AZUSA『LOOP OF YESTERDAYS』(2020)
2020年4月10日リリースの、AZUSA通算2作目のオリジナルアルバム。日本盤未発売。
元THE DILLINGER ESCAPE PLANのリアム・ウィルソン(B)、ノルウェーのテクニカルデスメタルバンドEXTOLのクリスター・エスペヴォル(G)&デイヴィッド・フスヴィック(Dr)というカオティックなエクストリームバンドのメンバーに、ベルギーの実験的ポップ・デュオSEA + AIRのフロントウーマン、エレーニ・ザフィリアドウ(Vo, Piano)を加えた4人編成のAZUSA。2018年11月リリースのデビューアルバム『HEAVY YORK』に続く本作では、前作で見せた独創的なスタイルをより推し進めたサウンドを楽しむことができます。
楽器隊が関わってきたバンドにも通ずる複雑怪奇なエクスペリメンタル・ロック/メタルに、クリーントーンとグロウルが交互に飛び出すエレーニの浮遊感が強いボーカルが乗ることで、ほかの何者にも似ていない唯一無二のエクストリーム・ミュージックを構築。デビュー作の時点では良い意味での不自然さやぎこちなさが、聴き手にも居心地の悪さを与えてくれて、逆にそれが中毒性を増す結果につながっていたと思います。しかし、本作ではその不自然さが薄れ、ナチュラルな不協和音(笑)や異物感が当たり前のように感じられます。これは筆者含め聴き手側に耐性がついたということなんでしょうかね。
また、全体的にストレートなメタル(特にスラッシュメタル)度が高まっている印象を受けたのも、本作の特徴かな。特にM-3「Detach」で聴くことができる演奏やメロディアスなギターソロは、我々が知るヘヴィメタルそのもの。って、それもそのはず。この曲でギターソロをプレイしているのはTESTAMENTのアレックス・スコルニック(G)なのですから。アレックスもジャズなどを専攻する、メタル界では異端側のソロイストですが、なるほどこういうバンドに入ってプレイすると意外にもオーソドックスに聴こえてくるから不思議です。
個人的には、その「Detach」のあとに「Seven Demons Mary」や「Monument」のような楽曲が続くところに、このバンドの強みや独創性を感じずにはいられません。演奏はともかく、結局はエレーニという逸材を見つけた時点でこのバンドは勝ちだったんだなと。前作は年間ベストに入れるほどのお気に入りでしたが、今作も長期にわたり何度もリピートする1枚になりそうです。
ただ、この形に関しては2作目にしてすでにやり尽くした感もあり、本作で早くもひとつの完成形を見せたと言っていいかもしれません。なので、ここからどういう進化を見せていくのかですよね。実験的なスタイルが求められる(バンド側もそこを強く意識している)存在だけに、どんどん新しい形を提示していかないと継続はキツいのかなと。そういう意味でも、バンドとしての次の一手が早くも気になるところです。
▼AZUSA『LOOP OF YESTERDAYS』
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