SHARPTOOTH『TRANSITIONAL FORMS』(2020)
2020年7月10日リリースの、SHARPTOOTHの2ndアルバム。日本盤未発売。
SHARPTOOTHは紅一点のフロント、ローレン・カーシャーン(Vo)を含むメリーランド州バルチモア出身の5人組メロディック・ハードコアバンド。2014年結成とまだ歴史は浅く、2枚のEPを経てPure Noise Recordsと新たに契約し、2017年に1stアルバム『CLEVER GIRL』を発表しています。
今回紹介する新作はそのデビューアルバムから約3年ぶりに届けられたフルアルバム。メロディック・ハードコアと分類されるものの、そのサウンドは非常にメタリックでヘヴィ。ボーカルも大半がスクリームで占められており、ラウドロックやメタルリスナーにも十分に受け入れられる要素が強い内容となっています。
楽曲はすべて2〜3分台でまとめられており、その点では前作の延長線上にあるのですが、パンク色の強かった前作と比較すると本作はよりハードコアやメタルコア的手法が色濃くなっているように感じます。ローレンのボーカルもより厚み、深みを増しており、もはやスクリームだけでは性別認識不能なほど。かつ、コンパクトに整理された楽曲群は昨今の風潮とマッチしており、かつスピード感のある楽曲とミドルヘヴィナンバー、スクリームで押し通したりメロディアスに歌い上げたりと、非常に緩急に富んだ構成になっていることから、全10曲/30分前後のトータルランニングがあっという間に感じられるはずです。
CD主流の時代に育った世代には、最近の「アルバムなのに10数曲で30分前後」という作りに違和感を覚えるかもしれませんが、そもそもロック黎明期はそれくらいのトータルランニングが当たり前でしたし、そういう意味では原点回帰したと言えなくもないでしょう。また、最近の海外ヒットチャートに目を向けると、大半の楽曲が2〜3分とコンパクトなものばかり。ストリーミング主流となった今、ヒットチャートではいかに短い時間で決着をつけるかが重要視されているのは明らかです。ロックやメタル、ハードコアにも同じ傾向が感じられるとまでは断言しませんが、そう考えるとこの手のポスト・ハードコアの新作がそういう方向に傾いているのも興味深い話です。
おっと、話が脇道に逸れましたね。とにかく本作、ローレン嬢のボーカルが素敵すぎて何度もリピートしたくなります(MVで時折見せるチャーミングさも素晴らしいですよね)。スクリームで押し通したかと思えば、「153」ではメロウかつパワフルな歌を響かせ(後半のブレイクダウンも最高)、ラストの「Nevertheless (She Persisted)」での浮遊感含め個性発揮しまくりではないでしょうか。「Evolution」では前作のツアーで共闘したANTI-FLAGのジャスティン・セインもゲスト参加。この曲もなかなかのカッコよさで、ついついリピートしたくなります。
個人的にはパンクというよりもメタル/ラウドの枠で捉えているこのバンド。ぜひ一度生で観てみたいものです。そう感じさせてくれた本作は、個人的にかなり高ポイントの1枚だと断言させてください。
▼SHARPTOOTH『TRANSITIONAL FORMS』
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