ARMORED SAINT『SYMBOL OF SALVATION』(1991)
1991年5月14日にリリースされたARMORED SAINTの4thアルバム。日本盤は同年6月25日発売。
3rdアルバム『RAISING FEAR』(1987年)発表後にデビューから在籍したChrysalis Recordsとの契約が終了し、メジャーデビュー前に所属したインディーズのMetal Blade Recordsに復帰。それと同じくして、バンド創設メンバーのひとりデイヴ・プリチャード(G)が白血病のため1990年2月28日に亡くなってしまいます。
バンドはデイヴ追悼として新作制作に取り掛かります。その際、1985年に脱退したフィル・サンドヴァル(G)が復帰。ジョン・ブッシュ(Vo)、ジョーイ・ヴェラ(B)、ジェフ・ダンカン(G)、フィル&ゴンゾ・サンドヴァル(Dr)という最終ラインナップが完成します。
アルバムのプロデュースを担当したのは、ALICE IN CHAINSやJANE'S ADDICTIONなどオルタナ系メタルを手掛けてきたデイヴ・ジャーデン。収録された全13曲中8曲にデイヴ・プリチャードのクレジットがあり、うち6曲はデイヴが単独で書いた楽曲となります。また、ジョーイ・ヴェラが作曲した「Tainted Past」の最初のギターソロにはデイヴのものが用いられており、文字通りの追悼盤として仕上げられています。
オープニングを飾る「Reign Of Fire」を筆頭に、問答無用の男臭いパワーメタルが展開されていく。かと思えば、「Another Day」のようなパワーバラードも存在し、ジョン・ブッシュのボーカルも冴えわたっている。スピードで押すようなタイプは皆無で、それよりはグルーヴの強さで持っていく作風といいましょうか。1991年という時代にこのスタイルを選んだのは、まさに“呼ばれた”としか言いようがない。
無意識のうちにそうなったのかはわかりませんが、どの曲からも悲壮感よりも戦い抜こうとする強い意志が伝わってくる。かつ派手さは皆無で、玄人好みする楽曲や演奏が随所に散りばめられている。なもんだから、60分近くもある長尺の作品ながらも最後まで飽きずに楽しむことができるのです。
また、デイヴ・ジャーデンという人選も功を奏し、通常のパワーメタルとは異なるドライ感に満ちたサウンドプロダクションも、楽曲の持つダークな方向性にマッチしている。このへんは直近に彼がプロデュースしたALICE IN CHAINSのデビュー作『FACELIST』(1990年)と通ずるものがあるのではないでしょうか。
彼らのアルバムの中では、個人的に最高傑作だと思う1枚だと断言したいです。こんなに素晴らしい作品を完成させたにも関わらず、プロモーションが中途半端でヒットにつながらず。リリース翌年にジョンがANTHRAXに引き抜かれたことで、ARMORED SAINTはその歴史に一度幕を下ろすことになります。
そういえば、ジョンのANTHRAX加入後最初のアルバム『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)がデイヴ・ジャーデンのプロデュース作というのも興味深いポイントではないでしょうか。このあたりからも、ANTHRAXがジョンを迎えて何をしたかったのかが窺えるような気がしてなりません。
なお、本作は2003年にデモ音源やインタビュー音源などを加えたデラックス盤が発売。2021年にはリリース30周年を記念した完全再現ライブCD+DVD『SYMBOL OF SALVATION LIVE』も発表されています。
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