BADLANDS『VOODOO HIGHWAY』(1991)
1991年6月発売の、BADLANDS通算2作目のスタジオアルバム。デビュー作『BADLANDS』(1989年)発表後にエリック・シンガー(Dr)が脱退(のちにアリス・クーパー・バンド→KISSへ)。代わりにジェフ・マーティンが加入します。ジェフはRACE-Xではシンガーでしたが、もともとはドラマーとして音楽活動をしていたとのこと。当時はそういった事実を知らなかったので、このパート変更に驚いたものです。
さて、ジェイク・E・リー(G)を中心に、BLACK SABBATHなどで活躍したレイ・ギラン(Vo)を迎えて結成されたこのバンド。デビューアルバムではジェイクのブルース趣味と産業ハードロック色が絶妙なバランスでミックスされた良作でしたが(このへんはプロデューサーのポール・オニールの手腕によるものが大きいのかなと)、本作では産業ハードロック色が後退し、生々しいブルースロック/ハードロックが展開されています。
レイの圧倒的なボーカルはそのままに、彼の力量を見事に活かしたブルースフィーリングに溢れた楽曲群は、前作の路線を好んでいたリスナーには少し地味に感じるかもしれません。が、その完成度はなかなかのものがあり、生々しいサウンドプロダクション(そう、ここも前作とは相反する色付けなんですよね)と相まって非常にカッコよい仕上がりとなっています。
いわゆる“ウェル・メイド”なサウンドから、80年代末あたりを起点により“ロウ(生)”っぽいサウンドが好まれるようになりだしたのもあり、このアルバムは(ハードロック/ヘヴィメタルがオン・タイムかどうかは別として)非常に時代感のある作りではないかと、今聴くとそう思えてきます。事実、このアルバムが発売された1991年、この数ヶ月後にNIRVANAやPEARL JAMといったシアトル勢がメジャーデビューすることを考えると、なるほどと納得するものがあるんですよね。
さてさて。ジェイクのギターは要所要所で速弾きも飛び出しますが、それはオジー・オズボーンのところで聴かせた80年代らしいものとは異なるタイプで、あくまでブルースロックをベースにしたフリーキーなもの。リフは相変わらずカッコいいんだけど、以前と比べたらシンプルで単調なものが増えているかもしれません。が、良く捉えればそれはあくまでこれらの曲調に合わせたものであり、そういう意味でもバランス感に優れた作品だと思います。
ジェフのドラミングもテクニカルというよりは、地味ながらも曲に合った、的確なプレイが中心。グレッグ・チェインソン(B)のベースと合わせて、リズム隊は前に出過ぎることなくギターとボーカルをバックアップすることに終始徹している印象です。
セールス的には惨敗したものの(全米140位)、個人的には1stアルバムよりもお気に入りの1枚。前作同様、現在ストリーミングサービスにはBADLANDSのメジャー作2枚は配信されておらず、iTunesなどでのダウンドード販売も国内流通なし。本当、勿体なさすぎですよ、ワーナーさん!