このライヴって本当なら11月中旬に行われる予定だったんだよね、今更ながら。セカンド「IOWA」が発表されたのが8月下旬(海外は9月上旬だったかな?)、そしてその狂ったアルバムがビルボードのアルバムチャート第3位に初登場し、現在までに50万枚以上ものセールスを記録し、先日のグラミー賞ではメタル部門にもノミネートされる程(って去年もノミネートされて受賞してたっけ。「この賞をIRON MAIDENに捧げる」みたいなコメント残してたよね?)、一般的には認知されたといっていいSLIPKNOTだったのだけど、丁度アルバムリリースと時同じくして、例のアメリカ同時多発テロが起こり、それによる報復攻撃が始まり、情勢がかなり悪くなってしまい、多くのアーティスト達が海外ツアーをキャンセルする結果に。このSLIPKNOTも同じようにツアーを延期するわけです。ある意味、そんな時期だからこそ一番ライヴやりそうなイメージがあったんだけどなぁ(そういう意味では、その時期に海外ツアーを結構したSLAYERってホンモノだなぁ、と。勿論、そういう要素だけでどのバンドがホンモノでどれがニセモノって線を引くつもりはないですよ)。で、そういう諸事情があって‥‥個人的にはアルバムリリース当時の熱が冷めつつある時期だったのと、今月に入って素晴らしいライヴを既に2つ(SNAKE HIP SHAKESとBUGY CRAXONE)も観ていてお腹いっぱいなのと、来週には松浦亜弥(そしてメロン記念日も)単独ライヴが控えているという要素が重なって、非常に気が乗らない状態だったのです。それにアルバム自体、1ヶ月近く聴いてないし(会社の先輩に貸したっきり)、ラウド系自体興味が薄れつつあるし。そういう精神状態で挑んだという事実を前提に、以下のライヴレポートを読んでってください。
結局、日本ツアーは4ヶ月後の3月に再セッティングされたわけですが‥‥ゼップとかチッタといったクラブクラスでの追加が決まってるし(苦笑)。まぁいいや、デカイ会場で観る彼らを体験してみたかったし。昨夏のサマーソニックでの熱演を耳にしてるだけに、やっぱり大会場であのバカっぷりを味わってみたいし。
会場はN.K.ホール。ディズニーランドの隣だ。方やファンタジーの国、方や悪魔の覆面キャラクター。なんという素晴らしいセッティング(笑)。これをセッティングした奴は非常に判ってるなぁ、と当初関心したもんだったなぁ。当日は修学旅行生やら小学生やら親子連れやらの中に、明らかに異質の集団が‥‥ツナギ着てガスマスクした奴ら(爆)とかいるんだもん。いやはや、既にKISSやヴィジュアル系のライヴ、あるいは辻加護のコスプレしたモーニング娘。のライヴと同質の空気を感じるわ。
実は上記のような精神状態にも関わらず、いざ会場のある舞浜駅に近づくにつれ、妙に殺伐とした気分になってったんだよね、俺。もう瞳孔開きっぱなし、みたいな?(笑) いや、ディズニーは大好きなんですが、今日だけはそういう気分になれなくて。観るもの全てが「敵」に見えてくるような空気感が既に出来つつありまして。もうね、ナイフみたいに尖っては触るもの皆傷つけた、みたいな?(爆) 勝手にそんな風に出来上がってて。で、駅から外に出ると、いきなりコスプレ集団だもん。肩すかし(笑)いや、楽しいんだけどね?
最前ブロックの120番台という恐ろしい整理番号だったんだけど、まぁ気乗りしなかったので会場に着いたのも開場時間を回ってからだったし、会場入りしてからもビール飲んだりして‥‥で、飲み始めてから車で来たことを思い出したりして(苦笑)。まぁ終わる頃には酔い冷めるだろうって感じで。1時間くらいロビーでタバコ吸ったり酒呑んだりして時間潰して。スタート15分前にフロアに入って、ブロックの最後方を陣取って前座のAMERICAN HEAD CHARGEの登場を待ったわけです。
●AMERICAN HEAD CHARGE (18:00~18:50)
このバンドに対しては何の予備知識もなく、唯一判ってることは「アメリカのラウド系バンド」「アルバムジャケットが戦車」というふたつのみ。ライヴ前に予習しようかどうかで悩んだけど、先にアルバム聴いてガッカリするのも何だったので(笑)、いきなりライヴに臨むことに。
開演時間5分前に暗転し、スモークがステージ上に充満、怪しいインダストリアルノイズが延々流れる‥‥そのまま5分近く(苦笑)。結局バンドメンバーがステージ上に現れたのは定刻通り。1曲も知らなければメンバー構成も知らない俺。思いっきりいかつい小汚い野郎が5人くらいでラップメタルみたいなのをやるのかなぁ?くらいにしか思ってなかったんだけど、なんとビックリ。7人もいました。しかも左右にキーボードが各1名(計2名)って‥‥最近の流行ですか、大所帯って。
ボーカルはPANTERAのフィル・アンセルモ的風貌、ベースの人はそのまんまいかつい感じのスキンヘッド。ドラムはよく見えない。ギター二人は‥‥ゴスメイクしてました。しかも内ひとりはモヒカン‥‥キーボードふたりに至っては両方モヒカンでした(汗)。マ、MARILYN MANSONのフォロワーだったのですか??
音は上に挙げたように、MARILYN MANSONに影響を受けつつも、昨今のラウド系サウンドがメイン。ただ、キーボードふたり(ひとりがピアノ系でもうひとりがサンプリング系らしい)がいい仕事してて、普通のラウド系に終わってないんだわ。ボーカルもただがなるだけじゃなく、いきなりメロウなパートが入ってきたりで、非常に楽しめました。ゴス要素があるバンドってだいたいはマンソン系に流れてくと思うんだけど、こういうのも新鮮ですね。しかもこの人達、(アルバムを後で買って知ったんですが)リック・ルービンのとこなんですね。ああ、納得。そういう「いい意味でのメジャー臭」がしたもんなぁ、SYSTEM OF A DOWNと同質の(タイプは全然違うけど)。
左側のキーボードの人が椅子を投げたり、キーボードをスタンドごと振り回したり(笑)して、かなり笑わせてもらいました。が‥‥50分はちと長かったんじゃないでしょうか? アルバム1枚の新人には長すぎると思うんだけど(しかも前座で)。確かに曲調の幅はけっこうあるんだけど‥‥これはアルバムにも言えることなんだけど‥‥その割には、50分も惹き付けるだけの魅力がまだ弱いような気がするな(アルバムなんてボートラ含めて17曲79分だもん。とても新人バンドのファーストアルバムとは思えない。しかもフルで聴くにはかなりキツかったなぁ‥‥)。悪いバンドじゃないんだけど、これからの存在かな? まぁアルバムよりもライヴの方が断然良かったので、俺としてはかなりの収穫でしたが。トリビュート盤にも結構参加してるみたいで、MARILYN MANSONやMINISTRYの各トリビュート盤で"Irresponsible Hate Anthem"と"Filth Pig"をカバーしてるみたいなので、新人らしくそういう曲やってもよかったんじゃ?なんて思ったりして。ま、最初っからそういうカバー曲に頼る最近の傾向に反してアルバムもオール・オリジナル曲、ライヴもカバー一切なしだったのには好感持てたといえば持てたけどね。
●SLIPKNOT (19:30~20:50)
そんな感じで意外と冷静に観てたAHCのライヴ終了と同時に、大音量でAC/DCの"For Those About To Rock"が流れ出す‥‥そしてステージ前にSLIPKNOTのロゴマーク(ペンタグラムに「S」の変形ロゴ)が入った幕が下りる。オオッとどよめく会場。否が応でもテンションが上がる。気付けばスカスカだったブロック後方にドンドン人が入ってくる。ああ、SLIPKNOTのみ目当ての人も多いんだな?‥‥ここからセットチェンジに約40分を要したのだけど、かなり人が入ってきて「これ、落ち着いて観てる場合じゃねぇかも‥‥」って感じに。
19時半を回った頃に再び暗転。例の新作S.E.が流れ出す‥‥幕に内側から光が当たり、うっすらと人影が映る。楽器を抱えた、明らかに頭部が常人と違う人影が‥‥(笑)
そしてS.E.終了と同時に幕が一気に落ち、同時にあの名曲"People=Shit"がスタートする。さすがにメンバーが9人もいると、常に同じ場所にいる奴はドラムくらいで、始まった途端に左右にいるパーカッション担当やターンテーブル担当は持ち場を離れ、暴れまくり。パーカッション上で後尾する奴ら(爆)もいれば、客を煽る奴もいる。最初は俺、後ろで傍観するくらいの気持ちだったんだけど、気付けば人をかき分け前の方へ移動してるし。寂の「People=Shit!」も一緒になって連呼連呼! うぎゃ~、滅茶苦茶楽しいじゃねぇか、これ!(笑)
そのままの勢いで"Liberate"やら、ファースト以上にハードコアなセカンドの中でもかなりポップなメロを持った"Left Behind"、"Get This"等のファストナンバーを交えて、ショーは非常にいい流れで進行していく。途中、左右のパーカッションがせり上がったり(KISSのドラムセットみたいにね/笑)、くるくる回ったりするエンターテイメント要素も満載。そうそう、ステージ後方のバックドロップ(ボンドのロゴマークとかが描かれた大きい幕)もライヴ中、何度も変わったよなぁ‥‥
そしてお約束のコリーの日本語MCも健在。「サワゲー」「トベー」「ナカユビタテロー」「シャガンデ~、トベー」といったサマソニでもお馴染み(笑)のものから、「マタトウキョウニヨンデクレテ、アリガトウ」という挨拶とか「コノキョクハ~」といった曲紹介まで覚えてやがるし。もはやKISSのジーン・シモンズ「アナタハウツクシイ」を越えたね、ある意味(笑)。
中盤の異色作"Iowa"(途中まで)や"Purity"でどんよりした空気感を作った後で、ドラムソロがスタート。正直、俺の中でドラムソロをやっていいのは、コージー・パウエルとトミー・リーだけ、みたいな法則が勝手に出来上がっていたんだけど‥‥いやぁ、やられました。ドラムセットが天にせり上がるのは判るんだけど(しかもくるくる回りながら)、その後の展開は想像もつかなかった‥‥いや、ドラマーが背もたれ付きの椅子に座ってる時点で「あれっ、どっかで観たことあるぞ、これ?」くらいには思ってたんだけど‥‥ドラムセットがそのまま観客側に向かって90度前方に倒れるという、正しくMOTLEY CRUE時代のトミー・リーが'85年のツアーでやったことを再現しているのです! しかもトミーと違う点は、90度傾いたドラムセットが再びそのままの状態で360度くるくる回るという(ご理解いただけました?)オマケ付き(笑)。既にこの会場にいる10~20代前半のファンは、MOTLEY CRUEが昔、そんなことばっかりやってたなんて知らないんだろうなぁ‥‥なんて思ったら、ちょっぴりブルーに。いや、いいんですけどね、本家がもうやらない以上は。LUNA SEA時代の真矢くんもアルバム「STYLE」のツアーで、トミーが'87年のツアーでやった360度全方向回転ドラムセットでソロやってたし。トミー・リーは既にドラマーではなくて、ラッパーですから(苦笑)。こういう要素ひとつを取っても、如何にSLIPKNOTというバンドが客を楽しませる事に徹しているか、それが度を超しているかが伺えると思うんだけど‥‥これ観て楽しめない奴は、人生の半分を損してるよ、俺から言わせてもらえば(あ、これ、また問題発言ですかね?/苦笑)
ドラムソロはほんの数分だけだったけど、あの見せる要素が強かった分、あっという間に終わったって印象が強い。そのまま再びバンドメンバーが戻ってきて、あの印象的なドラムンベース・サウンドが‥‥ファーストで俺が最も好きな曲、"Eyeless"だ。モッシュしまくり、ヘドバンしまくりの俺。いやぁ~、まさかライヴ前はこんなことになるなんて思ってもみなかった(苦笑)。本気で楽しいです。バンド側もノせるの、上手いし。やってる音楽こそエクストリームでブルータルでハードコアだけど、その精神性は俺が大好きでガキの頃から聴いてきたKISSやMOTLEY CRUEといったバンド達と基本的には一緒なんだよね。そう、現存のアーティストでいったら‥‥同意してもらえるか判らないけど、ギターウルフやモーニング娘。と同等の、過剰なエンターテイメント精神を感じるんだよね。掲示板の方であいださんも書いておらましたが、全くその意見に同意しますよ!
後半はキャッチー(だけどヘヴィネス)な曲を連発。サビがメロウな"My Plague"、「555って言ったら、お前ら何て言うか判るよな?」という事前確認すら既に必要ない"The Heretic Anthem"(さすがに日本語で「ゴーゴーゴー」「ロクロクロク」ってやられたのには笑いましたが)、そして本編ラストはファーストからのヒットナンバー"Spit It Out"と"Wait & Bleed"を連発。"Spit It Out"中盤ではお約束のオーディエンス全員を座らせて、「シャガンデ~、トベー」のアクションで盛り上がり(ブロックって柵の中だから、全員が座ると後ろの方の人までしゃがめないんだよね/苦笑)、"Wait & Bleed"では唄い出しをオーディエンスに唄わせ、しかもみんな唄えてるという感動的な場面も。前座での50分すら長く感じた俺が、ここでは時間すら忘れて大暴れしてるんだから、如何にこのバンドが人をノせるのに、楽しませるのに長けているかがお判りいただけると思う。
アンコールを求める声や拍手は異常に盛り上がってた。そしたらすぐにファーストアルバム冒頭に収録されてるS.E.が流れ出した‥‥このバンド、アンコールやるっていうイメージなかったんだけど、ここまでサービス精神旺盛だと、もう恐れ入りました、ゴメンナサイと謝るしかない。"(sic)"では再び暴れまくり、本当に最後の曲"Surfacing"ではお約束の「ナカユビタテロー」で、両手の中指を立て、それを天にかざす俺‥‥そんな俺も今年で31歳。素敵な1年が送れそうです(爆)。
完全燃焼したバンドは何度もオーディエンスに対して感謝の言葉を述べ、挨拶をする。満足し切ったオーディエンスはそんなバンドに対して大きな拍手を送る。そして会場が明るくなる‥‥時間にして約80分。長すぎず短すぎずで、丁度いい長さじゃないだろうか? 考えてみれば、最近のラウド系バンドの単独ライヴって、実はこれが初めてなんじゃないかな、俺? フェスではレイジやらLIMPやらTOOLやらいろいろ観てるし、ここまで盛り上がる前にはMARILYN MANSONの初来日とかも観てるんだけど‥‥だから比べようがないんだけど、個人的には1時間半くらいで丁度いいと思うなぁ。逆に1時間くらいだと物足りなさを感じるんだろうし、2時間やられると体力的にキツくなるだろうし。そういう意味では、非常に考えられてるなぁと思った。演奏された曲も、2枚のアルバムから半々程度で、ポップな曲が多いファーストと、異常にブルータルな曲が多いセカンドとでバランスが取れてたんじゃないかな? まぁこの辺は人それぞれの好みがあるだろうから、一概には言えないんだろうけど。
ただ、やはり何度でも言いたいのは、彼等はあのマスクにツナギを着た時点で、既に勝者だったんだよね。後はどれだけ興味を持った人間を満足させるか。初期の彼等ってステージ上で喧嘩みたいに大暴れして血流して、みたいな暴力的なイメージがあったんだけど、ここまでデカくなるとやはり違うよね。その変化を良しとしない人も多いのは承知の上で言うけど、俺はこういうSLIPKNOTを完全支持したいと思う。子供騙しかもしれないけど、そういう子供騙しを真剣にやれるかどうか、そこの違いなんだと思う。だからこそKISSやMOTLEY CRUEはあの時代に支持されたんだし、ギターウルフにしろモーニング娘。にしろそれぞれのオーディエンスに支持されるんだと思う。そういう意味では、コリーの「ナカユビタテロー」も、セイジの「ディズニーランド、ベイビー」も、モーニング娘。の「WOW WOW, YEAH YEAH!」も、方法論が違うだけで、みんな同じ方向に向かってるんじゃないだろうか?と思えてくるんだけど‥‥どうでしょう?
俺はライヴ後の、周りにいた子達の笑顔を信じたいと思うな。それが全てじゃない?
SLIPKNOT @ Tokyo Bay N.K. Hall. 3/23/2002
01. (515) ~ People=Shit
02. Liberate
03. Left Behind
04. Eyeore
05. Disasterpiece
06. Purity
07. Gently
08. Turntables Solo
09. Eyeless
10. Iowa (Intro) 〜 Drum Solo
11. My Plague
12. The Heretic Anthem
13. Spit It Out
14. Wait & Bleed
[Encore]
15. 74261000027 ~ (sic)
16. Surfacing

▼SLIPKNOT『IOWA』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD)