2004/12/30

2004年を振り返る(5)

 今年もあと2日ですが、年が明けても暫く続きそうなこの企画。今回は「ブッチ・ウォーカー」関連の作品を幾つか紹介したいと思います。

 ブッチ・ウォーカーというと、最近では織田裕二とのデュエット相手という認識が強いのでしょうか? 今年前半だとアヴリル・ラヴィーンとの共作/プロデュースで話題になったりしましたが、俺の中では未だに『MARVEROUS 3のシンガー/ギター/ソングライター』という認識が強いんですよね。それくらい彼(彼等)が残した2枚のアルバムは非常に重要で、印象深いハードポップ/パワーポップの名盤なんですよね。

 そんな彼がソロになって、最近では裏方業に精を出している‥‥ちょっと淋しいものがあります。またあの華やかなロックンロールバンドをやって欲しい‥‥と願っているひとりなんですよ、俺。来日実現しなかったしね、MARVEROUS 3時代は。

 さてさて‥‥愚痴はこの辺にして、早速簡単レビューにいってみましょう。

■AMERICAN HI-FI「HEARTS ON PARADE」

 ドラマーに逃げられ(=脱退)、レーベルからも切られ(契約解除)、とことんツイてなかったAMERICAN HI-FIの、前作から1年しか経っていないにも関わらず完成してしまった3rdアルバム。但しこれ、今のところ日本でしかリリースされてません(USでは来年早々リリースとのこと)。日本でのリリース元が変わっていないことから、「前作から1年で!」と絶好調なイメージで捉えられがちだけど、実は現在どん底状態なんだよね。

 今回はかのブッチ・ウォーカー(元MERVEROUS 3。というよりも、ユージ・オダとのデュエットでお馴染みといった方が判りやすいか)がプロデュースを手がけたことが功を奏したのか、とにかく過去2作の作風とは全く異なるイメチェンにひっくり返ったよ。ボブ・ロックを迎えてハード&ヘヴィな味付けだった1st、よりストリート寄りのパンキッシュなモダン・パワーポップ路線へとシフトした2ndを経て、このアルバムでは純粋なパワーポップ/ギターポップを展開。元々その要素を持っていたバンドなだけに、ここまで徹底してくるとは少々意外。これもブッチ効果?

 ま、元々ステイシー・ジョーンズのソングライティングには定評があったわけで、今回もそれはいかんなく発揮されています。アレンジこそ異なるものの、メロディ自体は従来のアメファイそのもの。ただ、これまでのガッツあるプレイやアレンジが好みだった人には少々物足りないかも。

 ふと、カナダのHARLEM SCARLEMがRUBBERというバンドへと名義変更した時期を思い浮かべました。正にあんな感じなんでしょうね。とにかくライヴでどうなるのか、そこが見物ですな。



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■SR-71「HERE WE GO AGAIN」

 アメファイを生まれ変わらせたブッチ・ウォーカーとのつき合いも古く、デビュー曲 "Right Now" では共作、これが大ヒットしたことで一気にメジャーになったSR-71も、前作(2nd)でメジャーからドロップ、この約2年振りとなる3rdはアメファイ同様、日本のみでのリリース(こちらも来年早々に海外リリース決定)。

 主要メンバーのミッチ・アレン以外のメンバー総入れ替え、セルフプロデュースということで、相当好き放題やったんだろうなぁ、前作がダークな作風だったからどうなるんだろう‥‥と思っていたら、1stを更にポップにした作風にビックリ。パンク色が若干薄れ、よりモダンなパワーポップへと向かってるかな。個人的にはこっちの方がより好みではあります。

 GN'Rの某ボーカリストの不在を嘆きつつ、古き良き時代を懐かしむ、まんまなタイトルを持つ1曲目や、ピーター・ガブリエルのムーディーな名曲をパンクポップ風にリアレンジした2曲目等、とにかく前半はグイグイ引っ張られる感じ。BOWLING FOR SOUPに提供した曲のセルフカバーも、個人的にはSR-71バージョンの方が好み。ホント、何でこのバンドがアメリカで不当評価されてるのか、理解できん。

 ただ、ひとつだけ難点をつけるとすると、バラードが1曲もないことかな。グイグイ引っ張る感じはいいんだけど、彼等ならではの名バラードがここに加われば、間違いなく再ブレイクできるはずなのに‥‥US盤ではそこら辺が追加されることを願います。



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■BUTCH WALKER「LETTERS」

 MARVEROUS 3解散後にリリースした1stソロから約2年振り、通算2作目のソロアルバムです。前作はホントにスルーされちゃいましたからね。良い作品だっただけに残念極まりないです。

 状況が良くなって来た中で発表されたこの作品、曲は文句無しに素晴らしいです。さすがブッチ・ウォーカーといった感じで、とにかくいろんなタイプの曲が収録されています。個人的にはひたすらきらびやかな80'sアメリカンHRに影響を受けたであろうMARVEROUS 3の2ndが好きだったもので、最近のちょっと落ち着いてきた‥‥まぁ年相応ともいえますが‥‥今のスタイルには一抹の淋しさを感じていたりもするんですが、とりあえず売れなきゃ話にならないわけで。これは兎に角もっとヒットすべきアルバムですよね。アヴリルが再び彼を新曲(映画サントラ用)の共作パートナーに選んだことだし、ホント‥‥頑張って欲しい。



▼BUTCH WALKER「LETTERS」(amazon

投稿: 2004 12 30 12:00 午前 [2004年の作品, American Hi-Fi, Butch Walker, SR-71] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/04/13

AMERICAN HI-FI『THE ART OF LOSING』(2003)

新世代アメリカン・ハードロック・バンド、AMERICAN HI-FI待望のセカンドアルバム。当初はもっと早くリリースされる予定だったと思うんだけど(2002年7月に出演したFUJI ROCK FESTIVALでは「秋頃にリリース予定」とアナウンスしていたし)、慎重に作業した結果なのか、最終的には前作から約1年半というインターバルになりました。ファーストがここ日本でも、そして本国アメリカでもまずまずの成功を収めただけに、セカンドに対する意気込みは尋常じゃなかったと思うのですが、それに応えるに十分な内容になったのではないでしょうか。

個人的にはこのバンド、ファーストを手にした時もそんなに思い入れというか、最高にカッコイイという印象はなかったんですね。ボブ・ロックがプロデュースというのも関係してか、かなりカッチリ作られてた印象が強いし、楽曲にしてもかなり丁寧に作られた‥‥非常に優等生的な作品だと感じられたんですよ。勿論、それらの楽曲は素晴らしかったし、今でもあのアルバム自体はよく聴きますよ。けど‥‥新人のファーストアルバムにしては、妙に完成度が高すぎて‥‥キャリア5年目くらいのバンドの、サードアルバムっぽい作風に感じられたんですね。ま、中心人物であるステイシー・ジョーンズはこのバンド以前にVERUCA SALTにドラマーとして参加していたので、メジャーの世界での活動は今回が初めてってわけでもないんですよね(そういう経緯もあって、ファーストはボブ・ロックが手掛けたわけだし)。サウンドや楽曲の細かさ/高水準はそういったところから来てるのかもしれません‥‥。

で、そんなAMERICAN HI-FIに対して更に魅力を感じるようになったのは、上にも書いたFUJI ROCK FESTIVALでのライヴを観てからでした。残念ながら代表曲である「Flavor Of The Weak」を見逃すという大失態を犯してしまいましたが、それでも十分に楽しめる内容でした。ファーストの楽曲もライヴで聴くと全く違った印象を受けたし、そしてこのセカンドアルバムに収録される予定の新曲も何曲か演奏され、それらがかなりイイ感じだったこともあって、実は俺、このバンドを誤認してたんじゃないか‥‥とまで思うようになって。だからね、このリリースを本当に心待ちにしてたんですよ。

基本的にはファーストの延長線上にあるサウンドなんだけど、1曲1曲がもっとコンパクトになり(しかも計算されて短く凝縮されたのではなく、勢いで作ったらそうなっただけのような印象を受ける)、音の粒も粗くなったように感じられます。これはプロデューサが変わったことも大きく影響してると思うんですが(今作はLIVING ENDやSEMI-SONICを手掛けてきたニック・ロウネーを起用)‥‥乱暴に言ってしまえば、パンク色が若干強めに出てるかな、と。GREEN DAY辺りに通ずる曲調のファーストシングル「The Art Of Losing」や、ちょっとスカのリズムを取り入れた「The Breakup Song」、FOO FIGHTERS辺りにも共通する色が感じられる「Nothing Left To Lose」といった楽曲は、前作にありそうでなかったタイプの楽曲でしょう。また、アコースティック色を有する「Save Me」「This Is The Sound」からは新しい魅力が感じられますし(王道アメリカンロックですね)、「Beautiful Disaster」ではBACKYARD BABIES辺りの活きのいいバンドと同じような匂いを感じるし、「Built For Speed」なんてCHEAP TRICKの「He's A Whore」に似たリフ&コード進行を持ったパワーポップだし。楽曲の幅は明らかに広がったし、それぞれの曲は以前のような細やかさよりもワイルドさを強調しているんだけど‥‥やはりどこか優等生的なんだよね。無理して「俺達パンクだぜ!」みたいに悪ぶってる印象。それが決して悪いと言ってるんじゃなくて、非常に計算高いなぁ、と。

多分ステイシー・ジョーンズって男はとても頭のいい奴なんだと思うな。じゃなきゃ、あんな優等生的なファーストアルバムの後に「敗者の美学」ってタイトルのアルバム、作らないでしょう普通。GREEN DAY以降のパンクまで行かず、かといってここ数年ヒットチャートを賑わしたNICKELBACKみたいな音までいかず、ストレートなハードロックというわけでもなく、グランジの亡霊を追ってるわけでもなく(少なくとも前作には「グランジ以降」の文脈で語られてる楽曲が幾つか見受けられたけど、今作には皆無だし)‥‥そういう点から、俺の中でBON JOVIのジョン・ボン・ジョヴィと重なるんだよね、「策士」として。「インディー・バンドならMY BLOODY VALENTINE、メインストリームならFOO FIGHTERSが大好き」という発言にしろ、ライヴでCHEAP TRICKの「Surrender」をカバーしてること、そして勝負作となるセカンドでバラエティに富んだアルバムを作ったこと等‥‥VERUCA SALT時代に学んだことを、こうやって役立ててるのかも。だとしたら、この男はまだまだ化けると思いますね。そして、そんな策士を的確にサポートする他のメンバーの技量もさすがですね。まだ各メンバーの個性というのは感じられませんが(多分このアルバムにおけるライヴを観れば、また印象が変わるんでしょうね)、それが今後の課題といったところでしょうか。

やれ計算高いだの策士だのといろいろ書きましたが、そういうの抜きに十分楽しめるアメリカンロックが存分に詰まってるので、とりあえずこれを読む前に無心で一回聴くことをオススメします(そういうことは最初に書けよな俺)。ここ数ヶ月、頭を空っぽにして楽しめるアルバムとして我が家ではヘヴィローテーション中です。



▼AMERICAN HI-FI『THE ART OF LOSING』
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投稿: 2003 04 13 12:00 午前 [2003年の作品, American Hi-Fi] | 固定リンク