ART OF FIGHTING『RUNAWAYS』(2007)
オーストラリアはメルボルン出身の男女4人組バンドによる、約2年半ぶり・通算3作目のアルバム。彼らについてはこのアルバムで初めて知ったんだけど、聴いて一発で気に入りました。いわゆるポストロックの範疇に入るバンドなんだろうけど、まぁ早い話がRADIOHEAD「OK COMPUTER」以降というか。もっとも、それも前作までのサウンドを称しての話ですけどね。
本作ではかなり「歌」に重点を置いた、かなりムーディな作風となっています。例えば……ちょっとジャンルは異なるかと思いますが、COLDPLAYやTRAVISといったバンドにも通ずる普遍性がある楽曲ばかりなんですよ。キレイなメロディがあって、それをバックアップするかのようにさまざまな楽器が鳴る。けど、それらのサウンドは決して歌を邪魔していない。邪魔しない程度に自己主張している、という印象を強く受けます。とにかく心地よい。これに尽きます。
実は彼ら、3月に日本でこのアルバムをリリースした直後、5月上旬に来日公演を行っています。といっても、東京でたった2公演のみなんですが。幸運にも自分は5月3日に下北沢ERAで行われたライブを観ることができました。そこでも感じたんですが、とにかく不思議な世界観を持ったバンドだなぁと。ポストロックというと楽器の音が機械的に鳴ってるイメージがあるんですが、彼らの場合はもっと柔らかくてあたたかい、ゆらゆらしたサウンドを鳴らしているんですよね。なんていうか……'90年代以降のR.E.M.にも通ずる色もあるのかなぁ。ちょっとこれまでに大物の名前ばかり例えに挙げてますが、そういったアーティストを好んで聴いている人にも十分にアピールする要素がたくさんあると思いますよ。
個人的にはこのアルバム、今年の10枚の中に確実に入る1枚です。まったく派手さはないし、ロックならではの躍動感といったものとは無縁のバンドですが、どういうわけか気付いたら聴いてるアルバムなんですよね。人によっては過去2作のほうがいい!というかもしれませんが(僕は全部好きなんですよね)、とりあえずダマされたと思って聴いてみてください。