2017/03/09

BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』(2017)

元THE ALMIGHTYのリッキー・ウォリック(Vo, G)、元THIN LIZZYのスコット・ゴーハム(G)を中心に結成された、“THIN LIZZYの正統的後継バンド”BLACK STAR RIDERS。彼らが2015年の2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』に続いて発表したのが、本作『HEAVY FIRE』です。2月初頭に発表された今作は、すでにイギリスで初登場6位という好成績を残しています。

もともとは“フィル・ライノットのいないTHIN LIZZY”がライブ活動の延長で、オリジナル曲を発表する上でTHIN LIZZYの名前を使わないため、そして「THIN LIZZYの物語を次のステップに進めるため」に新た結成されたのがBLACK STAR RIDERSというバンド。現在はリッキー、スコットのほか、BROTHER CANEなどで活躍したデイモン・ジョンソン(G)、ヴィンス・ニールのソロプロジェクトやRATTに在籍したロビン・クレイン(B)、Y&TやMEGADETHなど数々のバンドで活動し、最近はRATTにも参加しているジミー・デグラッソ(Dr)という5人で活動しています。

確かに本作にはTHIN LIZZYの“香り”がそこらじゅうから感じられます。それはリッキーの「どことなくフィル・ライノットに似た」男臭い歌声だったり、独特な節回しを含むメロディだったり、随所にフィーチャーされるツインリードギターだったり……それらがミックスされることでTHIN LIZZYっぽい“香り”になるのですが、あくまで“っぽい”止まり。そこにアイリッシュトラッド的な要素ではなく、アメリカンロック的な大らかなノリやブルース、フォークなどのテイストが加わることで独自の世界観が作り上げられています。

今作は前作同様、アメリカ・ナッシュビルでレコーディングを敢行。プロデューサーには前作から引き続きニック・ラスカリニクス(ALICE IN CHAINS 、DEFTONES、FOO FIGHTERSなど)を迎えて制作されており、そのへんも本作の方向性に大きな影響を与えているのかもしれません(それ以前にバンド内のアメリカ人比率が高いことも大きいと思いますが)。THIN LIZZYが本来持ち合わせていた音楽的“アイリッシュ訛り”が払拭され、よりワールドワイドで戦える音に昇華されています(もちろんこれは、THIN LIZZY元来のサウンドがワールドワイドで戦えないという意味ではありません。「クセが弱まったぶん、より幅広い人たちに聴いてもらえる体制が整った」ということです)。

王道THIN LIZZY調の「Testify Or Say Goodbye」みたいな曲を残しつつも、全体ではTHIN LIZZYテイストは調味料程度で、リッキーやスコットなどのメンバーが本来持つ個性がより強く出始めています。それを良しとするか、それともなしとするかで本作の評価は大きく分かれるかもしれません。個人的には全体のバランス感が絶妙で、過去2作以上にお気に入りな1枚です。



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投稿: 2017 03 09 12:00 午前 [2017年の作品, Almighty, The, Black Star Riders, Thin Lizzy] | 固定リンク

1999/12/01

THE ALMIGHTY『CRANK』(1994)

このアルバムがリリースされた94年というのは、実は微妙な時期だったりする。既に5、6年前という計算になるが‥‥アメリカでは91年にグランジ・ムーブメント勃発後、それまでメインストリームにいたバンドが「OUT OF TIME(時代遅れ)」として隅に追いやられ、替わって新たにオルタナ系と呼ばれたバンドがトップを取り、成功を収めた。イギリスではこの年にOASISがデビューし、いきなり大ブレイクを果たす。それと前後してBLURがブリット・ポップという言葉を決定づける『PARKLIFE』を発表し、後続バンドへの道を開いた。その一方で、それまでチャートを振わせるまでに成長していたTHUNDERやLITTLE ANGELSといったバンド達はレーベルからのドロップアウトや解散に追い込まれた。成功する新たなグループがいる一方で、シーンから消え去る・過去の遺物として外に追いやられるアーティストがいる。それはショービジネスの世界にいる限り、延々と繰り返される現実だ。

こうやって新たな勢力が押し寄せて危機感を感じる旧勢力。彼らはどうやって「今」を生き残ろうとしたのか‥‥3つの選択が考えられる。ひとつは「我が道を行く」タイプ。AC/DCみたいに「何があろうが知ったこっちゃない」と得意のストロングスタイルで突き進むタイプ。次に「新たなシーンを築くリーダー」タイプ。古くはデヴィッド・ボウイなんかがそうだし、グランジ末期にデビューしたベックもこれにあたる。そして一番厄介なのが「時流に合わせてスタイルを変えるフォロワー」タイプ。別のものが流行ればそれに合わせて音やイメージを戦略的に変える。例えば‥‥多すぎて書ききれないが(笑)‥‥DOKKENなんかもそうだしMOTLEY CRUEもしかり。特にMOTLEYなんてそれまでシーンのリーダー的存在だったのが、PANTERA等のブレイク後、明らかにフォロワーへと移行している。

レコード会社がそういう変化を求めても、我々オーディエンスは極端な変化を求めない、受け入れない。するとアーティストとリスナーとの間に壁が生じる。そしてアーティストは苦悩する。「どれが自分にとって一番よい選択なのか?」判っているはずだ、自分が一番やりたい音楽をやればいい事を。しかしそれでは契約を切られてしまう。明日からまたインディーズに逆戻りだ。しかし自分に嘘をついてレコード会社の言いなりになれば、今度はファンが見放す。レコードは売れない。それでもレコード会社は「新しい音」を求める‥‥悪循環。

しかしシーンの流れに乗ることによって、それまで以上の成功を収め支持されたバンドが当時イギリスにいた。長くなったが、それが今回の主役THE ALMIGHTYであり、その決定打となったのがこの『CRANK』というアルバムなのだ。

初期の彼らは「MOTORHEADよりもMOTORHEADらしい」という評判で、男臭いワイルドなロックを聞かせる、如何にもイギリスらしいバンドだった。そんな彼らに転機が訪れる。'92年、ギタリストのタントラムが脱退、替わりに加入したのが当時アリス・クーパーのサポート等で活躍したカナダ人のピート・フリージンだった。新たな血を得た彼らが次の一手として我々に差し出したのが、'93年春リリースの『POWERTRIPPIN’』だ。ここで劇的な変化をする。それまでのMOTORHEAD路線はそのままに、新たにグランジやヘヴィロックの要素を取り入れ、よりモダンなサウンドへと進化したのだ。これが誰の提案だったのかは知らないが、このリスクを伴う変化は多くの音楽ファンに好意的に受け入れられた。そりゃ離れたファンもいるだろう。しかし概ね歓迎されたようで、結果このアルバムは全英チャート初登場5位という、当時としては異例のチャートアクションで迎えられた。

 そして事務所やレコード会社の移籍を経て翌年9月に発表されたのが、4枚目のアルバムである『CRANK』なのだ。このアルバムで彼らは進化ではなく深化を選んだ。散漫な印象があった前作での音楽性を、「へヴィ」「スピード」に焦点を絞って制作した結果、非常にトータルバランスの良い傑作に仕上がった。バラードなど1曲もなく、スピード、へヴィ、グルーヴィーなサウンドが約50分間最後まで続く。聴いてて掌に汗をかくアルバム‥‥こう言えばいいだろうか? こんなアルバム、当時はどこを探してもなかった。当然このアルバムも大成功を収めた。

「パンクとヘヴィロックの融合」「ブリティッシュロックの突然変異」等いろいろ言われるが、そんな事よりも俺は「'94年という時代に、イギリスで、しかもメジャーレーベルから発表した」点をまず評価したい。サウンド的にもメジャー配給の(プロダクションにお金をかけた)せいもあるのだろう、抜けのいいドラムサウンドに腰の据わったベース、カミソリの刃の如く鋭いギターリフ。そして何よりポップな歌メロ、サビでのオーディエンスを意識したシンガロング。当時俺達が何を欲していたのか、何を必要としていたのか、彼らには判っていた。そして自らもが納得できる作品を作りだし、レコード会社もセールス面で納得させた。完璧すぎるくらいに完璧なアルバム。これ以上何を言えばいい? 文句は聴いてから言えってぇの!

ファンに支持されただけでなく、ミュージシャンからも支持されたこのアルバム。このアルバムやTHE WiLDHEARTSが、今のパンキッシュでへヴィなバンド達のお手本となっているのは明らかだと思う。そしてここ日本にも彼らを支持する人はいる。LUNA SEAのJがこのアルバムを気に入って当時頻繁に聴いていた事は、ファンの間でよく知られている。時流に乗ろうが時代に左右されようが、最後は「よい作品」を作ればみんなが認める‥‥こんな「至極簡単な事」をTHE ALMIGHTYは僕らに教えてくれた。それだけに解散は痛かった。そして今、彼らは復活を果たした。もうじき新作も発表する。変化し続けるのか、それとも更に極めるのか‥‥次はどんな一手で攻めるのか。楽しみでならない。



▼THE ALMIGHTY『CRANK』
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投稿: 1999 12 01 12:00 午前 [1994年の作品, Almighty, The] | 固定リンク