AIR『Usual tone of voice』(1998)
先日、AIRのベストアルバム「Best Not Best」を買ったんですよ。で、久し振りに過去のAIR曲をまとめて聴きまして。懐かしい初期の頃から、最近のラウドな感じのやつまで、全20曲。で、その中で気になる曲が数曲あったんですね。それが"Yawn"、"Honey Cow"、"Heavenly"、"Hello"の4曲‥‥つまりこの「Usual tone of voice」収録曲でして。このアルバム、俺の中では一番印象が薄いはずなんですよ。つうのも、最も聴き込んだであろう「MY LIFE AS AIR」の後ということもあって期待してただけに、ちょっと肩透かしを食らった記憶があるんですよね、リリース当時。それと‥‥多分、このアルバムが出た頃、自分がちょっと失恋した時期と重なってるので、ネガなイメージが強いんですよね。アルバムの作風もかなり落ち着いたものですし、だから否が応でも思い出しちゃってたのね、暫く。
このアルバムの後、いきなり "Liberal" って曲で後の「ラウド路線」が決定づけられちゃったような気がするんだけど、勿論そっちの路線も好きなのよ。つうかこの人の場合、両極端なふたつの要素が同居するから面白いんだけどね。ま、その辺は後々ベスト盤のレビューにでも書くつもりでいますが。
で、久し振りにこのアルバムを引っ張り出して聴いてるんですよ、ここ数日。で、いろんな発見が俺の中でありまして‥‥あれっ、このアルバムってこんなに良かったっけ!?って。
基本的には穏やかなトーンで統一されてますよね。前作にあったようなパンキッシュな曲もなければ、エレクトロを駆使したようなものもなし。後のラウド路線の片鱗も全く見当たらず。もしかしたらSPIRAL LIFE時代に最も近いんじゃないか、なんて思える程(ってコアなファンは決してそうは思わないだろうね。あくまで素人目にはそう映るってことでご理解ください)。勿論、焼き直しとか原点回帰とかそういった意味ではなくて、元々持っていた資質を改めて持ち出してみた、って感じじゃないでしょうか?
AIRとしては初めてブラスを導入したであろう"Sunrise"とか、一定のフレーズを繰り返すピアノと徐々に盛り上がっていくリズム隊との対比が面白いインスト曲"I hate Chopin"とか、ヘヴィでグルーヴィーなんだけどそれまでのヘヴィ路線とはちょっと色合いが違う"I hope not"とか、"Welcome lunch"以降エンディングまでの流れとか、とにかく面白いんですよね。前作までのAIRの色合いを残しつつ、いろんな引き出しを引っ張ってきて、それまでとは多少違ったことにチャレンジしようという姿勢、全体的に統一感のあるアルバムカラー、それ以前/その後に多く登場する「ある方面」を歌った歌詞が皆無だったり、何よりも「借り物的な要素」が一切感じられない点が非常に好感持てるんですよね。
いや、AIRはパ●ってナンボでしょ!?とも思うんだけど(失礼な話だな)、何だか改めてこのアルバムを聴くと‥‥ああ、俺が好きなAIRの側面って結局こういうものなのかもしれないな、という気がしてきたんですね。他のアルバムがダメとかこれより劣るって意味ではなくて、全部いいと思うけど中でもこれが一番しっくり来る、という。やっぱりね、"Dancing in the sheets"とか"I never wanna hear again"みたいな曲とか、上に挙げたような楽曲群が好きなわけですよ。たまたま今の心境とピッタリ一致しただけかもしれないけど、とにかく現時点で一番好きなAIRのアルバムは?と聞かれたら、胸を張ってこれの名前を挙げると思います。来月になったら判らないけどさ。
昨年リリースされた "Last Dance" なんかも、比較的このアルバムの色に近いものを持ってますよね? 実はまだあの曲が収録されたアルバム、聴いてないんですよ‥‥ベスト盤買う前にそっち聴けって話ですよね、ったく。何か久し振りに彼のライヴが観たくなってきたなぁ‥‥
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