カテゴリー「ANTHEM」の9件の記事

2019年8月 8日 (木)

THE MAN『ULTIMATE FORMATION』(2019)

ANTHEMの柴田直人(B)を中心に結成されたHR/HMトリビュートバンド、THE MANが2019年7月に発表したライブアルバム。

THE MANという名前はANTHEMのアナグラムで、参加メンバーも現ANTHEMの森川之雄(Vo)、清水明男(G)、田丸勇(Dr)という「ANTHEMの楽曲を演奏しないANTHEM」であるわけですが、このほかにさまざまなゲストが参加することによって、クラシックロックの数々をANTHEMでは出せない色で表現しています。

このライブ音源は今年2月、新宿LOFTで収録されたもので、曲によってゲストミュージシャンとして小野正利(Vo/GALNERYUS)、YUHKI(Key/GALNERYUS)、島紀史(G/Concerto Moon)が参加しています。

演奏されている楽曲もJUDAS PRIESTゲイリー・ムーアDIORAINBOWTHIN LIZZYMICHAEL SCHENKER GROUPUFODEEP PURPLEMOTÖRHEAD など、まさにクラシックロックの名にふさわしいアーティストのものばかり。誰もが一度は聴いたことがある名曲を、カバーするアーティストごとに編成を変えて演奏しているわけです。

例えば冒頭の3曲、JUDAS PRIESTの楽曲ではANTHEMの4人に島が加わったツインギター編成でプレイ。これは納得ですね。かと思えば、DIOやRAINBOWの楽曲では柴田&田丸のANTHEMリズム隊に小野、島、YUHKIという変則的な編成でライブに臨んでいます。小野さんの歌うDIOやRAINBOWナンバー、納得です。

個人的にすごくグッときたのが、URIAH HEEPの「July Morning」。あれ、清水さんのギターってこんなに官能的だったっけ?とクレジットを確認したほどです。YUHKIさんのオルガンもめっちゃいい味だしているし、何よりも森川さんのボーカルが……男泣きしそうなほどの哀愁味が漂っていて、最高以外のなにものでもない。

かと思えば、MOTÖRHEAD「Iron Fist」ではレミー顔負けのディストーションボイスで聴く者を完全にノックアウト。ホント、すごいシンガーですね。

そして、小野さんのロニー・ジェイムズ・ディオ……過去にも彼のソロアルバムなどで披露されてきましたが、やっぱり良いですね。僕はこの人がう歌うディオとクラウス・マイネ(SCORPIONS)が大好きです。

こういうカバーってやっぱりそれなりに実力が発揮される場でもあると思うので、こういう国内一流どころのHR/HMアーティストたちが一堂に会して楽しむ姿がパッケージされるのは、非常に良い企画だと思いました。しかも、それが映像ではなく音源のみというのが、また最高じゃないですか。

 


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2019年7月26日 (金)

ANTHEM『HUNTING TIME』(1989)

1989年5月にリリースされた、ANTHEMの5thアルバム。

前作『GYPSY WAYS』(1988年)でボーカルが坂本英三から森川之雄に交代、3rdアルバム『BOUND TO BREAK』(1987年)から3作連続でクリス・タンガリーディス(JUDAS PRIESTゲイリー・ムーアTHIN LIZZYなど)がプロデュースを手掛けた、“これぞANTHEM”という決定版的な1枚に仕上がっています。

オリジナル盤8曲(2005年リマスター盤および配信バージョンはボーナストラック「Are You Ready?」を加えた9曲入り)中、柴田直人(B)が作曲したのが6曲(ボートラ含め7曲)、福田洋也(G)作曲が2曲というバランスで、この割合は過去作とほぼ一緒。なのに、柴田直人の色合いが濃厚な1枚に仕上げられているのは、それだけ序盤の柴田ナンバーが出色の出来ということなのかもしれません。

まあとにかく、オープニングを飾る「The Juggler」の疾走感とパワーにいきなり圧倒されたかと思うと、ドラマチックなアレンジの名曲「Hunting Time」、さらに王道中の王道「Evil Touch」へと続くわけですから。この3曲だけでも相当な濃度だと思います。ホント、リリースから30年経った今聴いても暑苦しいったらありゃしない(もちろんいい意味で。笑)

その後も森川&柴田の共作詞による「Tears For The Lovers」、福田作曲のハードブギー「Sleepless Night」、タイトルのせいもあってか、どこか末期THIN LIZZYを彷彿とさせる「Jail Break (Goin' For Broke)」、落ち着いたテンポ感のミドルチューン「Let Your Heart Beat」、パンキッシュな前のめり感と勢いを感じる福田作曲の「Bottle Bottom」と、一切隙を感じさせない構成で進んでいきます。

ボーナストラックの「Are You Ready?」も「Bottle Bottom」に近いアップチューン(ただし、こちらのほうがハードロック的)なので、ノリ的には何ら違和感がないのですが、ただ濃密な8曲を聴いたあとになると、ちょっとクドイかな?という気も。このへんはもう好みになってしまうと思うので、判断は聴く人に委ねたいと思います(個人的には、オリジナル盤の8曲がベストかなと)。

ANTHEMというバンドは『BOUND TO BREAK』というアルバムで己の“個”をしっかり確立させたと思うのですが、ボーカリストの交代もあり、続く『GYPSY WAYS』は最高の内容だったにも関わらず、当時はその声の違いに少々戸惑った記憶があります。だからこそ、『GYPSY WAYS』にしっかり慣れたタイミングにダメ押しで発表された本作『HUNTING TIME』は傑作と呼ばれているのかもしれません。僕としては上記3枚はどれも甲乙付け難い内容なんですけどね。

この8月に、ANTHEMは本作のリリース30周年を記念した完全再現ライブを行うとのこと。すでにソールドアウトしているので観に行くことはできませんが、今のANTHEMがこのアルバムをどこまで再現し、どう新たに料理するのか、非常に気になるところです。

 


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2019年4月 1日 (月)

ANTHEM『NUCLEUS』(2019)

来年2020年にデビュー35周年を迎えるANTHEMが、このタイミングで海外の名門メタルレーベルNuclear Blastと契約。世界リリース第1弾として2019年3月末に、これまでの楽曲を英語詞にて再録音したベストアルバム的内容のフルアルバムをリリースしました。

ANTHEMの英語詞アルバムというと、本格的再結成前にグラハム・ボネットを迎えて制作した『HEAVY METAL ANTHEM』(2000年)がありますよね。あのアルバムは80年代のメジャーデビューから90年代初頭の解散までのアルバムから、森川之雄在籍時の4thアルバム『GYPSY WAYS』(1988年)〜7thアルバム『DOMESTIC BOOTY』(1992年)の楽曲中心で構成されていました。坂本英三時代の楽曲は1曲のみでしたが、それでも多くのファンが納得するような代表曲が多い1枚だったと思います。

ところが、今回の世界リリース第1弾となる『NUCLEUS』は全13曲中12曲が2001年の再結成以降に発表された楽曲の再録なのです。具体的に説明すると下記のとおり。

・VENOM STRIKE :7th『DOMESTIC BOOTY』(1992)
・OVERLOAD:9th『OVERLOAD』(2002)
・ETERNAL WARRIOR、OMEGA MAN:10th『ETERNAL WARRIOR』(2004)
・IMMORTAL BIND、ECHOES IN THE DARK:11th『IMMORTAL』(2006)
・BLACK EMPIRE、AWAKE:12th『BLACK EMPIRE』(2008)
・GHOST IN THE FLAME、UNBROKEN SIGN:14th『BURNING OATH』(2012)
・LINKAGE、PAIN:15th『ABSOLUTE WORLD』(2014)
・STRANGER:16th『ENGRAVED』(2017)

再始動一発目の8thアルバム『SEVEN HILLS』(2001年)とビクター時代ラストの13th『HERALDIC DEVICE』(2011年)からは選出なしで、復活2作目の『OVERLOAD』(2002年)と最新オリジナルアルバム『ENGRAVED』(2017年)のみ1曲ずつ、ほかは2曲ずつという選曲。しかも、いわゆるシングル曲(リードトラック)が極力外されており、現在までのライブで演奏される頻度の高いナンバーが選出されているのです。しかも、英詞に変わったぐらいで大まかなアレンジの変更なし。なのにオリジナル音源よりもブラッシュアップされた印象が強いのは、本作のミックス&マスタリングをイェンス・ボグレン(SOILWORKOPETHPARADISE LOSTDIR EN GREYなど)が手がけたことも大きく影響しているのでしょう。音の密度や際立ちぶりが過去のアルバムと大きく異なることで、同じ曲でも違った印象を与えてくれます。

また、ドラマチックな長尺曲「GHOST IN THE FLAME」のあとに、唯一解散前の楽曲「VENOM STRIKE」が置かれているのも興味深いポイント。“中枢”を意味するタイトル含め「再結成後の“今”がベスト!」と言わんばかりの作品の中にこのトリッキーな曲が加わることで、この曲も前後の曲も非常に映えるんですよね。もともと大好きな曲ですが、この流れで聴くとまた新鮮な印象を得られました。

とにかく、息つく暇もないくらいの圧倒感と焼けるような熱量でびっしり埋め尽くされたこのアルバム。正直60数分という決して短くない長さが息苦しくも感じる瞬間もあるのですが、それも繰り返し聴くことで気持ちよくなってくるのですから不思議です。

このアルバムがANTHEMの海外展開において大きな役割を果たす……かどうかはわかりません。年齢的にもキャリア的にも、あと何枚制作できるのかわかりませんし。ただ、このアルバムに関しては出すことに意義があるのかな、という気がしました。

 


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2017年10月18日 (水)

『LOUD PARK 17』DAY 1@さいたまスーパーアリーナ(2017年10月14日)

Loudpark172年ぶりに『LOUD PARK』に行ってきました。2015年は2日目のみの参加でしたが、今回は本当に久しぶりの2日通しでの参加。いつ以来だろうと振り返ってみたら、なんと2009年(JUDAS PRIESTSLAYERがヘッドライナー)以来だったみたいです(笑)。2011年から1日のみ開催が2年続きましたが、それもあってか1日のみ参加というのも結構あったんですよね。

というわけで、せっかくなので久しぶりにメモ程度のレポを残しておこうかと思います。基本はSNS等でつぶやいたコメントが基になっていますので、がっつりしたレポートは各メディアでの本格的なレポートにてご確認ください(笑)。

では、このエントリーでは初日について書いていきたいと思います。

 

<DAY 1:10月14日(土)>
当日朝6時まで原稿を書いていたため、オープニングアクトAldiousからの参加は断念。せめてL.A.GUNSは観たい……ということで、頑張って9時台に起床。ギリギリ12時開始のL.A.GUNSには間に合いました。

 

L.A.GUNS
1曲目が3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』のオープニングトラック「Over The Edge」で面喰らう。勢いよく始めるかと思ったら、このエモいヘヴィロックからかよ、と。ステージをよく見ると、左に昔のトレイシー・ガンズっぽいコスプレしたギタリスト、右に……アメリカ南部のモダンヘヴィネス系バンドにいそうなむさ苦しいギタリスト。あれ、どっちがトレイシーだ?……残念ながら右側でした(笑)。以降は新作『THE MISSING PEACE』から「Speed」やったり1stアルバムから「No Mercy」やったりしましたが、「Killing Machine」みたいな曲もあったりで、特に初期にこだわった感じではなし。あ、2nd『COCKED & LOADED』の曲が多かったです。ラストは「Rip And Tear」。あれ、「Sex Action」は? ということで、個人的には物足りないセトリでした(もともとのセトリには中盤に「Sex Action」、入ってたんですけどね)。

ANTHEM
いきなり「Bound To Break」始まりはズルい! そりゃあ盛り上がりますよ。以降は新し目の曲が続き、中盤「Hunting Time」から怒涛の流れ。ラストは“ANTHEM版「Painkiller」”こと「Onslaught」で締めくくり。短かったけど、久しぶりに堪能できました。

BRUJERIA
あのBRUJERIAが来日!ってだけでも大興奮。そりゃあ開始前から、観客の熱も上がりますよね。メンバーは当然覆面なんですが、ベースの方がどう見てもNAPALM DEATHの……いやなんでもないです(笑)。ゴリゴリ&大音量のグラインドコアと、サークルモッシュで暴れる血気盛んなオーディエンス、それを遠目で眺める自分。ああ、ラウパーに帰ってきたんだなと改めて実感しました。MCは基本スペイン語(という設定)ですが、ところどころに英語が混じっているのに苦笑。“Fuck ドナルド・トランプ”コールで会場の気持ちがひとつになったり、このバンドらしいマリファナコールにニヤニヤしたりと、改めて面白いバンドだなと思いました。

WINGER
たぶん生で観るのは『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990年)のツアー以来だから……いやいや、深く考えるのはやめましょう。メンバーは3枚目『PULL』(1993年)からの編成なので、キーボードは抑えめでギター中心のサウンドメイキング。キップ・ウィンガー(Vo, B)に白髪が混じっていて時の流れを感じさせますが、演奏や歌自体はそこまで衰えを感じさせず。序盤は最近の楽曲〜代表曲〜新曲〜代表曲みたいな流れで、セットリストのバランスはまずまず。中盤、結成30周年に触れてからはデビューアルバム『WINGER』からの楽曲が連発されるのですが、「Heading For A Heartbreak」みたいなシンセ曲ではキップがシンセを弾きながら歌い、ギターのジョン・ロスがベースにシフトするんですね。なるほど納得です。あ、このジョンのギタープレイがレブ・ビーチとはまた違ったタイプのバカテクで好印象。本当に演奏がうまいバンドですね。ただ、BRUJERIAの後という出番はいただけません。最初、音が小さくでビックリしたし(実際BRUJERIAがデカすぎて、WINGERは序盤から音を作っていった感じ。終盤にはその音のバランスの良さに驚きました)。後半の「Heading For A Heartbreak」「Can't Get Enuff」「Madalaine」「Seventeen」の流れ、最高でした。が、スピーカーの音が途中で飛んだり、レブのギターソロでアンプが飛んだりとハプニングも連発。そこだけが勿体なかったです。

OPETH
グラインドコア(BRUJERIA)、AOR的ハードロック(WINGER)からの流れだと、プログレッシヴロック的志向のOPETHはよりソフトに感じられました。長尺の楽曲を演奏で起伏をつけていくのはWINGERにも通ずるものがあるのですが、いかんせんタイプが違う。最近の楽曲は特にソフト志向なので、途中で眠気も……が、ラストの13分超におよぶ「Deliverance」でデス声登場。大好きなアルバムのタイトルトラックに大興奮ですよ。ここで一気に気持ちが持ち返しました。なんにせよ、長丁場のフェスに寝不足で挑むのはよくないですね(苦笑)。

OVERKILL
ここ10年くらい、出すアルバムがことごとく力作でキラーチューンも多い彼ら。実際のライブも往年の代表曲以上に新曲で盛り上がっていたのが印象的でした。にしても、このバンドも35年近いキャリアの持ち主(しかも一度も解散、活動休止なし)なのに、このテンションの高さには驚かされます。初めてライブを観たのはもう30年近く前ですが、基本的に印象はまったく変わらず。逆に観客の彼らに対する盛り上がりは、年々高くなってるように感じました。ラストの「Fuck You」含め、「ああ、そうそうこれ。スラッシュメタルだね!」っていう最高のステージでした。

ALICE COOPER
アリスも2008年以来の来日以来9年ぶり。1990年の初来日以降、毎回観てますが、一番時間が短かったにも関わらず正直今回が一番良かったと思いました。1曲目の「Brutal Planet」には驚いたものの、以降はいつもどおりヒット曲連発。まさか序盤に「Poison」を持ってくるとは思ってもみませんでしたし、「Feed My Frankenstein」ではジャンボマックス(死語)ばりの巨大アリスが登場して爆笑(しかも歌声も身長に合わせてか低くなってる!)。おなじみのギロチンショーもあり、ラストは「I'm Eighteen」「School's Out」で大団円。オールドスクールなロックンロールや60分に凝縮されたショーはラウパーっぽくないのかもしれませんが、それでも最高と言わざるをえない究極のエンタテインメントショーでした。

EMPEROR
二度目の来日となる今回は、2ndアルバム『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』発売20周年を記念した完全再現ライブを披露。緑を基調とした照明はジャケットの世界観そのもので、この日出演したバンドの中でもサウンド的にはかなりオールドスクールなブラックメタルに括られるものの、存在感や説得力はほかにはない特別なものが感じられました。最初こそ「うおー!」と盛り上がっていたものの、気づいたら無言になっており、その世界観にじっくりと浸る自分がいるという。イーサーン(Vo, G)の知的な感じも素敵でしたし、あの佇まいがそのまま音になったかのような、プログレッシヴなブラックメタルサウンドは20年経った今も有効であることも強く実感させられました。アルバムを曲順どおりに再現し終えると、そこからは「Curse You All Men!」「I Am The Black Wizards」「Inno A Satana」と代表曲を連発。「I Am The Black Wizards」まではスタンド席でじっくり観ていたのですが、「Inno A Satana」が始まった瞬間我慢できずにアリーナまで走ったのはここだけの話です(笑)。

SLAYER
2年ぶりのSLAYERですが、前回はラウパーのほうが日程的に観られなかったため、STUDIO COASTでの単独公演を観たのでした。最新作『REPENTLESS』を軸にしたセットリストは前回に似た感じですが、なぜでしょう、今回のほうが良かった気がします。いや、もっと言うと……ここ10数年観た中で一番良かったんじゃないでしょうか。ゲイリー・ホルト(G)が加わって時間が経ち、編成としてもかなり安定したのもありますし、『REPENTLESS』の楽曲が今のバンドに馴染んだというのもあるんでしょうけど、なんていうか……僕らがよく知ってる“あの”SLAYERが戻ってきたといいましょうか……非常に抽象的な表現で申し訳ないですが、そうなんですよ。完全に戻ってるんですよ、今のSLAYER。帝王って言葉がぴったりな、あのSLAYERに。セットリストもよかったなぁ。90分のセットで20曲くらい詰め込まれていて、特に終盤、「Seasons In The Abyss」から「Hell Awaits」「South Of Heaven」「Raining Blood」「Chemical Warfare」「Angel Of Death」という怒涛の流れは文句なしでした。ぶっちゃけ、首がもげましたもん(笑)。

 


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2013年5月19日 (日)

「Ozzfest Japan 2013」Day 2@幕張メッセ(2013年5月12日)

2日間にわたり日本で初開催された『Ozzfest Japan 2013』。ここでは2日目公演の模様を簡単にレポートしていきます。以下は開催当時、某サイトにて執筆したレポートを加筆修正したものです。

=====

BLACK SABBATHをヘッドライナーに迎えたこの日はまず、オープニングアクトとしてHEAD PHONES PRESIDENT、fadeの2組が登場。それぞれ20分の餅事案ながらもパワフルなステージを展開しました。

【HEAD PHONES PRESIDENT セットリスト】
01. Stand In The World
02. My Name Is
03. Just A Human
04. Where Are You
【fade セットリスト】
01. REIMEI〜黎明〜
02. From the Heart
03. One Reason
04. Close to You (Japanese ver.)

 

続いて12時から本編1組目のcoldrainが、最新アルバム『THE REVELATION』からの楽曲を中心に攻撃的なライブを繰り広げます。MCではMasato(Vo)が「中学の頃からこういう音楽を聴いてきたけど、ずっとマイナーだと言われてきた。でも(フロアの)前の奴らは後ろを、後ろの奴らは前のほうを観てくれ。こんなにたくさんの仲間がいるんだぜ。日本の力を見せてやろうぜ!」と観客を煽る一幕もありました。

【coldrain セットリスト】
01. The Revelation
02. No Escape
03. Die tomorrow
04. Six Feet Under
05. The War Is On
06. To Be Alive

 

ANTHEMは柴田直人(B)の胃がん手術後、そして本間大嗣(Dr)脱退後初のライブとなりました。初期の代表曲「BOUND TO BREAK」で勢いよくライブをスタートさせると、以降はは最新作『BURNING OATH』を中心に再結成後の楽曲を次々に披露。曲間では柴田が「いろいろご心配おかけしましたが、僕も今日を楽しみにしていました」とファンに挨拶し、坂本英三(Vo)も「日本のヘヴィメタルが最高だということを証明しようぜ!」と叫びつつ「IMMORTAL BIND」「ONSLAUGHT」などで力強いシャウトを会場に響かせました。

【ANTHEM セットリスト】
01. BOUND TO BREAK
02. Soul Motor
03. BLAST
04. GO!
05. IMMORTAL BIND
06. ONSLAUGHT

 

MUCCは「Mr.Liar」「塗り潰すなら臙脂」「G.G.」とメタリックかつダンサブルな楽曲を連発。日本のV系代表と言わんばかりのステージングで、メタルファンが多いであろう客席をみごとに沸かせてくれました。

【MUCC セットリスト】
01. Mr. LIAR
02. 塗り潰すなら臙脂
03. G.G.
04. フォーリングダウン
05. MAD YACK
06. リブラ

 

AA=のデジタル要素を取り入れたサウンドはこの日の出演者の中では異色中の異色でしたが、そんなこと一切関係なく会場を熱狂の渦に巻き込みます。思えばTHE MAD CAPSULE MARKETS時代から『Ozzfest』との相性抜群なわけですから、悪いわけがない。

【AA= セットリスト】
01. 2010 DIGItoTALism
02. I HATE HUMAN
03. sTEP COde
04. 新曲
05. GREED...
06. FREEDOM
07. WORKING CLASS

 

この日最初の海外勢となったSTEEL PANTHERは、往年のLAメタル・チックな楽曲と「オッパイミセテー!」などコミカルなMCで、会場のロックファンを楽しませてくれます。お下劣極まりないですが、観客はクスクスしながら楽しんでいた様子でした。

【STEEL PANTHER セットリスト】
01. Eyes Of A Panther
02. Tomorrow Night
03. Asian Hooker
04. Just Like Tiger Woods
05. Party All Day (Fuck All Night)
06. Community Property
07. 17 Girls In A Row
08. Death To All But Metal

 

続く人間椅子は、BLACK SABBATHからの影響を感じさせる重々しい楽曲群で、STEEL PANTHERとは異なる方向で観客を魅了。和嶋慎治(Vo, G)は客席に向け「バンド生活25年、平成とともに歩んできました。このステージに立てることを誇りに思います」と感慨深げに挨拶をし、最後にBUDGIE「Breadfan」の日本語詞カバー「針の山」で30分にわたる“夢の舞台”を締めくくりました。

【人間椅子 セットリスト】
01. 相克の家
02. 死神の饗宴
03. 深淵
04. 人面瘡
05. 針の山

 

SLIPKNOTのコリィ・テイラー(Vo)とジェイムズ・ルート(G)が在籍する別バンド、STONE SOURは昨年から今年にかけて連続リリースされた2枚のアルバム『HOUSE OF GOLD AND BONES PART 1』『HOUSE OF GOLD AND BONES PART 2』からの楽曲を軸に、50分におよび熱演。前日はマスクを付けていたためその表情を伺い知ることができなかったコリィも、この日は笑顔を浮かべフェスを楽しんでいる様子を見せます。また、コリィはギターの弾き語りでALICE IN CHAINS「Nutshell」のカバーと、バンドの代表曲「Bother」をメドレーで歌い、観客を喜ばせました。

【STONE SOUR セットリスト】
01. Gone Sovereign
02. Absolute Zero
03. Mission Statement
04. Made Of Scars
05. Do Me A Favor
06. RU486
07. Say You'll Haunt Me
08. Nutshell
09. Bother
10. Through Glass
11. 30/30-150

 

DIR EN GREYはオープニングSE「狂骨の鳴り」に続いて「DIFFERENT SENSE」から勢いよくライブを開始。重く引きずるような独特のサウンドと、京(Vo)による変幻自在なボーカル、ステージ後方に映し出されたグロテスクな映像が相まって、彼らにしか作り出せない世界観を演出します。

【DIR EN GREY セットリスト】
00. 狂骨の鳴り
01. DIFFERENT SENSE
02. 業
03. THE BLOSSOMING BEELZEBUB
04. INWARD SCREAM
05. 蜜と唾
06. 羅刹国
07. 冷血なりせば

 

TOOLも映像を巧みに使ったステージングで、観客を圧倒。しばらく新作を発表していないものの、これまでの発表してきたアルバムの中から人気ナンバーを中心に演奏し、充実の60分を提供しました。

【TOOL セットリスト】
01. Hooker With A Penis
02. Sober
03. Schism
04. Lateralus
05. Intermission
06. Jambi
07. Forty-Six & 2
08. Ænema
09. Stinkfist

 

2日間にわたるフェスを締めくくったのは、オジー・オズボーン(Vo)を含む編成では今回が初来日となるBLACK SABBATH。代表曲「War Pigs」からライブを開始すると、早くも会場中から観客の大合唱が鳴り響く。40年以上も前に発表された初期4作品からの楽曲が立て続けに披露されるもまったく古さを感じさせず、有無を言わさぬ説得力と圧倒的な歌と演奏で日本のロックファンを魅了し続けます。さらに、6月にリリースを控えたニューアルバム『13』からの新曲「God Is Dead?」もいち早くプレイされ、観客を喜ばせました。「Children Of The Grave」で一度ライブ本編を終了させるも、アンコールで「Sabbath Bloody Sabbath」のイントロから「Paranoid」へとつなげ、大盛り上がりの中90分にわたるライブを終了させました。

【BLACK SABBATH セットリスト】
01. War Pigs
02. Into the Void
03. Under The Sun
04. Snowblind
05. Black Sabbath
06. Behind The Wall Of Sleep
07. N.I.B.
08. Fairies Wear Boots
09. Symptom Of The Universe 〜 Drum Solo
10. Iron Man
11. God Is Dead?
12. Children Of The Grave
<アンコール>
13. Sabbath Bloody Sabbath (Intro only) 〜 Paranoid

2007年12月10日 (月)

ANTHEM "IMMORTAL TOUR" FINAL@川崎CLUB CITTA' (2007.12.8)

前日に続き、再び80年代モードです。いやいや、たまたまこんな結果になってしまったんですよ、本当に。ANTHEMは80年代から大好きなバンドでしたし、現時点での新作「IMMORTAL」についてはリリース当時にこういう感想を書いてますし。アルバムが出るたびにしっかりと評価してきたつもりです。ただ、毎回タイミングが悪くて、再結成してからは一度もライブを観れてなかったんですよね。今年の「LOUD PARK 07」も直前に行けなくなってしまって、彼らの勇姿を目にすることができなくて残念な思いをしたものです。

そんなところ、数日前に仕事としてライブレポートの依頼がきまして。そりゃ即答ですよ、「行きます!」って。

彼らのライブを観たのは、1992年の日清パワーステーションでのラストライブが最後。ホントにあれから15年ぶりなんですね。もっと言えば、坂本英三時代なんて、1987年のホールライブ以来だからねぇ、まる20年ですか。ひゃーっ、そりゃ僕もANTHEMも歳取るはずだ。

会場はクラブチッタ。今の彼らにとってはホームグラウンドと呼ぶにふさわしいハコですよね。そんな素敵な環境で彼らのライブを本当にひさしぶりに観たんだけど……過去の比にならないほどにカッコよかった! まず今回のツアーは昨年のアルバム「IMMORTAL」の完成形を見せるという意味合いの内容なんだけど、セットリストは頭から11曲目まで「IMMORTAL」からの楽曲で占められてるんです。要するに、曲順こそアルバムとは異なるものの、いわゆる全曲披露という形。途中、ギターソロやらドラムソロも挿入されたり、「SOUL MOTOR」の前にはCREAMバージョンの「Crossroads」セッションがあったりと、とにかく終始見どころ満載でした。

まず最初に彼らが音を出した瞬間に感じたのが……胃の中まで火傷するような感覚、というか、ものすごい威圧感や息苦しさ。呼吸をすると、内臓や気管が火傷か凍傷でも起こすんじゃかなろうか、というくらいに異様な空気を肌で感じました。そのくらい、純度200%のメタル。坂本英三のMCはアニメタル以降の彼らしくコミカルだったりするんだけど、曲になると異常なくらいに重苦しくなるわけ。でも、その空気が嫌じゃなかったりするんだから、俺も心底メタル好きだなぁと思ったりして。

ライブで「IMMORTAL」からのナンバーを聴いて思ったのは、やっぱりこの人たちは他のメタルバンドとは一線を画する存在だなぁということ。日本の若手バンドや同年代のバンドとも違うし、海外で今流行ってるような音とも違う。完全なオリジナルなんだよね。前作「ETERNAL WARRIOR」は現在のスタイルのひとつの完成形だったはずなのに、「IMMORTAL」ではさらにその上をいくようなアルバムを作り上げちゃったよなぁ、と改めて実感させられました。いやぁ、圧巻ですよ。

その後は「SHADOW WALK」といった森川時代の名曲や、20年ぶりに坂本Voで聴くことができた名曲中の名曲「BOUND TO BREAK」、さらにはANTHEM版「Painkiller」と個人的に思っている「ONSLAUGHT」まで登場し、本編終了。この時点で約100分くらい経過してたのかな。

でも、その後アンコールが3回もあって、しかも新旧の名曲をバランスよく取り混ぜているんだから、もう片時も目が離せない状態ですよ。「MACHINE MADE DOG」から「NIGHT AFTER NIGHT」、泣きメロが素晴らしい「RUNNING BLOOD」、そして最後の最後は彼らのテーマ曲ともいえる「WILD ANTHEM」! 約2時間半にわたる濃厚なメタルタイムは、会場の大合唱で幕を閉じたのでした。

来年には恐らく新しいアルバムも発売されるANTHEM。デビュー22年目(途中8年は解散してましたけど)のベテランバンドだけど、次もさらに重厚で、いい意味で「落ち着きのない」ヘヴィメタルアルバムを届けてくれることでしょう。そして、そんな新作を引っさげた次のライブツアーにもぜひ参加したいと思います。今度はプライベートでね。


<SETLIST>
01. IMMORTAL BIND
02. ROAD TO NOWHERE
03. MOB GROOVE
04. GUITAR SOLO 〜 THE BEGINNING
05. IGNITE
06. FREAK OUT
07. INSOMNIA
08. UNKNOWN WORLD
09. CROSS ROAD 〜 SOUL MOTOR
10. BASS SOLO 〜 ECHOES IN THE DARK
11. BETRAYER 〜 DRUM SOLO 〜 BETRAYER
12. GOTTA GO
13. SHADOW WALK
14. BOUND TO BREAK
15. ONSLAUGHT
---ENCORE 1---
16. MACHINE MADE DOG
17. NIGHT AFTER NIGHT
---ENCORE 2---
18. OVERLOAD
19. RUNNING BLOOD
---ENCORE 3---
20. DEMON'S RIDE
21. WILD ANTHEM



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2006年9月23日 (土)

ANTHEM『IMMORTAL』(2006)

 ANTHEM通算11作目、再結成後4作目となる「IMMORTAL」。そうか、復活してから現メンバーでのアルバムもこれで4枚目、そして5年以上経つわけか。前作「ETERNAL WARRIOR」で行き着くところまで行ったなぁという気がしたんだけど、あれから2年。まだまだ行けますよ、このオッサンたちは。

 いわゆる'80年代のジャパメタ全盛期。俺はLOUDNESSよりもVOW WOWの方が好きだったし、もっと言えばANTHEMが一番好きだったのね。しかも坂本英三時代の3枚が本当に大好きで(いや、森川時代も素晴らしかったけど)。でも周りにはANTHEMファンは一切おらず、みんなLOUDNESSだ、EARTHSHAKERだ、とメジャーな方に興味を示して。もちろんANTHEMもメジャーバンドだったんだけどさ。

 '90年代のメタル不遇の時代、俺はLOUDNESSに参加した柴田も観てるし、練馬マッチョマンやANIMETALの坂本も観てるのね。そりゃ複雑な心境だったよ。でも、それから5年後にまさかまたこのふたりが一緒にバンドを組む、しかもANTHEMという形で復活するとは思いもしなかったんだけどさ。

 ま、そんな思い出話はどうでもいいや。このアルバムの話だよね。

 いろんなところで「1stから数えて、これこそ最高傑作!」なんていう声を耳にするけど、それも納得の完成度。前作で感じられた新たな要素も感じさせつつ、でもそれは単なる味付けでしかなく、全体を覆うのは暑苦しいまでのメタルサウンド。いくらオリジナルメンバーでLOUDNESSが復活しようが、いくらEARTHSHAKERが地道に活躍しようが、今のANTHEMには太刀打ちできないと思う。それくらいの気合いと熱量が毎回アルバムから感じられるし。その限界ギリギリさを強く意識させたのが、前作だったんだけど、あれから2年経って発表されたこの「IMMORTAL」はさらにその上を行ってるんだわ。柴田の書く曲も、坂本のボーカルも、清水のギターも、本間のドラムも過去最高の緊張感を保ってるし、最初から最後までその緊張の糸が切れない。1曲目 "IMMORTAL BIND" からインスト "INSOMNIA" までの7曲のテンションはハンパないし、続く8曲目 "UNKNOWN WORLD" からラスト "ROAD TO NOWHERE" で再び登り詰めてく感じはとにかく圧巻。ここまで「普通の」ヘヴィメタルを、説得力を持って演奏できるのはもはや日本じゃ彼らだけなんじゃないか……淋しいけどそんな気さえさせる、強力な1枚です。

 ホント、彼らみたいなバンドこそ「LOUD PARK 06」に出演すべきだと思うんだけどなぁ。日本を代表する「現役感を常に持った」ヘヴィメタルバンドはLOUDNESSじゃないよ、ANTHEMだよ。それか、IRON MAIDENと対バンライブやってほしい。

 奇しくも同じ時期に、IRON MAIDENとANTHEMが新作を発表。ともに過去と未来をしっかり見据えた内容だけに、今後もガキどもに負けずにメタルしまくってほしいです、はい。



▼ANTHEM「IMMORTAL」(amazon:日本盤

2005年8月16日 (火)

LOUDNESS『LOUD 'N' RAW』(1995)

『HEAVY METAL HIPPIES』リリース後に実施されたクラブツアーの模様を収めたライブアルバム。レコーディング時は不在だったベーシストの座には、(当時)元ANTHEMの柴田直人が着くことに。LOUDNESS、E.Z.O.、ANTHEMという80年代ジャパメタの縮図を、90年代半ばにこういう形で見せられるなんて、高校生だった自分に教えてあげたいよ……。

全9曲と彼らのライブアルバムにしてはもっとも曲数が少ないものの、収録時間は60分超え。これはただでさえ長い『HEAVY METAL HIPPIES』収録曲が、ライブを経てより長くなった表れでしょう。選曲はほぼ90年代からのもので、80年代の人気ナンバーは「S.D.I」のみ。しかもMASAKI、全然歌えてない。なぜこれを入れたのか。宝の持ち腐れだよ。

興味深いのは、DEEP PURPLEの名曲「Speed King」を演奏しているところ。当時のジャムスタイルやインプロビゼーション主体のスタイルに合ってたのかな。この曲を高崎&柴田が演奏しているというだけでも面白い。

積極的に聴くべき1枚ではないですが、MASAKI時代が好きなら聴いておいてもいいかも、程度の1枚。



▼LOUDNESS『LOUD 'N' RAW』
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2003年9月14日 (日)

ANTHEM『HEAVY METAL ANTHEM』(2000)

メタル離れして久しいけど、そんな俺でもこの数年結構な頻度で聴いてるのがこのアルバム。いや、ベスト盤的内容ってのも大きいんだけど、なによりもその参加メンバーであったり、新しい解釈でプレイされた(特にギターね)楽曲の数々の素晴らしさに心打たれるわけで。今でもこういうタイプの音楽が楽しめるってことは、心底メタルを嫌いになれないってことなのか、それとも単に「楽しかった10代の頃」を懐かしんでるだけなのか‥‥。

日本が世界に誇る(と言い切っても過言ではない)パワーメタルバンドANTHEM。彼等は92年に解散してるわけですが(そのラストライヴとなった日清パワーステーションでの公演には自分も足を運びました)、その後各メンバーはアニメタルでANTHEM時代以上の成功を手中にしてしまったり、あるいは'80年代はライバルだったLOUDNESSに加入してしまったり等、とにかく誰ひとりとして「ANTHEMを引き継」ごうとしなかったわけです。俺ね、80年代の日本のヘヴィメタルバンド(所謂「ジャパメタ」バンド)の中で一番好きだったのが、このANTHEMだったんですよ。特にボーカルが坂本英三だった初期の3枚の頃ね。この頃への思い入れの強さはハンパじゃなかったですよ。その後、森川之雄という素晴らしい才能を迎えてリリースされた名盤の数々も捨てがたいんですが、やはり初期の野暮ったい程のパワーメタルが好きだったんですよ。ジャーマンメタルに通ずる野暮ったさ? ACCEPT辺りを彷彿させるね。ああいうのが格好良かったんですよ。

そんな彼等が00年、奇跡的な復活をするわけですよ。ま、最初はアルバム1枚のプロジェクトとしてですけどね。それがこの『HEAVY METAL ANTHEM』というアルバムでして。所謂企画モノとしてスタートしたんですが、企画モノ故の豪華さがとにかくスゴイわけで。

ベースは勿論この人、柴田直人。当たり前です、この人のバンドですから。IRON MAIDENでいうところのスティーヴ・ハリスですからね、全てにおいて。ドラムも同じく大内 'MAD' 貴雅。最近じゃTHE YELLOW MONKEYのヒーセのバンドでも叩いてますよね。ギターは末期ANTHEMを支えた若き才能(って俺と同い年だっけ?)、清水昭男。解散後はSHY BLUEってバンドやったり、TOKIOとかに曲書いたりして生計を立ててたようです。そしてシンガー‥‥これこそ夢のような組み合わせなわけでして‥‥RAINBOW等で活躍したHM/HR界の大御所、グラハム・ボネットなんですよ。これがどういう意味か判りますか?

勿論「HM/HR界の大御所が、日本の伝説的メタルバンドで歌う」という驚きもあるわけですが、それ以上に‥‥古いファンからすると‥‥ANTHEMの、そして柴田のルーツのひとつであるRAINBOW。その「オリジナルの血」が混入するわけですよ。元々後期ANTHEMの楽曲ってのは、森川という「和製グラハム」の歌を活かす為にワザと憧れのRAINBOW的スタイルを取っていたこともあるんですね。そう、意識的にルーツを表出させていたという。つまりですよ、そういう楽曲を本家本元が歌うわけですよ!? どういうことになるか判りますよね??

選曲はほぼ森川時代のグレイテストヒッツ的なもので、坂本時代が好きな俺としてはたった1曲(「Show Must Go On!」)しか選ばれていないことに不満を覚えたりもしたわけですが、やっぱりこの組み合わせでこの選曲、納得しなきゃなりませんよ、これ聴いちゃったらさ。ちなみにオリジナルの歌詞は殆どが日本語なわけですが、グラハムが歌うに当たって全て英語詞に直されてるので、洋楽メタルしかダメって人にもオススメです。

グラハムは終わったと言われて早10年以上。確かに80年代前半までの輝きや艶やかさは今の彼からは強く感じられません。しかし、このアルバムでのグラハムは最も得意とするジャンルの音楽を、最も得意とする歌い方で表現している。そりゃRAINBOW時代やMSG時代と比べれば劣るかもしれませんが、少なくともこの10数年の中では最も素晴らしい仕事をしてるんじゃないでしょうか? ま、その10数年まともに彼の仕事ぶりを追ってきたわけではないので、コアなファンから「全然ダメじゃんか!」と反論されてしまうと、ちょっと‥‥少なくとも俺はイケてると思うんだけど。

曲の素晴らしさは言うまでもなく。日本人らしいワビサビが感じられる繊細な様式美の世界観を、欧米人が力でねじ伏せるかのような表現をする。大味のパワーメタルのようで、実は奥が深い。坂本や森川が歌うANTHEMとも違う、ちょっとだけ「世界に肩を並べた」と錯覚してしまう1枚に仕上がってます。いや、これをこのまま海外に輸出しても全然大丈夫だと思うけど。言語の問題もないわけだし、音楽的にも需要があるはずだし。これ、このまま向こうでリリースすれば良かったのにね?

ま、結局このメンツではライヴを数回やったのみで終わり、柴田は再びバンドを本格的に再始動させることを考え、結果として柴田と清水に加え、坂本が復帰し、大内の代わりに元E.Z.O.~LOUDNESSの本間大嗣が加わった形でパーマネントな活動を再開するわけです。

海外のメタルは好きなのにジャパメタとか嫌ってる人、X JAPAN以降の日本のハードロックに興味を失ってしまった人、偏見捨てて聴いてみ。そんなの吹っ飛ぶから。「Gypsy Ways (Win, Lose Or Draw)」とか「Cryin' Heart」とか「Hunting Time」の素晴らしさに泣くからさ。けどね‥‥上記3曲に関しては、その後に必ずオリジナル版も聴いて欲しいんだな。森川による日本語版の方も。グラハム以上だからさ、全てにおいて。

 


▼ANTHEM『HEAVY METAL ANTHEM』
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