから存分に伝わってくるわけですよ。お仕事としてのアルバムではなく、お遊びとしてのアルバムなんだな、と。それが嬉しくてね。こんなにカッチリしてないエアロのスタジオテイクを聴くの、下手したら『DONE WITH MIRRORS』以来だからね。

これはもう、ブルーズ・アルバムというよりは、「ルーツロック・アルバム」と呼んだ方が正しいかもしれないね。特に頭4曲の流れとか聴いちゃうとさ‥‥ブルーズに限定されてないわけじゃない、これらの曲って。アレンジ的にもさ、その辺に全然拘ってないわけだし。というよりも‥‥例えば初期の作品‥‥『GET YOUR WINGS』での重さや『TOYS IN THE ATTIC』でのポップさを同時に持ち合わせているような、そんな感覚。決してコンテンポラリーなサウンドではないんだけど、かといって古くさくもない。それはきっと、エアロ自身が枯れてないからだろうね。スティーヴン・タイラーの歌聴いてると、枯れるどころかドンドン若返ってる気がするし(その反面、ジョー・ペリーのボーカルはドンドン枯れてってるんだよね、いい意味で。ギターは相変わらず若々しいんだけど)。このバランス感が残ってるから、ただのブルーズのカバーアルバムに落ち着かなかったんだろうな、と。

唯一収録されたオリジナル新曲「The Grind」も、いい意味でセカンド~サード辺りにまでレイドバックしてるし。意識したわけじゃないんだろうけど‥‥勿論、今の彼ららしさも十分に残しつつね。そこはさすがだわ。時代と対峙していくエアロも勿論大好きだけど、やっぱり俺はこういう「得意なことをストレートにやる」エアロも大好きなわけでして。ま、所詮は80年代初頭からリアルタイムで追い続けてるオールドファンですからね!



▼AEROSMITH『JUST PUSH PLAY』
(amazon:国内盤CD海外盤CD

投稿: 2004 04 13 12:00 午前 [2004年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2004/03/03

AEROSMITH『GET YOUR WINGS』(1974)

AEROSMITHが1974年に発表したセカンドアルバム。ファーストからのシングル「Dream On」が全米チャート・トップ100に入る小ヒットを記録したことから、レコード会社はセカンドアルバムを勝負作と考え、プロデューサーに当時アリス・クーパーの諸作品で既に成功していたボブ・エズリンを起用。ボブはKISSやPINK FLOYD等で知られている通り、緻密に作り込まれた作品を得意とする人。しかし当時のエアロは「よりシンプルに、よりストレートにロックした」作品を目指していたため、意見の食い違いが生じ、結局バンド側の意向を汲んだボブが身を引き、代わりにジャック・ダグラスを紹介。ここでの出会いが、後の名盤連発へと繋がるのでした。

■全曲解説■

●M-1. Same Old Song And Dance
アルバムからのシングルとなった、小気味良いシャッフルナンバー。軽快そうな印象なんだけど、意外とリズムが重い。そう、これがファーストとの大きな違い。ストレートで軽い印象があったファーストと比べ、全体的にどんより且つドッシリしてるリズムがこのアルバムの肝だと思ってます。勿論それだけじゃないですけどね。ポップで親しみやすいメロディを持ちながらも、演奏は結構重いという、後の彼らのプロトタイプとなった1曲かも。途中から被さるブラスもいい味出してますしね。

●M-2. Lord Of The Thighs
イントロでのヘヴィで、いろんなエフェクトをかけたギターと、ピアノの音色が印象的なミドルチューン。とにかくヘヴィ。スティーヴン・タイラーの、低音から高音へとどんどんキーが高くなっていくメロディの流れが絶妙。とにかくただひたすらカッコいい1曲。『GET A GRIP』ツアーまではよく演奏されてましたが‥‥また聴きたいですね。

●M-3. Spaced
一聴して地味な印象が強い曲だけど、メロディやコード進行、中盤での展開には非凡で光るものが感じられる不思議な曲。ちょっとソウルっぽい印象もありますよね。ギターサウンドも面白い音色を使っていて、本当にライヴを意識した作品なのかどうかはちょっと疑問。だって所々、ボブ・エズリンっぽいアイディア満載だし。アドバイスくらいはしたのかな?

●M-4. Woman Of The World
これまた重いリズムを持ったヘヴィーロック。イントロでのアコギのアルペジオや、ミドルテンポで始まって、途中でアップテンポにシフトチェンジして、また元に戻るという展開が面白い(ちょっとFACESの「Stay With Me」っぽい?)1曲で、とにかくギターのフレーズ/重ね方が凝ってる。ライヴでは殆ど演奏される機会がないだろけど、今だからこそやって欲しい、意外性の1曲。

●M-5. S.O.S. (Too Bad)
イントロのリフがカッコいい、ソウルフルなロックチューン。『LIVE BOOTLEG』での名演が有名だけど、このスタジオバージョンもただただカッコいい。やはりこのアルバムって、ギターのアンサンブルに時間をかけてるんだよね。リフやバッキングひとつ取っても、とにかくひとつの曲にいろんなフレーズが出てくる。シンプルを目指したはずなんだけど、実はかなりプログレッシヴな曲が多いのもこのアルバムの特徴。そんな中でこの曲は一番シンプルなんだよね(唯一の2分台ってこともあるしね)。一度でいいからライヴで聴いてみたい1曲。

●M-6. Train Kept A Rollin'
もはや説明はいらないでしょう。原曲以上に「エアロのバージョン」で有名になってしまったこの曲、元は1950年代のロカビリー・ナンバーなんですが、その後60年代にYARDBIRDSがカバー。このエアロ・バージョンはそのYARDBIRDSのバージョンを参考にしたと言われています。ライヴでのストレートなバージョンと違って、このスタジオテイクは2部構成。前半はミドルテンポのヘヴィなアレンジになっていて、これはこれでカッコいいのね。で、一旦終わったと思わせてからスタートする疑似ライヴテイク。こちらが現在でも演奏されているライヴバージョンの元。もはやロックンロールのスタンダードのひとつですね。このリフ、絶対に弾きたくなるもんね。

●M-7. Seasons Of Wither
アコギのアルペジオが印象的な、一風変わったバラード調ナンバー。バラードといっても「Dream On」とは対照的な、穏やかな流れで、途中で劇的に盛り上がるでもなく、どことなくサイケな雰囲気でゆったりと最後まで流れていくといった印象。俺、この曲がかなり好きでして。隠れた名曲揃いのセカンドの中でも一番好きな曲かも。ライヴ受けは悪そうだけどね。

●M-8. Pandra's Box
アルバムラストを飾るのは、ROLLING STONESの「Crazy Mama」を彷彿させる、ミドルヘヴィなロックンロール。やはりこの曲もリズムとリフが要。けど、ストーンズみたいにカラッとならず、どこかジメッとしててひねくれた印象が強いのが、エアロらしいというか、既にサードへの伏線を見せているんだよね。そういえばこの曲、珍しくクレジットにジョーイ・クレイマー(Dr)の名前が。リズム面でのアイディアが採用されてのことでしょうか。この曲でもピアノとかブラスが大活躍してて、とにかくゴージャス。

■総評■
ファーストが「ガレージロック」風な色合いが強いブルーズロックだとしたら、このセカンドは「サイケ」風ヘヴィロックンロールといった感じでしょうか。エアロの作品の諸作品の中でも特に地味な印象が強いこのアルバム、実は隠れた名盤としてフェイバリットに挙げる人が意外と多いのも事実。実際、俺にとってこの『GET YOUR WINGS』って、ストーンズにおける『BLACK AND BLUE』みたいな1枚なんだよね。実は凄いことやってるんだけど、全然そういうふうには聴こえない、非常に損な役回りの1枚。みんな騙されるなよ!?

「よりシンプルに、よりストレートにロックした」作品を目指したはずが、いざ完成してみれば、ライヴで再現できないくらいギターを重ねてみたり、転調/展開が多い曲調だったり、メンバー5人以外のサポートメンバー(ピアノやブラス隊)を積極的に導入してみたりと、考えようによっては続く3作目への伏線が見え隠れし、そういう意味では「サードへのプロトタイプ的」作品と呼べなくもないですね。けど、決定的な違いはリズム感。とにかく重い。この重さは後に『ROCKS』というアルバムで再び再現されるのですが、本当にこれがあのファーストを作ったのと同じバンドか?と疑ってしまう程の成長が伺えます。エアロに手を出す時、まぁまず最初に聴くべき作品ではないものの、深く付き合ってしまうとたまらなく魅力的に思える、そんなアルバムです。



▼AEROSMITH『GET YOUR WINGS』
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投稿: 2004 03 03 12:00 午前 [1974年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2004/01/19

AEROSMITH『NINE LIVES』(1997)

AEROSMITHが97年3月に発表した、通算12作目のオリジナルアルバム『NINE LIVES』。前作『GET A GRIP』から約4年振りだったんだけど、この間に大規模なワールドツアーがあったり(ここ日本だけでも武道館クラスを10回近く埋めたんだからね)、Geffen Records移籍以降のヒット曲を収めたベスト盤『BIG ONES』(1994年)があったり、それなりに話題は欠かなかったわけです。しかも、この『NINE LIVES』というアルバムは、古巣であるColumbia/Sonyへの再移籍後第一作目となる記念すべき1枚。当然大掛かりなプロモーションが行われ(アルバムのリスニング・パーティーのためだけに来日したり、生放送の歌番組に出演したり等、以前では考えられなかったような展開が繰り広げられたのでした)、アルバムは前作に続き全米ナンバー1を記録。ここ日本でもCMソングとして収録曲の「Nine Lives」が起用されたり等の効果もあり、50万枚近いヒットを記録しました。

けどね、このアルバム最大のヒット理由‥‥それはこのアルバムの数ヶ月後に発表された「I Don't Want To Miss A Thing」という楽曲によるものが大きいのです。ご存知の通り、映画「アルマゲドン」の為に録音されたこの曲、『NINE LIVES』には収録されていません。が、この曲はあれよあれよという間にチャートを駆け上り、同年夏には遂に全米ナンバー1を獲得してしまうのです。アルバムからのシングルだった「Falling In Love (Is Hard On The Knees)」や「Hole In My Soul」、「Pink」等はトップ10にも届かなかったのにね‥‥皮肉といえば皮肉です。けど、そういった思わぬシングルヒットのお陰で、ここ日本でもアルバムは大ヒットしたわけですから、ありがたや「アルマゲドン」様‥‥といったところでしょうか?

プロデューサーは、後にTHE BLACK CROWESやDREAM THEATER、IRON MAIDEN等を手掛けることになる新鋭エンジニア、ケヴィン・シャーリーが初めて手掛けています。最初はグレン・バラッド(アラニス・モリセットを手掛けたことで一躍有名になったソングライター兼プロデューサー)と作業していたものの、メンバーが納得いかなかったため、新たにケヴィンを迎えて作り直されたという話があります(実際「Pink」等はグレンのテイクをそのまま使用していますしね)。また、陰度のドンと言われるジョン・カロドナーとの確執、マネージメントとの不和等、とにかく音楽的な不安要素以上に外的不安要素が多かった、難産の末に生まれた1枚だったようです。

いろいろなところで「『GET A GRIP』程の作品じゃない」とか「『PERMANENT VACATION』以降のアルバムでは一番の駄作」なんて声も聞こえてくるこのアルバム、果たして本当にそんなに酷い作品なのか‥‥全曲解説しながら追っていきましょうか‥‥


●M-1:Nine Lives
スティーヴン・タイラーとジョー・ペリー、そして職業ライターとしても有名なマーティ・フレデリクセンとの共作。アルバム1曲目を飾るに相応しいストレートなアッパーチューン。イントロでのジョーのギターと猫の鳴き声のようなスティーヴンのスクリームに鳥肌を立て、そこから雪崩のように突入するバンドサウンドは圧巻。エレクトリック・シタールのような音色のインドっぽいフレーズが挿入されたりするのが印象的。とにかく「4年間待たせたな!」と言わんばかりの攻撃的な1曲。

●M-2:Falling In Love (Is Hard On The Knees)
アルバムからの第1弾シングルとなった、80年代「復活後」エアロの延長線上にある1曲。スティーヴンとジョー、そしてグレン・バラッドによる共作。ブラスやピアノの音が気持ちいい1曲で、途中で訪れる転調等はさすがと言わざるを得ないでしょう。ギター2本の組み合わせ(違ったバッキングが被さる)もさすがだし。けどこの曲の良さはそのものズバリ、歌メロにあるのではないでしょうか。大したことないと思われがちの曲ですが、50~60年代のポップスにも通ずるポップセンスは、前作での「Cryin'」や「Crazy」等でも伺えましたが、ここで一気に開花したといった印象。そしてその究極の形が、後に誕生する「Jaded」なんですよね‥‥

●M-3:Hole In My Soul
アルバムからの第2弾シングルとしてリカットされた、パワーバラード系の1曲。スティーヴン&ジョー、そしてお馴染みデズモンド・チャイルド(エアロ復活後の一連のヒット曲や、BON JOVIの大ヒット曲等を手掛けてきたソングライター/プロデューサー)との共作。ジョーのスライドギターがとにかく印象的な曲で、イントロやアウトロ、中盤のソロで聴けるプレイは一聴の価値あり。ストリングスも導入された過剰な演出は、後の「I Don't Want To Miss A Thing」にも通ずるものがあります。が‥‥こっちは大きなヒットにはならず。この曲を聴くと‥‥特にBメロからサビにかけての盛り上げ方/メロディの運び方が80年代的‥‥例えばNIGHT RANGERやBAD ENGLISHといった産業ロック系のパワーバラードに共通する色を感じるんですが、如何でしょうか?

●M-4:Taste Of India
スティーヴン&ジョーとグレン・バラッドによる共作。タイトル通り、インドテイストを強く表現したヘヴィチューン。シタールっぽい音色やストリングスが効果的に使われていて、ちょっとLED ZEPPELINの「Kashmir」を彷彿させますが、単なる亜流に終わっておらずちゃんと「エアロ流」になってます。というか、どこからどう聴いてもエアロ以外の何者でもないんですけどね。実は曲としては単調なんですけど、演奏でそこを見事にカバーしてる感が強いですね。そういえばこの曲、アルバムにはケヴィン・シャーリー版が収録されていますが、以前何かのシングルに収録されたものなのか、ラジオでグレン・バラードのプロデュース版を聴いたことがあります。こっちのバージョンはドラムがジョーイ・クレイマーではなくて、セッション・ドラマーが叩いたテイクなんですが‥‥正直、マニア以外は聴かない方がいいと思いますよ。全然覇気が感じられないテイクでしたから。

●M-5:Full Circle
アルバムからの第4弾シングルとしてリカットされた、カントリーテイストの強いバラード系ナンバー。スティーヴンと職業ライターのテイラー・ローズとの共作。タイプとしては「What It Takes」(アルバム『PUMP』収録)の流れにある1曲なのですが、もっとポップス色が強く、はっきりと「GET A GRIP」からの流れを意識してるのが読み取れます。悪い曲ではないですが、『NINE LIVES』にはこのタイプの楽曲が他にも沢山入ってるので、正直‥‥ただ、バンドとしてのパフォーマンスはさすがとしか言いようがありません。

●M-6:Something's Gotta Give
スティーヴン&ジョーとマーティ・フレデリクセンによる共作。「Nine Lives」にも通ずるストレートなアッパーチューン。イントロでのインダストリアル・ノイズに一瞬ハッとさせられますが、その後は良く言えば「いつものエアロらしい」、悪く言えば「何の代わり映えもしない」1曲。このアルバムの弱点を挙げるとするならば、それは楽曲のバリエーションがそんなに広くなく(=『GET A GRIP』のラインを狙い過ぎ)、尚かつ似たり寄ったりなアレンジの曲が多過ぎるということ。アッパー系の2曲が同じようなタイプだったり(ハーモニカを用いるところまで一緒だし)、バラード系もね‥‥多過ぎるんですよね。勿論、楽曲自体は悪いとは思わないし、演奏は素晴らしいものなんですが‥‥。

●M-7:Ain't That A Bitch
METALLICAにも似たようなタイトルの楽曲がありますが、全く別の曲。スティーヴン&ジョーとデズモンドによる共作。ここで初めてこれまでになかったタイプの楽曲が登場。ちょっとブルージー且つジャズっぽいテイストのスローチューンで、まぁバラードとも呼べなくもないけど、ちょっと違うかな。スティーヴンのボーカルがとにかくセクシー。あまり指摘されないけど、この曲でのリズム隊による「歌を盛り上げる」ためのプレイは圧巻だと思います。後半に登場するストリングスが個人的には余計かな?という気もするんですが‥‥シングルやライヴには向かないけど、アルバム用としては十分に機能するアクセント的1曲。

●M-8:The Farm
ちょっとBEATLESの「I Am The Walrus」に似たイメージのへヴィチューン。スティーヴン&ジョーとマーク・ハドソン他による共作。「不思議の国のアリス」をモチーフにした楽曲で、実際同名映画でのセリフをそのまま挿入したりして、「I Am The Walrus」っぽいサイケさを強調しています。ストリングスやブラスが被さって更に重厚なイメージを作っていますが、メロディ自体は如何にもBEATLES好きなエアロらしいシンプルなもの。アイディアの割には曲が‥‥という印象もなきにしもあらず。ちょっと空回りし過ぎかな? ま、この辺の課題は次作にまで持ち越されるわけですが‥‥。

●M-9:Crash
エアロ版パンクソングといったイメージの強いファストチューン。スティーヴン&ジョーとマーク・ハドソン他による共作。イントロ部分でうっすらと「Toys In The Attic」が聞こえていたり、曲全体の印象が「Rats In The Celler」に似ていたり等、過去の名曲の路線を踏まえた内容なのですが、演奏が若々しいこともあってか、非常にパンキッシュな印象を受けます。考えてみればこのアルバム自体、時代に逆行したという意味ではパンキッシュな1枚なんですけどね(ヒップホップやヘヴィロックが蔓延する中、従来のエアロらしさを固持している点はさすがとしか言いようがないですしね)。ギターの暴れ具合も素晴らしく、そこに絡んでくるハーモニカといい、ボトムをしっかり支えるリズム隊といい、とにかく文句なし。まるでガレージに集まって「いっせーのーせー」で演奏してるかのようですね。

●M-10:Kiss Your Past Good-Bye
スティーヴンとマーク・ハドソンによる共作。カントリーやサイケの色合いを持つミドルチューン。BEATLESっぽさを感じさせるという意味では、前作での「Livin' On The Edge」等の流れにあるといっていいでしょう。演奏は意外とヘヴィなんですけど‥‥あまり印象に残らないのも確か。悪い曲ではないんですが‥‥途中、歌詞が「Kiss your past good-bye」から「Kiss your ass good-bye」に変わってる辺りはさすがと思いますけどね。

●M-11:Pink
スティーヴンとグレン・バラード、そしてリッチー・スパによる共作。アルバムからの第3弾シングルとしてリカットされ、何故かその後のライヴでもずっと演奏されている謎の1曲。正直、ライヴで聴くと退屈極まりない曲なんですけどね‥‥ラジオ向けという印象の、アコースティック色の強いカントリー調ポップソング。

●M-12:Falling Off
日本盤及びヨーロッパ盤にボーナストラックとして追加収録された1曲。ジョー&スティーヴンとマーティによる共作で、ジョーがリードボーカルを取るROLLING STONES風のアーシーなロックンロール。イントロでのリフを聴くと、70年代の‥‥『DRAW THE LINE』辺りの彼らを思い出します。けど歌メロやアレンジは「80年代復活後」の彼らなんですよね。個人的には悪い曲だとは思わないし、まぁアルバムに1曲はあってもいいかな?というタイプ。ただ、完成度だけでいうなら前作の「Walk On Down」(同じくジョーがボーカルを取る曲)の方が上だったけどね。

●M-13:Fall Together
日本盤のみに追加収録されたボーナストラック。スティーヴンとマーク・ハドソン等による共作。これもちょっと70年代的な色合いを持つ、シンプルなミドルテンポのロックンロール。悪い曲ではないけど、正直このアルバムの色には合わない気が。ま、だから本編から外されたわけだけど(だったらそんな曲をボーナストラックとはいえ、アルバム本編の中に挿入するな!って話もありますが)。こういう曲を喜んで聴くのは、多分ハードコアなエアロのファンか、初期のシンプルなロックンロールをやってた頃のエアロが好きだったオールドファンか、単純に今のエアロが気に食わない人達くらいじゃないでしょうか。ま、あってもなくてもいい曲ですね。嫌いじゃないけどさ。

●M-14:Attitude Adjustment
スティーヴン&ジョーとマーティによる共作。ヘヴィ且つグルーヴィーなミドルチューンで、個人的にはアルバムの中でも1,2を争う程好きな曲。シングル向きではないけど、アルバムの中ではいいアクセントになるナンバー。多分ライヴでやっても盛り上がらないだろうけどさ‥‥適度なポップさを保ちつつしっかりヘヴィ。当時多くのバンドがヘヴィの意味を履き違えていた中、本家といえる彼らは何らスタイルを変えることなく、平然とこういうことをやってのけたのだから‥‥さすがだね。

●M-15:Fallen Angels
アルバムラストを飾るサイケなバラードナンバーは、スティーヴン&ジョーとリッチー・スパによる共作。前作でいうところの「Amazing」のラインを狙ったんだろうけど、完全に違ったものとして完成しましたね。前作では悲壮感の中にも一筋の光が見えるような希望を持った1曲でしたが、今回は‥‥アルバム全体がどことなく「ダーク」で「サイケ」な色合いを持っているためか、ちょっとひねくれた印象を受けます。何もない所にお花畑が見えちゃうような‥‥ズバリ言っちゃえば「トリップ感」を味わえる1曲とでもいいましょうか。そういえばこの頃、以前所属していたマネージメントから「彼ら(エアロのメンバー)は再びドラッグに手を出し始めた」なんて難癖を付けられましたが、それはこの作風を指して言っていたのかもしれませんね。もしかしたら‥‥実際にやってたのかもしれませんけど。まぁ個人的にはドラッグやろうがやるまいがそんなに気にしないんですが‥‥このアルバム全体を覆う「一枚幕を被せたかのようなこもり具合」が、確かにそれっぽいんですよねぇ‥‥真相は本人達にしか判らないわけですが‥‥エンディングで延々続くアシッドテイストの演奏も、如何にもそれっぽいし。ま、個人的にはラスト2曲の流れは大好きなんですけどね。エアロのアルバム中、最も好きな流れかも。


●総評
とまぁ長々と解説してきましたが‥‥何故このアルバムが駄作呼ばわりされるのか、途中で何度か欠点を挙げていますが‥‥とにかくね、曲数が多い(日本盤はオリジナルよりも2曲多い)/収録時間が長い(日本盤はトータルで70分超)/似たようなタイプの楽曲が多い(特にバラード系ね)等々。楽曲単位でいえば前作よりも平均的に完成度が高いと思うんですが、例えば前作にあったような決定的名曲が存在しない。「Livin' On The Edge」や「Eat The Rich」、「Amazing」みたいなのがね。あと、タイミングも悪かった。「I Don't Want To Miss A Thing」がすぐ後に出て、そっちが爆発的にヒットしちゃったでしょ。その影響で印象が薄らいだってのもあるよね、残念ながら‥‥だからなのか、このアルバムからシングルカットされた楽曲ってバラードタイプばかりで、ロック色の強い曲ってリカットされてないんですよね。その辺りが、従来のエアロを愛するファンから敬遠された理由なのかもしれません。ま、シングル云々は蛇足ですけどね。

個人的にもこのアルバム、そんなに好きな作品ではなかったんですが‥‥改めて聴いてみたら、意外といいと思えたんですよ。少なくとも、リリース当時よりも好きですよ。でね、俺はこう解釈します。前作「GET A GRIP」リリース時のインタビューで、スティーヴンは「これこそエアロ版『SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』だ!」と発言してるんですよ。というのを受けて‥‥俺はこの『NINE LIVES』を「エアロ版『MAGICAL MYSTERY TOUR』」と呼びたいと思います。じゃあ『JUST PUSH PLAY』は『ホワイト・アルバム』か!?と突っ込まれそうですが‥‥とにかく『GET A GRIP』から『JUST PUSH PLAY』の3枚は、一直線上に並ぶ作品だという事実だけは、間違いないと思います。



▼AEROSMITH『NINE LIVES』
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投稿: 2004 01 19 12:00 午前 [1997年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2002/02/24

AEROSMITH『JUST PUSH PLAY TOUR 2002』@東京ドーム(2002年2月3日)

ライヴから既に3週間以上経ったんだけど、それでも明確に覚えてる。それだけ強烈な2日間だったし、素晴らしい内容だったからだ。

日曜日。前日と違ってこの日は雨。同じく17時スタートだったのだけど、丁度競馬帰りのオッサン共とぶつかって、水道橋駅周辺は予想以上に大混雑。この日は前日よりも遅い16時半頃に駅に着いたのだけど、なかなか進めなかったりで、結局会場内で着席できたのは開演時間の10分前だった。流れる音楽は前日と全く同じだが、今日は素面だったので、大音量のリズムに身を委ね、しばし聴き入ってしまう。BEATLES「Revolution」やROLLING STONES「All Down The Line」等‥‥。

17時を10分程過ぎた頃、会場が暗転。前日と同じように「Beyond Beautiful」からスタート。今日のスティーヴンは着物をアレンジした上着を羽織ってシャウトする。少しだけ冷静に聴けたせいか、心なしかスティーヴンの声が前日よりも辛そうな印象を受けた。もっともそうは言っても、その辺の若手バンドの何十倍も声が出てるんだが。

この日の基本的なセットリストは前日から特に劇的な変化はなく、最終日(しかも今回のアルバムに伴うツアーのラストでもあったらしい)だからといって特別な曲が演奏されるということもなかった。前日やらなくてこの日やった曲といえば「Big Ten Inch Record」くらいなもんで、それすら日本ツアー前半で演奏されていた曲だ。前日の熱演を長すぎると感じたのか、それとも周りから注意されたのかどうか判らないが、曲数も2曲削られ、更に即興的なものも余りなかった。そういう意味では、この日曜のステージこそがこのツアーの基本形なのかもしれない。土曜の2時間半に渡るあのステージを観れた約5万人というのは、ある意味ラッキーだったのかもしれない。

そんな気まぐれが30年以上経っても未だにまかり通ってしまうエアロというのは、本当に凄いの一言に尽きる。そしてこの日スティーヴンが言った「Express yourself!」という言葉。これにエアロの凄みの原点が集約されているような気がした。抑える事を知らない50越えたオヤジ共‥‥この先どこまで行ってしまうんだろうか?

最後の最後で、スティーヴンがステージ上から今回のツアーに関わった人間やプロモーターに対して感謝の言葉が述べられた。この辺はさすがに最終日っぽくて、ちょっとだけ和やかな雰囲気になる。そして一番最後の最後で、この日一番の問題発言が‥‥

スティーヴン「See you in...Joe?(と言ってジョーにマイクを向ける)」

ジョー「June(真顔で)」

だそうです、ファンの皆さん。最初、外タレ特有のリップサービスだろうと思ったのだけど‥‥やっぱり何かフェスかイベントでもあるんすかね? 何にせよ、また大枚はたいて追っかけなきゃならないことになりそうな予感‥‥(苦笑)。


<セットリスト>
01. Beyond Beautiful
02. Love In An Elevator
03. Just Push Play
04. Jaded
05. Big Ten Inch Record
06. Pink
07. Sick As A Dog
08. Mama Kin
09. No Surprize
10. Light Inside
11. Sunshine
12. Dream On
13. Drop Dead Gorgeous
14. Stop Messin' Around
15. Draw The Line ~ Joe Perry Guitar Solo
  ~ Draw The Line
16. I Don't Want To Miss A Thing
17. Cryin'
18. Mother Popcorn
19. Walk This Way
20. Uncle Salty ~ Sweet Emotion
  ~ Peter Gun
-Encore—
21. What It Takes
22. Train Kept A Rollin'

投稿: 2002 02 24 12:00 午前 [2002年のライブ, Aerosmith] | 固定リンク

2002/02/20

AEROSMITH『JUST PUSH PLAY TOUR 2002』@東京ドーム(2002年2月2日)

自分が最後にエアロを観たのって、思い返してみれば何と94年4~5月の「GET A GRIP TOUR」で‥‥既に8年近くもの月日が流れていたわけで。その間に彼等は2度、「NINE LIVES」ってアルバムを引っ提げて98年3月と99年12月~00年1月にドームツアーを行っていて、特に98年の方はドーム2日分のチケットも取ってあったにも関わらず、東京から実家へ戻り、しかもその途端に祖母が重病で入院してしまい、とてもライヴに行く為に東京へと出ていける空気ではなかった(しかも無職だったし)。結局チケットは東京にいる友人に譲り、次の来日を待つことになるのだが‥‥今度の「ミレニアム・カウントダウン」ライヴは自分の転職~長期出張予定等と重なり(結果的には重ならなかったが)、これも断念せざるを得なかった。今なら「平日!?大阪ドーム!?全然平気♪」と言える立場なのだが‥‥。

そんな苦渋の日々を経て早8年。『JUST PUSH PLAY』という素晴らしいアルバムと共にオヤジ共5人衆は戻ってきた。しかも今回は東京ドーム2日間、それも土日公演だ。迷わず両公演のチケットを確保。ええ、何してでも行きますよ、今回だけは。ライヴ1週間前に仕事が急に忙しくなったり会社の体制が変わったり、またその為の激務がたたって体調を壊したりと、とことんついてなかった自分だが、何とかライヴにだけは行けるようだ。この半月、この為だけに頑張ってきたと言っていいだろう。

直前に1月のUSツアーのセットリストを見つける。成る程、かなり好みの選曲だ。新作から4~5曲演奏され、80~90年代のヒット曲が極力減らされている。個人的な意見だが、正直もう「Dude」や「Rag Doll」はやらなくてもいい時期にきてると思っていたし、飽きてもいた。だったら新作からもっと曲増やすとか、これまで余り演奏してこなかった曲とかを入れて欲しいな、とか勝手に思っていた。

さて、当日。17時スタートという通常では考えられない時間からのスタートとなるため、16時過ぎに東京ドームがある水道橋駅に到着。ドームに入るまでに幅広い年齢層のライヴ入場者と思しき人達に遭遇。それこそ中学生くらいの男子女子から、40歳は遙かに超えているであろう「70年代リアルタイム通過派」まで。これがストーンズだったら10歳ずつずれるんだろうな(10代が少なくて、20代~50代といった感じに)‥‥なんて考えながら、ドーム内に入る。入った途端に、場内に流れるMOTLEY CRUEの「Dr.Feelgood」(!)。そうそう、こういう派手なアメリカンロックを聴くために俺はここに来たんだよ! ホント、派手な出迎えだぜ。この日は総じて、新旧の派手目なロックがずっとかかってたな。BUCKCHERRYやINCUBUSといった最近のバンドからTHE WHO、JIMI HENDRIX、BEATLES、ROLLING STONES等々‥‥ビール片手に既に出来上がっていた俺は、こういったロケンローに耳を傾け、気持ちよく酔っていった。

自分の位置はアリーナBブロックの最右方。斜がつきすぎて意外と観にくい。遠近感が取りにくくて‥‥何かステージ左右に延びた花道の後ろに観客が沢山いるなぁ‥‥そうか、これがファンクラブを通じて集った観客か。噂では昨年4月のプロモーション来日時に、横浜アリーナでのBON JOVIのステージを観たそうで、そこからヒントを得たなんて話も(BON JOVIはステージ上にバーカウンターがあって、ラジオや雑誌、ファンクラブから抽選で選ばれた人間がバーカウンターからライヴを観ることができる)。しかし‥‥これはステージ左右に小さめのクラブのフロアがあるような感じか、とにかく人・人・人なのだ。これってBON JOVIっていうよりも、METALLICAが「BLACK ALBUM」ツアー前半に用いた「スネーク・ピット」みたいな感じじゃない? 本当ならちょっと羨ましいんだけど、既に酔ってたので気にならず。

17時を20分以上過ぎた頃になって会場が暗転。そこら中から大歓声が‥‥おお、さすが5万人近く入るドームだけあって、もの凄い歓声だ。すると会場内に電話をかける音‥‥そしてシタール風音色のアルペジオが‥‥そう、新作『JUST PUSH PLAY』1曲目、「Beyond Beautiful」からライヴはスタートだ。スティーヴンは白のGジャン、ジョーは星条旗をモチーフにしたレスポールを構える。ブラッドはストラト‥‥かな? トムは5弦ベースでこのヘヴィな曲の低音を支える。ジョーイのドラムも8年前に聴いた時よりもいい感じ‥‥とはいかず、そこは極悪音響の東京ドーム。時々ギターの轟音にドラムがかき消されることが何度かあった。自分の位置のせいなのか、それともドーム特有のものなのか。何にせよ、ジョーのギターがとにかくカッコイイの何のって! ソロ弾きまくりで、ここまでやられると気持ちいいっつうの。続く同じミディアムヘヴィの大ヒット曲「Love In An Elevator」でもこれでもか!?って程にソロを弾きまくるジョー。カッコよすぎ! それにしてもスティーヴンの声量も8年前と何ら変わらないことがとにかく驚きだ。記憶が多少薄らいでいるってのもあるだろうけど、それにしても‥‥本当にこいつら、俺の親世代かよ!?(汗)

2曲終えたところで、スティーヴンが「俺が『Just push play~』って唄ったら、みんなは『Fuckin' A』って続けて唄うんだぜ?」という前確認をしてから、新作タイトルチューン(そして俺が新作の中で最も好きな曲でもある)「Just Push Play」を披露。多少スタジオテイクよりキレの悪さを感じるところがあったが、サポートメンバーのキーボーディストがメガフォンを使って例のラジオボイスを再現したりして(中盤、スティーヴンも使用)、それなりに見せ場はあったかな。この曲でジョーはレフトハンドのストラトを使ってたな‥‥'80年代はよく使ってる写真をみかけたけど、この人はやっぱどんなギターを持ってもさまになるな?

そして新作からもう1曲、大ヒットチューン「Jaded」をおみまいする。ここで大いに沸くオーディエンス。この日最初のピークが訪れる。それにしても‥‥デビューして30年近く経つバンドなのに、新曲が初期のヒット曲と同じような支持を得ているなんて、殆ど奇跡じゃないだろうか? スクリーンにはPVをそのまま流していたが、曲といい映像といい、ホントに感覚がエアロを聴くであろう年代(10~20代)に近いというか、いい意味で「成長してるんだけど成熟してない」感が強いっていうか。ホント、スゲェとしか言いようがないって。続いてこの日最初の70年代ナンバー「Same Old Song And Dance」。数年前に出たライヴ盤『LITTLE SOUTH OF SANITY』のアレンジまんまで、エンディングでのトムのベースソロ(フィンガーピッキングでの12連符!)がやはり見せ場となる。

何故か前作『NINE LIVES』から1曲だけ「Pink」が続けて演奏される。この曲、そんなにいい曲だろうか‥‥確かにシングルヒットを記録してるから、それなりに支持されてるんだろうけど‥‥正直、ここで一度テンションダウン。歌詞に合わせて照明が消えたりとかいろいろあったものの、完全に休憩って感じ。「Nine Lives」とか「Taste Of India」とか「Falling In Love」とか、もっと他に演奏すべき曲があったろうに。

ここで一度軌道修正。ジョーがマイクの前に立ってMCを。隣で通訳の女性がジョーの英語を日本語に訳す。「これから演奏する曲は録音した当時のままの編成でプレイする」等と言って、ジョーはベースを持ち、トムが黒のテレキャスターでリズムギターを、ブラッドはソロを担当する‥‥ってことで、『ROCKS』収録の「Sick As A Dog」を披露。テンポ的にちょっともったりした感じだったような‥‥ブラッドのプレイってジョーと比べると全然派手じゃないんだけど、実は個人的にはかなりツボだったりするんだよね。そういう意味では、この日の彼の見せ場のひとつとなったこの曲。エンディングではジョーがベースからギターに持ち替えて、派手目なソロを。そしてベースはスティーヴンが担当。普段派手に動きまくるスティーヴンが下を向いたまま黙々とベースをダウンピッキングする様は、何となく微笑ましかった。

その後、既にライヴのお約束といえる「Mama Kin」を挟んだ後に、既に名古屋で登場していた『NIGHT IN THE RUTS』から「No Surprize」が登場。さすがにちょっと驚いた。ジョーがレコーディングに参加していない曲をもライヴで演奏する懐の深さ。単に「俺らいい曲沢山持ってるんだから、やらない手ないでしょ?」ってことなんだろうな。けど、シングルヒットでもなくライヴ盤にも入っていないこの曲に対し、ドームの客は冷たかった。残念。

少しクールダウンした会場を温めるために、新作からのファストナンバー「Light Inside」がプレイされるものの、思った程テンションは上がらず、そのまま「Sunshine」に突入するものの、更にテンションが下がっていった。最新シングルにもかかわらず、ここ日本ではシングルカットされていないし、PVさえも地上波で観る機会がない。単純に「アルバムの中の1曲」としか感じなかったんだろうな。ライヴ向きというよりは、作家性の強いアルバムの中の1曲って印象が強かったかな?

この日のライヴで一番冷たい空気が流れる中、静寂を切り裂くように攻撃的なリフが鳴り響く。なんと、再び『ROCKS』からのファストナンバー「Rats In The Celler」だ。キーが原曲よりも少し高いような気がして、それが功を奏してハイテンションな空気感を作り出していた。エンディングからそのままジャムセッションに突入し、ジョーやブラッドが即興でソロを弾きまくり、それに呼応するようにスティーヴンはマラカスを振ったりハーモニカを吹いたり。時々ドラムのジョーイとアイコンタクトをとるメンバー。5人がステージ中央に向かい合うように集まって、まるで場末のクラブかガレージで演奏してるかのような錯覚に陥る。鬼気迫る演奏とかこういうものを言うのだろう。これまで観たエアロの中でも最も攻撃的かつ狂気を感じさせる演奏だったと断言しよう。10分近くに及ぶこの好演に最後は大きな拍手と声援が送られた。カッコよすぎです、あんたら。

そのままバンドは名曲「Dream On」を、これまたソウルフルで心臓を鷲掴みしそうな勢いで演奏する。大サビでのスティーヴンの金切り声に鳥肌を立て、本気で泣きそうになる俺。既に20年近く聴いてきたこの曲だが、全く飽きることなく、常に新鮮な感動を与えてくれるこの曲が俺は大好きだ。

またまた新作から、ジョーとスティーヴンのデュエットナンバーと呼べる「Drop Dead Gorgeous」がアルバムに比較的近いアレンジで演奏される。ジョーのボーカルは昔聴いた時よりも格段上手くなっていたような気がする。それは続くFLEETWOOD MACのカヴァー「Stop Messin' Round」でも感じた。それにしても、スティーヴン‥‥ジョーのコーナーでもマラカス振ったりハープ吹いたりコーラス入れたり暴れたりで‥‥いつ休むんだよ、お前は?(汗)

ジョーのコーナーが終了すると、聴き覚えのあるパワーコードが‥‥名曲「Draw The Line」だ。70年代は突っ走るようなテンポだったこの曲も、いつの間にかアルバムに比較的近いテンポに落ち着いている。ま、それでも攻撃性は一向に落ちることなく、逆に違った重みと説得力を持つことになるのだが。この曲はやはりジョーのスライドプレイでしょう。中盤のソロパートではいろいろ弾きまくるわけだが‥‥途中で聴き覚えのあるフレーズをいろいろ取り混ぜる。『PUMP』収録の「F.I.N.E.」とか‥‥「Let The Music Do The Talking」とか‥‥とか思ってたら、急にジョーイがそれに合わせてドラムを叩き始めて、それに反応してトムもブラッドも加わる‥‥ゲッ、マジで!? 生涯初の生「Let The Music Do The Talking」だ! ライヴ前に掲示板でこの曲を聴きたいとか書いていたら、それがホントに実現してしまうとは‥‥あまりに急な出来事だったので、最初何が起きたのか把握できず、スティーヴンが唄い出した瞬間にハッと我に返り、本気で小便ちびりそうになったのだった。しかもこの曲ときたら、アルバムよりもハイパーテンポアップされた、かなりやけクソ気味なパンクバージョンだった。そこがまた曲のイメージに合ってるんだけど、ホントにカッコイイ! 2コーラス唄い終えたところで、再びジョーのスライドソロに戻り、最後は花道最前方で上半身裸になって、脱いだシャツをギターに叩きつけて音を出したり、最後は大の字になって倒れ込んだり‥‥ってあんた、すげーセクシーじゃねぇか! 本気で抱かれたいと思ったよ、同性にも関わらず。惚れ直すじゃねぇかよ、このヤロー!

再びテンション上がりっぱなしの会場に、この日最高のピークが訪れる。そう、映画「アルマゲドン」主題歌、最近では車のTVCMでお馴染み、セリーヌ・ディオンのカヴァー曲(嘘です、信じないでね?)「I Don't Want To Miss A Thing」だ。個人的にはこの曲はエアロの曲だと思ってないし、俺のエアロ史上の中では最も嫌いな曲として記録されてるので、無視する方向だった。が‥‥気付けば口ずさんでやがんの、俺。最悪。まぁプレイや歌は前回の大阪ドーム・カウントダウンライヴ@WOWOWよりも良かった気がするけど‥‥こんなもんをエアロに求めてないからさ、俺は。会場のヒートアップとは裏腹に、一気にクールダウンしてしまった俺を更に追い打ちかけるように、エアロは「Cryin'」を俺らに叩きつける。嫌いじゃないんだけど、好きでもない曲。いい曲なんだけどさ‥‥ハッキリ言って俺的には『GET A GRIP』の中では下から数えた方が早い程の曲なわけで。

前回の来日と同様、JBの「Mother PopCorn」を完奏してから、間髪入れずに「Walk This Way」へ。カッコイイとしか言いようがないです。ジョーもスティーヴンもカッコよすぎ。怒りたくなる程にカッコよすぎだってば。そして本編ラストは珍しい「Uncle Salty」を途中まで演奏してから「Sweet Emotion」に。エンディングに入る前に、ジョーが弾き始めた「Peter Gunn」にみんな合わせて、再び「Sweet Emotion」のエンディングパートに戻って、終了。もうね、何も言う事なし。カッコイイ。これで十分。だってそれ以上でもそれ以下でもないんだから。

アンコールを待つ間、スクリーンには何故か空港にツアー用の自家用機が到着、タラップからエアロのメンバーが降りてくるっていう、マジなのか冗談なのか判らないシュールな映像が流れるものの、ものの数分しか保たず。ようやくステージにメンバーが戻って来たのは5分程してからだろうか。ドラムのダッダッダッダッ‥‥っていうスネアの音に合わせてギターやベースを刻むバンド。何とまぁ、アンコールはまたまた『ROCKS』から「Back In The Saddle」だ。アルバムよりも、『LIVE BOOTLEG』のテイクよりもヘヴィで重い演奏。スティーヴンの狂気じみたシャウトが耳に突き刺さる。ジョーはギター並みのボディの大きさ・ネックの太さの6弦ベースを弾き、ヘヴィさを強調したリフを弾きまくり、ソロはブラッドにまかせる。この曲を生で聴いたのは、恐らく'80年代以来かなぁ‥‥普段CDで聴いてる曲なので、そんなにも時間が経っていたなんで考えもしなかった、この時まで。やっぱりカッコイイとしか言葉が出てこない。

続けてスティーヴンが「There goes my old girlfriend~」とアカペラで唄い出す。『PUMP』収録の名バラード「What It Takes」の、ライヴ盤『LITTLE SOUTH OF SANITY』と同じバージョンだ。サビ前までスティーヴンは魂の叫びを続けるのだが‥‥不覚にもここで涙してしまう俺。恥ずかしながら、この曲がヒットしていた頃、自分は高校を卒業し、失恋をした。そしてこの歌の歌詞と同じような事を経験することとなった‥‥なんて昔話が急にフラッシュバックしてしまったのだ。まさかエアロのライヴで本気で泣いてしまうとは‥‥それだけ今日の「What It Takes」には説得力があったし、伝わるものがあった。ラストのシャウトには本当に鳥肌が立ったし。やはりエアロには「アルマゲドン」よりもこういったタイプのバラードの方が似合ってると、俺は思う(新作でいえば「Avant Garden」とか「Luv Lies」のような曲。決して「Fly Away From Here」ではなくて)。

これまでなら「やりたい気持ち」か「お説教」のどちらかを本編ラストとアンコールラストに用いていた彼等だが、今回は既に本編ラストで2連発してるので、最後の最後はノリのいい「Train Kept A Rollin'」で元気良くエンディングを迎えた。エアロ以外にもHANOI ROCKSやSKID ROWがライヴでやってきたので(ってそれらのバンド皆がエアロのバージョンが元なのだが)、今更って気もしないでもないが、いざ始まってしまうと我を忘れて暴れまくってしまう。気付けば前の人の椅子を蹴りまくって、係員に注意される始末。単なる酔っぱらいか、俺は?

終わった時に時計に目をやる。へっ、20時10分前!? ってことは、約2時間半に渡って、疲れ知らずの絶倫プレイを我々に叩きつけていたのか、この50越えたオヤジ共は‥‥狂ってるよ、マジで!

考えてみれば、バラードだからといってスティーヴンは休むわけでもなく、逆にロックナンバーよりも激しいシャウトを用いていたりするし、自分の唄う曲以外でも合いの手を入れたり暴れたりしてる。実質この人が休んだのは、アンコール待ちの5分程度じゃなかろうか‥‥一体いつになったら、この人は落ち着くんだろうか? いや、どうせならこのままあと20年くらい落ち着きのないクソガキのままでいて欲しいな。その方が、これからどんどん出てくるであろう若手達も潰し甲斐があるってもんだろう。まぁもっとも、そんな若手達が束になったって、当分の間はエアロには敵わないだろうけどな?

2時間半か‥‥選曲にしろ内容にしろ、恐らく今まで観てきたエアロのライヴの中でもトップクラスだったのには間違いない。ホントいいライヴだった。個人的には「Rats In The Celler」でのジャムセッションと、「Draw The Line」~「Let The Music Do The Talking」への流れ。このふたつだけでも十分だった気がする。あ、"What It Takes"もか。好きではない曲もあるにはあったが、全体的なバランスを考えると非常によい内容だったと思うし、古いファンも新しいファンも満足できる内容としては、これがギリギリのラインだったんじゃないだろうか? 80年代の産業ロック的ヒットソングも極力抑え、「あくまで現役」という姿勢を打ち出す為に新作から6曲。「アルマゲドン」を含めれば7曲だ。どこにそんなに新曲を演奏する20年選手、30年選手がいる?

こんなすげぇバンドのすげぇライヴが、あともう1回観れるのかと思うと‥‥本当にホテルに戻ってからも眠れなかった。2時3時までポータブルCDプレイヤーでエアロを聴きまくっていたもん。さて、明日は「Eat The Rich」や「Toys In The Attic」をやってくれないかな‥‥。


<セットリスト>
01. Beyond Beautiful
02. Love In An Elevator
03. Just Push Play
04. Jaded
05. Same Old Song And Dance
06. Pink
07. Sick As A Dog
08. Mama Kin
09. No Surprize
10. Light Inside
11. Sunshine
12. Rats In The Celler
  ~ Jam Session ~ Rats In The Celler
13. Dream On
14. Drop Dead Gorgeous
15. Stop Messin' Around
16. Draw The Line ~ Let The MusicDo The Talking
  ~ Joe Perry Guitar Solo ~ Draw The Line
17. I Don't Want To Miss A Thing
18. Cryin'
19. Mother Popcorn
20. Walk This Way
21. Uncle Salty ~ Sweet Emotion
  ~ Peter Gunn
—Encore—
22. Back In The Saddle
23. What It Takes
24. Train Kept A Rollin'

投稿: 2002 02 20 12:00 午前 [2002年のライブ, Aerosmith] | 固定リンク

2002/01/12

AEROSMITH『AEROSMITH』(1973)

AEROSMITH、記念すべきファーストアルバム。アメリカでの初リリースが1973年1月ということだから、今から丁度29年前ということになる。最近のテクノロジーが発達したサウンドを追っている人間からすれば「古臭い音」なのかもしれないが、こうやって久し振りに引っ張り出した、15年以上も聴き続けてるこのアルバムのサウンドは、俺からすれば全く時代を感じさせない。むしろ、デジタルリマスターされたことによって、最近のガレージバンドよりもいい音してるんじゃないか?と思う瞬間さえある。現在でもライヴにて「Dream On」や「Mama Kin」といった曲はスタンダードナンバーとして演奏されている。パブリック・イメージ上の「エアロらしさ」という点では後の作品群に劣るものの、それでも好きな人間には堪らないファンキーでルーズで芯の太いサウンドが詰め込まれた好盤だと思っている。

■全曲解説■

●M-1. Make It
その後のエアロのイメージからちょっとかけ離れた、ストレートなロックナンバーで彼等のキャリアはスタートする。サビパートの楽器隊が一丸となってプレイするリフがとても気持ちいい。中間パートでの楽器隊の暴れ具合とか、歌メロに絡みつくギターのフレーズ等から、昨今のガレージバンド‥‥特にTHE HELLACOPTERS辺りを彷彿させる。つまり、そういうバンドがこの曲をカバーしても何ら違和感がないだろうという点で、この曲にも全く古臭さを感じない。むしろ最近のエアロサウンドに慣れてしまった耳で聴くと、かなり新鮮に聞こえる。純粋にカッコイイロックチューンだ。

●M-2. Somebody
デビュー時のエアロはその黒っぽさから「ROLLING STONESのクローン(パクり)」とメディアから酷評された。今のエアロを知る者は「ストーンズよりもビートルズじゃないの?」なんて反論するかもしれないが、この曲を聴くと当たり前のようにエアロもストーンズからの影響を受けている事実が伺える。いや、影響を受けてないと言ったら嘘になるだろう。『メインストリートのならず者』でのグロいストーンズには程遠いものの、そのスカスカ感には共通する空気を感じずにはいられない。味はあるが、特にどうってことのないシンプルなロックチューン。嫌いじゃないけど。

●M-3. Dream On
知らない者はロックファンとしてもぐりだ!と断言できる程の超名曲。いろんな意味でこの曲のみ、アルバムの中で浮いている。アルバム全体を通して「ブリティッシュビートを通過したアメリカンロック」という空気が流れる中、やはりこの曲のみ別格というか、モロにブリティッシュロックしてしまっている。様式美っていうか、完成し尽くされてしまっているのだ。ジミー・ペイジからの影響大であろうジョー・ペリーによるギターソロの組み立て方、歌との絡み方がまんまLED ZEPPELINで微笑ましい。アルペジオの組み立て方もそれまでのアメリカンロック然としたものとは異質で、それまでの2曲とは別の緊張感が漂う。ブルーズやファンクからの影響が見え隠れする初期エアロだが、既にファーストアルバムの時点で後‥‥1980年代以降の、ヒット曲連発するエアロの楽曲指向が根付いていた事実が伺える。ビートルズからの影響を常日頃から口にしてきたスティーヴン・タイラーは、「ロックンローラーとしてのビートルズ」「ソングライターとしてのビートルズ」という二面性をエアロの中でも特に意識していた人なのではないだろうか?

●M-4. One Way Street
ジャム・バンドとしてのエアロらしさが最もよく表れた1曲。7分ある曲構成は、中盤以降のセッションパートでもだれることなく、聴き手を引き留めることに成功している。クラブバンドとしての実力がここに結集されているということだろうか。スティーヴンのブルースハープもいいアクセントになっている。最近のツアー(2001年『JUST PUSH PLAY』ツアー)でも久し振りに演奏されているそうだから、もしかしたら1月下旬からスタートする日本ツアーでも演奏されることがあるかもしれない。更に成熟した彼等の演奏と聴き比べて、それぞれの良さを味わってもらいたい。

●M-5. Mama Kin
GUNS N' ROSESのカバーで一躍有名になってしまったこの曲。特にシングルカットされていないものの、ノリの良さからライヴではよく演奏されるので、ヒット曲しか知らないエアロ初心者でも知っている人は多いかもしれない。知人が「この曲はエアロ版『Brown Sugar』だな?」と言ったことがあったが、まぁ言いたいことは判る。共にドラッグをイメージさせる曲だし(BROWN SUGARとは精製される前のコカインの俗語。MAMA KINの意味は判らないが、歌詞の内容からドラッグを意味するスラングのような気もする)。サウンド的には「サックスを取り入れたロックチューン」という共通点しか思い当たらないが、両バンドにとって今でもライヴのハイライトに演奏されるのせる為の1曲という意味では、共に必殺のロックチューンなのだが。何故ガンズがこの曲を取り上げたか、バンドをやっている人は是非実際にカバーしてもらいたいと思う。聴いた印象とプレイする印象がこうも違うのだから。

●M-6. Write Me A Letter
初期のZZ TOPがやりそうなルーズなブギーナンバー。ワウのかかったイントロのギターサウンドが個人的にとてもツボで、まぁアルバムの中でいえばどうってことのない部類の曲なのだが、演奏の熱さにフォローされ、並みの曲がカッコイイロックナンバーへとレベルアップされている。ここでもスティーヴンのブルースハープが登場するが、ギターには出せないスパイスが良いアクセントとなっている。

●M-7. Movin' Out
ブルーズを基調としたナンバー。イントロのギターと歌のみのパートが生々しく、非常にセクシーだ。イギリス人‥‥YARDBIRDSやJEFF BECK GROUP、LED ZEPPELINがイメージする「ブルーズ・ロック」とはまた違う、アメリカ人だからこそ成し得るブルーズ・ロックがここにはある。以前『PERMANENT VACATION』ツアーのブートレッグでこの曲を演奏する'80年代後期のエアロを聴いたことがあったが、ここで聴ける演奏よりも更に殺気立った、終始緊張感が張りつめたプレイを聴くことができた。お馬鹿さんなイメージがあった復活後の彼等からは普段感じられない、ある意味最も'70年代の「ドラッグによって常に死と快楽との隣り合わせ」感をリアルに感じさせてくれる好演だった。やはりライヴバンドなんだな、と実感。

●M-8. Walkin' The Dog
前の曲から間髪入れずになだれ込むこの曲は'80年代初頭、LAメタルバンドのRATTに「エアロのファーストが好きでカバーした」と言わしめた程の名カバー。オリジナルはルーファス・トーマス。エアロ流のアレンジといったものは特に感じられない、まぁ比較的オリジナルの良さを前面に出したアレンジとなっている。最近また演奏してるそうだが、本当に彼等のカバー選曲センスには目を見張るものがある。こういう曲をカッコイイと感じるか退屈と感じるかで、このアルバムの評価は分かれるだろう。

■総評■
基本的には「Dream On」あってのファースト、というイメージがあるようだが、決してそんなことはなく、むしろそれ以外の7曲にこそ新しい発見があると言っていいだろう。確かに'70年代のオリジナルアルバムで最初に手を出すなら『TOYS IN THE ATTIC』や『ROCKS』ということになるのだが、決して無視をして欲しくはない、そんな隠れた名盤だと思っている。

最新作『JUST PUSH PLAY』で更に新しい側面を我々に魅せてくれたAEROSMITH。最近しか知らない人にとっては、ここにも沢山の「知らない側面/魅力」が満載だ。「野獣生誕」という邦題には程遠い内容かもしれないが、その後の「野獣振り」を彷彿させる何かは感じさせる。そんな1枚である。



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投稿: 2002 01 12 12:00 午前 [1973年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2001/03/30

AEROSMITH『JUST PUSH PLAY』(2001)

前作『NINE LIVES』(1997)からぴったり4年振りに発売された、AEROSMITHのオリジナル・スタジオ盤としては13作目にあたる作品。初のセルフプロデュース(「THE BONEYARD BOYS」名義で、スティーヴン・タイラーとジョー・ペリーの他に、これまでも作曲に加わってきたマーティ・フレデリクセンとマーク・ハドソンが共同プロデュース)。シングル「Jaded」は久々のチャート・トップ10入り(「I Don't Want To Miss A Thing」は1位取ったけど、純粋にアルバムからのシングルとなると、トップ10入りは'90年の「What It Takes」以来、まる11年振りとなる)、アルバムは残念ながら3作連続1位とはならなかった(2位)。現在のアメリカでのブラックミュージック/ヒップホップ、アイドル系、そしてリンプ等のヒップホップ・メタルが上位を占める中で、こういうストレートなロックアルバムが発売2~3週で100万枚を越えたのは、快挙と言っていいだろう。決してエアロのパワーが弱くなったわけではなく、消費者の財布の紐が堅くなっただけだ。ここ日本でも過去最高の売り上げを記録しているそうだ(これもひとえにボーナストラック「I Don't Want To Miss A Thing」効果だろう)。

掲示板に以下のように感想を書いた。「個人的にはここ10数年‥‥復活後の 彼らの作品では一番好きかもしれない。完成度って意味では確かに『GET A GRIP』の方が上だしそこまで到達してないけど、「ピンとくる」という意味では一番。 雑誌等で「真の意味でのファースト」とか言われてるけど、そういうもんでもねぇだろ?とも思う。それよりは伊藤政則の「20世紀のロックの集大成」って方が納得いく。けど、集大成に終わってなくて、それをここ数年の手法(エアロの手法ではなくて、流行の手法という意味)でアレンジしてるのがポイント。バラードも「アルマゲドン」やって吹っ切れたのか、メンバーがソングライトに 全く絡んでない曲まで取り入れてるし。ハッキリ言って、「アルマゲドン」よりもイイ、これ。」

確かに『GET A GRIP』は越えていない。それは発売から約1ヶ月経った今、何度聴き返してもそう思う。けど、越える必要もないだろうし、そもそも作品のタッチが微妙に違うし、1993年と2001年とでは全く違うのだから、比べる必要もないだろうという結論に達した。むしろ比較すべきなのは、前作『NINE LIVES』とだろう。ここでは前作でやろうとしていた事が花結んでいる。例えば1曲目「Beyond Beautiful」は前作がなければ完成しなかった曲だろう。それにしても、こんなヘヴィなミドルチューンを1曲目に持ってくるのも初めての試みじゃないだろうか? 気合いを入れてプレイヤーの前で意気込んでただけに、ちょっとだけ肩すかしを食らった。ここ数作は連続してトップチューンはファストナンバーだったしな。

勿論、前作の色だけではない。復活後の『PERMANENT VACATION』(1987)以降の作品の集大成と呼べるだけの、いろいろな要素が詰まっている。どことなく雰囲気が前のヒット曲に似ていたり、メロの節回しがある曲に似ていたり‥‥ってこれじゃあ「ネタ枯れ」とか「マンネリ」って言われそうだな? けど、それが決して嫌味になってるわけじゃなく、一聴して「あ、エアロだ」と判る安心要素として作用しているのだから、良しとしよう。

で、それらの「過去の集大成」的要素を、単に「懐メロ主義」で終わらせない為のセルフプロデュースというか、とにかく音の実験具合/遊び具合が尋常じゃない。ところどころにサンプリング音を多用しているし、「"Walk This Way" meets HIP HOP」と呼べる「Just Push Play」や、「Drop Dead Gorgeous」のような曲もある。そして新境地と言えるシングル「Jaded」の存在も大きい。バラードもこれまでのエアロのイメージを壊さない程度の、カントリータッチのものが多い。メンバーがソングライトに全く絡んでない「Fly Away From Here」も「I Don't Want To Miss A Thing」以上にエアロの曲として作用しているし。つまり、ここには「他人と共作しようが、自分で曲を書こうが書くまいが、俺ら5人でやればどれもエアロの曲になる」という、半ば開き直りに近い強引さを感じさせる。けどその強引さが心地よいのだから始末に負えない。

結局、彼らは来るべき21世紀に向けての第1弾として、「過去の総括」+「これからの俺達」を融合させた、ヤケクソに近い「始末に負えない」アルバムを提供したのだ。もっともそれは端から望んだ形ではなく、結果としてそうなってしまったという。だから始末に負えないんだけど。だって自宅を改造したホームスタジオで、自身の家族をも巻き込んだ、非常にリラックスした状態で制作に臨んだにも関わらず、だ。今思えば、前作というのはその「始末に負えない」パワーが、本当に始末に負えなくて持て余し気味だったのだろう。だから躁的要素が強い、ちょっと聴くのに体力がいる作品になったのだ(それに曲数も多かったし、長かったからね)。

そうそう、このアルバムの非常に良い点。それはボーナストラック2曲を含めて14曲入りにも関わらず、60分にも満たないトータルランニングだという点だ。つまり、オリジナルのアメリカ盤は全12曲入りで約50分ちょっとという事になる。『GET A GRIP』辺りからCDを意識した曲数/収録時間だった。それら全部が本当によい曲で、よい流れを持っていればいいのだが、それが前作みたいだと苦痛になったりする。そういう意味ではこれは適切な曲数/収録時間だと言えるだろう。以前にMOTLEY CRUEのレビューでも書いたが、結局人ひとりが1日に音楽を聴く時間なんてごく限られている。1時間以内というのが適切なのだ。

それにしても、このジャケット‥‥エアロ史上でも下から1、2を争うモノになってるな? これ、日本人アーティストであるソラヤマ・ハジメ氏の作品だそうで、あの「AIBO」のデザインで有名な方だそう‥‥それでこんなメカ/ロボ・テイストなの? 何度も言うけど、最初はASIAかAUTOGRAPHのジャケットかと思ったよ。まぁ、そんなところも含めて「本気でエアロらしい」アルバムだと思う。結成30年、スティーヴンは50歳を迎え、あと何年この精力を維持できるかは誰にも判らない。けど、ちょっとこのアルバムのツアーは気になる。これらの楽曲をどうやってステージで表現するのか、本当に今からライヴが待ち遠しい。こんな風に思ったのも『GET A GRIP』以来の事だ。



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投稿: 2001 03 30 12:00 午前 [2001年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2001/02/28

AEROSMITH『JADED EP』(2001)

前作『NINE LIVES』(1997)から丁度4年、映画「アルマゲドン」主題歌にして初の全米No.1シングルに輝いた「I Don't Want To Miss A Thing」から数えても3年振りとなるAEROSMITHの最新シングル。この4年の間には2枚組ライヴアルバムもリリースしたし、二度もドーム公演を行っている。「アルマゲドン」サントラに新曲を2曲提供し、昨年末にはこの3月に発表される新作『JUST PUSH PLAY』の予告編ともいえる楽曲「Angel's Eye」を映画「チャーリーズ・エンジェル」に提供し、常に話題を振りまいてきたので改めて4年振りとか言われて「えっ、そんなに経ったっけ?」とさえ思った。ここ数作のエアロは4年サイクルで新作を発表するペースにあるようだ(『PUMP』(89)~『GET A GRIP』(93)~『NINE LIVES』(97)~という具合に)。

さて‥‥エアロのシングルを買うのって、実は8年振りだったりする。そう、93年春の「Livin' On The Edge」以来なのだ。それ以後、何故か買わずに通ってきてしまった。このシングルの場合は、ラジオで聴いて一発でヤラれたから‥‥こんな曲、今までのエアロにあったかよ!?って位(当時は)衝撃的だったし、相当の名曲だと直感したから‥‥買ってしまったのね。その後、前作の先行シングル‥‥「Falling In Love (Is Hard On The Knees)」は確かに耳に馴染むいい曲だとは思ったものの、こういう曲なら今までもあったよね?って感じでそれ程惹かれなかった(ちゃんと聴くと細部にまで拘った凄い曲なんだけどね)。某映画サウンドトラックのNo.1ソングに関しては「あれはエアロの曲じゃなくて、セリーヌ・ディオンのカヴァー」だと勝手に思ってるので(笑)却下。勿論、悪い曲だとは言わないけどね。

それなのに、今回は買ってしまいました。しかも発売日に。それも5曲中バージョン違いを含めると3曲が同じ曲、1曲は1分ちょっとのインタールードみたいなもんだから実質2曲‥‥この2曲の為に1500円払ってしまった。アルバム来週リリースだからそれまで待てばいいものを‥‥(笑)

声を大にして言っちゃいます、「新曲"Jaded"は超名曲だよぉ!」と。最初ラジオで聴いた時は40秒に編集されたバージョンだった為、それ程ピンとこなかったんだけど、フルコーラスで聴いたら‥‥うわっ、俺の中で「Livin' On The Edge」と並ぶ衝撃! ビートルズの「Ticket To Ride」みたいなドラムフレーズ、日曜の日だまりの中って印象の耳に馴染むメロディ、そして暴れないジョー・ペリーのギター(!)、効果的に盛り上げるオーケストラ(しかもアレンジはベック父のデヴィッド・キャンベル氏)。ギターソロらしいソロがないんだよね、この曲。本当、歌のみでここまで盛り上げてるよ‥‥これが今年の3/26で50歳になるオヤジの歌かよ!? 恐れ入りましたとしか言いようがない。

しかもそれと対照的なのが、カップリング曲の「Angel's Eye」。残念ながらアルバムには入らないそうで、ボーナストラックにさえもならなかった(その代わりに「I Don't Want To Miss A Thing」入れられてもなぁ。まぁこの1曲の為にバカ売れするだろうけどね)。これ‥‥めっちゃスゲェかっこいいんだわ。イントロだけ聴くといかにも昨今のヘヴィロック的なリフでスタートするんだけど、サビ前あたりから「いかにもエアロ」的メロディで盛り上がってくという、隠れた名曲。最初この曲をラジオで聴いた時も「これが50前後のオヤジの仕事か!?」って思ったもんなぁ‥‥ハァ‥‥。

あのね、アルバムの曲ってまだこの「Jaded」しか聴いてないのにこうもはっきり断言しちゃうのも何だけど‥‥悪いけど今度の『JUST PUSH PLAY』、凄い名作かもよ?



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投稿: 2001 02 28 12:00 午前 [2001年の作品, Aerosmith] | 固定リンク