ANDREW W.K.『GOD IS PARTYING』(2021)
2021年9月10日にリリースされたANDREW W.K.の6thアルバム。
セルフプロデュース作だった約9年ぶりのオリジナルアルバム『YOU'RE NOT ALONE』(2018年)から約3年半ぶり、新たにNapalm Recordsと契約しての新作。アンドリューW.K.自身と、前作でミックスを手がけたテッド・ヤング(カート・ヴァイル、KING CARDINALなど)との共同プロデュース作となっております。
前作の印象がほとんど残っていなかったので「どんな内容だっけ?」とサブスクを探してみると、日本のリリース元がなくなったこともあってかサブスクからも、そしてYouTubeからも音源/MVが消えている始末。これだからサブスクは……と思いつつ、自身が書いた前作のレビューを読み返してから本作に臨みました。
タイトルこそ過去の片鱗を感じさせますが、サウンド的にはいわゆる初期の“パーティ感”は完全に払拭され、シリアスかつドラマチックなテイストがより強調されているのは前作同様。しかし、今作はここ数年の世界情勢が反映されたのか、オープニングトラック「Everybody Sins」から相当ヘヴィな音像/楽曲でじわじわと攻め寄ってきます。続くリード曲「Babalon」や「No One To Know」もまさにそういった作風で、アルバム全体を通じて重苦しさが伝わってくる、ある意味では“らしくない”作風かもしれません。
しかし、ここ数作のANDREW W.K.のアルバムって常にそういう“らしくなさ”の連続で、アーティスティックな作風を模索しているように映っていたので、それ自体は別段驚きに値しません。それに、偏見なしでアルバムと向き合えば間違いなく“ここ数作のANDREW W.K.らしさ”がしっかり伝わる内容ですからね。
ちょっとしたサウンドメイクやアレンジからは、いかにも彼らしい80年代ロック/ハードロック/AORへのオマージュも感じ取れますし、モダンなのかレトロなのかわからない味付けの「Stay True To Your Heart」や「I'm In Heaven」、メロウな王道パワーバラード「Remember Your Oath」、パーティ感こそ激薄ながらもノリの良いロックチューン「I Made It」や「Not Anymore」、そして「And Then We Blew Apart」を筆頭にQUEENからの影響が濃厚な楽曲群など、意外にも良曲多し。むしろ、2作目『THE WOLF』(2003年)をスタート地点と捉えると正しい進化を遂げた1枚だと受け取ることができるはずです。
デビューアルバム『I GET WET』(2001年)以外はダメダメだ、と感じているリスナーには無理にオススメしませんが、むしろそれ以降の作品も好意的に受け取っていたり、好きな作品/楽曲が存在するという方には積極的にオススメしたい1枚かもしれません。いやあ、思ったより良かったので安心しました。
▼ANDREW W.K.『GOD IS PARTYING』
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