CAN'T SWIM『CHANGE OF PLANS』(2021)
2021年10月22日にリリースされたCAN'T SWIMの3rdアルバム。日本盤未発売。
CAN'T SWIMは2015年に結成された、米・ニュージャージー出身の5人組バンド。結成からまもなくしてPure Noise Recordsと契約し、2016年に初EP『DEATH DESERVES A NAME』を発表。翌2017年には1stアルバム『FAIL YOU AGAIN』をリリースし、以降定期的に作品を届け続けています。
アルバムとしては『THIS TOO WON'T PASS』(2018年)からほぼ3年ぶりとなる今作。その間にはヘヴィサウンドやEDM、アコースティックなど作品ごとに異なる実験にトライしたEPが3作続きましたが、今作では本来のエモ/ポストハードコア/オルタナティヴロック路線へと回帰。と同時に、ソングライティング力もより高まっていることが伝わる、ガッツがありながらも非常にメロディアスという意欲作に仕上げられています。
オープニングを飾る「Standing In The Dark」の、冒頭での穏やかでメロディアスなテイストに少々驚かされるも、曲が進むにつれて“らしさ”が見え始めるという構成はEPでの経験が見事に活かされたものと言えるでしょう。その後も親しみやすいメロディを軸に、極端に突っ走ることなく、かといって重く引きずることもないという適度なBPMで進行。BEARTOOTHのケイリブ・ショーモ(Vo)をゲストに迎えた「See The Room Ablaze」をはじめ、「10 Years Too Late」「Deliver Us More Evil」など程よいヘヴィさを備えた楽曲も多いですが、ヘヴィ/ラウド系というよりはメロディックパンクにより近いテイスト/作風かもしれません。
「Opposite Of God」や「Better Luck Next Time」「Altamonte Explode」などアルバムが後半に進むにつれて、序盤のどこか抑制された勢い、躍動感が少しずつはみ出し始めた気がしますが、それも「気がした」程度のままで、終始感情の抑揚がコントロールされたような感覚を味わいながら、全11曲/36分におよぶアルバムは幕を下ろします。
「ケイリブをフィーチャーしているんだから、もっと弾けてもいいのに」とか「この曲調にスクリームやシャウトが被せられたら、もうちょっと爆発力が伝わるんじゃないか」なんていう消化不良も少なからず感じる本作ですが、実はこの煮え切らなさや寸止め感こそが、今のCAN'T SWIMの魅力なのかなという視点もなきにしもあらず。楽曲の完成度が高まっていることは紛れもない事実ですが、そこに抑揚のコントロールを加えることで独自性を高めているのだとしたら……本作は原点回帰というよりは、EP3作から続く実験の過程に過ぎないのかな。
このバンドが今後どんなスタイルを確立させていくのか、あるいは作品ごとに常に異なるスタイルを見せていくのか。今はわかりませんが、今作はCAN'T SWIMにとって到達点ではなく、いくつかある通過点のひとつでしかないんでしょうね。そういう意味では、本作の評価ってこの先発表されるであろう次作や次々作の時点で決定するのかもしれませんね。
▼CAN'T SWIM『CHANGE OF PLANS』
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