THE ALMIGHTY『BLOOD, FIRE & LOVE』(1989)、『BLOOD, FIRE & LIVE』(1990)
『BLOOD, FIRE & LOVE』は1989年10月20日にリリースされたTHE ALMIGHTYの1stアルバム。日本盤は翌1990年3月25日発売。
THE ALMIGHTYはリッキー・ウォリック(Vo, G)、タントラム(G)、フロイド・ロンドン(B)、スタンプ・モンロー(Dr)という布陣で1988年に結成された、グラスゴー出身のハードロックバンド。パンクロックを通過した荒々しいサウンドは“GUNS N' ROSES以降”のそれと捉えることもできますが、彼らの場合はさらにその祖先であるMOTÖRHEADから派生したワイルド&スリージーなハードロックといった印象も強く、デビューからしばらくしてから「MOTÖRHEADよりMOTÖRHEADらしい」なんて評価も飛び交ったほどでした。
メジャーのPolydor Records(現在のUniversal)から発表された本作は、同時期にメジャーデビューしたTHUNDER、THE QUIREBOYS、LITTLE ANGELSなどとともに“ブリティッシュハードロックの次世代を担う新人”が放つ良作として高評価を獲得。チャート的にもイギリスで最高62位という数字を残したほか、「Power」(全英82位)、「Wild And Wonderful」(同50位)というシングルヒットも記録。本作を携えAC/DCやTHE CULT、そしてMOTÖRHEADらとツアーを回ることで、さらに知名度を高めていきました。
多くのリスナーにとってのTHE ALMIGHTYのイメージは全英5位という最高記録を打ち立てた3rdアルバム『POWERTRIPPIN'』(1993年)や最高傑作の4th『CRANK』(1994年)での“グランジ以降のオルタナ感を飲み込んだ、パンキッシュなグルーヴメタル”かもしれません。そういった意味では、本作や続く2ndアルバム『SOUL DESTRUCTION』(1991年)で展開される音楽性は少々オールドスクールに映ることでしょう。特にこの1stアルバムで聴くことができる楽曲群は、1989年という次世代への過渡期を思わせる前時代的なハードロックが中心。オープニングを飾る「Resurrection Mutha」での仰々しいアレンジは、まさに80年代そのものといったところで、多少恥ずかしさを覚えるかもしれません。
しかし、続く「Destroyed」や彼らの代表曲「Wild And Wonderful」、そして「Power」といった男臭いハードロックチューンの数々からは、リッキーが近年活動の母体としているBLACK STAR RIDERSの片鱗を見つけることもでき、彼にとってのルーツはここにあるのだと気づかされます。
中〜後期とは異なる魅力を放つ本作は、BLACK STAR RIDERSから入ったリスナーにこそ受け取ってもらいたい作品のひとつです。
▼THE ALMIGHTY『BLOOD, FIRE & LOVE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ)
このデビューアルバムを携えたツアーの様子は、1990年10月8日にリリースされたライブアルバム『BLOOD, FIRE & LIVE』で確認することができます。日本盤は1992年7月10日発売。
1990年7月にエジンバラとノッティンガムで録音された本作は、1stアルバム『BLOOD, FIRE & LOVE』からの楽曲7曲にBACKMAN-TURNER OVERDRIVEのカバー「You Ain't Seen Nothin' Yet」を加えた、全8曲/約36分とライブ作品としてはややコンパクトな内容。ですが、「スタジオ作品よりもライブが魅力」だと言われ続けてきた彼らの魅力が、『BLOOD, FIRE & LOVE』よりもわかりやすい形で伝わる良盤ではないでしょうか。
ライブ映えする「Full Force Lovin' Machine」からスタートする構成といい、オーディエンスとの交流を含む8分近くにおよぶライブのハイライト「Wild And Wonderful」、終盤に持ってくることでドラマチックさが倍増する「Resurrection Mutha」などは、スタジオ盤だけではわからないバンドの個性をより感じることができるはずです。
日本盤は本国から2年近く遅れて発売されたのですが、「Wild Angel」「Detroit」「Crucify」と次作『SOUL DESTRUCTION』からの楽曲を含む3曲を追加収録。これは1992年12月に予定されていた彼らの初来日公演を前に、ライブバンドとしての彼らの真髄を知ってもらおうと企画されたものでしたが、『SOUL DESTRUCTION』からの楽曲を含むことでアルバム本来の軸がちょっとブレてしまったような気がしないでもありません。こういうの、一長一短ありますね。
なお、2013年11月18日にはスタジオアルバム『BLOOD, FIRE & LOVE』とライブアルバム『BLOOD, FIRE & LIVE』、および同2作発売周辺に録音されたシングルC/W曲やライブ音源をまとめたボーナスディスクで構成された3枚組作品『BLOOD, FIRE & LOVE & LIVE』がリリース。こちらはサブスク配信も最近スタートしたので、気になる方はこちらからチェックすることをオススメします。
▼THE ALMIGHTY『BLOOD, FIRE & LOVE & LIVE』
(amazon:海外盤3CD / MP3)