ALTER BRIDGE『WALK THE SKY 2.0』(2020)
2020年11月6日にリリースされたALTER BRIDGEの1st EP。日本盤未発売。
タイトルからもわかるように、本作は当時の最新アルバム『WALK THE SKY』(2019年)のスピンアウト的作品。新たに制作された未発表楽曲「Last Rites」に、2019年に実施された『Victorious Sky Tour』のUS公演にて録音されたライブ音源6曲を加えた、全7曲入り/約31分とそこそこボリューミーな1枚となっています。
本作が制作された理由は皆さんご想像のとおり、2020年初頭から世界中で猛威を振るった新型コロナウイルスの影響によるもの。予定されていたワールドツアーも志し半ばで中断せざるを得ず、ロックダウンなどもあり家から動けない状況に陥ってしまったタイミングに、ツアーを心待ちにしていたファンに向けた「今は我慢して!」と言わんばかりの“予期せぬプレゼント”だったのではないでしょうか。
アルバム『WALK THE SKY』未収録の新曲「Last Rites」はこのロックダウン中に書き下ろされ、新たにレコーディングされたもの。『WALK THE SKY』の延長線上……というより、従来のALTER BRIDGEらしい“グランジ経由のオルタナティヴメタル”といった印象で、ドロドロしたグランジテイストのイントロから王道のALTER BRIDGE節に突入する歌メロ、サビで聴ける不協和音混じりのハーモニーなど、グランジ〜ポストグランジ〜ニューメタル〜オルタナメタルという時代の流れを大切にしつつ、オリジナリティをしっかり提示しているあたりに、このバンドならではの頼もしさが伝わってきます。
そして、ライブテイク6曲はすべて『WALK THE SKY』収録曲。収録された会場はそれぞれ異なるものの、ライブならではの生々しさを強調するよりも「まるでスタジオ音源」と錯覚するほどクオリティの高い質感が際立つテイクを楽しむことができます。もちろんスタジオ音源よりも音数は減っており、作り込み度は少々減退しているのですが、それでも楽曲の良さ、演奏/歌の素晴らしさがそのすべてにおいて優っており、最終的には「これはライブが観たい! ライブで聴きたい!」と強く思わされる良質な内容になっていると思います。
にしても、改めていい曲を書く、良質なアメリカンHR/HMバンドですね。新曲はもちろんのこと、ライブ音源6曲のバラエティ豊かさも恐るべしものがあるし。もっと言えば、ライブの6曲だけでこれだけ幅を提示できるバンドって、そうは多くないと思うんです。日本では過小評価されすぎな存在ですが、ぜひフェスなどで来日してもらって、その魅力をより多くのリスナーに知らしめてほしいところです。
なお、本作はCDとアナログ盤が用意されており、デジタル/ストリーミングでは『WALK THE SKY』に『WALK THE SKY 2.0』の7曲を追加したデラックス盤として配信中です。
▼ALTER BRIDGE『WALK THE SKY 2.0』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3(デラックス盤のみ))