カテゴリー「Aerosmith」の35件の記事

2020年1月29日 (水)

DESMOND CHILD『DESMOND CHILD LIVE』(2019)

2019年10月末にリリースされた、デズモンド・チャイルドのライブアルバム。日本盤未発売(2020年1月末時点)。

ご存知のとおり、デズモンド・チャイルドは職業作家としてBON JOVIAEROSMITHKISSアリス・クーパーなどに楽曲提供および共作を続けてきたアーティスト。さらにプロデューサー業のほか、自身もシンガーとして70年代にDESMOND CHILD & ROUGE名義で2枚のアルバム、90年代にはソロアルバム『DISCIPLINE』(1991年)をリリースするなど音楽家としても知られています。

その彼が、『DISCIPLINE』以来28年ぶりにソロ名義でのアルバムを発表しました。本作は2018年3月1〜3日にニューヨークで行われた、40年以上にわたるデズモンドのミュージシャン人生を祝すスペシャルライブの模様を収めたもの。当日は彼が過去に手がけた楽曲のほか、DESMOND CHILD & ROUGEの楽曲、さらにはローラ・ニーロ「The Man Who Sends Me Home」、ジョージ・マイケル「Fast Love」といったフェバリット・ナンバーのカバーも披露sれています。

アルバムにはこのうち、デズモンドの作家人生を総括するようなヒットナンバー、隠れた名曲などをピックアップ。彼自身が歌うナンバーもあれば、ハウスバンドのギタリストや女性コーラスが歌うものも含まれており、原曲の良さをできる限りベストな状態で伝えようとする意思が伝わってきます。

内訳的にもBON JOVIから「Livin' On A Prayer」「You Give Love A Bad Name」「(You Want To) Make A Memory」、AEROSMITH「Dude (Looks Like A Lady)」「Angel」、KISS「I Was Made For Lovin' You」、JOAN JETT & THE BLACKHEARTS「I Hate Myself For Loving You」、HANSON「Weird」、マイケル・ボルトン「How Can We Be Lovers?」、シェール「We All Sleep Alone」、リッキー・マーティン「The Cup Of Life」「Livin' La Vida Loca」「Shake Your Bon-Bon」「She Bangs」(以上、4曲メドレー)、そしてDESMOND CHILD & ROUGEの「Love On Rooftop」(のちにシェールもカバー)、ブロードウェイ・ミュージカル『CUBA LIBRE』から「Where Do I Go From You」と実に幅広い選曲。ここにエアロ「What It Takes」「Crazy」やアリス・クーパー「Poison」、BON JOVI「Keep The Faith」あたりも入っていたら最高だったんですけどね(笑)。

まあ、バンドメンバーがハードロック畑の人ではなくAOR流れの人たちなんでしょうか。演奏はエッジが効いた感じではなく心地よさを重視した、悪く言ってしまえば「毒にも薬にもならない」安パイなもの。まあ曲の良さを伝えるという点においては、この形がベストなんでしょうね。それに、デズモンドもすでにいい年齢(この時点で64歳)ですから、これくらいのヌルさがちょうどいいのかもしれませんし。

にしても、本当にいい曲を書くソングライターだなと改めて実感。もちろん、どの曲も彼ひとりで書いたものではなく、それぞれのアーティストとの化学反応あってこそですが、仮に楽曲の骨格をアーティスト自身が作ったものであったとしても、そこにデズモンドが一手間加えることでスペシャルなものになるわけですからね。そのセンス、才能は飛び抜けたものがあるってことなんでしょう。じゃなかったら、ここまで知ってる曲連発のライブアルバムなんて作れないわけですから。

あと、BON JOVIの中でも比較的地味なヒット曲に含まれる「(You Want To) Make A Memory」をアルバムラストに選ぶあたりに、彼のこだわりやセンスが感じられるかも。この曲、派手さは皆無だしジワジワ盛り上がっていく構成といい本当に地味なんですけど、変な中毒性があるんですよね。

以前、こんな職業作家の記事を書きましたが、今回の記事とあわせて読んでいただくことで、デズモンドを含む職業作家の面白さに気づいてもらえたら幸いです。

 


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2019年1月20日 (日)

VINCE NEIL『TATTOOS & TEQUILA』(2010)

2010年6月リリースの、ヴィンス・ニール通算3作目のソロアルバム。過去2枚のソロアルバム(1993年の1st『EXPOSED』、1995年の2nd『CARVED IN STONE』)はMOTLEY CRUE脱退中に発表されたものなので、本作『TATTOOS & TEQUILA』はバンド在籍中に唯一発表したソロアルバムということになります。

過去2枚には“良き時代のMOTLEY CRUEの模倣”(『EXPOSED』)、“HR/HM冬の時代にヒップホップなど流行へ迎合した”(『CARVED IN STONE』)といったテーマがありましたが(ヴィンスが公言したわけではなく、ファン側が勝手に解釈したもの)、本作はズバリ“自身のルーツナンバーをストレートにカバーする”というもの。全11曲(日本盤のみボーナストラックを含む12曲)中、オリジナル曲は2曲のみで、ほかはCHEAP TRICK、SWEET、AEROSMITHSEX PISTOLS、THE HOLLIES、SCORPIONS、CCR(CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL)、エルヴィス・プレスリー、エルトン・ジョン、ZZ TOPの名曲の“カバーという名のコピー”となっています。

選曲は大半が70年代のもので、つまりヴィンスがMOTLEY CRUEを始める前まで聴きまくったナンバーばかりといったところでしょうか。実際にバンドでカバーしたものも少なくないと思います。CHEAP TRICKがデビューアルバムからの「He's A Whore」だったり、AEROSMITHが名盤『ROCKS』収録のヘヴィチューン「Nobody's Fault」というあたりには、ヴィンスなりのこだわりも感じられます。

また、モトリーでもカバーしたSEX PISTOLSを再びピックアップしていたり、かと思えばエルヴィス「Viva La Vegas」やエルトン「Bitch Is Back」を選曲するたりも、彼のポップセンスやフロントマンとしてのセンスみたいなものを感じたり。まあ、何の捻りもないんですけどね(笑)。

2曲のみ収録されたオリジナル曲のうち、タイトルトラックとなる「Tattoos & Tequila」はプロデューサーであるマーティ・フレデリクセン書き下ろしのミドルナンバー。もう1曲の「Another Bad Day」は盟友ニッキー・シックスとジェイムズ・マイケル、そしてトレイシー・ガンズ(L.A. GUNS)によるミディアムバラード。もともとはモトリー用(おそらくベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』かオリジナル作『SAINTS OF LOS ANGELES』向け)に書かれたそうですが、トミー・リーが気に入らなかったためお蔵となった1曲とのこと。まあ『SAINTS OF LOS ANGELES』には合わないポップな曲調なので、外れてよかったのかも。

全体を通して、ヴィンスが持つ陽のイメージがそのままパッケージされた、非常に聴きやすい1枚。『EXPOSED』ほどの派手さはないものの、あのアルバムとの共通項も多数見受けられるので、初期モトリーなどが好きな方なら素直に受け入れられる作品集だと思います。

なお、このアルバムでバックを務めるのは、ジェフ・ブランド(G)、ダナ・ストラム(B)、ゾルタン・チェイニー(Dr)という布陣。ご存知の方もいるかと思いますが、この3人はSLAUGHTERの現メンバーでもあるので、マーク・スローターとヴィンスを入れ替えただけなんですよね。LA界隈、狭いなあ。



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2018年7月30日 (月)

AEROSMITH『CLASSICS LIVE』(1986)

AEROSMITHが1986年春に発表した、通算2作目のライブアルバム。バンドは1984年頃にオリジナルメンバーが再び揃い、翌1985年秋に久しぶりのオリジナルアルバム『DONE WITH MIRRORS』を発表。こちらが全米36位というスマッシュヒットとなったことを受け、古巣のColumbia Recordsが急遽企画して発表したのがこのライブアルバムでした。

ということで、本作の制作にはメンバーは関わっておらず、レーベルに残っていた秘蔵ライブ音源の中からピックアップされたものと、この時点まで未発表だったスタジオ音源の計8曲で構成。トータルで36分強という、前のライブ盤『LIVE! BOOTLEG』(1978年)と比べたらボリューム的にも食い足りない内容なのです。

しかも、このライブ音源が曲者で。録音時期は1977年から1983年までと幅があり、どの曲がいつの録音かはクレジットされておりません。つまり、ジョー・ペリー(G)やブラッド・ウィットフォード(G)が復帰したのを受けて発売されているものの、2人が参加していない時期の音源も含まれているわけです。

現在わかっているだけでも、「Sweet Emotion」は1982年12月の録音とのことなので、ギタリストはジミー・クレスポとリック・ダフィーの時期ですね。これ、ファンなら聴けばオリジナルの2人が弾いてないこと、すぐわかると思いますよ。それくらい、フレージングが異なるので。

収録曲の大半は『LIVE! BOOTLEG』にも収録されている、ライブでの定番曲ばかり。ぶっちゃけ、流れとか構成とかまったく考えられていない、とりあえず人気曲を並べましたというもの。レコード会社の便乗してやろうっていう気持ち、見え見えですね。そんな中、「Three Mile Smile / Reefer Head Woman」という『LIVE! BOOTLEG』以降の貴重な音源も含まれているので、ファンはこちら目当てで購入してもいいのかなと。これ1曲のため購入となると、かなりハードル高いですけどね。

で、最後にボーナストラックのように1曲だけ収録されているスタジオ音源「Major Barbra」。これは2ndアルバム『GET YOUR WINGS』(1974年)の制作時にレコーディングされたアウトテイクとのこと。うん、地味ですね。ただでさえ、パッと聴いた印象が地味な『GET YOUR WINGS』にこの曲が入っていたら、さらに地味になっていたのではないかと。

決してサウンドも良くない(基本的にドラムの音がペタペタ過ぎて軽く、好みじゃないのです)このライブ作品、当時のエアロ復活!の流れもあってか、全米84位まで上昇。当時の最新アルバム『DONE WITH MIRRORS』を超えるミリオンセラー作品となってしまったのは、なんとも皮肉な話です。



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2018年1月23日 (火)

JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』(2018)

AEROSMITHのギタリスト、ジョー・ペリーが数日前にひっそりと新しいソロアルバムをリリースしていました。あれ、実は大々的に告知されていて、自分だけが知らなかったパターン?とも思ったのですが(昨年11月には告知されていたようですね)、国内盤の予定もなく……まったく気づいていませんでした。申し訳ない!

で、ジョーのソロですよ。彼はエアロに復帰して以降、2000年代半ばまでソロアルバムを作って来ませんでした。それ以前のJOE PERRY PROJECTはエアロを脱退したからこそ生まれた産物だったわけで、メインバンドがある以上はソロで何かをする必要性はなかったと。ところが、2000年代以降のジョーのソロ2作(2005年の『JOE PERRY』、2009年の『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』)には作る理由がちゃんとあった。『JOE PERRY』のときはエアロが無期限活動休止を発表したタイミング、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』のときはエアロのアルバム『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012年)の制作初期段階で、途中で頓挫してしまった時期にソロへと向かった。クリエイターとしての制作意欲の吐け口として、止むを得ず(かどうかはわかりませんが)再びソロへと向かっていったわけです。

事実、『JOE PERRY』は90年代以降のエアロらしさにジョーならではの渋みが加わった良作ですし、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』は新たな才能(YouTubeで見つけた無名のシンガーを迎えて制作)から触発された初期衝動がにじみ出た力作でした。それぞれカラーが異なり、個人的にも楽しんで聴くことができたけど、エアロの色が散りばめられていることで「だったらエアロの新作が聴きたいよ……」と思ってしまったのも事実でした。

では、今回発表された9年ぶりのソロアルバムはどうでしょう? 実はこれ、めっちゃ肩の力が抜けているんですよ。バンドとしてのエアロは終わりが近づいている、音楽でたくさん稼げたし、納得のいく作品もたくさん作ってこられた、あとは余生を楽しむのみ……と思ったかどうかはわかりません。でも、数年前にジョーがステージで倒れて意識不明?なんて事故がありましたが、あれを思い浮かべると今回は純粋に好きな音楽を楽しもうという姿勢が感じられるのです。

全10曲中インストが2曲、ジョー自身がボーカルと務めるのが1曲。残り7曲はロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、デヴィッド・ヨハンセン(NEW YORK DOLLS)、テリー・リードというロックファンなら誰もが知るレジェンドたちを迎えて制作しているのです。もちろん、悪いわけがない。基本的にはブルースをベースにしたロック/ハードロックで、エアロを彷彿とさせる曲もあるんだけど、以前のように「これ、エアロでやれよ!」的な“そのもの”ではなくてエアロのフレーバーを散りばめた楽曲をアクの強いフロントマンが歌ってるという印象にとどまっている。ああ、そうか。ジョー本人が歌ったりスティーヴン・タイラーを彷彿とさせるフロントマンが歌ったりするからいけなかったんだ。当たり前の話だけど。けどそれも、アリス・クーパーやジョニー・デップたちと始めたスーパーバンド、HOLLYWOOD VAMPIRESがあったからこそなんでしょうね。フロントに立つよりも、アクの強いシンガーの隣でこそ光ることを再確認できたのかもしれません。

ジョーのギターも非常にリラックスしたプレイを聴かせてくれているし、各ボーカリストに触発されて引っ張り出されたキレのあるフレーズも見受けられる。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』よりも良いんじゃないかと思うほど。いやあ、ジョーのソロアルバムでここまで興奮したの、久しぶり、いや、初めてかもしれない。

現在67歳。まだまだ最前線でやろうと思えばやれるし、若い才能をフックアップすることも可能でしょう。でも、エアロの近況もそうだけど、アーティストとしてはそろそろ“終活”の時期なのかな……もはや『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』レベルを保つことすら難しいのだったら、エアロのアルバムはもう無理に作らなくてもいいから、スティーヴンもジョーも自分の好きな音楽を、楽しみながら作ればいいと思うのです。その結果として本作が生まれたのだったら、僕はそれを素直に受け入れるので。



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2018年1月 3日 (水)

AEROSMITH『A LITTLE SOUTH OF SANITY』(1998)

1988年秋に古巣Geffen Recordsからリリースされた、AEROSMITHの2枚組ライブアルバム。当時はすでにColumbia / Sonyに移籍しており、前年1997年にスタジオアルバム『NINE LIVES』を発表したばかり。そんなタイミングのライブ作品ではあるものの、本作には最新作からの楽曲も含まれた、当時のグレイテストヒッツ的内容となっています。

本作の大半を占めるのは、1993〜94年に実施された『GET A GRIP TOUR』の模様。第2期黄金期のピークとなったアルバム『GET A GRIP』(1993年)を携えた時期のツアーで、ここ日本でも1994年春に武道館7公演という偉業を含む大々的なジャパンツアーが実現したタイミングでした(自分もこのときは武道館2公演、横浜アリーナ1公演に足を運びました)。

なので、オープニングを飾るのは「Eat A Rich」。そこから「Love In An Elevator」へと流れる構成は圧巻の一言で、脂の乗り切った当時のエアロの姿が目に浮かびます。

で、そこに当時の最新ツアー『NINE LIVES TOUR』(1997〜98年)から「Falling In Love (Is Hard On The Knees)」「Hole In My Soul」といった、シングルヒットナンバーを追加しているのですが……これが意外と違和感がない。80年代後半以降の第2期黄金期の楽曲が中心のセットリストだから、当たり前っちゃあたり前なんですが。

では、そこに70年代のドス黒さ満載のヘヴィロックが加わっても違和感ないのかといいますと……うん、ないんですよ。「Falling In Love (Is Hard On The Knees)」と「Hole In My Soul」の間に「Same Old Song And Dance」が入っても自然と楽しめる。DISC 1には70年代の楽曲はこれだけなんですよね。で、DISC 2は70年代の楽曲メインで、そこにジョー・ペリーが歌う「Walk On Down」や、80年代のヒットナンバー「The Other Side」「Dude (Looks Like A Lady)」、90年代の「Crazy」などが含まれるのですが、こちらも違和感ない。いや、違和感ないんじゃなくて、もう耳が慣れてしまっているんでしょうね。初めて『PERMANENT VACATION』(1987年)を聴いてから10年、そりゃあもう慣れてしまって当たり前ですよね。

『LIVE! BOOTLEG』(1978年)から20年、バンドが進んだ道は正しいとも間違っているとも言い切れませんが、これはこれでバンドの歴史を語る上で重要な1枚。『LIVE! BOOTLEG』と対でオススメしたいライブ作品です。音の良くない、かつ録音時期もボリュームも選曲も微妙な『CLASSIC LIVE!』(1986年)および『CLASSIC LIVE! II』(1987年)を聴くより(あれはあれで嫌いじゃないけど)真っ先に手にしてほしいライブ作品です。



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2017年11月 1日 (水)

AEROSMITH『ROCK IN A HARD PLACE』(1982)

AEROSMITHが1982年夏に発表した通算7枚目のスタジオアルバム。前作『NIGHT IN THE RUTS』(1979年)制作途中でジョー・ペリー(G)が脱退し、さらに本作制作前にはもうひとりのギタリスト、ブラッド・ウィットフォード(G)も脱退して、オリジナルメンバーはスティーヴン・タイラー(Vo)、トム・ハミルトン(B)、ジョーイ・クレイマー(Dr)のみとなってしまいました。ジョーの後釜にはジミー・クレスポ、ブラッドの後任にはリック・デュファイを迎えて完成させたのが、この『ROCK IN A HARD PLACE』という作品です。

プロデュースには前々作『DRAW THE LINE』(1977年)までのバンドの代表作に携わったジャック・ダグラス、そしてジョン・ボン・ジョヴィ(BON JOVI)のいとこトニー・ボンジョヴィが携わり、大半の楽曲をスティーヴンとジミーの共作で完成させています。前作『NIGHT IN THE RUTS』はメンバーのドラッグ問題やジョーの制作への関与が希薄だったこともあり、3曲もカバー曲が含まれていましたが、本作は全10曲中カバーが1曲。しかもジャズのスタンダード「Cry Me A River」をセレクトするという、非常に興味深い内容となっています。

いわゆる世間の評価的には本作、あまり高くないのですが、改めて聴いてみると悪くないんですよ。むしろ前作『NIGHT IN THE RUTS』や、オリジナル編成が復活した次作『DONE WITH MIRRORS』(1985年)よりも楽曲制作面で工夫が施されているんじゃないかと思っています。起死回生を狙った攻めのファストチューン「Jailbait」は単調と言われたらそれまでですが、僕は嫌いじゃないし、続く「Lightning Strikes」もシンセを導入した非常にキャッチーな作風でなかなかの出来だと思いますし。先の「Cry Me A River」のカバーも非常に“らしく”て好印象。当時のテクノロジーを彼らなりに駆使したインタールード「Prelude To Joanie」から続く「Joanie's Butterfly」の流れも実はかなり彼ららしい仕上がりなんですよね。

そしてワイルドなタイトルトラック「Rock In A Hard Place (Cheshire Cat)」は初期のエアロを彷彿とさせるし、ヘヴィな「Jig Is Up」、ブルースハープをフィーチャーしたブルージーなバラード「Push Comes To Shove」と、昔からのファンなら絶対に響く曲が豊富なのに、結局「ジョーがいない、ブラッドがいない」という理由で正当な評価が下されない。本当に勿体ない、不遇の1枚だと思っています。

もちろん、本作を『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)『ROCKS』(1976年)といった傑作たちと並べて「これは名作です」なんて無理矢理宣言するつもりはありません。ただ、オリメンじゃないからといってスルーするには出来が悪くないなんじゃないか、と言いたいだけ。変なレッテルに惑わされず、まずは無心で本作と接してみることをオススメします。



▼AEROSMITH『ROCK IN A HARD PLACE』
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2017年7月28日 (金)

AEROSMITH『NIGHT IN THE RUTS』(1979)

1979年晩秋に発表された、AEROSMITH通算6作目のスタジオアルバム。前作『DRAW THE LINE』(1977年)から2年ぶりの新作となりますが、その間には初の2枚組ライブアルバム『LIVE! BOOTLEG』(1978年)のリリースもあったので、意外と久しぶりという感じはないかもしれませんが、この2年というのはこのバンドにとって生死を分ける重大なタイミングでした。

ご存知のとおり、この頃のAEROSMITHはメンバーの多数がドラッグまみれ。これによりメンバーの人間関係も悪化していくわけです。また、ドラッグの悪影響により、レコーディングも思うようには進まない状況に。スティーヴン・タイラー(Vo)が思うように歌えなかったり歌詞が書けなかったりで、レコーディングは長期化。ジョー・ペリー(G, Vo)もスティーヴンとの関係悪化のため、スティーヴンがスタジオにいない間にギターをレコーディングし、自分の仕事が終わればすぐにスタジオを後にするという、バンドとしての機能がほぼ停止した状態の中無理やり制作が続けられました。

また、前作までの黄金期を支えたジャック・ダグラスと決別し、新たにゲイリー・ライオンズをプロデューサーに迎えて制作。心機一転を狙ったのでしょうが、アルバムはこれも思うように機能していないように感じる仕上がりです。

1曲1曲はなかなかの出来だと思うのですが、全9曲中3曲がカバーというのはいただけない。間違いなくスティーヴンが歌詞を書けなかった、あるいはタイラー/ペリーのソングライティングチームが破綻したことが大きく影響していると思われます。

本作から唯一シングルカットされたのが、THE SHANGRI-LASのカバー「Remember (Walking In The Sand)」。原曲まんまですが、これはこれで悪くない。「Reefer Head Woman」は1940年代にTHE BUSTER BENNETT TRIOが発表したブルースソング、「Think About It」はジミー・ペイジ在籍時のTHE YARDBIRDSのカバーとなります。

で、気になるオリジナル曲ですが、前作『DRAW THE LINE』や前々作『ROCKS』(1976年)にあったような“ヒリヒリした緊張感”が若干弱いかなと。タイラー/ペリー名義による「Chiquita」「Three Mile Smile」「Bone To Bone (Coney Island White Fish Boy)」あたりには前作までの片鱗を感じますが、今でもライブで披露される機会が多めの「No Surprize」はこれまでだったらアルバムのオープニングを飾るような1曲ではないよなと。このあたりにも、当時の彼らのちぐはぐさ/混乱ぶりが感じられます。結局、曲順があんまり良くないのかな。

結局本作制作途中でジョーがバンドを脱退。ソングライティングの共作者としておなじみのリッチー・スパや後に正式加入するジミー・クレスポが穴埋めをして完成までたどり着くのでした。ちなみに、先の「Three Mile Smile」でリードギターを手がけたのがジミー・クレスポ。なんだ、ジョーじゃないのかよ、と。

本作は全米14位、100万枚を売り上げますが、スティーヴンのドラッグ癖は治ることなく、『DRAW THE LINE』までギリギリのバランスを保っていたバンドはジョー脱退を機に、崩壊のスピードを速めていくのです。



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2017年4月16日 (日)

AEROSMITH『LIVE! BOOTLEG』(1978)

1978年にリリースされた、AEROSMITHキャリア初のライブアルバム。CDでは1枚のディスクにまとまってますが、アナログ盤は当時2枚組でリリースされています。

音源の大半は1977〜78年に、当時の最新作『DRAW THE LINE』(1977年)に伴うツアーで録音されたもの。つまり、バンドとしてはドラッグまみれで臨界点に達しつつあるか、達してしまってあとは落ちていくだけ……という絶妙なタイミングのライブなのです。選曲も1st『AEROSMITH』(1973年)から『DRAW THE LINE』までのベストセレクションといった内容。実際のライブのセットリストとは異なるものの、「Back In The Saddle」からヘヴィに始まり、そのままサイケデリックな「Sweet Emotion」へと流れていく構成はさすがの一言。演奏が進むに連れて演者の熱量が一気に上がり、それに伴いテンポも上がっていくという生々しさは、現代の“クリック重視”のライブとは一線を画するものがあります(ってこれ、現在のエアロを否定しているわけじゃないですよ。念のため)。

また本作にはスタジオアルバム未収録のオリジナル曲「Chip Away The Stone」やTHE BEATLESのカバー「Come Together」も収録。スタジオ音源は7インチアナログ盤やコンピ盤でしか聴けない貴重な楽曲を、当時のエアロらしいルーズだけど尖った歌と演奏で楽しむことができます。

さらに、本作の聴きどころのひとつとして、アナログ盤でいうところのD面(ディスク2のB面)、CDだとトラック14以降にとても貴重な音源が含まれています。それは、本作で最古の音源となる1973年のライブから「I Ain't Got You」「Mother Popcorn」の2曲。前者はジミー・リードやYARDBIRDSなどで知られるブルースのスタンダード、後者はジェイムズ・ブラウンのそれぞれカバーです。デビュー間もない頃のエアロはこういったカバー曲をかなりライブで披露しており、その音源はブートレッグなどでも確認することができます。ギリギリのところで正気を保っていた1977〜78年のエアロと、メジャーデビューして明るい未来を思い浮かべていた1973年のエアロ。これを並列で語っていいものか気になりますが、あの時点でこういう形でバンドの原点を思い出させてくれるのはエアロにとっても、そしてファンにとっても非常に意味のあることだったのではないでしょうか。

ちなみに、この2曲の後には1978年のライブから「Draw The Line」へとなだれ込むのですが、実はアルバムジャケットやブックレットには本来この曲はクレジットされていません。つまり、シークレットトラックとして収められているわけですね。これ、アルバムタイトルからもわかるように、当時横行していた海賊盤(Bootleg)に真っ向から対抗したもので、このクレジット漏れも“海賊盤によくあること”としてバンド側がちょっとした遊び心で手がけたんだとか。

このアルバムについては語りたいことが山ほどあるはずなのに、だけど無駄なことはあまり語りたくない気持ちもある。自分のロック人生を最初に変えてくれた、それくらい大切な1枚なんです。もし「AEROSMITHで一番好きなアルバムは?」と質問されたら、間髪入れずにこのアルバムを挙げることでしょう。



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2017年4月12日 (水)

STEVEN TYLER with THE LOVING MARY BAND: LIVE IN JAPAN 2017@日本武道館(2017年4月11日)

正直、スティーヴン・タイラーのソロアルバム『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』がリリースされると決まったときはネガティブな感情しかなかったし、聴いてみたら実際良い内容だったけども、リリースから時間が経った今思うのは「やっぱりなぁ……」というどうしようもなくネガティブな気持ち。この感情を払拭するには、やはり4月に決定したソロ来日公演に行くしかないよな……ということで、発表された直後にチケットを確保したのでした。

武道館でAEROSMITH。正確にはエアロではなくスティーヴンのソロなんだけど、武道館で彼のパフォーマンスを観るのは、おそらく1994年の『GET A GRIP TOUR』以来。あのときは武道館で10公演近くやったり、横浜アリーナでもやったりと、本当に大成功ツアーだったよね。ちょうど春先だったんじゃなかったっけ? 僕も武道館に3回くらい足を運び、横浜アリーナにも行った記憶があるなぁ。

あいにくの雨の中、近場で18:40まで取材をしており、正直「ああ、オープニングには間に合わないなぁ……」と思っていたら、開演が20分近く遅れてくれたことで、余裕を持って席に着くことができました。1階席南東A列。限りなく南(真正面)寄りの最前列。最高じゃないですか。ブルースやカントリーに混ざりジョニー・キャッシュ「One」(U2のカバー)が流れた……と思ったら会場暗転。スクリーンにはスティーヴンのインタビュー映像などが映され、気付いたらステージ上にはバンドメンバーの姿が。そして、これまで何万回と聴いてきたあのベースのフレーズが……そう、1曲目はエアロの「Sweet Emotion」。ギター2人、リズム隊(ともに女性)という、バンジョー、そしてギターやハーモニカ、ピアノなどをプレイするマルチプレイヤー(女性)からなるTHE LOVING MARY BANDを携えたタイラー翁(あえてこう呼びたい)は、どこからどう見ても僕らがよく知ってる、あの“AEROSMITHのスティーヴン・タイラー”そのものでした。

さて、ここからはざっくばらんに感想を書いていきます。

僕が観たものは思ってた以上に、完全にAEROSMITHでした。正確には「AEROSMITHっぽい」、もっと正確に言うなら「タイラー翁が有能な若手ミュージシャンたちと、AEROSMITHの名曲たち(比較的ソフト路線)を愛でながら、時々ビートルズやらジャニスやらツェッペリンをカバーして、その合間にカントリー調のオリジナル曲を申し訳程度に演奏する宴」(やたら長い)という内容。そりゃあ悪い訳がない。当初思っていた以上に良かったし楽しかったです。

“AEROSMITHの名曲たち(比較的ソフト路線)”ということで、カバーされたのは80年代後半〜90年代の「売れ線ヒットシングル連発」期の楽曲ばかり。それが良い悪いではなく、ソロアルバムでやろうとしていることにもっとも近かった。だからこのセレクトは間違いないわけです。そこに「Sweet Emotion」と「Walk This Way」が入ることで、ライブにメリハリをつける。なんなら「Train Kept A Rollin'」もあるし、どうせカバーやるならツェッペリンもやっちゃおう!ってことで、「Walk This Way」からメドレー的に「Whole Lotta Love」までやっちゃう(しかもそれでライブを締めくくる)。タイラー翁が心のそこから楽しもうと思って、このツアーを計画したことがなんとなく理解できました。

バンドメンバーも素晴らしかった。6人中半分、しかもリズム隊が女性っていうのも良かったし、コーラス(主にベーシストとマルチプレイヤーの女性2人)もコーラスの域を超えたうまさ。で、タイラー翁がちゃんと彼女たちの見せ場を作ってあげたのも良かったと思う。

タイラー翁の調子はまずまず。以前と比べれば声は比較的出てたほうだと思います。高音が出切らずに要所要所ごまかすパートもあったけど、決めるべき箇所でちゃんと決めてたからしっかり歌えているように見えた(聞こえた)し、特に大きな問題なし。なにより現在69歳なのにここまでフロントマン然としたじいちゃん、数える程しかいないよね。圧巻です。

セトリは多分大阪とあまり変わらないのでは。序盤、日本のみでリリースされたソロ曲「Love Lives」(キムタク版ヤマトの主題歌)に客が無反応だったのには苦笑い。あと、エアロでもやってたことがある「Home Tonight」〜「Dream On」のメドレーはズルいし、ツェッペリン「Whole Lotta Love」の完コピは微笑ましかった。完コピといえば、バンドメンバーのエアロナンバーのコピー具合も目から鱗。散々聴き飽きた楽曲も、この編成で聴くのは悪くなかったよ。というか、愛が感じられましたし。と同時に、自分が思ってる以上に自分は今AEROSMITHのことを求めているんだと実感できた一夜でした。別にこのライブを観て「やっぱりスティーヴンの隣にはジョー・ペリーがいなくちゃ!」とか文句を言いたいわけじゃなくて、これはこれとして理屈抜きで楽しめました。

1時間45分くらいと、AEROSMITHの通常公演と比べたら若干短いけど、この程よさが今回はちょうど良かったと思います。これでソロアルバムを枚数重ねていったらソロ曲が増えて、ライブ自体が長くなりそうですしね。


[SETLIST]
01. Sweet Emotion [AEROSMITH]
02. Cryin' [AEROSMITH]
03. I'm Down / Oh! Darling [THE BEATLES]
04. Come Together [THE BEATLES]
05. Love Lives
06. Jaded
07. Love Is Your Name
08. I Make My Own Sunshine
09. Mercedes Benz [JANIS JOPLIN] / Piece Of My Heart [ERMA FRANKLIN]
10. Livin' On The Edge [AEROSMITH]
11. We're All Somebody From Somewhere
12. What It Takes [AEROSMITH]
13. My Own Worst Enemy
14. Home Tonight / Dream On [AEROSMITH]
15. Train Kept A Rollin' [TINY BRADSHAW / AEROSMITH]
--ENCORE--
16. Janie's Got A Gun [AEROSMITH]
17. Only Heaven
18. Walk This Way [AEROSMITH] / Whole Lotta Love [LED ZEPPELIN]



▼STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』
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2017年4月 7日 (金)

AEROSMITH『DRAW THE LINE』(1977)

前作『ROCKS』(1976年)は、その前の『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)が持つ全米11位を超える、全米3位という過去最高位を記録。この数字は1993年の『GET THE GRIP』が1位を獲得するまで破られることはありませんでした。それくらい強烈なインパクトを残し、“AEROSMITHここにあり”と高らかに宣言したのが『ROCKS』だったわけです。

がしかし。前回のレビュー終盤にも書きましたが、この頃になるとバンドは手にした大金をすべてドラッグに変換し、快楽に溺れていきます。いや、快楽に溺れるというよりも現実逃避すると言ったほうが正しいのかもしれません。バンドとしても、そしてひとりの人間としても『ROCKS』という作品で臨界点を迎え、そこを超えた先には何があるのか……この5枚目のオリジナルアルバム『DRAW THE LINE』からはその“片鱗”を垣間見ることができます。

バンドと盟友ジャック・ダグラスでプロデュースされた本作は、ニューヨーク近辺にある廃修道院で録音されたもの。いわゆるナチュラルエコーを多用したサウンドは、前作『ROCKS』で聞けた密度の高いヘヴィロックとも異なるものに仕上げられています。また楽曲自体も2nd『GET YOUR WINGS』(1974年)と3rd『TOYS IN THE ATTIC』の中間に位置する、シンプルなアレンジでロック&ブルースをストレートに表現したものが大半を占めます。

アルバムのオープニングを飾るタイトルトラック「Draw The Line」はオープンチューニングによるスライドギターが登場しますが、メインリフは6弦ベースで弾かれた(と思われる)太いサウンドで表現。ドラッグ漬けで人間としては最悪の状況だったにも関わらず、いや、そんな状況だったからこそ表現できたギリギリ感なのかもしれません。この危うさもまた“ロックそのもの”なんですよね。

ただ、その後は決してベストとは言い難い楽曲もちらほら登場します。初めてジョー・ペリーがリードボーカルを務めた「Bright Light Fright」や、バンドとしての新たな可能性を感じさせるドラマチックな「Kings And Queens」といった聴きどころもあるにはありますが、全体的にはあまりパッとしない内容というのが正直な感想。確かに「Critical Mass」も「Get It Up」も「Sight For Sore Eyes」も悪くないけど、前作までにあったキャッチーさは薄まっている。悪くいえば地味なんですよね。しかもラストはロバート・ジョンソンやエルヴィス・プレスリーで知られるブルーススタンダードのカバー「Milk Cow Blues」で締めくくり。この選曲も地味だし、ノッてるバンドならではのナイスなカバーとは言い難い。本当にどこまでも中途半端な1枚なんですよね。

だけど、聴き始めると不思議と最後まで通して聴いてしまう。そんな不思議な魅力があるのも、本作の面白いところ。きっとその魅力って……悲しいけど、“バンドが、いや人間が臨界点を超えたときにどうなるのか”を端的に表しているからなんでしょうね。そのすべてが、『DRAW THE LINE』というタイトル(「一線を引く」「境界を定める」「けじめをつける」以外にも、「コカインで線を引いてそれを吸う」という意味がある)に集約されているんだから、驚きを超えて怖さすら感じます。



▼AEROSMITH『DRAW THE LINE』
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