2003年の前半から噂にはなっていた、3人の「Ben」‥‥ベン・フォールズ、ベン・リー、ベン・クウェラーによる、企画色の強いユニット、それが「the bens」。まんまなユニット名ですが、とにかくお遊びで始めたこのユニットは、ツアーしたり等いろいろ出没情報はあったものの、ちゃんとした音源が出るのか、出るとしたらどこから出るのか、等といろいろ噂先行で話題となりました。既にフルアルバム分の楽曲があるとか、レコーディングは既に完了しているとか‥‥で、いろいろ紆余曲折ありながら、ベン・フォールズの企画シングルをリリースしている「attacked by plastic」というレーベルから、ネット通販限定で流通することになったのが、今回紹介する『the bens ep』という4曲入りのEP。もともとこれ、03年春に行われた3人合同によるツアーで会場限定発売されていたEP。本来はここに3曲のライヴ音源(この時にツアーの模様を収録したもの)を追加した計7曲で、同年8月に日本発売される予定だったんだけど‥‥ま、ライヴ音源はなくなって本来の形に戻ったものの、こうやって日本のファンも手に入れることができるようになっただけマシというか。
個人的には、この中で思い入れがあるのってベン・フォールズくらいなんですよね。ベン・リーは以前「Grand Royal」から出てたアルバムを1枚だけ聴いたことがあるだけだし(それもかなーり前の話ですよね)、ベン・クウェラーに関しては名前しか知らない状態(いや、ずっとアルバム聴こうとは思ってたんですが‥‥)。そんな人間が、ほぼ無知に近い状態でこの音源に接したわけですが‥‥意外に面白かったな、と。最初はもっと3人のエゴが出まくった、ソロ色が強い独立した楽曲が数曲ある程度なのかな、と思ってたんだけど、思ってた以上に1曲の中にちゃんと各人の個性が出た形に収まってるような気がします。
オルタナ・カントリー調の1曲目「Just Pretend」の和んだ空気、3人が順番に歌い、3声コーラスをかますところなんて特にシビれますよね。イントロのベースとシンセの音にいきなりヤられる「Xfire」はさしずめオルタナ・ポップスといったところでしょうか。これ、バックトラックって全部3人でやってるのかしら? シンセ類はベン・フォールズ、エレキ類はベン・クウェラーかな? ドラムは‥‥この中途半端にローファイぽい感じが、ワザと狙ったような雰囲気が出てて、如何にもポップ職人3人による仕事といった感じ。曲自体もこれが一番好きかも。そして同じくローファイっぽいアナログシンセとリズムボックスの音がたまらない「Stop!」もいい感じ。適度に枯れてて、適度に激しくて、適度に甘くて、適度に狂ってる感じ‥‥この「適度」ってのが非常に優等生っぽくて、人によっては鼻につくかもしれないけど‥‥個人的にはこの2~3曲目のノリでアルバム1枚作って欲しいなぁと思います。そして最後はアコギとピアノが印象的なバラード調の「Bruised」。これも「いい曲書いてやろう」っていう気合いと「狙って外す」といった相反するもののバランス感が絶妙。ちょっとベン・フォールズ色が一番強い楽曲な気がしないでもないけど‥‥まぁ、3人のうち、誰かひとりがリーダーとなって曲を書くなんてことは当たり前の行為だからねぇ。たまたまこの曲の場合はベン・フォールズが先頭に立って他の2人を引っ張る形になったのでしょう。うん、いい感じ。
こういうタイプの音楽、今はなんて呼ぶの? ほら、よく「AAA」とか「オルタナ・ポップス」とか、いろいろ新しい呼び名(カテゴリー)があるじゃない? 個人的にはまぁそんなのどうでもいいんですが‥‥うん、面白いと思いました。ただ、まだ「この3人でやる必要性・必然性」みたいなものを見つけるまでには至らないかな、と。たった4曲だしね。いい曲は勿論あったけど、決定打になるような名曲には至ってないし。各人ソロで好き放題やった方がもっといい作品が作れるような気もするんだけど‥‥だからこそ、単なる企画ものとして終わらせないで、ちゃんとした「完全無欠のアルバム」を完成させて欲しいなぁ、と思うわけでして。既に完成してるのかもしれないけど、それを聴いた時に初めてこの「the bens」に対する正当な評価を下したいと思います。
ま、あれですよ。なんだかんだ言って、このEPの4曲を「iPod」にブチ込んで、普段から聴きまくってるんですけどね!

▼THE BENS『THE BENS EP』
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