AVENGED SEVENFOLD『NIGHTMARE』(2010)
2010年7月発売の、AVENGED SEVENFOLD通算5作目のオリジナルアルバム。
セルフタイトルの前作『AVENGED SEVENFOLD』(2007年)が全米4位と、前々作『CITY OF EVIL』(2005年)から大幅に順位を上げ、また同作を携えたワールドツアーも大成功。『AVENGED SEVENFOLD』を携えた2008年1月には初のジャパンツアーも実現(過去2回はサマソニでの来日)。僕自身もこのタイミングにはシニスター・ゲイツ(G)&ザッキー・ヴェンジェンス(G)へのインタビューを行うなどして、彼らに対する知識を増やしつつ好感度も上げていきました。この取材中、日本酒で泥酔したザ・レヴ(Dr)が乱入するハプニングもあり、途中から笑いの絶えないインタビューになったことをよく覚えています。
結局、ザ・レヴのいるA7Xを観ることができたのは、このときの来日公演と同年10月にBULLET FOR MY VALENTINEと行った対バンライブの2回のみ。2009年12月末、彼は不慮の事故により帰らない人になってしまいました。
同年11月からスタートしていた次作のレコーディングは翌2010年2月に、ザ・レヴのフェイバリット・ドラマーであるマイク・ポートノイ(当時DREAM THEATER)を加えた形で再開。ザ・レヴはデモ音源数曲でしか叩いていなかったので、音源として残されているドラムトラックはすべてマイクのものですが、コーラスやスクリームなどは数曲に生かされることに。こうして完成した5thアルバム『NIGHTMARE』は、ついに全米1位を獲得するのでした。
6分以上にもおよぶオープニングトラック「Nightmare」からしてA7X節全開で、ミドルテンポながらもグイグイ引っ張る感の強い「Welcome To The Family」、緩急に富んだアレンジのファストチューン「Danger Line」、哀愁味の帯びたM.シャドウズ(Vo)の歌声がジンとくるパワーバラード「Buried Alive」と、冒頭4曲を聴くだけで本作が名作であることが伺えるはず。以降もゴリゴリのメタルナンバーからドラマチックなアレンジのバラードまで、幅広いタイプの楽曲が並び、ラストは10分以上にわたる超大作「Save Me」で締めくくり。全体を通して感じるのは、過去4作に散りばめられた“A7Xらしさ”が煮詰める形で凝縮された、初期(というのは幅が長いですが)A7Xの集大成と呼ぶにふさわしい内容であるということ。従来のファンも納得させつつ、ビギナーに対しても入門編的な役割をしっかり果たしてくれる、そんな問答無用の1枚なのです。
とにかくバランス感に優れた内容で、80年代の王道ヘヴィメタルの要素も、90年代のグランジやモダンヘヴィネスを通過したサウンドも、2000年代のメタルコア/モダンメタルに括られるテイストもすべて含みつつ、懐かしくもあり新しくもあるという、非常に2010年らしい作風。ルーツに対するリスペクトもしっかり示しつつ、自身がこれからのシーンを牽引していくという気概も伝わる。そういう音を、ザ・レヴという仲間を失いながらもマイク・ポートノイという名手とともに作り上げられたのは、ある意味では偶然の産物だったのかもしれませんが、きっと最初から決まっていた必然だったんでしょうね。だって、ここまでのキャリアを考えればこういうアルバムが完成するのは、誰にだって想像できたはずですから。
「21世紀のGUNS N' ROSES」を目指したA7Xは、このアルバムで本家とは違った形でトップにまで登りつめ、新たなスタンダードとなった。本作はそれを象徴するような記念碑的な1枚です。
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