ANDY BLACK『THE GHOST OF OHIO』(2019)
2019年4月に発売されたBLACK VEIL BRIDESのフロントマン、アンディ・ビアサックの“アンディ・ブラック”名義での2ndアルバム。ソロデビュー作『THE SHADOW SIDE』(2016年)から3年ぶりの新作となりますが、前作の全米22位から最高200位と記録やセールスを一気に落とす結果に。しかし、そういった現実とは相反し、その内容は非常に優れたものと言えるのではないでしょうか。
前作ではBLACK VEIL BRIDESでのハードロック路線とは異なる、落ち着いた“大人のロック&ポップス”を聴かせてくれたアンディ。基本的な方向性は前作の延長線上にあるものの、今作ではより洗練されたモダンなポップロックを提供してくれています。
プロデューサーは前作から引き続きジョン・フェルドマン(BLACK VEIL BRIDES、FEVER 333、ONE OK ROCKなど)が担当。ジョンはBLACK VEIL BRIDESの最新作『VALE』(2018年)でも共同プロデュースやソングライティングで参加していることから、よっぽどアンディに気に入られているのでしょう。実際、ヘヴィなものからポップなスタイルまで幅広く手がける人ですしね。
全12曲収録と、曲数的には前作の13曲とほぼ変わらないのですが、トータルランニングは前作の約50分から今回は40分と一気に短縮。それもそのはず、1曲がほぼ2〜3分台と昨今ヒットチャートを占めるポップソングと同等のスタイルなのですよ。無駄を削ぎ落とし、歌を聴かせるための最良のアレンジを施した結果がこれなのだとしたら、今回はすべてが良い方向に作用していると言えるでしょう。
例えば、ジョン・ボン・ジョヴィがソロ2作目『DESTINATION ANYWHERE』(1997年)で目指した、土着的なアメリカンロックをバンドスタイルにこだわらないモダンなアレンジで表現するあのスタイルに一番近いのかな。ソングライターとしての成長も大いに伝わるし、バンドとの差別化もちゃんとできている。バンドのアルバムが3年間隔でのリリースだとしたら、その合間にこういう“ガス抜き”は大歓迎です。
また、ゴシック調のアルバムジャケットといい、前半6曲を「ACT I」、後半6曲を「ACT II」と括る構成といい、どこかドラマ性を感じさせるものがあります。事実、以前よりもドラマチックさが増したサウンド&アレンジにぴったりですし、これは個人的にも好印象かな。
一時は新たなロックスターとして注目を集めたアンディおよびBLACK VEIL BRIDESですが、ここ最近は若干停滞気味なのかな。特にここ日本では2作連続で国内盤がリリースされていないし、アンディのソロも2作とも国内盤発売の予定なし。本国での状況や注目具合が正しい形で伝わりきらない、伝える手段が少ないという悪循環を生み出していますが、せめてこのアルバムの良さだけはストレートに伝わってほしいと願うばかりです。