2018年6月 3日 (日)

ARCTIC MONKEYS『TRANQUILITY BASE HOTEL & CASINO』(2018)

ずいぶん変わった……というよりも、ガラッと変わってしまったな。だけど、嫌いじゃない。むしろ好みかもしれない。それが本作を初めて聴いたときの第一印象でした。

初めてアメリカでもミリオンヒット作となった前作『AM』(2013年)から約4年半ぶりに発表された、ARCTIC MONKEYS通算6枚目のスタジオアルバム。本国イギリスではデビュー以来6作連続1位を記録、アメリカでも前作に続いてトップ10入り(8位)を果たすなど好意的に受け入れられたようです。

2ndアルバム『FAVOURITE WORST NIGHTMARE』(2007年)からすべての作品を手がけるジェームズ・フォード(SIMIAN MOBILE DISCO)がプロデュースに携わった本作は、まさかここまで実験的に、かつ斬新に変化を遂げるとは思ってもみなかったほどに新たなスタイルを築き上げています。

とはいえ、変化の予兆は3rdアルバム『HUMBUG』(2009年)あたりから少しずつ見え隠れしていました。とはいえ、当時はまだその変化がメンバーの中でも明確化されておらず、できることから挑戦していく。そんな印象でした。事実、1stアルバム『WHATEVER PEOPLE SAY I AM, THAT'S WHAT I'M NOT』(2006年)の頃と比較すれば、その後の『SUCK IT AND SEE』(2011年)や『AM』は“変貌を遂げた”と呼ぶにふさわしい内容だったと思います。が、それはあくまで1stアルバムというベースがあって、そこから進化していったものというイメージがあるから。それと比べたら、今回の変貌はむしろ“変身”と言えるものかもしれません。

全体的に穏やかでじっくり聴かせる楽曲ばかりで構成された本作は、実験作とはいえアバンギャルドさは皆無。むしろ、ラウンジミュージックや映画のサウンドトラックのような不思議な世界観が展開されていると表現したくなるもの。そこで歌われているメロディなどは確実にARCTIC MONKEYSのものもなのに、どこか別の世界で鳴らされているような感覚すらある。ある種、アレックス・ターナー(Vo, G)のソロアルバム的要素が強く、彼の別プロジェクトであるTHE LAST SHADOW PUPPETSにも通ずるものがある。思えば、そのバンドのメンバー4人のうち2人(アレックスとジェームズ・フォード)がいるんだもん、そうなったとしても不思議じゃない。

だけど、これをARCTIC MONKEYSでやろうとした、やることを受け入れたほかのメンバーがいるわけで、これは紛れもなくARCTIC MONKEYSの新作なわけです。そこを受け入れるか、受け入れないかで印象も変わるでしょうし、もしかしたら“ARCTIC MONKEYSの新作”と意識しないで聴けばもっとフラットに楽しめる内容かもしれない。

けど、僕はこの挑戦を素直に受け入れたいし、ロックバンドとして“次の10年”をどうサバイヴしていくか、腹を括った上でのこの内容だと思うので、そこを諸手を挙げて支持したい。問題作ではあるけれど、力作なのも間違いない。目下お気に入りの1枚です。



▼ARCTIC MONKEYS『TRANQUILITY BASE HOTEL & CASINO』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 06 03 12:00 午前 [2018年の作品, Arctic Monkeys] | 固定リンク

2018年5月 6日 (日)

ARCTIC MONKEYS『WHATEVER PEOPLE SAY I AM, THAT'S WHAT I'M NOT』(2006)

“ポストパンク・リバイバル”や“ガレージロック・リバイバル”の流れから登場したと言われるARCTIC MONKEYSの、2006年1月に発表されたデビューアルバム。本国イギリスで初登場1位を獲得しただけでなく、170万枚を超える大ヒットを記録し、アメリカでも24位まで上昇する出世作となりました。

前年秋に発表されたデビューシングル「I Bet You Look Good on the Dancefloor」が全英1位を記録した時点で、本作のヒットも約束されたようなものでしたが、いやはや、予想以上の出来でした。

「I Bet You Look Good on the Dancefloor」で感じられた勢いは本作にも満ち溢れており、冒頭を飾る「The View From The Afternoon」での性急なリズムはまさにあの頃流行していたポストパンク・リバイバルにも通ずるものがあります。そこから「I Bet You Look Good on the Dancefloor」へと続く構成、デビューアルバムとしては完璧なオープニングだと思います。

かと思えば、踊らせシンガロングさせるミディアムテンポの「Fake Tales Of San Francisco」があったり、グルーヴィーだけど前のめりな「Dancing Shoes」、ひたすら突っ走る「You Probably Couldn't See For The Lights But You Were Staring Straight At Me」「Still Take You Home」と、アルバム前半はあっという間で過ぎ去っていきます。

スローテンポで落ち着いた雰囲気の「Riot Van」を挟んで後半に突入すると、ダンサブルなミドルチューン「Red Light Indicateds Doors Are Secured」、若干クールダウンしたポップな「Mardy Bum」、独特のグルーヴ感で引っ張る「Perhaps Vampires In A Bit Strong But...」、序盤のアコースティック調から途中でテンポアップするパンキッシュな「When The Sun Goes Down」など個性的な楽曲がずらりと並び、ラストはメロウなミドルナンバー「A Certain Romance」で締めくくります。

若さと勢いが前面に打ち出された、まさにこの瞬間でないと作り得なかったデビューアルバム。このバンドは次作以降、アルバムごとに変化を遂げていきますが、軸にあるメロディアスさや個性的なソングライティングのセンスはすでにこの時点で完成されていたと言っても過言ではないでしょう。

本作リリース時点で平均年齢20歳以下。大半の楽曲が2〜3分台で、13曲通して聴いても40分強。こういうストレートなデビューアルバムを聴くと、「いやあ、若いっていいね。ステキ!」と素直に思ってしまうものですね。



▼ARCTIC MONKEYS『WHATEVER PEOPLE SAY I AM, THAT'S WHAT I'M NOT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 06 12:00 午前 [2006年の作品, Arctic Monkeys] | 固定リンク

2005年10月26日 (水)

ARCTIC MONKEYS『I BET YOU LOOK GOOD ON THE DANCEFLOOR』(2005)

 『UK期待の新人』とか『第二の○○(例:OASIS、THE SMITHS、STONE ROSES等)現る』といった謳い文句は、それこそ長年ロックを聴いていれば毎年お目にかかるキャッチフレーズかと思います。それを信じて、「俺世代のOASISだ!」とか崇拝してしまう若い子も沢山いるでしょう。それは決して間違ってないし、視点を変えればそういったバンドがOASIS超えをしたり、あるいは独自の個性を確立して更なるビッグネームへと成長していくことだってあるので、一概に『フェイク』とか『ポーズ』とか『一発屋』なんて言葉では片付けたくないのですが‥‥

 にしても、アルバム1枚で消えてしまう、いや、下手したらシングル数枚で忘れ去られてしまうバンドの多いこと、多いこと。昨今の(いや、最近じゃだいぶ落ち着いたけど)ニューウェーブ・リバイバルだって、昨年から今年にかけて登場したバンドの幾つが来年も残っていられるか。そしてセカンドアルバムをリリースすることができるのか‥‥仮に出来たとして、1stと同等の、あるいはそれ以上の成功を収めることができるのか。微妙ですよね?

 そんな中、またここにもビッグネーム予備軍が登場しましたよ‥‥既に巷で話題になっている、ARCTIC MONKEYSというバンド。イギリスの4人組だそうで、既にリリースされている7インチは即完売。先頃このシングルがリリースされ、本国では初登場1位を記録。それよりも前に発表された日本公演のチケットは即日完売。急遽、同日の昼に追加公演が決まるという異例振り。確かに、ちょっと尋常じゃない空気は伝わってきてますよね。

 早速俺もこのシングル「I BET YOU LOOK GOOD ON THE DANCEFLOOR」を聴いてみました。THE LIBERTINESにも通ずる疾走感のある表題曲は、確かにインパクトあるし、サビのキャッチーさなんて思わずガッツポーズを取っちゃうくらいに気持ちいい。決してこれ1曲で「次世代新ヒーロー誕生!」とか大騒ぎする気はないけど、大成する可能性は十分に感じられる。続く2曲目 "Bigger Boys And Stolen Sweethearts" も小気味良いリズムを持つ佳曲。シングルの帯には『21世紀版の "I Know It's Over" (THE SMITHS)』みたいな煽り文句が書いてあったけど‥‥言い過ぎとは思うけど、決して全否定はできない何か‥‥片鱗みたいなものは十分に感じられるんだよなぁ、悔しいけど。最後に収録されているモッズ風のインストナンバー "Chun Li's Spinning Bird Kick" もかっこいい。むしろ個人的にはこの曲に一番ググッときたんだけど。

 とにかくこの手のバンドは、アルバムが出るまでは過剰な期待はしないことにしてるんだけど‥‥珍しく、ライヴを観てみたいと思わせてくれた数少ない新人バンドですわ、これ。今年に入ってからだと‥‥全然タイプが違うんだけど、TOWERS OF LONDON以来じゃねぇかな?(結局あっちはサマソニで観損ねたけど、来月アルバム出るんでまもなくショーケースとかで来日するでしょう)アルバムは恐らく来年の前半早いうちでしょうから、それまでにまずライヴだな‥‥きっと今後1年間、何度も来日するんじゃないかな‥‥サマソニ開催までの間に。ここ最近の流れ(THE LIBERTINESもそうだし、KASABIANやTHE ORDINARY BOYS、BLOC PARTY辺りね)を見てると、何となくそういう気がしないでもないけど‥‥まぁその前に本国であれだけ成功しちゃったから、難しいかもしれないね。

 ま、1回この目で確認する価値はあるかと思うわ。とりあえずその前に、このシングル聴いて、その耳で判断してみてよ。



▼ARCTIC MONKEYS「I BET YOU LOOK GOOD ON THE DANCEFLOOR」(amazon:日本盤UK盤

投稿: 2005 10 26 09:59 午後 [2005年の作品, Arctic Monkeys] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック