2017/10/03

MAD SEASON『ABOVE』(1995)

ALICE IN CHAINSのレイン・ステイリー(Vo)、PEARL JAMのマイク・マクレディ(G)、SCREAMING TREESのバレット・マーティン(Dr)、THE WALKABOUTSのジョン・ベイカー・サウンダーズ(B)により1994年に結成されたグランジ界のスーパーバンドMAD SEASON。その彼らが1995年春に発表した、唯一のスタジオアルバムが本作『ABOVE』(邦題は『生還』)です。

PEARL JAMのギタリスト&ソングライターのひとりと、ALICE IN CHAINSの空気感・世界観をその歌声で一気に作り上げるフロントマン。この2人の邂逅が一体何を生み出すのか、そりゃあ当時相当気になったものです。そもそも、ALICE IN CHAINS自体がその頃は活動が不安定な時期でしたから、余計にね(その不安定の原因はレインその人なんですけど)。

アルバムのオープニングを飾る「Wake Up」は、7分半にもわたるブルージーな1曲。これ1曲で、MAD SEASONがPEARL JAMでもALICE IN CHAINSでもないことが証明されるわけですが、劇的な展開をするでもなく、今にも消えそうな炎がゆらゆらと燃えるかのようなスタイルといえばいいのでしょうか。そのサウンドの上を、あの爬虫類的なレインの歌声がうごめき回るわけです。しかも、ALICE IN CHAISほど攻撃的ではなく、それでいて生き物なのか作り物なのか正体不明な存在感を醸し出しながら。

1曲、1曲と聴き進めるうちに、楽曲自体はPEARL JAMのメンバーが作っていることはなんとなく理解できるようになりました。しかし、レインという個性的なシンガーの声が乗ることにより、新たな何かがそこに誕生する。レインも自身のバンドより肩の力を抜いて、脱力気味で気持ち良さげに歌っており、時々力強く声を張り上げたりもしますが、それもあくまで味付け程度。決して音数が多くないバンドアンサンブルとともに、主旋律に被さるハーモニーが不協和音と美しい和音の間を行き来する。派手さは皆無ながらも、なぜか心のど真ん中を突いてくる。それがMAD SEASONが持つ不思議な魅力なんだと思います。

また、このバンドのサウンドを分析することで、改めてALICE IN CHAINSはジェリー・カントレル(G, Vo)が作る楽曲こそがバンドの骨格なんだという事実、そしてPEARL JAMはエディ・ヴェダー(Vo)という稀代のシンガーが歌うことでPEARL JAMとして成立するんだというごく当たり前のことに気づかされるわけです。

アルバム中盤、「Lifeless Dead」あたりから“いかにも”な曲が登場することで、ああそうだった、彼らはグランジシーンから登場したんだったということを思い出す。MAD SEASONはそれくらい、あのシーンの末期から誕生した異端児だったのです。本当はこのアルバムに続く新作を、このメンバーで聴きたかったけど、それも今では叶わぬ夢。1999年にはジョンが、2002年にはレインが亡くなっているため、オリジナル編成での復活は実現不可能に。2015年にはクリス・コーネルダフ・マッケイガンを迎えたスペシャル編成での復活がありましたが、そのクリスも……。つくづく不運な宿命を持ったバンドだったんですね。



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投稿: 2017 10 03 12:00 午前 [1995年の作品, Alice in Chains, Mad Season, Pearl Jam] | 固定リンク

2017/08/13

V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1992/2017)

1992年秋に全米公開された映画『シングルス(SINGLES)』のサウンドトラックアルバム。日本では先にサントラがリリースされ、映画は翌1993年春に公開されました(単館ではなかったものの公開劇場数は少なく、どこも小規模劇場での公開だったと記憶しています)。

シアトルを舞台にしたラブストーリーなのですが、当時のシアトルといえばグランジブームまっただ中。主人公のひとりであるクリフ(マット・ディロン)がロックバンドをやっていることなどもあり、劇中にはALICE IN CHAINSやクリス・コーネル(SOUNDGARDEN)、エディ・ヴェダー(PEARL JAM)なども登場します。

サントラは映画公開に先駆けて1992年6月にUS発売(日本では9月発売)。内容は当時人気のグランジバンドやシアトル出身のレジェンドたちの楽曲で大半が占められ、全13曲中11曲が当時未発表曲でした。リードトラックとしてALICE IN CHAINSの新曲「Would?」(同年9月発売の2ndアルバム『DIRT』にも収録)が公開されるやいなや、大反響を呼んだのをよく覚えています。

ALICE IN CHAINS、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、MUDHONEYSMASHING PUMPKINSといった当時ど真ん中のバンドから、SCREAMING TREES、MOTHER LOVE BONEというグランジ黎明期のバンド、THE REPLACEMENTSのポール・ウェスターバーグ、HEARTのアン&ナンシー姉妹の別ユニットTHE LOVEMONGERS、ジミ・ヘンドリクスといったレジェントたちまで。さらにはクリス・コーネルのソロ曲まで含まれているのですから、当時のグランジシーンを振り返る、あるいはシアトルのロックシーン(メタルは除く)に触れるという点においては非常に重要な役割を果たすコンピレーションアルバムだと思います。

そのサントラ盤が、発売から25年を経た2017年に、未発表テイクや劇中で使用されたもののサントラ未収録だった楽曲を集めた2枚組デラックスエディションで再発。ディスク1は当時のままで、ディスク2にその貴重な音源がたっぷり収められています。

ここには、マット・ディロンが劇中で所属していたバンド・CITIZEN DICKの楽曲「Touch Me, I'm Dick」(MUDHONEY「Touch Me, I'm Sick」のパロディカバー)や、のちにSOUNDGARDENの楽曲として発表される「Spoonman」のクリス・コーネルソロバージョン、ALICE IN CHAINやSOUNDGARDENのライブ音源、TRULYやBLOOD CIRCUSの楽曲、マイク・マクレディ(PEARL JAM)のソロ曲などを収録。おまけ感の強いものから本気で貴重なテイクまで盛りだくさんの内容で、ここまでを含めて映画『シングルス』をしっかり振り返れるのかな?と改めて思いました。

映画自体は観ても観なくても大丈夫ですが(笑)、1992年という時代の節目を追体験したいのなら、NIRVANAやPEARL JAMのオリジナルアルバムだけではなく、ぜひ本作も聴いていただきたいと、あの当時をリアルタムで通過したオッサンは強く思うわけです。サントラと思ってバカにしたら、きっと痛い目を見るよ?

ちなみに、本作のデラックスエディションが発売されたのが5月19日(海外)。クリス・コーネルが亡くなったのがその前々日の17日ということもあり、真の意味での“グランジの終焉”を実感させる1枚になってしまったことも付け加えておきます。



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投稿: 2017 08 13 12:00 午前 [1992年の作品, 2017年の作品, Alice in Chains, Chris Cornell, Heart, Mudhoney, Pearl Jam, Smashing Pumpkins, Soundgarden] | 固定リンク

2017/07/23

ALICE IN CHAINS『BLACK GIVES WAY TO BLUE』(2009)

2002年4月、レイン・ステイリー(Vo)の急死をもって、その活動に幕を下さざるをえない状況に追い込まれたALICE IN CHAINS。それから4年後、彼らは新ボーカリストにウィリアム・デュヴァールを迎え再始動。オリジナルアルバムとしては1995年の3rd『ALICE IN CHAINS』から実に14年ぶりに発表されたのが、本作『BLACK GIVES WAY TO BLUE』です。

ミドルテンポで引きずるようにヘヴィで陰鬱なスラッジサウンドはそのままに、あの“聴いてるだけでどこか不安な気持ちになってくる”も健在。冒頭2曲「All Secrets Known」「Check My Brain」を聴けば、間違いなく「あのALICE IN CHAINSが帰ってきた!」と実感できるはずです。

3曲目「Last Of My Kind」に入り、ようやくウィリアムの本領発揮。レインのような“爬虫類的でカリスマチックな”歌声ではないものの、深みのあるパワフルな歌声を響かせてくれる。最初こそこのALICE IN CHAINSサウンドに別の声が乗ることに違和感があったけど、何度か聴き返しているうちにそれも慣れてくると思います。

全体的な構成は、前作にあたる『ALICE IN CHAINS』の延長線上にある作風。しかし、レインのドラッグ癖で思うように活動できず無理矢理仕上げた感も多少なりともあった『ALICE IN CHAINS』と比べると、本作はより整理されている印象が強い。もちろん、前作はその無理矢理感が良い方向に作用していたわけで、あれと同じもの、あるいはそれに近いものを再び作ることは不可能。そういう意味では、ここには前作で試みた挑戦の完成型が存在しているのではないでしょうか。あの当時は『ALICE IN CHAINS』こそがAICサウンドの究極型だと思っていたけど、その続きがあったとは(いや、その続きが聴けることになるとは)……長生きはしてみるものですね。

ジェリー・カントレル(G, Vo)がメインで歌う「Your Decision」なんて、まんまALICE IN CHAINSじゃないですか(当たり前の話ですが)。でも、そこには不条理さも混沌さも存在しない。それが聴く人によってはもの足りなさにつながるかもしれませんが、1枚のロックアルバムとしての完成度は非常に高い。グランジブームが終焉した1994〜5年頃から10数年経ち、ようやく本家のうちの1組が万全の体制で“あの頃”にけじめをつけた。この『BLACK GIVES WAY TO BLUE』はそういう、今後活動を続けていくために作らなくてはいけなかったアルバムなんじゃないでしょうか。

「Your Decision」のラストフレーズ“It's Over”を耳にするたび、そう思わずにはいられません(で、前作のラストナンバーが「Over Now」だったのにも、何かの因縁を感じるという)。



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投稿: 2017 07 23 12:00 午前 [2009年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2017/04/27

ALICE IN CHAINS『FACELIFT』(1990)

ALICE IN CHAINSが1990年に発表したメジャーデビューアルバム。本格的なブレイクは本作以降に発表されたシングル「Would?」(映画『SINGLES』のサウンドトラックに先行収録)と、続く2ndアルバム『DIRT』(1992年)からになりますが、この『FACELIFT』という作品の果たした功績は計り知れないものがあります。

僕が彼らのことを、そしてこのアルバムのことを知ったのは、当時の友人からの勧め、そしてMETALLICAのメンバー(確かカーク・ハメットだったと記憶してます)がインタビューで最近の愛聴盤としてALICE IN CHAINSの『FACELIST』を挙げていたこと。それと前後して本作からシングルカットされた「Man In The Box」がMTVなどで大反響を呼んでおり、ちょうど少しずつ知名度を高めつつあるタイミングでした。そして、彼らの知名度を一気に引き上げる結果となったのが、1991年に入ってから行われたANTHRAX、SLAYER、MEGADETHらによるパッケージツアー『CLASH OF THE TITANS』に参加したこと。スラッシュメタル勢と並んだときの弱さはあったものの、ここから彼らの快進撃は始まり、その後はVAN HALENとの大々的なツアーに参加したことでさらに人気を高めていくのでした。

その後METALLICAがこの『FACELIFT』から影響を受けたかのようなミドルテンポ中心の作風へとシフトチェンジするなんて、本作が発表された頃は感がもしなかったでしょう。確かにMEGADETHやSLAYERといったバンドがALICE IN CHAINSに目をつけたのはさすがと思いますが、いかんせん当時の彼らのサウンドとの相性は良好とは言い難かった。しかし、VAN HALENの客層とはなぜかマッチした。それはなぜか?

実はALICE IN CHAINS、このアルバムに至る前はLAメタルからの影響バリバリなサウンドのバンドだったのです。のちにリリースされるボックスセット『MUSIC BANK』(1999年)には80年代末のデモ音源が収録されていますが、これがRATT顔負けなハードロックでして(苦笑)。「WE DIE YOUNG」のMVを観ても、その片鱗は存分に感じられますし。人に歴史ありですね。

実際『DIRT』以降のアルバムと比較してみても、この『FACELIFT』は若干その色が残っている……気がしないでもない。『DIRT』以降ほど複雑怪奇なアレンジではなく、比較的わかりやすいハードロックで構成されているあたりも、その片鱗と言えるでしょう。事実、レイン・ステイリー(Vo)在籍時の作品群の中でも、もっともスルスル聴けてしまう、あまりクセのないアルバムですし。

思えば「We Die Young」「Put You Down」のストレートさも、「Man In The Box」や「Sea Of Sorrow」のポップさも、「Love, Hate, Love」のダークさも、「I Know Somethin (Bout You)」のファンクメタル感も、「Real Thing」のブギー感も、他のバンドがやれば普通のハードロックとして通用してしまうものばかり。これをレインのおどろおどろしい歌唱スタイルとジェリー・カントレル(G, Vo)が被せるハーモニーと粘っこいギターが融合することで、ちょっと“普通じゃない”ものが完成する。これがALICE IN CHAINSの原点なんでしょうね。

その「ちょっと“普通じゃない”もの」がいろんな要因(ひとつはレインのドラッグ癖も大きいと思う)が重なりあうことで、「まったく“普通じゃない”もの」へと進化していった。それが『DIRT』であり『JAR OF FLIES』(1994年)であり『ALICE IN CHAINS』(1995年)だったんだろうなと、今になって思うわけです。そして、『FACELIFT』や『DIRT』がその後のロックシーンに与えた影響がいかに大きなものだったかも、改めて実感するわけです。まさか『FACELIFT』を聴いたとき、それから1年ちょっとであそこまでHR/HMシーンが変革を起こすなんて考えもしなかったけどね。



▼ALICE IN CHAINS『FACELIFT』
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投稿: 2017 04 27 12:00 午前 [1990年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2016/01/10

祝ご成人(1995年4月〜1996年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。昨年度に初めて実施したこの企画、今回も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1995年4月〜1996年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

並びはすべてアルファベット順です。(2015年の新成人編はこちら


Alice in Chains『Alice in Chains』(Amazon

Ben Folds Five『Ben Folds Five』(Amazon

Björk『Post』(Amazon

Blur『The Great Escape』(Amazon

Bon Jovi『These Days』(Amazon

The Chemical Brothers『Exit Planet Dust』(Amazon

Fear Factory『Demanufacture』(Amazon

Foo Fighters『Foo Fighters』(Amazon

The Fugees『The Score』(Amazon

Garbage『Garbage』(Amazon

King Crimson『Thrak』(Amazon

Oasis『(What's the Story) Morning Glory?』(Amazon

Pulp『Different Class』(Amazon

Queen『Made in Heaven』(Amazon

Red Hot Chili Peppers『One Hot Minute』(Amazon

Reef『Replenish』(Amazon

Sepultura『Roots』(Amazon

The Smashing Pumpkins『Mellon Collie and the Infinite Sadness』(Amazon

Teenage Fanclub『Grand Prix』(Amazon

The Wildhearts『P.H.U.Q.』(Amazon


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下ざっと候補を羅列します。

Alanis Morissette『Jagged Little Pill』
Anthrax『Stomp 442』
The Beatles『Anthology 1』
The Boo Radleys『Wake Up!』
Bruce Springsteen『The Ghost of Tom Joad』
The Charlatans『The Charlatans』
D'Angelo『Brown Sugar』
David Bowie『Outside』
In Flames『The Jester Race』
Michael Jackson『HIStory: Past, Present and Future, Book I』
Nine Inch Nails『Further Down the Spiral』
Ozzy Osbourne『Ozzmosis』
Paul Weller『Stanley Road』
The Rentals『Return of the Rentals』
Ron Sexsmith『Ron Sexsmith』
Sonic Youth『Washing Machine』
Supergrass『I Should Coco』
Terence Trent D'Arby『Terence Trent D'Arby's Vibrator*』
Terrorvision『Regular Urban Survivors』
Underworld『Second Toughest in the Infants』
White Zombie『Astro-Creep: 2000』

こうやって振り返ると、1995年から1996年初頭ってブリットポップの最盛期だったんですね。1995年3月にはElasticaやGeneのアルバムも発表されてるし、1996年後半になるとKula Shakerの1stもリリースされますし。やっぱり1995年夏のBlur vs Oasisの直接対決がピークでしたね、いろんな意味で。

あ、Underworldをあえて選外にしたのは、日本盤のリリースが1996年6月だったから。海外では3月発売ですが、その後の「Born Slippy」のヒットなど含めて考えると、このアルバムは1996年から1997年の作品かなと思いまして。来年はマストかな。

メタルの世界はグランジがひと段落したものの、ポストグランジ的サウンドのバンドが増えつつあり、前年からのMotley Crue、Dokkenの失敗など、あまり芳しくない状況でした。そんな中、1994年のKornデビューを機にグルーヴ感のあるヘヴィロックが台頭し始めます。前年デビューのMachine Headもその1つですね。Sepulturaは前作『Chaos A.D.』でのシフトチェンジから、ブラジル音楽のルーツを取り入れた傑作『Roots』で活動のピークを迎えるのも、1996年初頭のお話。Fear Factoryのようなデジタル要素を取り入れたヘヴィバンドも人気を集め始めたのも印象に残ってます。同時期に国内ではTHE MAD CAPSULE MARKETSが『4 PLUGS』をリリースしたのも、海外の動きとリンクしていて興味深いです。

ちなみに日本国内ではこの頃、ブルーハーツの解散(6月)やUP-BEATの解散(8月)、光GENJI(光GENJI SUPER5)の“卒業”(9月)、Winkの活動停止(96年3月)といった出来事がありました。いわゆるTKサウンドがチャートを席巻し、MY LITTLE LOVERやglobeがデビューしたのもこの頃でした。

投稿: 2016 01 10 12:00 午前 [1995年の作品, 1996年の作品, Alice in Chains, Ben Folds, Björk, Blur, Bon Jovi, Chemical Brothers, The, Fear Factory, Foo Fighters, Fugees, The, Garbage, King Crimson, Oasis, Pulp, Queen, Red Hot Chili Peppers, Reef, Sepultura, Smashing Pumpkins, Teenage Fanclub, Wildhearts, The, 「20年前」] | 固定リンク

2004/10/19

とみぃ洋楽100番勝負(62)

●第62回:「We Die Young」 ALICE IN CHAINS ('90)

 ALICE IN CHAINSも衝撃だったなぁ‥‥って衝撃ばかりですね、俺にとっての'90年って。いや、でも本当にそうなんですよ‥‥この年って俺にとっては暗黒の1年でして。所謂「浪人生活」を送った1年で、本当に音楽にしか頼れなかった1年なんスよね。音楽にすがってたと言っても過言じゃないくらいに‥‥

 浪人中も予備校で仲良くなった奴らはみんな音楽好きだったし、当時付き合うことになった子も音楽繋がりで浪人生だったっつーね。ま、それは余計な話なんで割愛しますが。

 高校時代以上にまたいろんなジャンルを聴く奴らと仲良くなるわけですよ。で、また世界って広いんだなと再認識して。所謂オルタナ系に片足突っ込んだのもこの頃だし、メタルにしてもジャーマン系(BLIND GARDIANとかRAGEといった連中)に手を伸ばしたのもこの頃。全部周りの影響な。あ、ノイズとか訳判らないジャンルもこの頃か。ジョン・ゾーンみたいなのも聴かされたなぁ‥‥

 んで、ALICE IN CHAINSも友人からのオススメで。「SOUNDGARDENとかJANE'S ADDICTIONが好きなの? じゃあ絶対にオススメだから!」ってCD屋(多分新宿シスコ)で握らされたのが、このアリチェンの「FACELIFT」っていうアルバム。秋頃かなぁ‥‥俺が十二指腸潰瘍で倒れる前だから。一番混沌としてた時期。そんな時期にこのアルバム聴かされちゃあねぇ‥‥ハマるわな、そりゃ。

 1曲目にいきなりこの "We Die Young" が入ってるわけですよ。今のMETALLICAにも通ずるヘヴィなリフからスタートして(ってMETALLICAが彼等に影響を受けたわけですが)、いきなり爬虫類系の声で「Scary on the wall〜」って歌い出すわけですよ。でサビが「Faster we run, and we die young」ですからね。しかも二声ボーカルで。曲によっては不協和音っぽい二声で歌ってて、気持ちいいんだか悪いんだか。ま、気味悪さは天下一品でしたね。

 ヘヴィで独特な世界観があって曲が良くてメロディアスで。その後のグランジとかはギターソロ排除の方向に進んでいったけど、アリチェンってしっかりとしたソロがちゃんと入ってるんだよね。元々LAメタル系のバンドをやってただけあって、その辺の癖は抜けてないというか。ま、だからこそハマったのかもしれないけど。

 '93年に観た、唯一の初来日公演には東京2日間とも足を運びました。こういう見せ方もあるんだな、とホントに驚かされる2日間でした。けど‥‥やはり長続きしないバンドでしたね‥‥そして‥‥悲しいくらいに悲惨なエンディングを迎えて。そんなシナリオ、いらなかったのに‥‥そういう悲壮感とか不幸さは全部、音楽の世界だけにしとけばよかったのにね。



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投稿: 2004 10 19 12:00 午前 [1990年の作品, Alice in Chains, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/03/26

ALICE IN CHAINS『ALICE IN CHAINS』(1995)

早いもので、レイン・ステイリーがこの世を去ってから2年近くも経ってしまった。いや、ことALICE IN CHAINSの不在という意味で考えれば、ベスト盤リリースから約5年、オリジナルアルバムでいえば約10年ということになるのかな‥‥え~っ、そんなに時間が経ったの!?って疑ってしまう程、俺の中での「ALICE IN CHAINSに対する想い」はずっと1994~5年頃で止まったまま。もっと言っちゃえば、唯一の来日公演となった93年秋から時間が止まったまま。あの時の衝撃は未だに忘れられないし、自分の中でのロック史上、歴史的瞬間だったことは改めて書くまでもないでしょう。

そんな3度目の春を迎える前に、改めてALICE IN CHAINSの功績について語っていきたいと思います。今回はサードアルバムにして、オリジナル作品としてはラスト作となった、このセルフタイトルのアルバムを紹介したいと思います。

前作『DIRT』(92年)リリース後、暫くしてベーシストが交代、最後まで在籍したマイク・アイネズ(元OZZY OSBOURNE)が加入し、93年秋には初来日を果たし、そのすぐ後にミニアルバム『JAR OF FLIES』をリリース。これがミニアルバムにも関わらず、全米初登場1位を記録。純粋たる新作というわけではなく、肩の力を抜いた、遊び心満載な1枚なのにも関わらず1位‥‥時代が彼らを求めていたということでしょうか?

その後、レインのドラッグ問題等が公になり、表立った活動が少なくなっていくのですが、秘密裏に新作制作は続いており、結局『JAR OF FLIES』から2年、『DIRT』から数えて3年という期間で完成~リリースとなったのが、このサードアルバムというわけ。当然ながら、このアルバムも初登場1位を記録、レインのドラッグ癖が原因でツアーらしいツアーがなかったものの、アルバムは見事に2~300万枚も売り上げたのでした。

このアルバムというと、やはりそのサウンド以上に「日本盤リリース遅延&ジャケット変更事件」が話題となり、そちらの方で覚えている人が多いんじゃないでしょうか? 理由はこう‥‥右のアメリカ盤ジャケットでは、3本足の犬が描かれていたり、アルバム・ブックレットや裏ジャケに「奇形」ばかりを集めた、正しく「フリークス」写真&イラスト満載なアートワークで、これに日本側が難色を示し、バンド側に「日本盤のジャケット変更」を依頼したものの、却下され続けた、というお話。結局、右下のようにシンプルな形ならOKということで、US盤リリースから約1年後にようやくリリースとなったのでした。

さてさて。続いてアルバム内容について。前2作にあったようなヘヴィメタリックで硬質な色合いが後退し、もっと生々しくてラフな印象が強くなりました。カッチリ作り込まれたかのようなサウンドだった『DIRT』との大きな違いは、その「ライヴっぽさ」に表れていると思います。これはプロデューサー/エンジニアが変わったことも大きいでしょうし、楽曲の質感や構成がそれまでと大きく変わったことも影響していると思います。

演奏自体も1曲1曲が長尺なものが多く、それらは計算した構成というよりも、もっと即興性を重視したジャム・セッション風のアレンジになっていて、その辺も「ライヴっぽさ」を強調してるのではないでしょうか? バンドがこういう方向に走ったのは、恐らく‥‥ドラッグによるレイン不在が大きく影響してるのではないでしょうか。歌えるような状態になかったとも言われていますし、実際歌のパート以上にインストパートが長い曲もありますし、ギタリストのジェリー・カントレルのボーカル比重もかなり増えています。彼がリードボーカルを取る曲すらありますからね。またそのレインのボーカルも、そのまま使えるようなテイクがなかったのか、電子的なエフェクトを掛けていたり、ワザとボリュームを絞っていたりして、「それらしく」聴こえるように工夫されています。これが却って「らしい」雰囲気を醸し出していて、アルバムに好影響を与えています。

そういったこともあって、前2作のような「一聴して判るような派手さ」はないものの、もっと精神世界に訴えかけてくるヘヴィさが特徴といえるでしょう。また、ただヘヴィ一辺倒というわけでもなく、『JAR OF FLIES』で得た要素‥‥メジャーキーを多用したポップでフォーキーな路線等も上手く取り込み、アルバムとしてのバランス感は全3作中一番なのでは?と個人的には思ってます。そういった意味では「ALICE IN CHAINSの完成型」がこのアルバムだったのかな、と‥‥なんて、ここで「止まって」しまったから、そういう風に言えるわけですが。

どの曲がヘヴィで、どの曲がポップで、どの曲がイチオシとか、そういった類のことは今回書きません。何故なら、このアルバムこそ頭からラストまで、ぶっ通しで聴いて欲しい「世界観」を持った作品集だから。あまりに(精神的に)ヘヴィ過ぎて、途中でストップボタンを押してしまう人もいるかもしれませんし、「日本盤のボーナストラック(「Agains」のリミックス2種類)、邪魔!」って思う人もいるでしょうし、「これよりも、もっとヘヴィな作品、いくらでもあるじゃん!」って不満をこぼす人もいるでしょう。けどね‥‥もしあなたが、このアルバムを日本盤で購入したのなら、まず1度通して聴いてもらい、その後歌詞(というよりも、対訳)を読みながらもう1度聴いてもらいたい‥‥ここで初めて「ALICE IN CHAINSの世界観」が完成するのですから。

今現在、若い子達‥‥リアルタイムでの実働を知らない世代‥‥がALICE IN CHAINSに対してどういった評価をしているのか判りません。正直に言ってしまえば、知りたくもない‥‥10年前、一部を除いて全くといっていい程盛り上がってなかった「シアトル」「グランジ」といったキーワード。単純に「ハードロック」「パンク」「オルタナ」といった括りで接することの多かった俺からすれば、正直どうでもいいんですよ、シアトルだのグランジだのは‥‥ただただ、ALICE IN CHAINSやNIRVANA、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、SMASHING PUNPKINSといった最高にカッコいいバンドが、最高に素晴らしいアルバムをリリースしていた、と。ただそれだけなんですよ。



▼ALICE IN CHAINS『ALICE IN CHAINS』
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投稿: 2004 03 26 12:00 午前 [1995年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2002/04/24

ALICE IN CHAINS『DIRT』(1992)

「アリス・イン・チェインズ」ボーカル変死
米国の人気ロックバンド「アリス・イン・チェインズ」のボーカル、レイン・ステイリー(34)がシアトルの自宅で死んでいるのが19日、見つかった。20日に地元当局者が明らかにしたところでは死因は不明。遺体は腐敗が始まっており、ステイリーと確認されるまで検査が必要だった。アリス・イン・チェインズは'90年にアルバム「フェイスリフト」でデビュー。麻薬などをテーマにした暗く不気味な音色で人気を集めた。
     ‥‥2002年4月22日「スポーツ報知」より

ご存じの通り、ALICE IN CHAINS(以下AICと略)は95年秋リリースのサードアルバム『ALICE IN CHAINS』リリース後、表だった活動をしていない。レインの重度のドラッグ癖が原因と言われていた。サードアルバムリリース後はMTVでのアンプラグド出演やKISSのリユニオン・ツアーの前座として数回ライヴを行った程度。レコーディングに至っては98年秋にボックスセット用に録音した「Get Born Again」など数曲のみ(レインは単発でRAGE AGAINST THE MACHINEのメンバーらとCLASS99というユニットで映画のサントラにPINK FLOYDの「Another Blick On The Wall (Part 2)」カバーを録音している)。バンドはほぼ解散状態だったといっていいだろう。

しかし、それでもバンドは公には解散発表はしていない。ギターのジェリー・カントレルは97年に初のソロアルバム『BOGGY DEPOT』をリリースした際の取材で「状況が整うのを待っている」というような発言をしていたはずだ。そう、バンドのメンバーはレインの克服を根気よく待っていたのだろう。先の新曲録音も奇跡に近かったのかもしれない(たった1曲しか録音されなかったという事実が全てを物語っていると思う)。そして、完全復活は叶わぬ夢となってしまった‥‥

NIRVANAの現役時代を知らない10代のファンでも、メディアでの扱われ方等から彼等が如何に凄かったかを想像することが出来るだろう。SMASHING PUMPKINSはついこの間まで活動していたわけだし、PEARL JAMは未だ現役だ(日本のメディアでの扱われ方には疑問が残るが)。SOUNDGARDENは解散して暫く経つものの、ボーカルのクリス・コーネルがRAGE AGAINST THE MACHINEの残党とCIVILLIAN(のちのAUDIOSLAVE)というバンドを結成したことで関心が向けられつつあったし(結局クリスは脱退してしまったが)、シアトル出身ではないものの、STONE TEMPLE PILOTSも解散の危機を乗り越え、順調にリリースを重ね、最近ではツアーも行っている(相変わらず日本へは93年11月以来来ていないがために、その評価は低いが)。

しかし、AICはどうだろう? 名前は知っていても、その音に触れたことのある10代のロックファンはどれだけいるのだろう?

アーティストの死が切っ掛けで、初めてその音楽に触れるというケースはよくあることだ。過去にもhideを敬遠してきた洋楽ファンが彼のソロアルバムやzilchのアルバムに触れて、その音楽の素晴らしさに気付いたといったことがあった。そういう形で彼等の音に接することに不快感を示す者も多いだろう。しかし、こんな過小評価されてきた状況を打破するいい切っ掛けではないだろうか?

きっとこれまで表だって取り扱ってこなかった雑誌メディア(rcokin'on等)がここぞと追悼特集を組むのかもしれないが、その前にまず音に接して欲しい。そう思って今回、急遽予定していたオススメ盤と差し替えて、この92年リリースのセカンドアルバムを紹介することにしたのだから。

この「DIRT」というアルバムは92年秋にリリースされ、全米チャート初登場6位を記録し、約200万枚ものセールスを記録した出世作だ。このアルバムの発売前から彼等に対する評価は高まっていた。91年春にはMEGADETHのオープニングアクト、その後MEGADETH、ANTHRAX、SLAYERが交互にヘッドライナーを変わるカップリングツアー「CLASH OF THE TITANS」へも参加、更にはVAN HALENのオープニング等も務めた。そういえば『METALLICA』アルバムリリース時のインタビューでジェームズ・ヘットフィールドはお気に入りのバンドとしてAICの名前を挙げたりしていた。そう、AICは当初メタル系アーティストから高い評価を受けていたのだ。

それもそのはず、AICは結成当初はメタルバンドだったのだから。クリス・コーネルが「奴らは元はRATT(80年代に活躍したLAメタルバンド)みたいなファッション/音楽性だった」と日本の雑誌インタビューでチクッたりもしていた。その後、独自の音楽性を確立していった結果、唯一無二の存在となったのだ。

このアルバムのユニークな点はBLACK SABBATHやLED ZEPPELINを彷彿させるヘヴィリフや変拍子、そこに乗る不協和音気味コーラスだろう。アルバムトップの「Them Bones」からして上の要素を全て持ち合わせているのだから、最初に聴いた時のインパクトは絶大なものだった。勿論ファーストアルバムから聴いていたし、その音楽性を気に入っていたのだが(独自の暗さとハーモニーが好みだった)、このアルバムで完全に化けたといっていいだろう。

そして歌詞の難解さも大きな特徴といえるだろう。難解というよりも、芸術的といった方がいいのだろう。日本盤を買ったのなら、是非対訳に目をやってみて欲しい。この歌詞読みながら聴いてると、マジで凹む。サウンド的にはこれよりもヘヴィなアルバムはいくらでもあるが、ここまでトータル的に暗さ・重さを強調した作品はそうはないだろう。それもただ闇雲に暗いのではなく、芸術作品として完成され尽くしているのだから。

アルバムの音とは関係ないが、このアルバムからは4曲のシングルカット、5曲のビデオクリップが制作されている。シングルは「Them Bones」「Angry Chair」「Rooster」「Down In A Hole」、PVはその4曲に加え映画「SINGLES」サウンドトラックにも収録された「Would?」。この「Would?」がMTVでヘヴィローテーションされたお陰で、セカンドアルバム大ヒットの土台が出来上がったのだ。

今聴くと、他のシアトル勢とはかなり異質なサウンドを持ったバンドだっといえる。リフの刻み方等から、元々の出所(メタル出身)が伺えたりするが、そこから突然変異したかのようなサウンドアプローチ。そして何よりも、レインの独特な歌唱。これがあるとないとでは大違いなのだ。ジェリーのソロアルバムは確かにAICを彷彿させるものだった。しかし、いくらメインソングライターがアルバムを作ったからといって、そこに乗った「声」はレインではない。その違和感にどうしても馴染むことができず、このソロアルバムはあまり聴く機会がなかったと正直に告白しておく。かのSTONE TEMPLE PILOTSがAICとPEARL JAMのパクリバンド呼ばわりされたのも、今は昔。その後、彼等のようなサウンドを持ったバンドはなかなか現れなかった。それだけ個性の強いサウンドだったといえるだろう。

しかし時代は流れ、このアルバムから10年近く経った今、AICからの影響を公言するバンドが増えている。その代表格がSTAINDだろう。他にもAICから影響を受けたであろう新人バンドを幾つか見かけるが、そういうサウンドに出会うたびに「本家は何やってんだか‥‥」と何度思ったことか。その度にこのアルバムを引っ張り出して‥‥ってことが、特にこの1~2年の間に何度かあった。実は‥‥虫の知らせだったのだろうか、つい先日、AICのボックスセットを注文したばかりだった。

レイン・ステイリーの声や歌唱は本当に独特なものだった。聴いてすぐ彼のものだと判る程に。カート・コバーン程ぶっきらぼうでもなく、ビリー・コーガン程好き嫌いが激しいわけでもなく、クリス・コーネル程熱くもなく‥‥何か、人間ではなく別の生き物のように感じられる瞬間が何度かあった。例えば初期のデヴィッド・ボウイのアルバムを聴いてると、時々「この人は本当に宇宙人なんじゃないだろうか?」なんて思った時が10代の頃あったが、まさにそんな感じなのだ。

それにしても‥‥本当にいいアルバムだなぁ。90年代にリリースされた作品で死ぬ程聴き込んだ作品の上位5枚に必ず入るであろう1枚だといえる。このアルバムやファースト『FACELIFT』やサード、あるいはアンプラグド盤等を聴いた今の10代のファンは、どう感じるんだろう‥‥


     Did she call my name?
      I think it's gonna rain when I die.

            ‥‥"Rain When I Die"



▼ALICE IN CHAINS『DIRT』
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投稿: 2002 04 24 12:00 午前 [1992年の作品, Alice in Chains, 「R.I.P.」] | 固定リンク