ARCADIA『SO RED THE ROSE』(1985)
1985年秋にリリースされたARCADIA唯一のオリジナルアルバム。「Election Day」(全米6位/全英7位)、「Goodbye Is Forever」(全米33位)、「The Promise」(全英37位)、「The Flame」(全英58位)というシングルヒットも手伝って、アルバム自体も全米23位(ミリオン突破)、全英30位という好成績を残しています。
ARCADIAとは、当時活動休止中だったDURAN DURANのサイモン・ル・ボン(Vo)、ニック・ローズ(Key)、ロジャー・テイラー(Dr)が結成したサイドプロジェクト。先にアンディ・テイラー(G)、ジョン・テイラー(B)がTHE POWER STATIONを結成したことを受け、1年遅れでこちらを始動させたわけです。
この面子に加え、アルバムのプロデューサーがDURAN DURANの『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』(1983年)などを手がけたアレックス・サドキンという布陣。さらに、アルバムにはゲストプレイヤーとして土屋昌巳(G/ex. 一風堂。後期JAPANのツアーにも参加していましたしね、この流れは理解できます)、カルロス・アロマー(G/デヴィッド・ボウイなど)、デヴィッド・ギルモア(G/PINK FLOYD)、ハービー・ハンコック(Key)、アンディー・マッケイ(Sax/ROXY MUSIC)、スティーヴ・ジョーダン(Dr)、スティング(Cho)、グレイス・ジョーンズ(Cho)などが参加。もうこれだけで、アルバムのテイストがイメージできるかと思います。
で、その中身はDURAN DURANからブラックミュージック寄りのニューウェイブテイストは残しつつパンクロックの要素を排除し、シンセポップ色を強めたもの。DURAN DURANの耽美な世界観を強調させたそのサウンドは、『RIO』(1982年)や『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』の延長線上にもあり、その後DURAN DURANが進むかもしれなかった“もうひとつの可能性”と捉えることができます。
というわけで、当然のように「Hungry Like The Wolf」や「The Reflex」といったテキストの楽曲は皆無。ミドルテンポ中心の作風なので、終始安心して聴いていられるかと思います。それもあって、THE POWER STATIONにあった刺激的な要素はゼロで、そこに不満をこぼす人も少なくないのでは。しかし、当時中学生だった自分は不思議とこの「どことなくエロを感じさせる、大人の雰囲気」に惹かれたんですよね。
サイモンの歌とニックのソングライティング&シンセが強く、ロジャーのカラーはほとんど感じらないかもしれません(苦笑)。また、曲によってはグレイス・ジョーンズ(「Election Day」)やスティング(「The Promise」)のコーラスが際立っており、刺激とまでは言わないけど良いフックにはなっているのではないでしょうか。
このアルバムでの世界観にジョン・テイラーが持ち帰ったファンクロックのテイストが加わったことで、DURAN DURANの『NOTORIOUS』(1986年)に続く……と考えると、DURAN DURANというバンドの史実上絶対に欠かせない1枚だと断言できるはずです。
▼ARCADIA『SO RED THE ROSE』
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