2018年3月25日 (日)

ANDREW W.K.『YOU'RE NOT ALONE』(2018)

ANDREW W.K.世界共通の新作としては、日本未発売の『55 CADILLAC』(2009年)以来実に9年ぶりの新作。特にここ日本では2008〜9年にかけてJ-POPカバーアルバムやガンダムカバーアルバムなど企画モノを連発したおかげで、“過去の人”的なイメージで語られる機会も増えていました。そこから数えても9年、周りにはデビューアルバム『I GET WET』(2001年)の衝撃を知らない若いリスナーも増えています。

そんな中、満を辞して発表された通算5枚目のオリジナルアルバム。路線的には2ndアルバム『THE WOLF』(2003年)や3rdアルバム『CLOSE CALLS WITH BRICK WALLS』(2006年)に近いのかなと(前作『55 CADILLAC』は毛色の違う異色作でしたし)。

そもそも、アルバムタイトルの『YOU'RE NOT ALONE』からして、ANDREW W.K.“っぽく”ない。「あれ、大丈夫?」と不安になったのは僕だけはないはず。で、実際にアルバムを聴くと、オープニングの仰々しいインストナンバーから続く「Music Is Worth Living For」……あれ、こんなだっけ? あ、でも最近はこんなだったか……と難しい顔をしている自分がいる。聴き進めるうちに、我々がイメージする“パーティソング”もいくつか顔を覗かせるのだけど、その勢いもデビュー作と比べたら落ち着き払ったもので、どこかお上品。鼻血を流しながらパーティ!パーティ!していた時代は今は昔。ああ、こうやってみんな大人になっていくのか、と肩を落としたのでした。

が、だからといって本作のクオリティが低いものかと言われたら、そこはまた話は別。パーティの質は確かに変わったものの、楽曲そのものは非常に練り込まれており、リスニングに耐えうるものばかり。1曲1曲の曲間がかなり短いせいで、組曲のように聴こえる構成があったり、優雅なサウンド&世界観が影響してか、どこかコンセプトアルバムのように思えたり。『THE WOLF』から顕著になったQUEENへの憧れが、本作では独自の形でオリジナルなものへと昇華されたのかな、そんな気がします。

だからこそ、このアルバムはもっとゴージャスなサウンドプロダクションで聴きたかったな。例えば往年のDEF LEPPARD的なビッグプロダクションで。それが似合う楽曲たちだと思うし、それを今ちゃんとした形でやれる人だと思うのですよ。もちろん、それに近いことをやってくれてはいるのですが、『I GET WET』の頃と比べるとどうしても1音1音のアタックが弱いような。それがメジャー資本とインディーズとの違いなのか、あるいは今やりたいこととしてのこだわりなのかはわかりませんが……。

ファンの求めるANDREW W.K.像とのズレ、この音ならもっとこうやれたんじゃ……という惜しさ含め、9年ぶりの新作(日本では数々の企画盤や『55 CADILLAC』をなかったことにして、『CLOSE CALLS WITH BRICK WALLS』以来12年ぶりと謳ってます)のわりには……と思ってしまうのが正直なところ。曲が良いだけに、余計にね。でも、ライブを観たら印象がまた変わるのかなぁ。嫌いになれない作品だけに、そう願いたい。



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投稿: 2018 03 25 12:00 午前 [2018年の作品, Andrew W.K.] | 固定リンク

2003年9月19日 (金)

ANDREW W.K.『THE WOLF』(2003)

ANDREW W.K.の約2年振りとなる2枚目のアルバム『THE WOLF』がリリースされました。海外では01年秋にリリースされたファーストアルバム『I GET WET』ですが、ここ日本では昨年2月のリリースだったので、まだ1年半なんですよね。その間にも3回くらい来てるから、非常に満腹感を感じていたんですが‥‥そんな我々の「もういいよ」感で一杯のお腹を力ずくで殴り倒すんじゃなくて、柔軟性を持ったいろんな方法でまたライヴへ行きたくなるような方向へ持っていく、非常に優れ物な1枚に仕上がってます。

ANDREW W.K.というと、どうしてもあのショッキングな「鼻血ジャケ」のイメージが強く、更に「やたらとタイトルに『Party』という単語が登場する」という如何にも「ただのロック馬鹿兄貴」というパブリックイメージを植え付けられてしまってるわけですが、今回の新作ではそういったイメージを引継ぎつつも更に次の地平へと進み始めたことを力強く宣言してるんですね。

ファーストの時点でANDREW W.K.のサウンドをよくDEF LEPPARDといった「如何にも80年代的なビッグ・サウンドプロダクションのハードロック」と比較してたりしましたが、その傾向はこのセカンドでも更に強まっていて、例えば全ての楽器をアンドリューが担当し多重録音していった点もLEPPS的といえなくないし、更にドラムは完全に打ち込みですから、この人工的リズムトラックは正に「HYSTERIA」以降のLEPPSと同方向にあると言っていいでしょう。ファーストシングルとなった「Tear It Up」なんてまんまLEPPSの流れにある1曲ですしね。

更に今回は、そんなLEPPSもお手本にしたQUEENやMEAT LOAFといった「ドラマチックな展開を持つサウンド」からの影響もかなり見受けられます。ポップな異色作「Free Jumps」はどことなくQUEENからの影響を感じるし、既に名バラードの仲間入りを果たしたと言える「Never Let Down」なんてイントロの大袈裟な展開からしてMEAT LOAFだし。楽曲そのものはホント'80年代的なんだよね。こんな時代にこういった曲を聴ける喜び。ホント素晴らしい。

勿論これまでの流れにあるファストチューン「Long Live The Party」や「Your Rules」といった曲もあるんだけど、前作以上にピアノやキーボードの音量が大きくフィーチャーされていて、本当に煌びやかで派手といったイメージが増幅されてるんだわ。これが人によっては鼻についたりして苦手ってことになりかねないわけだけど。特にANDREW W.K.を「次世代ラウドロック/リフロックの救世主」みたいに思ってた人にとっては「The Song」や「Really In Love」みたいなメロウで聴かせる曲をどう受け取るんでしょうね?

ファーストは正にジャケット通りの音/内容でした。いや、ああいう暴力的という意味ではなくて、あれすらもエンターテイメントなんだよ?という、ね。で、今度のアルバムジャケットは‥‥色男振りをアピール。自分の顔のアップをジャケットに用いるなんてある意味ナルシストか自分にかなりの自信を持っている証拠。そしてそんなジャケット通り、このアルバムの内容は本当に彼が自信を持って我々にオススメするものなんだろうね。俺はこういうロックを聴いて育ってきたんだよ、このアルバムはそんな俺に影響を与えたロッカー達への恩返しなんだよ、だからみんなで「I Love Music」と歌おうよ‥‥みたいな。いやーまさかANDREW W.K.のアルバム聴いて、こんな感動的な気持ちになるんなんて思ってもみなかったよ。

そういえば、11曲目の「The End Of Our Lives」を聴いてると、思わず「負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じるぅ~こと♪」って歌いたくなるのは俺だけでしょうか?

冗談はさておき‥‥ホント、今年一番ビックリしたアルバム。そして安心して何度もリピート出来る1枚。



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投稿: 2003 09 19 12:00 午前 [2003年の作品, Andrew W.K.] | 固定リンク