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カテゴリー「Anthrax」の33件の記事

2021年8月13日 (金)

SEPULTURA『SEPULQUARTA』(2021)

2021年8月13日にリリースされたSEPULTURAの企画アルバム。

2020年2月発売のアルバム『QUADRA』に続く今作は、2020年4月からスタートしたストリーミング・ライブセッション“SepulQuarta”からのベストセレクション。これまでに発表された多数の名曲群を、毎回著名なゲストミュージシャンを迎えてセッションするという企画で、その選曲および参加アーティストの豪華さはベストアルバムを超えた1枚と言えるかもしれません。

収録曲および参加ゲストは下記のとおり([ ]内は参加ゲスト名)。

01. Territory [David Ellefson (B/ex. MEGADETH)]
02. Cut-Throat [Scott Ian (G/ANTHRAX)]
03. Sepulnation [Danko Jones (Vo)]
04. Inner Self [Phil Rind (B/SACRED REICH)]
05. Hatred Aside [Angélica Burns (Vo/HATEFULLMURDER)、Mayara Puertas (Vo/TORTURE SQUAD)、Fernanda Lira (Vo/CRYPTA)]
06. Mask [Devin Townsend (Vo, G)]
07. Fear, Pain, Chaos, Suffering [Emmily Barreto (Vo/FAR FROM ALASKA)]
08. Vandals Nest [Alex Skolnick (G/TESTAMENT)]
09. Slave New World [Matthew K. Heafy (Vo, G/TRIVIUM)]
10. Ratamahatta [Joao Barone (Dr)、Charles Gavin (Dr)]
11. Apes Of God [Rob Cavestany (G/DEATH ANGEL)]
12. Phantom Self [Mark Holcomb (G/PERIPHERY)]
13. Slaves Of Pain [Frédéric Leclercq (G/KREATOR、AMAHIRU)、Marcello Pompeu (Vo)]
14. Kaiowas [Rafael Bittencourt (G/ANGRA)]
15. Orgasmatron [Phil Campbell (G/ex. MOTÖRHEAD)]

M-4, 13 : from 3rd AL『BENEATH THE REMAINS』(1989年)
M-14 : from 4th AL『ARISE』(1991年) Japanese Bonus Track
M-1, 9, 14 : from 5th AL『CHAOS A.D.』(1993年)
M-2, 10 : from 6th AL『ROOTS』(1996年)
M-5 : from 7th AL『AGAINST』(1998年)
M-3 : from 8th AL『NATION』(2001年)
M-11 : from 9th AL『ROORBACK』(2003年)
M-6 : from 12th AL『KAIROS』(2011年)
M-8, 12 : from 14th AL『MACHINE MESSIAH』(2017年)
M-7 : from 15th AL『QUADRA』(2020年)

知名度の高いアーティストばかりが参加しており、これも長きにわたりブラジルを代表するエクストリームメタルバンドとして活躍し続けるSEPULTURAならではと言えるでしょう。選曲的には「Arise」や「Dead Embryonic Cells」「Under Siege (Regnum Irae)」といった『ARISE』収録曲や「Roots」のような代表曲を外しているのが気になりますが(実際の“SepulQuarta”セッションでは、「Arise」などはゲスト抜きで演奏されています)、それでもベストアルバムとしても見劣りしない内容なのはさすがといったところでしょうか。

基本的にはリモートスタジオセッションアルバムなので、生々しさはスタジオ音源以上/ライブアルバム以下といった質感。しかし、これくらいの生々しさは彼らのようなバンドにはちょうどいいような気がします。そして、マックス・カヴァレラの跡を継いで加入したデリック・グリーンはすでに20年選手。マックス時代の楽曲でも原曲に負けない凄みが伝わる歌唱で、非常に好意的に受け取ることができます。

各ゲストに関してですが、この人ならでは!という音源はそう多くはないです。女性Vo3人が参加した「Hatred Aside」はかなり色が出ていて面白いし、デヴィン・タウンゼンド参加の「Mask」もそれとわかる仕上がり。マーク・ホルコムらしいエフェクティブなギターサウンドで原曲に彩りを加えた「Phantom Self」も非常にらしい完成度ですね。同じブラジル出身のラファエル・ビッテンコートとコラボした「Kaiowas」は、現在シングルギター編成のSEPULTURAには実現できないアンサンブルなので、これも聴きどころかもしれません。あとは、本家MOTÖRHEADのフィル・キャンベルをフィーチャーした「Orgasmatron」もかな。特別新鮮さはないですが、感慨深さという点で記しておこうかと思います。

この手の企画盤は「あの曲がない、この曲がない」と言い出したらキリがないので、深いこと考えず、素直に(かつ無心で)楽しむのが一番。特にSEPULTURAはオールタイムベストアルバムが1枚も存在しないので、(選曲が多少偏ってはいるものの)これを『ARISE』『CHAOS A.D.』『ROOTS』に次ぐ入門盤として捉えるのもアリかもしれませんね。

 


▼SEPULTURA『SEPULQUARTA』
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2021年7月21日 (水)

ANTHRAX『WORSHIP MUSIC』(2011)

2011年9月12日にリリースされたANTHRAXの10thアルバム。日本盤は同年9月14日発売。

2005年にスコット・イアン(G)&チャーリー・ベナンテ(Dr)にジョーイ・ベラドナ(Vo)、フランク・ベロ(B)、ダン・スピッツ(G)が加わったクラシック・ラインナップが復活しますが、2007年にダンが再脱退。ジョーイも再びバンドを離れ、ダン・ネルソンが短期間在籍したりジョン・ブッシュが復帰したりバタバタしますが、結局ジョーイが2010年にバンドに再復帰。ダンのポジションには2000年代前半に在籍したロブ・カジアーノ(のちにVOLBEATに加入)が加わることになります。

この新編成で『WE'VE COME FOR YOU ALL』(2003年)以来8年ぶりのオリジナルアルバム(新作音源としてはリメイク盤『THE GREATER OF TWO EVILS』以来7年ぶり)を制作。ANTHRAXとしては過去最長のスパンを経て届けられた新作となります。

ロブ&ジェイ・ラストン(THE DONNAS、STEEL PANTHERSTONE SOURなど)をプロデューサーに迎えた今作は、王道のクラシックANTHRAXアルバムに仕上げられています。楽曲のテイストとしては前作『WE'VE COME FOR YOU ALL』との共通点も見受けられるものの、ジョーイが歌うことで見事に80年代の空気感が復調している(ように感じられる)。実際、今でもライブで披露される機会の多い「The Devil You Know」や「Fight 'Em 'Til You Can't」あたりは2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)や3rdアルバム『AMONG THE LIVING』(1987年)に収録されていたとしても違和感がない仕上がり。と同時に、これをジョン・ブッシュが歌っていたとしたら前作や『STOMP 442』(1995年)に収録されていたとしても不思議じゃない気がする。要は初期から現在まで、時代時代で味付けに変化はあったものの、軸はまったく変わっていないという事実に気付かされるわけです。これぞボーカルマジック。

初期のような尖った部分はもはや感じられず、スラッシュメタルというよりは王道のヘヴィメタルアルバムに近い作風は、もしジョーイが90年代初頭、あのままバンドに止まっていたら5作目『PERSISTENCE OF TIME』(1990年)に続く新作としてこんなテイストのアルバムが届けられていたのかも……けど、あの頃はまだ尖った部分が残っていたから『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)みたいなアルバムが完成したのか。とすると、やっぱり2011年にこのテイストの新作というのはあながち間違ってないのかな。みんな大人になったわけですね。

この正統派ヘヴィメタルアルバムはチャート上でも大健闘し、全米12位と『SOUND OF WHITE NOISE』(最高7位)に次ぐ成績を残しています。そして、続く『FOR ALL KINGS』(2016年)では最高9位とさらに数字を上げるわけですが、完成度的にはこちらのほうが上のような気がしないでもないかな。

 


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2021年5月16日 (日)

CHARLIE BENANTE『SILVER LININGS』(2021)

ANTHRAXのドラマー、チャーリー・ベナンテが2021年5月14日に発表した初のソロアルバム。日本盤未発売。

このアルバムはCOVID-19パンデミックにより世の中のさまざまなことがストップした中でスタートさせた、「Quarantine Video Series」の総決算的作品。ANTHRAXのバンドメイトや気心知れた他バンドの仲間たちと、新旧のお気に入りナンバーをリモートセッションしていき、その中から選りすぐりの14曲がこのアルバムに収録されています。

カバー曲の内訳は以下のとおり。

M-1. City Of Blinding Lights [U2]
M-2. Chloe Dance / Crown Of Horns [MOTHER LOVE BONE]
M-3. Teardrop [MASSIVE ATTACK]
M-4. Run DMC [RUN DMC]
M-5. Rhiannon [FLEETWOOD MAC]
M-6. Yer So Bad [トム・ペティ]
M-7. Transylvannia [IRON MAIDEN]
M-8. Presto Vivace [U.K.]
M-9. Bad Guy [ビリー・アイリッシュ]
M-10. Jimmy James Jam [BEASTIE BOYS]
M-11. All The Way [KISS]
M-12. Mr. Speed [KISS]
M-13. Public Image [PUBLIC IMAGE]
M-14. Funny Vibe [LIVING COLOUR]

参加メンバーも実に多彩で、スコット・イアンやフランク・ベロといった盟友たちのほか、マーク・オセグエダ(Vo/DEATH ANGEL)、カーラ・ハーヴェイ(Vo/BUTCHER BABIES)、コリィ・テイラー(Vo/SLIPKNOTSTONE SOUR)、DMC(MC/RUN DMC)、ロブ・カジアーノ(G/VOLBEAT、ex. ANTHRAX)、デイヴ・セイボ(G/SKID ROW)、アレックス・スコルニック(G/TESTAMENT)、ジョン・5(G/ROB ZOMBIE)、ラ・ディアス(B/SUICIDAL TENDENCIES)、マーク・メンギー(B/METAL ALLEGIANCE)、ジョーダン・ルーデス(Key/DREAM THEATER)など。参加アーティストはHR/HM界隈中心ですが、選曲はチャーリーらしいセレクトで、メタルらしいメタルはIRON MAIDENくらい。もはやお約束となったKISSは2曲用意され、新しいところだとビリー・アイリッシュ「Bad Guy」もカバーされています。

いきなりU2の比較的最近の楽曲からスタートする本作は、そのサウンド的にはメタルからは少し離れたもので、チャーリー・ベナンテという鬼才の一端が表されているといったところでしょうか。もっとも、チャーリー自身は本作をソロアルバムとは捉えておらず、「非常に暗い時期に、友人の何人かと一緒に作ったお気に入りの楽曲集」程度なんだとか。なので、受け手側も「あのANTHRAXのチャーリーのソロプロジェクト」なんて構えずに、幅広い年代/幅広いジャンルの名曲セッション集くらい気軽に楽しめばいいのではないでしょうか。少なくとも僕自身、そういうふうに捉えてリピートしています。

どの曲のアレンジも組み合わせの妙が存分に楽しめるし、遊び心に満ち溢れていると思います。個人的にはメタルアレンジな「Bad Guy」がお気に入り。バンドアレンジにしてもカッコいい曲はカッコいいんだと気付かせてくれます。あとは、MASSIVE ATTACK「Teardrop」やFLEETWOOD MAC「Rhiannon」、トム・ペティ「Yer So Bad」も。女性ボーカル曲は総じて良いですね。プラス、KISSは録音状態まで含めてオリジナルに敬意を払っているのも好印象。遊ぶならここまでしないと。

なお、本作から生じた収益の一部は、音楽教育とメンタルヘルスを提唱するニール・カザル音楽財団に寄付されるとのことです。

 


▼CHARLIE BENANTE『SILVER LININGS』
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2020年11月21日 (土)

ELLEFSON『NO COVER』(2020)

2020年11月20日にリリースされたデイヴィッド・“ジュニア”・エレフソン(B/MEGADETH)のソロアルバム第2弾。

日本では今年3月に発売された初のソロアルバム『SLEEPING GIANTS』(海外では2019年7月リリース)に続く今作は、全曲豪華ゲストを迎えたカバー集。全19曲の大半はエレフソンのルーツ的楽曲になるのでしょうが、そんな中にFIGHTの「Nailed To The Gun」があったり、ビリー・アイドル「Rebel Yell」やW.A.S.P.「Love Machine」といったMEGADETHのデビューと非常に近しい時期の楽曲も含まれています。これは相方のトム・ハザート(Vo)の趣味なんでしょうかね。

さてさて。そんな本作のレコーディングメンバーですが、ベーシックはトム、エレフソン、アンディ・マルトンジェリ(G/ARTHEMIS)の3人が中心で、曲によって以下のようなゲストが参加しています(とにかく長いのでご注意を)。

※ボーカル
ジェイソン・マクマスター(DANGEROUR TOYS、WATCHTOWER)、ドロ・ペッシュ、ジェイコブ・バントン(ミック・マーズ、LYNAM、ex. STEVE RILEY'S L.A. GUNS、ex. MARS ELECTRICなど)、アンドリュー・フリーマン(LAST IN LINE)、アル・ジュールゲンセン(MINSTRY)、ブランドン・イーグレイ(CROBOT)、デイヴ・アルヴィン(WHITE TRASH)、トッド・カーンズ(THE AGE OF ELECTRIC)、マーク・スローターSLAUGHTER)、チップ・ズナフENUFF Z' NUFF

※ギター
ロン・“バンブルフット”・サール(一部ボーカルも/SONS OF APOLLOASIAなど)、ガス・G(FIREWIND)、アンディ・ジェイムズ(ex. SACRED MOTHER TONGUE)、エディ・オヘダ(ex. TWISTED SISTER)、グレッグ・ハンデヴィット(KUBLAI KHAN、ex. MEGADETH)、フランク・ハノン(TESLA)、ラス・パリッシュ(STEEL PANTHER、ex. FIGHT)、ジョン・アクイリノ(ICON)、タイソン・レズリー、デイヴ・シャープ(DEAD BY WEDNESDAY)、シャニ・キメルマン、ドリュー・フォーティアー(ZEN FROM MARS)

※ドラム
パオロ・カリディ(HOLLOW HAZE、ex. KILLING TOUCH)、デイヴ・マクレイン(SACRED REICH、ex. MACHINE HEAD)、チャック・ビーラー(ex. MEGADETH)、チャーリー・ベナンテ(ANTHRAX)、デイヴ・ロンバード(SUICIDAL TENDENCIESDEAD CROSSMR. BUNGLE、ex. SLAYER)、ジミー・デグラッソ(ex. BLACK STAR RIDERS、ex. MEGADETH、ex. Y&Tなど)、ダーク・ヴェルビューレン(MEGADETH、ex. SOILWORK)、オーパス(DEAD BY WEDNESDAY)、トロイ・ルケッタ(TESLA)、マイク・ヘラー(RAVEN、ZEN FROM MARS、ex. FEAR FACTORY

演奏はどれも原曲に忠実で、可もなく不可もなくといったところ。トム・ハザートがメインで歌う前半はダミ声中心なので、曲によっては「う〜ん……」と思うものも含まれています。が、中盤から後半……「Riff Raff」(AC/DC)、「Over The Mountain」(オジー・オズボーン)、「Sweet F.A.」(SWEET)、「Downed」(CHEAP TRICK)あたりはトム不参加でそれぞれマイク・マクマスター、アンドリュー・フリーマン、トッド・カーンズ、チップ・ズナフが歌っているので安心して楽しめるはずです。また、「Sheer Heart Attack」(QUEEN)や「Love Me Like A Reptile」(MOTÖRHEAD)にはドロ・ペッシュが、「Say What You Will」(FASTWAY)にはマーク・スローターがそれぞれ参加しており、聴けばそれとすぐにわかるボーカルで楽しませてくれます。

まあ、こういうアルバムはああだこうだ言わずに無心で楽しむのが一番なんでしょうね。強いて言うなら……ジュニアってそんなにCHEAP TRICK好きだったんだ、と(笑)。あと、DEF LEPPARDもね(アートワークの話)。なんだかんだこの人、ポップなものが好きなんでしょうかね。

 


▼ELLEFSON『NO COVER』
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2020年11月19日 (木)

ANTHRAX『ATTACK OF THE KILLER B'S』(1991)

1991年6月下旬にリリースされたANTHRAXのコンピレーションアルバム。

タイトルからも想像できるように、本作にはシングルやEPのみで聴くことができたアルバム未収録の“B面曲”をコンパイルしたもの。ジョー・ベラドナ(Vo)在籍時の音源で構成されているのですが、その“B面曲”も完全網羅というわけではなく(SEX PISTOLS「God Save The Queen」、BLACK SABBATH「Sabbath Bloody Sabbath」とか入ってないしね)、あくまでこの当時(1990年の最新作『PERSISTENCE OF TIME』リリース後)のANTHRAXの“位置”を示す内容に限定されているようです。

それにより、例えば『PERSISTENCE OF TIME』からの「Keep It In The Family」「Belly Of The Beast」のライブテイクが収録されていたり、S.O.D.「Milk (Ode To Billy)」「Chromatic Death」のジョーイ歌唱によるセルフカバー、珍ラップ曲「I'm The Man」の“moreヒップホップ”な1991年バージョン、さらにPUBLIC ENEMYの名曲「Bring The Noise」をご本家と一緒にカバーしたりと、半分は新作/新録という気合いの入れよう。でも、この雑多な感じが当時のANTHRAXらしいミクスチャー感満載で、もはやスラッシュメタルだとかハードコアだとかヒップホップだとか、そういったジャンル分けすら無用な次元へと突入しております。

だって、最高にクールなスラッシュ/ハードコアのクロスオーバーチューン「Milk (Ode To Billy)」から勢いよく始まったかと思えば、次は王道ミクスチャーメタルの「Bring The Noise」、さらに次にはヘヴィ of ヘヴィな「Keep It In The Family」ライブバージョンですから。ジャンルで限定すると定まってないと言われてしまうかもしれませんが、これが良いんですよ。

で、この3曲の次が脱力系「Startin' Up A Posse」ですからね(笑)。最高ったらありゃしない。

完全なるお遊びであり、ガス抜き系アルバムなんですが、ANTHRAXというバンドの成り立ちや影響力を考えると、実はオリジナルアルバム以上に重要な役割を果たす1枚ではないでしょうか。本作をもってジョーイ・ベラドナがバンドを離れ、代わりにARMORED SAINTのジョン・ブッシュ(Vo)が加入。そうして完成したのがグランジ/オルタナ/モダンメタルからの影響をビンビン受けまくった『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)とういうことに「なるほど」と頷けてしまうのも、この異色作でワンクッション置いているのが大きいんじゃないでしょうか。

アルバムの完成度にこだわるリスナーには敬遠されてしまいがちですが、サブスク全盛の今だからこそこういう内容はウケるような気がする……と思っているのは僕だけでしょうか。こういうお子様ランチ、嫌いじゃないです。

 


▼ANTHRAX『ATTACK OF THE KILLER B'S』
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2020年11月18日 (水)

THE DAMNED THINGS『IRONICLAST』(2010)

2010年12月14日にリリースされたTHE DAMNED THINGSの1stアルバム。日本盤は翌2011年1月12日に発売。

2009年に始動したこのバンドは、FALL OUT BOYの前身であるメタル系バンドに在籍していたジョー・トローマン(G, Vo)&アンディ・ハーレー(Dr)がANTHRAXのスコット・イアン(G)の声をかけ、コラボを始めたことがきかっけ。その際、当時ANTHRAXのメンバーだったロブ・カッジアーノ(G)も加わることになるのですが、2009年時点ではこのコラボレーションが新たなサイドプロジェクトにまで進展するとは、当のジョーも思っていなかったようです。

しかし、そこにEVERY TIME I DIEのキース・バックリー(Vo)という逸材がハマることで、このプロジェクトは一気に動き出します。キースが歌詞を書き、ジョーやロブ、スコットが曲を制作。レコーディングではロブがベースおよびエンジニアを兼務し、ニック・ラスクリネクツ(DEFTONESFOO FIGHTERSHALESTORMなど)がミックスを手がけることで完成したのが、このデビューアルバムです。

メロディ的にはFALL OUT BOYに通ずるキャッチーさ、メロディアスさが強いものの、サウンドやバンドアンサンブルはANTHRAXやEVERY TIME I DIEの影響下にあるヘヴィでガッツの強いもの。しかし、それらが合わさることで生まれる楽曲は、そのどのバンドにも似ているようで似ていないという、不思議な現象を引き起こしています。強いて言うなら、「1980年前後のHR/HMとパンクを通過したサウンドで、70年代のTHIN LIZZYDEEP PURPLEMOTÖRHEAD的なクラシックロックを表現」する……どこかFOO FIGHTERS的でもあり、THE HELLACOPTERS的でもあるという。だけどもうちょっとストーナーロック的な香りも感じられて、「独特なクセがあるのに不思議とわかりやすい」ハードロックを展開しているのです。

「We've Got A Situation Here」や「A Great Reckoning」あたりを聴くと、ある人はFOO FIGHTERSを思い浮かべるかもしれません。しかし、僕の中では「ヘヴィになったTHIN LIZZ」という認識なんですよね。もしくは「THIN LIZZYがストーナーロックに挑戦」という。いろんな化学反応の結果がこれなんでしょうけど、EVERY TIME I DIEのフロントマンがこんなにキャッチーでわかりやすいハードロックを歌っていることも、FALL OUT BOYとANTHRAXが合体するとこうなるんだってことも、全部意外であると同時に必然なのかなと。

THE HELLACOPTERSをよりメタリックにするとこうなるのかな、なんて思いながらリリース当時はリピートしていたことを、今ふと思い出しました。キースの歌声もどことなくニッケっぽいしね。THE HELLACOPTERS亡き2010年以降、どれだけこのアルバムを重宝したことか。でも、このバンドも短命で2012年には一度活動を停止していまいます。しかし、約8年後にコアメンバーはそのままに、よりパワーアップした2ndアルバム『HIGH CRIMES』(2019年)が届けられたときは、どれだけうれしかったことか。しかも、「よりモダンなのに、不思議とレイドバックしている」という進化を遂げていたんだから、たまったものじゃないですよ(笑)。

これまでストリーミング配信されていなかったのが不思議ですが、つい最近ようやく国内でも聴けるようになったので、昨年発売の『HIGH CRIMES』とあわせてチェックしてみてください。上に挙がったようなバンドにピンと来た方なら絶対に引っかかるはずなので。

 


▼THE DAMNED THINGS『IRONICLAST』
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2020年10月31日 (土)

MR. BUNGLE『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY DEMO』(2020)

2020年10月30日にリリースされたMR. BUNGLEの4thアルバム。

FAITH NO MOREやらDEAD CROSSやらいろいろ忙しいマイク・パットン先生ですが、MR. BUNGLEも約19年ぶりに再始動。この新作は『CALIFORNIA』(1999年)以来、実に21年ぶりの新作なのですが、その中身は1986年に制作したデモテープ『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY』をプロフェッショナルなアルバムとして再レコーディングしたもの。純粋な新作というわけではないのですが、中身に触れたらそんなことどうでもなるくらい、頭も気持ちもかき乱されるはずです(笑)。

今回のMR. BUNGLEですが、メンバーはマイク・パットン(Vo)、トレイ・スプルーアンス(G)、トレヴァー・ダン(B)のオリジナルメンバーにANTHRAXのスコット・イアン(G)、元SLAYER、現在はDEAD CROSSやSUICIDAL TENDENCIESで活躍中のデイヴ・ロンバード(Dr)という最強/最狂の布陣なのですよ。なにこの「ぼくのつくったさいきょうのかいじゅう」みたいなラインナップ(笑)。

で、出してる音もですね……完全にスラッシュメタルやハードコアなんですわ。そっち寄りのサウンドはDEAD CROSSでやっていたとはいえ、まさかMR. BUNGLEでもこっちに傾倒するとは。しかもスコット・イアンまで連れてきちゃうなんて、徹底しすぎでしょう。

まあとにかく、カッコいいんですわ。オープニング「Gizzly Adams」からして初期スラッシュメタルやハードコアの作品によくあった短尺のインストナンバーで、そこから「Anarchy Up Your Anus」(てかタイトルよ!笑)で一気に爆発。「Hypocrites / Habla Español O Muere」あたりまで来ると完全に感情が麻痺して、気づけば頭を振り続けている自分に気づくことでしょう……ってこれ、知ってる曲じゃん!(笑) S.O.D(STORMTROOPERS OF DEATH)の「Speark English Or Die」のスペイン語カバーを織り交ぜているんですか。なにそのアイデア? 本家のスコット・イアンにそれやらせるの? ズルイ、ズルイわぁ……(苦笑)。

で、ここで気づくわけです。本作、スラッシュメタルと謳っているけど、どちらかというと80年代のクロスオーバースラッシュ作品、とりわけS.O.Dからの影響が相当強いんじゃないかと。楽曲自体は4〜5分台当たり前で、軸になるハードコア/クロスオーバー楽曲にスラッシュメタル的複雑怪奇な展開を交えることで、オリジナリティを確立させているような、そんな印象を受けました。

カバーといえばもう1曲、C.O.C(CORROSION OF CONFORMITY)のクロスオーバースラッシュ時代の「Loss For Words」も取り上げています。この曲が発表されたのが1985年、S.O.Dのアルバムリリースも1985年。そしてMR. BUNGLEが本作のもととなるデモ『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY』を制作したのが1986年。時代だったんですね(笑)。

全11曲/約57分と比較的長尺作品ですが、好きな人なら無心で最後まで楽しめる1枚。これまでマイク・パットン周辺作品は苦手だったというメタル寄りリスナーも、本作やDEAD CROSSならとっつきやすいんじゃないでしょうか。入り口としても最適な1枚だと思いますよ。

 


▼MR. BUNGLE『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY DEMO』
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2020年6月 3日 (水)

STORMTROOPERS OF DEATH『SPEAK ENGLISH OR DIE』(1985)

1985年8月にリリースされた、S.O.D.ことSTORMTROOPERS OF DEATHの1stアルバム。日本盤は1992年3月、ANTHRAXの1stアルバム『FISTFUL OF METAL』(1984年)のオリジナル・フォーマットのリイシューとともに初リリースされました。

S.O.D.はANTHRAXのスコット・イアン(G)&チャーリー・ベナンテ(Dr)、元ANTHRAX〜NUCLEAR ASSAULTのダン・リルカ(B)、M.O.D.のビリー・ミラノ(Vo)というスラッシュメタル/ハードコアパンク界気鋭のアーティストたちによるプロジェクト。メタルにハードコアを掛け合わせることで生まれたクロスオーバー・スラッシュ(単にクロスオーバーと呼ばれることも)を武器に、本作1枚で伝説を作り上げました。

本作の魅力は全21曲で30分にも満たないショートチューンがたっぷり詰まっているところでしょうか。もともとANTHRAXの2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)から漏れた毛色の違う曲を披露する場として結成されたこともあり、曲によっては初期ANTHRAXに通ずるものもあります(「Milk」なんてまさにですよね。まあこの曲はのちに本家でセルフカバーされていますが)。

それに加えて、お遊びと言えなくもない1分前後のショートチューン、さらには数秒程度の完全なるギャグ・ナンバーなども用意されています。当時僕の周りで「世界最短の曲!」として話題になりまたが、しばらくしてその座をNAPALM DEATHに奪われることになるのでした(笑)。

終盤の畳み掛けるようなショート(ギャグ)チューンの連発は置いておいて(笑)、序盤の「Sargent D And The S.O.D.」や「Kill Yourself」「Freddy Krueger」「Milk」などの楽曲は、アレンジ次第ではANTHRAXの『FISTFUL OF METAL』に入っていても不思議じゃないですよね。これをビリー・ミラノが歌い、よりハードコアに徹することでメタルとは別モノへと昇華されたわけです。

しかし、今でこそメタルとハードコアのミクスチャーは当たり前の世界ですが、この頃はメタルとパンク/ハードコアの世界が交わることは決してあり得ませんでした。それが許されない時代に進んでこういう作品を世に送り出したことで、1990年前後にはクロスオーバーが許容されるようになるわけです。先駆者ですよね。

本作を入り口にハードコアへ足を踏み入れたメタルリスナーも少なくないのではないでしょうか。今の耳で聴くとそこまで刺激的には思えませんが(いろいろ聴いて麻痺しているんでしょうね)、ハードコア経由のメタル作品としては非常に真っ当な1枚です。歴史的価値が高い作品なので、ぜひ一度触れておくことをオススメします。

 


▼STORMTROOPERS OF DEATH『SPEAK ENGLISH OR DIE』
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2020年6月 2日 (火)

ANTHRAX『FISTFUL OF METAL』(1984)

1984年1月にリリースされたANTHRAXの記念すべき1stアルバム。日本盤は1987年10月、ジョーイ・ベラドナ(Vo)が歌う「Raise Hell」「Panic (Live)」を追加した形で『FISTFUL OF ANTHRAX』と改題して発表されたのが初出でした。そのご、1992年にはオリジナル・フォーマットに戻して再発されています。

ご存知のとおり、デビューアルバム時のメンバーはスコット・イアン(G)&チャーリー・ベナンテ(Dr)の不動メンバーのほか、ダン・スピッツ(G)、ニール・タービン(Vo)、ダン・リルカ(B)という布陣。ダン・スピッツは『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)まで在籍し、ニールとダン・リルカは本作を最後に脱退し、リルカはのちにS.O.D.でスコット&チャーリーと再合流。その後はNUCLEAR ASSAULT、BRUTAL TRUTHで活躍しています。ニールは2000年代にソロアルバムを出したりなどありましたが、基本的にはよく知りません(苦笑)。

直線的なファストチューンが大半を占めるのが本作の特徴で、スラッシュメタルというよりはパンキッシュなスピードメタルという印象が強いかな。例えば、ジョーイ加入後の2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)と比べたら、アレンジ力の差が明白かと思います。だからといって、このデビューアルバムの出来が劣るかと言われるとそんなこともなく、これはこれで良いんですよ。IRON MAIDENでいうところのデビューアルバムと3rdアルバム『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982年)くらい違うと言えば理解していただけるでしょうか。

また、ニールの歌唱スタイルも直線的でひねりのないもので、単調と言ってしまえばそれまでですが、このサウンドにはぴったり。結局、ヘヴィメタルシンガーとして安定した実力を持つジョーイの加入によって引き出された面も多かったんでしょうね。適材適所とはよく言ったものです。

そんな楽曲群の中で、異彩を放つのがアリス・クーパーのカバー「I'm Eighteen」。カバー癖はデビュー作の時点から始まっており、続くEP『ARMED AND DANGEROUS』(1985年)でもSEX PISTOLS「God Save The Queen」を取り上げていおります。あ、初期は選曲センスが普通だったんだね。

オープニングの「Deathrider」は今聴いてもカッコいいし、「Metal Thrashing Mad」や「Panic」「Anthrax」も、王道メタルな「Death From Above」あたりも捨てがたい。要するに、なんだかんだで名盤なんです(それが言いたかった)。

 


▼ANTHRAX『FISTFUL OF METAL』
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2020年5月 2日 (土)

V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』(2014)

2014年4月初頭にリリースされた、ロニー・ジェイムズ・ディオのトリビュートアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年3月下旬に発売されました。

2010年5月にがんのためこの世を去ったディオを追悼すべく、メタル界の重鎮から次世代バンドまで幅広い層が一堂に会したこのアルバム。全14曲(ボーナストラック除く)中、本作のために録音された未発表テイクは10曲と単なる埋め合わせ的アルバムでないことが伺えます。

そのラインナップもロブ・ハルフォードJUDAS PRIEST)やグレン・ヒューズ(ex. DEEP PURPLE)、SCORPIONSMOTÖRHEAD、ビフ・バイフォード(SAXON)といった大御所からMETALLICAANTHRAX、DOROなど直接的なフォロワー、そしてHALESTORM、コリィ・テイラー(SLIPKNOTSTONE SOUR)、KILLSWITCH ENGAGEなどの次世代アーティスト、さらにはヴィニー・アピス、ダグ・アルドリッジ、ジェフ・ピルソン、ルディ・サーゾ、クレイグ・ゴールディ、サイモン・ライト、スコット・ウォーレンといったDIOオールスターズまで、世代的にもかなり広いものとなっています。

本編ラストに収められたDIO「This Is Your Life」(1996年の『ANGRY MACHINES』収録曲)を除く13曲中、RAINBOWナンバーを選んだのが5組、BLACK SABBATHナンバーが3組、DIOナンバーが5組とやはりRAINBOWへの人気が集中。METALLICAに至ってはメドレー形式で4曲取り上げてますからね。ズルいわ(笑)。

サバス曲は当然すべて80年代の……と思いきや、オニ・ローガン(Vo/ex. LYNCH MOB)は『DEHUMANIZER』(1992年)からの「I」を選ぶ通ぶりを発揮。こちらはジミー・ベイン(B)やローワン・ロバートソン(G)といった旧DIO組も参加しています。この曲、こうやって聴くと思ったほどモダンなテイストが少なくて、80年代のディオ・サバスを踏襲してたんだねと気づかされます。

1曲ずつ解説していたらキリがないので割愛しますが、ANTHRAX「Neon Knights」におけるジョー・ベラドナのモノマネぶりが相変わらず最高なことと、SCORPIONS「The Temple Of The King」が完全に自分のものと化していること、METALLICAメドレーの強引ぶりなどは特筆すべきものがあるかなと。もちろん、ほかの楽曲も最高なので、原曲を知らないリスナーでも楽しめるはずです。

なお、日本盤にはSTRYPERによる「Heaven & Hell」、DIO DISCIPLES(DIO最終ラインナップのディオ抜き)による「Stand Up And Shout」を追加収録。ストリーミングなどのデジタルバージョンではHATEBREEDのフロントマン、ジャスタによる「Buried Alive」を聴くことができます。ここはぜひ、日本盤を手に入れておきたいところです。

 


▼V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

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