BAD ENGLISH『BACKLASH』(1991)
1991年8月にリリースされた、BAD ENGLISHの2ndアルバムにしてラストアルバム。日本盤は1ヶ月遅れて同年9月に発売されました。
パワーバラード「When I See You Smile」が全米1位を獲得し、続く「Price Of Love」も全米5位まで上昇。これを受けてアルバム『BAD ENGLISH』(1989年)も100万枚を超えるセールスを記録するなど、さすがJOURNEY+THE BABYS(というかジョン・ウェイトのソロアーティストとしてのネームバリューか)なスーパーバンド、いきなり素晴らしい結果を残します。
で、続く2ndアルバムは60分強というボリューミーな前作から一転、全10曲で48分という非常に聴きやすい“アルバム本来の形”に収まっています。
プロデューサーは前作のリッチー・ズィートから“産業ロック王”ロン・ネヴィソン(HEART、SURVIVOR、DAMN YANKEESなど)に交代。若干硬めだった質感が、本作ではもう少しナチュラル、だけど高品質というバランスに生まれ変わっています。
また、前作には先の「When I See You Smile」のように外部ライターが手がけメンバーは一切作曲に関わっていない楽曲も複数含まれていましたが、本作はダイアン・ウォーレンやラス・バラッド、マーク・スピロなど著名なソングライターが参加しつつも、それらがすべてジョン・ウェイト(Vo)やジョナサン・ケイン(Key)、ニール・ショーン(G)らとの共作となっています。このへんは前作での経験によるものなのか、はたまたロン・ネヴィソンによるものなのかはわかりませんが、バンド感が強まるという点においては好印象かもしれません。
とはいえ本作、意外と地味なんですよ。前作も決して派手ではなかったけど、さらに輪をかけて地味になっている印象を受けます。まあ視点を変えれば、それは“こなれてきた”という証でもあるのかなと。別の言い方をすれば、しっかり大人のメンバーたちが余裕を持って“遊んでいる”ということなのかもしれません。
でもね、その地味さ加減が嫌いになれないのも、また本作の魅力といいますか。アコースティックギターを前面に打ち出した「Time Stood Still」や、AOR調の「Savege Blue」など、ミディアムテンポのバラードナンバーが相変わらず素晴らしいのです。まあ、10曲という限られた曲数のうち、ミディアム/スロウナンバーが4曲というのはちょっとどうかと思いますけど、“大人のハードロック”という解釈をすれば全然ありなのかもしれません。
ただ、残念なのが突出した1曲がないこと。同じパワーバラードにしても、本作の「The Time Alone With You」は「When I See You Smile」同様にダイアン・ウォーレンが関わっているのに、突き抜けていない。あと一歩なんですよね……そういう楽曲が少なくないことは、実は好調なようで裏では陰りが見え始めていた当時の状況が反映されているようで、怖くもあります。だって、本作リリースから数ヶ月後には解散しているわけですから……。
ジョン・ウェイトの歌声は相変わらず素晴らしいし、ニール・ショーンも的確なギタープレイで聴き手を楽しませてくれる。ジョナサン・ケインは相変わらずシンセ前に出過ぎだし、ディーン・カストロノヴォのドラムも馬鹿デカイ。あとひとりは……まあいいや。戦争後の不景気だったり、HR/HMブームの終焉だったりいろいろ要因はあったとはいえ、バンドって終わるときはあっけないんだなと思わされた、苦い1枚です。
▼BAD ENGLISH『BACKLASH』
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