カテゴリー「Arch Enemy」の19件の記事

2022年8月12日 (金)

ARCH ENEMY『DECEIVERS』(2022)

2022年8月12日にリリースされたARCH ENEMYの11thアルバム。

新録曲などを含むカバー曲をまとめたコンピ盤『COVERED IN BLOOD』(2019年)を間に挟んでいたとはいえ、オリジナルアルバムとしては前作『WILL TO POWER』(2017年)からほぼ5年ぶり。メンバーがそれぞれ異なる国に住んでいることから、コロナ禍によるロックダウンが大きく影響し長らくレコーディング作業を行えなかったことも大きいのでしょう(本当はメンバー5人、顔を合わせてレコーディングを行うつもりも、最終的には一部ギタートラックはリモートで録音)。

昨年秋から「Deceiver, Deceiver」を筆頭に、約10ヶ月をかけて本作からの楽曲が小出しにデジタルリリースされてきましたが、満を辞してといいますか、5年も待たされた甲斐があったと言いたくなるくらい、非常に良質なメロディックデスメタルアルバムだと思います。大半の楽曲をマイケル・アモット(G)とダニエル・アーランドソン(Dr)が手がけているというのも、本作の大きな特徴でしょう。ジェフ・ルーミス(G)がアメリカで生活していることから今作でもソングライティング面で手腕を発揮することができず、もっとも身近にいる2人が膝を突き合わせて曲作りを進めた結果なのか、多くのリスナーがこのバンドに求める要素がすべて揃った「痒いところに手が届く」1枚に仕上がっています。

アルバムはアリッサ・ホワイト=グラズ(Vo)によるメロウなクリーンボーカルを随所にフィーチャーするという、前作からの流れをよい形で進化させた「Handshake With Hell」からスタート。ARCH ENEMYらしい王道感とドラマチックさが凝縮されたこの曲は、本作を象徴する1曲と言っても過言ではないでしょう。そこから「Deceiver, Deceive」や「In The Eye Of The Storm」といったタフなナンバー、「The Watcher」「Poisoned Arrow」というメランコリックな楽曲がずらりと並ぶ構成は圧倒的の一言。特に後者は、作曲クレジットに元メンバーにしてマイケルの実弟クリストファー・アモットの名前を見つけることができる。このへんもバンドが本作で何を狙ったのかが透けて見えてくる気がします。

この流れは「Sunset Over The Empire」から始まるアルバム後半にも引き継がれ、マイケル&クリストファー作曲によるキラーチューン「House Of Mirrors」、悲痛の叫びにも似た鳴きメロを感じることができる「Spreading Black Wings」で本作何度目かのクライマックスを迎えます。そこから100秒程度の短尺インスト「Mourning Star」を経て「One Last Time」へと突入すると、バンドが放つ熱量にもラストスパートがかかり始める。そこから叙情的なラストナンバー「Exiled From Earth」でエモーショナルさが最高潮に達し、最高のエンディングを迎えるわけです。

全11曲/約45分という程よいボリューム感の中にぎっしりと詰め込まれた“ARCH ENEMY節”の数々といい、一切の隙を与えない構成といい、結成25周年を経てもなお守りに入らず自分たちらしさを追求し続ける姿勢といい、本作は文句なしの傑作ではないでしょうか。少なくとも、アリッサ加入後の作品においては頂点と言える1枚です。

なお、日本盤にはお約束のカバーソングを追加収録。今回は80年代に活躍したオランダのメタルバンドPICTUREの「Diamond Dreamer」と、ロブ・ハルフォードが90年代に結成したFIGHTの「Into The Pit」の2曲で、前者ではアリッサがオールクリーンボーカルで歌うという暴挙(笑)に及んでいます。これ、完全に普通の正統派ヘヴィメタルで最高です。もちろん、フルデスボイスで表現された「Into The Pit」のアグレッションも文句なし。どちらもボーナストラックにしておくには勿体ないレベルなので、ここはサブスクで満足することなくぜひ日本盤CDを購入してもらいたいところです。

 


▼ARCH ENEMY『DECEIVERS』
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2022年8月 2日 (火)

ARCH ENEMY『ANTHEMS OF REBELLION』(2003)

2003年7月23日にリリースされたARCH ENEMYの5thアルバム。日本盤は同年7月30日発売。

前作『WAGES OF SIN』(2001年)から加入したアンジェラ・ゴソウ(Vo)を含む布陣での2作目。当時のメンバーはアンジェラのほか、マイケル(G)&クリストファー(G)のアモット兄弟、シャーリー・ダンジェロ(B)、ダニエル・アーランドソン(Dr)という黄金期の布陣。

「Silent Wars」を筆頭に、前作で築き上げたドラマチックなメロディックデスメタルスタイルはそのままに、スピードよりも重さを重視することでミドルテンポの楽曲に力が入り始めたのはこの頃からでしょうか。リードシングル「We Will Rise」や「Dead Eyes See No Future」あたりはまさにその真骨頂で、どちらも歌う/泣くギターが耳に残る良曲です。特に後者は、そのドラマチックな構成/アレンジ含め第2期ARCH ENEMYのひとつの型が完成に近づきあることを感じさせてくれます。

そうした変化も影響し、初期からの武器であったスピード感を求めるリスナーには当時あまり好意的に受け入れられなかった印象があります。1曲1曲を取り上げると(多少の実験的要素こそあれど)その完成度は非常に高いものばかりなのですが、いざアルバムとして10数曲並べられると、前編通して聴くにはちょっと厳しい……そういう声が多かったような。

確かに、それ以前/それ以降の作品と比べると全体的にミドルテンポの楽曲がベースになっていることもあり、若干の違和感を覚えるかもしれません。「We Will Rise」「Dead Eyes See No Future」ときて、その次が「Instinct」ですもんね。悪くないんだけど、今聴くと「もうちょっと工夫できかもしれないよな?」とも思ったり(だからこそ、「Instinct」のあとに「Leader Of The Rats」が来ると、ちょっとだけホッとするんですよね)。

後半の幕開けを飾る美しいメロディのアコギインスト「Marching On A Dead End Read」から、2分少々のファストチューン「Despicable Heroes」へと続く構成には“らしさ”を覚えるものの、その後も再びミドルテンポ中心。不思議なメロディを持つ「Dehumanization」あたりはフックとしては面白いけど、「Anthem」「Saints And Sinners」というドラマチックな組曲もなぜか効果的に作用していない印象を受ける。なんででしょうね?

これ、もう1曲くらいアップテンポの楽曲を入れて、ミドル曲を1曲削ったらまた印象が違ったんじゃないかな。ドラマチックな要素は十分なほど含まれているんだから、あとはアルバムをいかにスムーズに聴かせるか。そこに勝負を賭けてほしかったなあ。ミドルヘヴィ曲自体は悪くないんだけど、ここまで続くと差別化や印象に残すことが難しくなると思うんですよ。

だからなのかこのアルバムって、極端な話シングル2曲の印象しかないんですよ。数歩譲っても、冒頭の「Tear Down The Walls」「Silent Wars」とラストの「Anthem」「Saints And Sinners」が増える程度。やりたいことは理解できるんだけど、それがうまく機能し切れていない/完全には消化できていない感が否めない、そんな「あと一歩」なアルバムです。

 


▼ARCH ENEMY『ANTHEMS OF REBELLION』
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2022年3月 4日 (金)

ANNIHILATOR『METAL II』(2022)

2022年2月18日にリリースされたANNIHILATORのリレコーディングアルバム。日本盤は同年2月23日発売。

本作は2007年に発表された12thアルバム『METAL』収録曲を、ゲスト参加パートはそのままに、それ以外のパートを新たにレコーディングし直した企画アルバム。2020年に亡くなった2人のアックスマン……エディ・ヴァン・ヘイレン(VAN HALEN)とアレキシ・ライホ(BODOM AFTER MIDNIGHT、ex. CHILDREN OF BODOM)への追悼の意味も込められており、15年前の『METAL』には収録されていなかったVAN HALENのカバー「Romeo Delight」が新たに追加されています。

収録曲は『METAL』とまったく一緒というわけではなく、オリジナル盤でジェフ・ウォーターズ(G, Vo)が唯一ボーカルを担当した「Operation Annihilation」のみ外され、代わりに先のVAN HALENカバーとオリジナル盤の日本盤ボーナストラックだったEXCITERのカバー「Heavy Metal Maniac」が正規収録されることに。さらに、曲順も新たなものとなり、オリジナル盤で本編ラストを飾った「Chasing The Hig」が今回のリテイク盤のオープナーに差し替えられています。

リレコーディングに参加したのはジェフのほか、元SLAYERで現在はSUICIDAL TENDENCIESなどで活躍するデイヴ・ロンバード(Dr)と元INTO ETERNITYのステュー・ブロック(Vo)の2名。オリジナル盤には当時のシンガーだったデイヴ・パデン(Vo, G)と現DREAM THEATERのマイク・マンジーニ(Dr)が参加しているので、そのタッチの違いを楽しむのもありではないでしょうか。特に、ドラムに関してはマンジーニらしさ/ロンバードらしさがともに感じられるので(特に再録バージョンでのロンバードらしさは随所ににじみ出ており、聴きながら愛興奮でした)、両バージョンを比較しながら「この曲ならどちらのバージョンが好き」とセレクトするのも楽しいかもしれません。

そもそも本作、各曲に豪華ゲストが最低1名は参加していることでおなじみの1枚。先に触れたアレキシ以外にもウィリー・アドラー(G/LAMB OB GOD)、リップス(G/ANVIL)、ダンコ・ジョーンズ(Vo)、アンジェラ・ゴソウ(Vo/ex. ARCH ENEMY)、イェスパー・ストロムブラード(G/THE HALO EFFECT、ex. IN FLAMES)、ジェフ・ルーミス(G/ARCH ENEMY、ex. NEVERMORE)、アンダース・ビョーラー(G/ex. AT THE GATES、ex. THE HAUNTED)、コリィ・ビューリュー(G/TRIVIUM)など錚々たる面々がバラエティ豊かな楽曲群に華を添えておりましたが、これらは今回のリテイク盤でもそのまま耳にすることができます。アンジェラは15年前はまだARCH ENEMYに在籍していたんだなとか、イェスパーもIN FLAMESから離れる前だったんだとか、いろいろ月日の流れを感じずにはいられませんね。

もともとソリッドな楽曲/作品集ではあったものの、より鋭角的にスキルアップしたジェフ・ウォーターズのギターと、ここ数作はリズムマシンを使った正確無比なリズムワークにこだわっていたところをロンバードの躍動感溢れるドラムに交代したことで、音から受ける印象も多少なりとも変化。15年前からのバージョンアップという点と、近作の質感からの変化という2点を存分に味わえるのではないでしょうか。

本作で初登場となる「Romeo Delight」は比較的原曲に忠実なカバーとなっておりますが、原曲がラフなぶんカッチリ作り込まれた音のANNIHILATORバージョンはちょっと別モノ感を感じずにはいられません。ただ、ジェフ自身のギタープレイ/サウンドメイクはエディのそれを踏襲したもので、その一点に関しては強い愛を感じずにはいられません。本当に好きなんだね、微笑ましいよ。

あくまで企画盤ということで、今後もステュー・ブロックとデイヴ・ロンバードが制作やツアーに参加するわけではないと思いますが、これはこれで良いのではないでしょうかオリジナルアルバムとしては最新作『BALLISTIC, SADISTIC』(2020年)の完成度が非常に高かっただけに、これに続く完全新作にも期待したいところです。

 


▼ANNIHILATOR『METAL II』
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2022年1月10日 (月)

祝ご成人(2001年4月〜2002年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さんおめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画も、今年で8回目。しかし、この春から成年年齢が18歳になることから、今回で最後かなと思っております(さすがに18年前って区切り悪いですしね)。この企画は「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に貴重な機会でもあり、同時に「どれを20枚に含めるか?」というセレクトにおいても非常に頭を悩ます良いタイミングとなっていたので、成人式抜きで続けてもいいんですけど……まあ、そのへんは1年後に考えます(笑)。

改めて趣旨説明を。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2001年4月〜2002年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップしました。

どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちら、2018年度の新成人編はこちら、2019年度の新成人編はこちら、2020年度の新成人編はこちらです)

以下、サブスクを通して名盤20選をお楽しみください。

 

ANDREW W.K.『I GET WET』(2001年11月発売)(Spotify)(レビュー

 

ARCH ENEMY『WAGES OF SIN』(日本:2001年4月発売、海外:2002年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

ASH『FREE ALL ANGELS』(2001年4月発売)(Spotify)(レビュー

 

BASEMENT JAXX『ROOTY』(2001年6月発売)(Spotify

 

BJORK『VESPERTINE』(2001年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE CHEMICAL BROTHERS『COME WITH US』(2002年1月発売)(Spotify)(レビュー

 

CONVERGE『JANE DOE』(2001年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

FINCH『WHAT IT IS TO BURN』(2002年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

INCUBUS『MORNING VIEW』(2001年10月発売)(Spotify

 

JIMMY EAT WORLD『BLEED AMERICAN』(2001年7月発売)(Spotify

 

KYLIE MINOGUE『FEVER』(2001年10月発売)(Spotify

 

MUSE『ORIGIN OF SYMMETRY』(2001年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

RADIOHEAD『AMNESIAC』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

RYAN ADAMS『GOLD』(2001年9月発売)(Spotify

 

SLIPKNOT『IOWA』(2001年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE STROKES『IS THIS IT』(2001年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

SUM 41『ALL KILLER NO FILLER』(2001年5月発売)(Spotify

 

SYSTEM OF A DOWN『TOXICITY』(2001年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

TOOL『LATERALUS』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

WEEZER『WEEZER (GREEN ALBUM)』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

残念ながらセレクトから漏れた作品も多く。以下に主だった作品をピックアップしておきました。

AIR『10000 HZ LEGEND』
ALICIA KEYS『SONGS IN A MINOR』
...AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD『SOURCE TAGS & CODES』
AUTECHRE『CONFIELD』
THE BLACK CROWES『LIONS』
BLACK LABEL SOCIETY『1919 ETERNAL』(レビュー
BLIND GUARDIAN『A NIGHT AT THE OPERA』
BLINK-182『TAKE OFF YOUR PANTS AND JACKET』
BRITNEY SPEARS『BRITNEY』
THE CHARLATANS『WONDERLAND』
!!!『!!!』
THE CULT『BEYOND GOOD AND EVIL』(レビュー
DEPECHE MODE『EXCITER』(レビュー
DREAM THEATER『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』
EMPEROR『PROMETHEUS: THE DISCIPLINE OF FIRE & DEMISE』
FANTOMAS『THE DIRECTOR'S CUT』
FEAR FACTORY『DIGIMORTAL』
FEEDER『ECHO PACK』
GARBAGE『BEAUTIFULGARBAGE』
HATEBREED『PERSEVERANCE』
HOOBASTANK『HOOBASTANK』
THE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACY『A NEW MORNING, CHANGING WEATHER』(レビュー
JAMIROQUAI『A FUNK ODYSSEY』
JOEY RAMONE『DON'T WORRY ABOUT ME』
KREATOR『VIOLENT REVOLUTION』
LENNY KRAVITZ『LENNY』
MACHINE HEAD『SUPERCHARGER』
MEGADETH『THE WORLD NEEDS A HERO』(レビュー
MERCURY REV『ALL IS DREAM』
MICHAEL JACKSON『INVINCBLE』
MICK JAGGER『GODDESS IN THE DOORWAY』(レビュー
MISSY ELLIOTT『MISS E... SO ADDICTIVE』
MOGWAI『ROCK ACTION』(レビュー
MOUSE ON MARS『IDIOLOGY』
MR. BIG『ACTUAL SIZE』(レビュー
N*E*R*D『IN SEARCH OF...』
NEW ORDER『GET READY』
NICKELBACK『SILVER SIDE UP』
OCEAN COLOUR SCENE『MECHANICAL WONDER』
OZZY OSBOURNE『DOWN TO EARTH』(レビュー
PUDDLE OF MUDD『COME CLEAN』
R.E.M.『REVEAL』
RAMMSTEIN『MUTTER』
ROB ZOMBIE『THE SINISTER URGE』
SLAYER『GOD HATES US ALL』(レビュー
SOILWORK『NATURAL BORN CHAOS』
SPIRITUALIZED『LET IT COME DOWN』
STAIND『BREAK THE CYCLE』
STATIC-X『MACHINE』
STEREOPHONICS『JUST ENOUGH EDUCATION TO PERFORM』
STONE TEMPLE PILOTS『SHANGRI-LA DEE DA』
SUGAR RAY『SUGAR RAY』
SUPER FURRY ANIMALS『RINGS AROUND THE WORLD』
TRAVIS『THE INVISIBLE BAND』
THE WHITE STRIPES『WHITE BLOOD CELLS』
YEAH YEAH YEAHS『YEAH YEAH YEAHS』

……多い(笑)。セレクトしまくったらこうなった。というか、2001〜2002年ってすでにこのサイトの前身「とみぃの宮殿」のアクセスがそこそこ増え始めた時期で(理由:ハロプロ)、更新意欲もかなり強くて新譜にも積極的に触れていたタイミングなんですよね。当然あの頃はサブスクなんてなかったので(海外にはNapsterがありましたけどね)、CDを闇雲に購入しまくっていたのですが(しかも、当時はライターになる前で、東京住まいではなかったこともあり、月に数度、週末にCD漁りったりクラブ遊びしたりライブ行ったりするために上京していたのでした)、今回選んだ20枚は完全に今の自分の趣味と、客観的に見て名盤として通用する作品を意識しています。

2001年というと、9月11日のアメリカ同時多発テロが忘れられない出来事でしたよね。当時は追悼イベントもいくつか開催されましたが、こうした事実が作品に反映されたのは2002年以降の作品だったので、今回ピックアップした作品の中には911について歌った曲は含まれていないんじゃないかな。

あと、ジョーイ・ラモーン(4月15日)やジョン・リー・フッカー(6月21日)、ジョージ・ハリスン(11月29日)が亡くなったのも2001年のことでした。

ちなみに、当時の日本の音楽シーンには以下のような出来事がありました。

■三波春夫、死去(2001年4月)
■中澤裕子がモーニング娘。を卒業(2001年4月)
■Coccoが音楽活動休止(2001年4月)
■野猿、撤収(2001年5月)
■三木道三、「Lifetime Respect」でオリコン1位獲得(2001年7月)
■サザンオールスターズから大森隆志(G)が脱退(2001年8月)
■EE JUMPのユウキ、活動自粛(2001年8月)
■モーニング娘。に5期生加入(2001年8月)
■SPEED、阪神淡路大震災復興イベントで一夜限りの再結成(2001年10月)
■access、7年ぶりに活動再開(2001年12月)
■第43回日本レコード大賞、浜崎あゆみ「Dearest」が大賞受賞。最優秀新人賞はw-inds.が受賞(2001年12月)
■SIAM SHADE解散(2002年3月)
■エイベックスがコピーコントロールCD(CCCD)発売(2002年3月)
■DREAMS COME TRUEから西川隆宏が脱退(2002年3月)

なお、2001年の年間アルバムランキング1位は宇多田ヒカル『Distance』、2位が浜崎あゆみ『A BEST』という時代。懐かしいですね……。

最後に、今回選出した20作品をまとめたプレイリストも用意しましたので、掲載しておきます。

 

2022年1月 7日 (金)

ARCH ENEMY『WAGES OF SIN』(2001)

1月2日から数日更新をお休みしましたが、本日から再び連日更新を再開します。改めまして、本年もよろしくお願いいたします。

さて、2022年最初に取り上げる作品は、2001年4月25日に日本先行リリースされたARCH ENEMYの4thアルバム。海外では1年遅れの2002年3月18日に発売されました。

3rdアルバム『BURNING BRIDGES』(1999年)で初期ARCH ENEMYのスタイルを確立させるも、翌2000年にはフロントマンのヨハン・リーヴァ(Vo)が力量不足を理由に解雇に。バンドは新たなシンガー加入を発表しないまま次作の制作に突入します。そして、2001年に入ると突如ニューアルバムからの楽曲が公開され、新シンガーが誰なのかに注目が寄せられます。しばらくすると、新たなアーティスト写真が公開されるのですが、そこには女性シンガーであるアンジェラ・ゴソウの姿が。「これ、女性が歌ってたのかよ!!!!!」と多くのメタルファンが驚愕することになります。

今でこそ女性メタルシンガー、特にメロデスやメタルコアを歌うフロントウーマンは珍しくありませんが、20年前に彼女が登場したときはそのビジュアルと歌声との落差(という表現が正しいのかわかりませんが)に僕自身も腰を抜かしたことをよく覚えています。だって、どこからどう聴いても女性の片鱗が皆無でしたからね。

こうして海外より先に日本のファンに向けて届けられた本作。バンドは新たなシンガーとともに、ヨハン・リーヴァ時代のスタイルをより正統派ヘイメタル側に寄せる形で、メロディックデスメタルがさらにひとつ進化させることに成功するわけです。だって、ドラマチックな「Enemy Within」からスタートするアルバム冒頭や、小気味良いテンポを持つキャッチーな「Burning Angel」、過去3作のメロウなスタイルをより強化させた「Ravenous」、のちに自身のレーベル名にも用いられるグルーヴィーなミドルチューン「Savage Messiah」など、とにかく一寸の隙もない楽曲がずらりと並ぶのですから。悪いわけがないですよ。

ヨハンのボーカルスタイルはデスメタルというよりはもっとハードコア寄りな印象を受け、それが当時のARCH ENEMYのオリジナリティにつながっていたわけですが、このアルバムで聴くことができるアンジェラのボーカルはよりデスメタルサイドに振り切ったもので、スクリームというよりはグロウルという表現が最適なもの。その迫力は性別を超えた凄みがあるものの、突出した個性という点ではもう一歩というところ(それは作品を重ねることで解消されていくわけですが)。この時点では、楽曲の完成度をさらに強化させることで第2期ARCH ENEMYとしての個性を固めていこうとしていたんじゃないでしょうか。各曲の作り込み、主にマイケル&クリストファーのアモット兄弟によるギターのメロディラインや、シャーリー・ダンジェロ(B)&ダニエル・アーランドソン(Dr)による鉄壁かつ変幻自在なアンサンブルからもそういった傾向が伝わってきます。

アンジェラ時代のARCH ENEMYはその後も名曲の数々を、アルバムに最低でも1つは用意し続けましたが、アルバムトータルでの完成度という点においては実は本作が最高ではないか?という気がしています。ここで枠/雛形をほぼ完成させ、あとはブラッシュアップさせていく作業の連続だった……というのは言い過ぎでしょうか。

 


▼ARCH ENEMY『WAGES OF SIN』
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2021年12月26日 (日)

CARCASS『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』(1991)

1991年10月30日にリリースされたCARCASSの3rdアルバム。日本盤は『屍体愛好癖』というクセの強い邦題で、1992年4月21日発売。

ジェフ・ウォーカー(Vo, B)、ビル・スティアー(G, Vo)、ケン・ウォーエン(Dr)というデビュー時からのトリオ編成に、現ARCH ENEMYのマイケル・アモット(G)が加入(1990年)し、ツインギター編成になったCARCASS最初のアルバム。このアルバムで彼らのことを知ったというリスナーも少なくないかもしれません(筆者も本作の日本盤リリースを機に、初めてCARCASSに触れたクチです)。

サウンド的には初期のグラインドコア〜ゴアグラインドから、次作『HEARTWORK』(1993年)で本格的開花するメロディックデスメタル路線への過渡期にある内容。その独特の雰囲気・曲構成は最初こそ好き嫌いが分かれそうですが、一度ハマってしまうとクセになる不思議な魅力が備わっています。

1曲の中で何度も繰り返される強引なテンポチェンジには、やや唐突さを感じずにはいられませんが、実はその突拍子のなさこそがこの時期のCARCASSの魅力。ある意味ではプログレッシヴとも受け取ることができ、このへんの複雑なアレンジはNWOBHM期のUKメタルバンドと共通するテイストを感じずにはいられません。

しかも、バンドの土台となるケン・ウォーエンのドラミングのクセが強すぎて、リズムの独特な“揺れ”や“スウィング感”が唯一無二のグルーヴを作り上げている。もちろんこれは前向きに捉えた表現ですが、ネガティブな表現をすれば……いや、やめておきましょう(苦笑)。結果として、ケンのドラミングを見事に生かしたからこそ、こうした独自性の強いアンサンブルが生まれたわけで、それこそが90年代前半のCARCASSにとって大きな武器になったわけですから。

この時期はまだビルも要所要所でボーカルを披露していましたが、次作以降はギタリストに専念。音楽性のみならず、バンドスタイルとしても本作は過渡期にある1枚でした。だけど、マイケルが加入したことで迎えた転換期は、のちの彼らにとって非常に大きなチャンスになるわけですから。世の中何が起こるかわかりません。

「Corporal Jigsore Quandary」や「Incarnated Solvent Abuse」など現在まで演奏され続けている名曲を多く含む本作ですが、曲間にナレーションを挟むことで若干テンションが落ちるという声もあります。確かに、あのSEなしで曲が次々に続いていく構成のほうが緊張感が途切れることなく楽しめるかもしれません。だけど、個人的にはあのSEあってこそ、彼らならではの不穏な空気を終始纏うことができているのではないか、とポジティブに解釈しています。特に、本作の収録曲はそれまでの彼らから考えると1曲の尺が非常に長くなっており、6〜7分台の楽曲が過半数を占めます。そういった楽曲を飽きさせずにリスナーを惹きつけるという点でも、あのナレーション/SEは必要だったと信じています。

聴きやすさ/入門編としては次作『HEARTWORK』が最適だと思いますが、CARCASSの真髄を知るという点においてはまず今作を聴くべきではないでしょうか。そこから『HEARTWORK』以降の作品に進むもよし、逆に勇気を持って初期のグロ路線に一歩踏み出してみるもよし(笑)。

 


▼CARCASS『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』
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2021年8月 2日 (月)

DEE SNIDER『FOR THE LOVE OF METAL』(2018)

2018年7月27日にリリースされたディー・スナイダーの4thアルバム。

TWISTED SISTERとしての活動に終止符を打った2016年に発表された前作『WE ARE THE ONES』から1年9ヶ月という短いスパンで届けられた新作。リリース元を新たにNapalm Recordsへと移し、HATEBREEDのジェイミー・ジャスタ(Vo)のプロデュース&バックアップのもと制作された1枚となっています。

レコーディングにはジェイミーのソロプロジェクトJASTAやKINGDOM OF SORROWの一員でもあるチャーリー・ベルモア(G, B)、ニッキー・ベルモア(Dr)が全面参加。この布陣は続く5作目『LEAVE A SCAR』(2021年)でも継続しているので、よほど本作で得られた手応えが大きなものだったのでしょう。

実際、本作で聴くことができるパワフル&エネルギッシュな正統派メタルサウンドは想像以上の凄みが備わったもので、TWISTED SISTERでのグラマラスなイメージで軽く見ていると痛い目を見ると思います。僕自身、最新作『LEAVE A SCAR』でまさにそういう事態に陥り、過去作をさかのぼって聴き始めたくらいですから。

ハードコア度は新作『LEAVE A SCAR』に譲りますが、キャッチーさは今作のほうが上かなと。わかりやすいメロディと、それを崩すことなくストレートに伝えるディーのボーカル、無駄を一切削ぎ落とした演奏&アレンジ、すべてが最高のバランスの中で成立している。楽曲事態どれもハズレがないし、ヘヴィメタルという音楽に多少なりとも興味がある方なら絶対に気に入るはずだと確信しております。

アルバム終盤には元KILLSWITCH ENGAGE、現LIGHT THE TORCHのハワード・ジョーンズ(Vo)をフィーチャーした「The Hardest Way」、ARCH ENEMYの紅一点アリッサ・ホワイト=グラズをゲストに迎えた「Dead Hearts (Love Thy Enemy)」も用意。前者はハワードのねっとりとした濃厚ボーカルとディーの歌声との絡みが印象的ですし、後者はアリッサの女性的な側面を反映させたメタルバラードを思う存分味わうことができる。そこからの流れで、タイトルトラック「For The Love Of Metal」という象徴的な楽曲へとなだれ込み終焉を迎える構成、最高です。

僕自身、ずっと初期TWISTED SISTERのイメージを持ち続け、ディーのソロ作を敬遠してきた身なので、今も食わず嫌いしている方の気持ち、よくわかります。けど、騙されたと思って本作、あるいは最新作を手に取ってみてください。その偏見、見事に崩されますから。

 


▼DEE SNIDER『FOR THE LOVE OF METAL』
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2020年10月11日 (日)

AMARANTHE『MANIFEST』(2020)

2020年10月2日にリリースされたAMARANTHEの6thアルバム。日本盤は海外に2日先駆け、同年9月30日に発売されています。

スウェーデン出身のパワーメタルバンドDYNAZTYからフロントマンのニルス・モーリン(Vo)が加入し、新体制で初の作品『HELIX』を2018年10月に発表したAMARANTHE。その後、2019年3月に『DOWNLOAD JAPAN 2019』での来日こそ実現するものの、単独ツアーは叶いませんでした。

コンスタントに作品を発表し続ける彼らですが、本作からNuclear Blast Recordsへと移籍。新体制で2作目となる今作も2年というスパンで届けられましたが、内容はこれまでの延長線上にありながらも、若干初期のスタイルに立ち返ったかのようなテイストに。エレクトロ色の強調とモダンヘヴィネス的な色合いがもっとも強く、良くも悪くもアメリカナイズされた前作と比較すると、バンド本来の持ち味であるヨーロッパテイストが復調し、近作に対して若干に違和感を持っていた旧来のリスナーにはうれしい内容に仕上がっているのではないでしょうか。

エリーゼ・リード(Vo)&ニルスのクリーンボーカルとヘンリク・エングルンド・ヴィルヘルムソン(Vo)のグロウル&ラップ調ボーカルも相変わらずバランスが良いし、新参者のニルスも2作目にして早くも安定感が増したような印象を受けます。

楽曲のコンパクトさも相変わらずで、全12曲(ボーナストラック除く)中11曲が3分台と非常に今の時代にフィットしたものばかり。ミドルテンポを軸にしながらも、アップチューンからミドルヘヴィ、バラードスタイルまで起伏をつけながら進行していくトータルな流れもさすがの一言。個人的にはニルス大活躍の「Crystalline」(APOCALYPTICAやDORAGONLANDのメンバーがゲスト参加)や、BATTLE BEASTのノーラ・ロウヒモ(Vo)とエリーゼの艶やかな歌声が楽しめる「Strong」がお気に入りです。

アルバム本編のラストを飾る「Do Or Die」のMVバージョン(海外デラックス盤にはボーナストラックで追加収録)には、ARCH ENEMYのジェフ・ルーミス(G)と元ARCH ENEMYのアンジェラ・ゴソウ(Vo)がゲスト参加。こちらは今年2月に先行リリースされおり、日本でも各種ストリーミングサービスで聴くことができます。アンジェラ嬢の久しぶりの咆哮、たまらんです。

AMARANTHEビギナーにも入っていきやすい入門編的な内容にもなっていますし、従来のリスナーにも安心して楽しめる1枚。視点を変えれば新機軸はゼロかもしれませんが、次の進化に向けての安定期と捉えれば文句なしのないようではないでしょうか。前作での変化も気に入っていますが、これはこれで文句のつけようがない1枚だと思います。

 


▼AMARANTHE『MANIFEST』
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2019年11月13日 (水)

MICHAEL SWEET『TEN』(2019)

2019年10月上旬にリリースされた、マイケル・スウィートSTRYPER)の8thソロアルバム。日本盤は1ヶ月遅れて、同年11月上旬に発売されています。

タイトルは10作目を表すってことで『TEN』なのかな。ジョージ・リンチとのSWEET & LYNCH名義の2作を含めると10作目ですしね。にしてもこの人、2013年から毎年何かしらアルバムを発表しているんですよね。2013年はSTRYPERで2作(リメイクアルバム『SECOND COMING』とオリジナルアルバム『NO MORE HELL TO PAY』)、2014年はソロアルバム『I'M NOT YOR SUICIDE』、2015年はSWEET & LYNCHで『ONLY TO RISE』とSTRYPERで『FALLEN』、2016年はソロ名義の『ONE SIDED WAR』、2017年がSWEET & LYNCHでの2作目『UNIFIED』、2018年はSTRYPERの最新作『GOD DAMN EVIL』、そして今年はこのソロアルバム。老いてなお盛ん。

さて、今回のソロアルバムですが、全12曲中11曲にフィーチャリングアーティストとしてゲストプレイヤーを迎えて制作しています。その内訳もジェフ・ルーミズ(G / ARCH ENEMY)、Marzi Montazeri(G / EXHORDER、ex. PHILIP H. ANSELMO & THE ILLEGALS)、ガスG.(G / FIREWIND)、ジョエル・ホークストラ(G / WHITESNAKE、ex. NIGHT RANGER)、トレイシー・ガンズ(G / L.A. GUNS)、リック・ワード(G / FOZZY)、トッド・ラ・トゥーレ(Vo / QUEENSRYCHE)、ウィル・ハント(Dr / EVANESCENCE)などと、とにかく豪華なメンツ。思えば前作『ONE SIDED WAR』にもウィル・ハントやジョエル・ホークストラは参加していたので、おなじみのメンツって感じですかね。

本作、元々は10曲入りの構成が基本で、「With You Till The End」と「Son Of Man」の2曲がボーナストラック扱いだったので、本来は10曲入りだから『TEN』って意味だったのかな。今となってはどうでもいい話ですが。

気になる中身ですが、2曲を除いてすべてマイケル・スウィート単独で書き下ろしたオリジナル曲。残り2曲もマイケルとジョエル・ホークストラとの共作なので、まあ全曲マイケルのオリジナルと言い切っても間違いではないでしょう。なので、従来のソロ作品の延長線上にある“メタリックで、かつポップで親しみやすいHR/HM路線”をキープしています。ファストナンバーやミドルヘヴィ、バラードとバランスよく配分されており、どの楽曲もツボを心得た作風です。が、最近のSTRYPERよりもシンプルさが際立つ楽曲が多い印象も。そこで好き嫌い(いや、嫌いはないな。好みから外れるくらいか)が分かれるかも。

ゲストプレイヤーに関しては……正直、“らしい”ものもあるし、別にクレジットがなければ気づかないといったものもある。セールスのための打ち出し方としては正しいんでしょうけど、個人的にはおまけ程度かな。とにかく曲が良くて、マイケルが力強く歌ってくれたらそれでよし。

そういった意味では、マイケルが関わる作品はどれも好きという人には間違いなく引っかかる1枚だし、STRYPERのように豪華なコーラスを重視するメロハー好きにはちょっと違うかな?と感じるんでしょうか。それはそれとして、純粋によく作り込まれたメロディアスハードロック作品のひとつであることには違いありません。うん、今回も力作でした。

 


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2019年10月11日 (金)

BABYMETAL『METAL GALAXY』(2019)

2019年10月11日にリリースされたBABYMETALの3rdアルバム。

前作『METAL RESISTANCE』(2016年)から3年半ぶりの新作は、まさに“待望の”、“満を持して”という言葉がふさわしい1枚。というのも、BABYMETALにとってのこの3年半は決してすべてが順風満帆とは言い切れるものではなかったからです。

『METAL RESISTANCE』は世界的な成功を収め、同作を携えたワールドツアーではRED HOT CHILI PEPPERSMETALLICAGUNS N' ROSESJUDAS PRIESTなどのツアーに参加。ここ日本でも主要大型ロックフェスに多数出演し、2016年9月には初の東京ドーム2DAYS公演も実現するなど、その人気はピークに達しようとしていました。しかし、その後の2018年5月からスタートした新たなワールドツアーには、YUIMETALの姿は見当たりませんでした。残されたSU-METALとMOAMETALは複数のダンサーを迎え、“DARK SIDE”と位置づけられた実験的なスタイルでツアーを敢行。同年秋にはYUIMETAL脱退が正式に発表され、2019年6月のライブ『BABYMETAL AWAKENS -THE SUN ALSO RISES-』にて今回の新作リリースと9月からのワールドツアー開催をアナウンスし、新章突入を告げたのでした。

このような激動の期間を経て届けられ『METAL GALAXY』。海外盤は全14曲入り、日本盤は2枚のCDに各8曲/計16曲が収められた大作で、“メタルの銀河を旅する”をテーマに、過去2作を上回るほどのバラエティ豊かさを誇る傑作に仕上がっています。

とはいえ、正直なことを言いますと……昨年デジタル配信された「Distortion」「Starlight」の2曲を聴いた時点では、来たるニューアルバムの方向性に対して確たる自信を持つことはできませんでした。なぜなら、この2曲はあくまで“DARK SIDE”と呼ばれる当時のスタイルに準じた楽曲という認識があったから。それは今年5月に配信リリースされた「Elevator Girl」もしかり。もちろん、従来のBABYMETALらしさも感じ取ることができたし、今の時代性を反映させたコンパクトで純粋にカッコいい楽曲だと思っていた。だけど、この3曲だけでは「うん、今度も間違いない!」と安心できるだけの“何か”が足りなかったんです。

そんな自分のモヤモヤを解消させてくれたのが、今年6月のライブ『BABYMETAL AWAKENS -THE SUN ALSO RISES-』にあわせてリリースされた新曲「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」。ラガメタルなんて例えがぴったりなこの曲は、明らかにライブでの盛り上がりを想定して制作されたものでしょう。メタルのクールさとパーティチューンならではの能天使さが同列で並び、実際ライブでは観客がタオルを振り回すほどの熱狂ぶりをみせるキラーチューンに、早くも昇華されていたのですから。

また、この曲がライブ初披露された『BABYMETAL AWAKENS -THE SUN ALSO RISES-』では今回のニューアルバムにも収録されている「Shanti Shanti Shanti」も先行披露されました。当時、筆者は「Rolling Stone Japan」ウェブサイトでのライブレポートにてこの曲を「インドや中東を思わせるメロディ&フレージングが耳に残るダンサブルな楽曲。ザクザクと刻まれるギターリフと力強いビート、そこに重なる妖艶なメロディ&ダンスはBABYMETALにとって新境地といえるもので、ライブにおける大きなフックになったことは間違いない。こちらも今後のライブで重要な役割を果たす1曲になるはずだ」と評しています。

そう、「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」同様に「Shanti Shanti Shanti」も“足りない何か”を埋めるパズルのピースだったのだ……アルバム『METAL GALAXY』を通して聴いたことで、改めてそう確信できました。

「Arkadia」のように王道中の王道と呼べるスピードメタルや、BABYMETALのパブリックイメージをそのまま表現したようなダンスメタル「Night Night Burn!」もあるし、SU-METALのシンガーとしての成長を存分に味わえるパワーバラード「Shine」、エレクトロ色の強い「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott Lepage)」、暴力的なエレクトロビートがたまらない狂気性みなぎる「BxMxC」、SEPULTURASOULFLYにも通ずるトライバルでパーカッシヴなインスト曲「IN THE NAME OF」など変化球も満載。これだけ多岐にわたるジャンルを包括しながらも、BABYMETALらしさを損なうことなく統一感の強い作品集としてまとまっているのは、制作スタッフの努力の賜物でもあると同時に、SU-METALとMOAMETALのフィルターを通すことでその“らしさ”がより純度の高いものへと昇華されていると捉えることもできる。そのフィルターがあるからこそ、メタルなのにここまでポップで親しみやすい作品になり得るという大切な事実に改めて気づかせてくれた本作の功績は、非常に大きなものがあります。

また、このアルバムには新体制での新たな船出を祝うように、豪華ゲストも多数参加。「DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)」ではB'zのTak Matsumoto(G)が彼らしいエモーショナルなギターソロを奏で、「Oh! MAJINAI (feat. Joakim Brodén)」では昨年秋のライブでも共演したSABATONのヨアキム・ブローデン(Vo)が勇ましさとコミカルさが入り混じったボーカルを響かせる。また、「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott Lepage)」ではPOLYPHIAのティモシー・ヘンソン(G)&スコット・ルペイジ(G)がテクニカルなギタープレイを披露し、「Distortion (feat. Alissa White-Gluz)」ではARCH ENEMYのアリッサ・ホワイト=グラズ(Vo)が強烈なスクリームを轟かせ、「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」にはタイの人気ラッパーF.HEROがフィーチャーされている。ゲストプレイヤー/シンガーが各楽曲に華を添えることで、アルバム自体の彩りがより鮮やかさを増したことは間違いありません。

BABYMETALとしての純度を高めると同時に、音楽性の幅をさらに拡散させていく。そういった意味でも、本作は新章という括りにふさわしい内容に仕上がっており、グループを一段高い場所へと導く大きな武器になるはずです。

 


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