カテゴリー「Bernard Butler」の10件の記事

2024年6月 4日 (火)

THE TEARS『HERE COME THE TEARS』(2005)

2005年6月6日にリリースされたTHE TEARS唯一のオリジナルアルバム。日本盤は同年7月20日発売。

2003年に活動休止を発表したSUEDEのフロントマン、ブレット・アンダーソン(Vo)が同バンドの初期2作(1stアルバム『SUEDE』、2ndアルバム『DOG MAN STAR』)でギタリスト&ソングライターとして活躍すたバーナード・バトラー(G)と約10年ぶりに和解を果たしたことで、THE TEARSと命名された新バンドを2004年に結成します。ブレットとバーニー以外のメンバーは、バーニーのソロ活動を支えてきた日本人ドラマーのマコト・サカモト(Dr)のほか、ネイサン・フィッシャー(B)、ウィル・フォスター(Key)という布陣。

楽曲制作はブレット&バーニーの2人で行われ、アルバムのプロデュースをバーニーが担当。ブレットもアディショナル・プロデューサーとして名を連ねていますが、2000年代に入りTHE LIBERTINESTHE CRIBSなどの作品で培ったバーニーのプロデューサーとしての才能が、ここでも遺憾なく発揮されています。

この2人が再タッグを組むと言われたら、誰もがSUEDE初期の2作で展開されたデカダンな世界観&グラマラスなサウンドを想像することでしょう。しかし、実際にここで鳴らされているのはSUEDE後期、特にバーニー脱退後の3rdアルバム『COMING UP』(1996年)以降の音を下地にしたもので、SUEDEとして当時の最終作でもある『A NEW MORNING』(2002年)との共通点も見受けられます。つまり、本作はポップサイドに振り切った1枚ということになります。

しかし、この2人が揃ったんだから単なるポップアルバムで終わらない。本作で2人がイメージしたのは、デヴィッド・ボウイが初期に残した『THE MAN WHO SOLD THE WORLD』(1970年)『HUNKY DORY』(1971年)という2枚。ボウイが“ジギー・スターダスト”としてグラムロックスターへと君臨する前に残した、ポップでロックでフォーキーなテイスト……つまり、2人にとってのルーツサウンドを今再びここで体現しようと試みたわけです。

確かにSUEDE初期のような危うさは希釈ながらも、90年代前半に彼らがトライした「70年代初期のグラムロックのモダン化」を10年越しに再挑戦したという意思は十分に伝わります。『SUEDE』や『DOG MAN STAR』のあとにこの『HERE COME THE TEARS』を聴いたらつながりは感じられないかもしれませんが、その後のSUEDEが歩んだ道のり、そしてバーニーがMcALMONT AND BUTLERやソロ活動を通じて重ねてきたキャリアを踏まえれば十分に納得できる仕上がりではないでしょうか。

『A NEW MORNING』は悪い意味で「出来上がって」しまっていたブレットのボーカルも、本作ではSUEDE中期までの豪快さが少しだけ復調している。それもそれも、隣で“らしい”ギターを奏でるバーニーの存在が与える影響がかなり大きいはず。オープニングを飾る「Refugees」(全英9位)こそSUEDE末期の延長のようではあるものの、「Lovers」(同24位)や「Two Creatures」などでは2000年代の音で表現されるモダンなグラムロックを存分に楽しむことができるし、「The Ghost Of You」のような繊細さを伴う楽曲では初期SUEDEのシングルカップリング曲で見せた色合いを追体験できる。さらに、アルバム終盤に向けて展開されるディープな世界観も、完全に一緒とないかないものの、どこか初期のSUEDEとイメージが重なる部分がある。当時死滅していたブリットポップやグラムロックをモダンな質感で再構築したという点で、本作が果たした役割は非常に大きなものがありますし、実際に亜洋的にもしっかり作り込まれた良質なロックアルバムだと断言できるはずです。

初期のSUEDEの完全再現を求めていたリスナーには、本作は肩透かしな1枚なのかもしれませんが、ここまでブレットとバーニーそれぞれのたどった道を追ってきた筆者のような人間には、これを否定することはできない。そう考えると、一部のファンにとっては“踏み絵”のような作品なのかもしれませんね。

なお、本作リリース直後の2005年8月には『SUMMER SONIC 05』へ出演するために、ブレット&バーニーは2003年の初来日ツアー以来12年ぶりに揃って来日。本国ではアルバムチャート15位とまずまずの数字を残すものの、同年秋に所属レーベルから解雇されてしまい、以降のツアーはすべて白紙に。2006年にブレットがソロ活動へと移行したのを機に、バンドは1年足らずで活動を終了させたのでした。

 


▼THE TEARS『HERE COME THE TEARS』
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2024年6月 3日 (月)

JESSIE BUCKLEY & BERNARD BUTLER『FOR ALL OUR DAYS THAT TEAR THE HEART』(2022)

2022年6月17日にリリースされた、ジェシー・バックリーバーナード・バトラーのコラボアルバム。日本盤未発売。

ジェシー・バックリーは2018年公開の映画『ワイルド・ローズ』での主人公ローズ役を務めたほか、2021年公開の映画『ロスト・ドーター』では主人公ラダの若き日を演じアカデミー賞をはじめとする数々の映画賞を受賞したことで知られるアイルランド出身の女優。『ワイルド・ローズ』ではカントリー歌手を夢見るシングルマザーという設定もあり、劇中での歌唱も話題となりました。

一方、バーナード・バトラーはSUEDEの初期メンバーとしてはもちろん、ソロアーティストや音楽プロデューサーとしても名を馳せる名手。互いに接点はないように映りますが、ジェシーはかつてバーニーがプロデュースしたサム・リーのアルバムを聴いていたといい、バーニーも先の『ワイルド・ローズ』でのジェシーの歌唱を耳にしており、互いに高く評価し合っていました。そんな中、ジェシーのマネージャーが2人が対面する機会を設け、同じ精神性を持っていた2人は次第に距離を縮めていき、気づけば音楽的コラボレーションへとつながっていったわけです。

バーニーのプロデュースのもと制作された本作は、深みを強く感じさせるジェシーのボーカルを最良の形で生かした、アコースティックサウンド主体の内容。バーニーはギターのみならず、一部の楽曲ではピアノやドラムまでもを担当し、レコーディングの指揮をとります。また、シンガーでもあるバーニーですが、主役はあくまでジェシーということで彼自身は数曲でコーラスを担当するのみ。コラボ作ではあるものの、彼はあくまでプロデューサー/プレイヤーとしての共作であると認識しているようです。

ダフィー以降、バーニーが手がけてきた「夜の香りがする」アダルトなサウンドアレンジと、アコギやアップライトベース、チェロやバオイリン、トランペットやホルンなどのアコースティック楽器を主体とした音作りは、その後制作されるバーニー自身のソロアルバム『GOOD GRIEF』(2024年)との共通点も多く見つけられます。楽曲自体はそのバーニーの持ち味のひとつであるフォーキーさやジャジーさを強調したものが多く、そうしたテイストがジェシーの歌声にもぴったりハマっている。そのプロデューサーとしてのセンスも、さすがバーニーといったところでしょうか。

これをバーニー自身が歌っていたら、きっとより内省的で地味なアルバムとしてこじんまりとまとまっていたかもしれません。しかし、そうならずに適度なゴージャスさも伝わる上質な歌モノ作品として仕上がったのは、バーニー自身の創作する音楽との「距離」の違いが大きいのかなと。自分のための音楽だったら距離が近すぎて、客観的になるのが難しいところもある。しかし、コラボ作とはいえ主役は別のシンガーがいることで、自身のソロ作よりも客観視できる。いくら名プロデューサーとはいえ、さすがにこの「距離」の違いは大きいのではないでしょうか。

まあそんな邪推は置いておいて。本作は非常にクオリティの高い大人のポップスを、存分に楽しむことができる良質な作品集。アコースティック主体のサウンドながらも、「We've Run The Sistance」のようにダイナミックさが強調された楽曲も用意されているので、全12曲/約50分を退屈することなく楽しめるはず。ジェシーの知名度も大きいとは思いますが、本作が全英23位、スコットランドで8位、アイルランドで35位という好記録を残したのも納得です。

 


▼JESSIE BUCKLEY & BERNARD BUTLER『FOR ALL OUR DAYS THAT TEAR THE HEART』
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2024年6月 2日 (日)

BERNARD BUTLER『GOOD GRIEF』(2024)

2024年5月31日にデジタルリリースされたバーナード・バトラーの3rdアルバム。海外でのフィジカル(CD、アナログ)リリースは同年7月5日を予定、日本盤の発売は現時点で予定なし。

純粋なソロアルバムとしては、前作『FRIENDS AND LOVERS』(1999年)から約25年ぶり。2000年代以降はプロデューサーとしての活躍が目立ったバーニーですが、THE ANCHORESSことキャサリン・アン・デイヴィスとのコラボアルバム『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020年/制作自体は2014年。同時期にバーニーはTRANSという短命プロジェクトも始動)を発表したのを機に、徐々に創作意欲が高まっていきます。2022年には女優ジェシー・バックリーとのコラボアルバム『FOR ALL OUR DAYS THAT TEAR THE HEART』をリリースし、こちらは全英23位という好記録を残しています。さらにこれと前後して、ソロデビュー作『PEOPLE MOVE ON』(1998年)のリイシューを計画し、オリジナル盤に自身が新たに歌い直したテイク、当時のシングルカップリング曲などをまとめたCD4枚組デラックス盤も発表するなど、自身がフロントマンとして活動する機会が徐々に増えていきました。

こうした活動の中で、自身のための新曲制作にも着手。先に小規模のライブを複数行ったことも、こうしたソロセッションに対する前向きさにつながり、2023年の数ヶ月を通じて本作に収められている9曲を完成させました。

基本的な路線は『FRIENDS AND LOVERS』などでにじませていたディープな歌モノスタイルの延長線上にあります。と同時に、90年代のアレンジとは異なるシンプルさ、生々しさが強まっており、そこが良い意味で現代的と受け取ることもできる。そこに、ギタリストとして大人の表現を手に入れたバーニーが、1音1音の存在感が強いプレイで自分以外の何ものでもない表現を提示しており、派手さは皆無ながらも聴き手をグイグイと音世界へと引き込んでいく。その説得力の強さはさすがの一言です。

また、前作発表時は30歳前後だった彼も現在は50代半ばに差し掛かろうとしており、そういった加齢による歌声の変化/成長も作品にダイレクトに反映されている。これは年相応のものへと深化した、というのが正解なのでしょう。90年代の2作ではシンガーとして最初に一歩を踏み出した時期ということもあり、瑞々しさもしっかり感じられましたが、今作では本来彼が表現しようとしていた音楽を歌うに最適な歌声/声質になったことで、楽曲にもたらす説得力が段違いとなっている。この変化/進化は本作を評価する上でかなり大きな要素と言えるでしょう。

稀代のギタリストの新作というよりは、名ソングライター/プロデューサーが久しぶりに自身と向き合って、自分のためだけの楽曲集を完成させた。本作はそんな1枚ではないかと解釈しております。「Pretty D」や「London Snow」といった楽曲たちは、間違いなく「Stay」や「Not Alone」、あるいは「You Must Go On」などといったヒットシングルに匹敵する完成度を誇る名曲ですしね。

とはいえ、全体のトーンはかなり落ち着いたものであるのは事実。これを地味と受け取るか、あるいは大人の渋みと受け取るかで、本作への印象もだいぶ異なるのではないでしょうか。

 


▼BERNARD BUTLER『GOOD GRIEF』
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2024年6月 1日 (土)

BERNARD BUTLER『FRIENDS AND LOVERS』(1999)

1999年10月25日にリリースされたバーナード・バトラーの2ndアルバム。日本盤は同年10月20日発売。

SUEDE、McALMONT AND BUTLERでの活動を経て届けられた初ソロアルバム『PEOPLE MOVE ON』(1998年)から1年半ぶりと、比較的短いスパンで届けられたソロ2作目。前作からは「Stay」(全英12位)、「Not Alone」(同27位)、「A Change Of Heart」(同45位)とヒットシングルも生まれ、アルバム自体も最高11位という好成績を残しました。また、アルバム発売後には1998年の単独公演、1999年夏にはHOLEの代役で『FUJI ROCK FESTIVAL '99』へ出演するなど来日も複数回実現し、SUEDE時代からのファンには健在ぶりを存分にアピールすることに成功しています。

前作ではドラム以外の楽器をほぼバーニーひとりで担当したほか、ストリングス隊を大々的にフィーチャーすることでゴージャスさ、豪快さを体現することにも成功しましたが、今作では先の『PEOPLE MOVE ON』を携えたツアーでまとまったバンド編成を軸に制作。プロデュースは前作同様にバーニー自身が担当し、ミキシングをアンディ・ウォレスが手がけています。アンディの起用は、バーニーがNIRVANA『NEVERMIND』(1991年)での仕事ぶりを気に入り、ダメ元でオファーしたんだとか。

さて、作風的には前作の延長線上にある、歌ものギターロックやフォーキー&サイケデリックな楽曲を中心に構成。サイケなタイトルトラックからスタートし、SUEDE時代を彷彿とさせる豪快な「I'd Do It Again If I Could」、前作でのシングル曲路線を引き継ぐポップ&キャッチーな「You Must Go On」(全英44位)や「Cocoon」、バーニーの魅力が完璧な形で凝縮された「No Easy Way Out」、20代後半にしてここまで老成するか?と驚かせるジャジーな「Everyone I Know Is Falling Apart」、クライマックスに相応しい8分超の対策「Has Your Mind Got Away?」など、前作を気に入っている方なら間違いなく両手を上げて受け入れられる良曲ばかり。バーニーの歌もだいぶ板に付いてきた感が強く、ソロアーティストとしての方向性、スタイルがここでひとつ固まった感があります。

良く言えば、早くも“極まった”感が強い。ただ、悪く言えば新鮮さに欠ける。もともと斬新さを追求するようなタイプのアーティストではなく、ソングライターとして、ギタリストとして自身の技術や才能を極め続ける職人気質なだけに、このスタイルは一寸たりともブレていない。ただ、リリース当時が“世紀末”という時代の変わり目だったこともあって、前作よりも注目されなかったのはちょっと不幸だったかな。

チャート的には全英43位と前作ほどの成功を収めることができず、また所属レーベルCreation Recordsの閉鎖も重なり、2000年2月の再来日公演を最後にバーニーはしばらくソロ活動から離れることに。2002年にはMcALMONT AND BUTLERの2ndアルバム『BRING IT BACK』を発表し、2004年にはSUEDE時代の盟友ブレット・アンダーソン(Vo)と新プロジェクトTHE TEARSを立ち上げ、セルフタイトルのアルバム(2005年)を1枚制作。と同時に、THE LIBERTINESTHE CRIBS、ダフィーなどとのコラボレーションで、プロデューサーとして実績を積み重ねていくことになるのでした。

 


▼BERNARD BUTLER『FRIENDS AND LOVERS』
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2021年3月17日 (水)

CHATHERINE ANNE DAVIES & BERNARD BUTLER『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020)

2020年9月18日にリリースされた、THE ANCHORESSことキャサリン・アン・デイヴィスと元SUEDEバーナード・バトラーによるコラボアルバム。日本盤未発売。

本作は2014年に制作されていたものの、諸事情により6年以上お蔵入りとなっていた曰く付きの1枚。2020年に入ってからNeedle Mythologyというインディレーベルの目に留まり、正式リリースが実現したという経緯があります。

キャサリンにとってはTHE ANCHORESSのデビューアルバム『CONFESSIONS OF A ROMANCE NEVELIST』(2016年)発表前に関わった作品であり、バーニーにとってはEP2枚と短命に終わったTRANSと同時進行で制作に取り組んだ1枚でもあるのですが……これが非常に良いんです。僕、このアルバムの存在を2021年に入ってから知ったんですね(THE ANCHORESSの新作発売に関するプレスリリースを通して)……なんでもっと早くに出会ってなかったんだろう!? と強く思った、2020年のベストアルバムに選出すべき1枚だったのです。

キャサリンの歌を軸にしつつ、バーニーは裏方(ギタリスト&ソングライター、プロデューサー)に徹した内容なのですが、曲が進むにつれてバーニーのギタリストとしての主張がどんどん強くなっていくのが非常に興味深いんです。最初こそTHE ANCHORESSにも通ずる耽美な世界観が構築されているのですが、「Sabotage (Looks So Easy)」あたりから空気が一変。あのねちっこい激情型ギタープレイが随所にフィーチャーされ始めるのです。そうそう、これよこれ!

McALMONT & BUTLERやバーニーのソロ作で感じられたソウルフルさと、初期SUEDEにも通ずるグラマラスな要素がバランスよく散りばめられた楽曲の良さと相まって、2人の個性も曲を重ねるごとにどんどんディープさを増していく。個人的には「I Know」や「No More Tears To Cry」「The Waiting Game」あたりで楽しめる2人の化学反応と、その集大成といえるラストナンバー「F.O.H.」がツボすぎて、聴くたびに何度も鳥肌を立てたものです。いやあ、本当に素晴らしい。バーニー関連の作品でいうと、個人的には彼のソロ1作目『PEOPLE MOVE ON』(1998年)以来となる会心の仕上がりと断言したいです。

今回の正式リリースに際して、アルバムにはボーナストラック2曲を追加。ひとつはマドンナの80年代のヒット曲「Live To Tell」カバーで、こちらはTHE ANCHORESS的側面が強いアレンジと言えるかもしれません。これはこれで良きかな。もうひとつは、アルバム収録曲「The Patron Saint Of The Lost Cause」の別バージョン。リズムトラックを排除し、鍵盤ハーモニカを主軸にしたアレンジとなっています。これもこれで味わい深くて良きかな。まあ、アルバム本編は「F.O.H.」という大傑作で盛大に幕を下ろすので、この2曲はオマケ以外の何ものでもないですけどね。できれば「F.O.H.」が終わったところでワンクッションおいて、しばらくしてからボートラに触れると最適かもしれません。

いやあ、それにしても素晴らしい作品じゃないですか。THE ANCHORESS自体がMANIC STREET PREACHERSMANSUN、そしてSUEDEあたりを好むリスナーにドンピシャなアーティストであるわけですが、このコラボ作はその中でも飛び抜けてど真ん中な1枚であると同時に、時代を超越したロック/ポップスの名盤と呼ぶに相応しいのではないでしょうか。昨年リリースされたアルバムの中ではトップクラスに好きな作品です。

 


▼CHATHERINE ANNE DAVIES & BERNARD BUTLER『IN MEMORY OF MY FEELINGS』
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2020年6月14日 (日)

MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』(2014)

2014年12月にリリースされた、MANIC STREET PREACHERSの3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)の20周年記念エディション。日本盤未発売。

1994年8月に発売された『THE HOLY BIBLE』は、オリジナルメンバーのリッチー・エドワーズ(G)を含む4人編成としては最後の作品。2004年12月には本作のリリース20周年を祝して、最新リマスター盤+当時完全未発表だったUSリミックスバージョンの『THE HOLY BIBLE』+未発表のデモやライブ音源の2枚組CDと、ライブ映像やテレビ出演時の映像を含むDVDからなる3枚組エディションが発売されており、『THE HOLY BIBLE』のデラックス盤としてはこれが2作目にあたります(日本盤限定で2009年、シングルC/W曲を追加した2枚組紙ジャケ・エディションも発売されています)。

20周年盤は『THE HOLY BIBLE』の最新リマスター盤(DISC 1)、『THE HOLY BIBLE』USリミックスの最新リマスター盤(DISC 2)、シングルのカップリング&リミックス集(DISC 2)、ライブ音源やBBCセッションなどをまとめたライブ集(DISC 4)のCD4枚組に『THE HOLY BIBLE』最新リマスターのアナログ盤、写真集を同梱したボックスセットとなっており、これさえあれば『THE HOLY BIBLE』期のマニックスの音源は完璧!と呼べる内容……だと思っていたんです。ところが、10周年エディションに含まれていたデモやライブ音源は20周年ボックスには未収録。ありゃりゃ……と思ったら、最近気づいたんですが、デジタル版およびストリーミング版には新たにDISC 5が追加されており、こちらに10周年エディションのみで聴くことができた音源がまとめられており、映像を除けば確実にこのデジタル版で網羅することができます。

ということで、豪華な箱やアナログ盤、写真集などが欲しい人はフィジカル(ボックスセット)で購入し、音源だけあればいいという方はiTunesやAmazon Musicなどでデジタル版を購入すればいいかなと(Amazon Musicは6000円ですべて手に入りますしね)。

名盤『THE HOLY BIBLE』に関しては、19年前に熱と愛がこもったテキストを残していますので、そちらに譲ります。最新リマスターでは音の生々しさとダイナミズムはより極まっているんじゃないでしょうか。1994年当時の若干チープなサウンドも、実はこのスタイルにはぴったりなので、どちらが最高とは断言し難いのですが……。

で、今回はUSリミックスを中心に書いていこうかなと思います。このUSリミックス、その名のとおり1994年当時にアメリカでのリリースに向けてトム・ロード・アルジがリミックスを担当したもの。最終的には契約などの関係でUSリリースが実現せず、2004年までお蔵入りされていたわけですが、当時はオリジナル版よりもリバーブが効いてウェットさが増したリミックスに「!?」と疑問を感じたものですが、何度か聴いていると意外と悪くないことにも気づきます。質感的には前作『GOLD AGAINST THE SOUL』(1993年)で展開したアリーナロック的なものに若干近づけたかったのかな。でも、グランジ全盛だった1994年だからこそ、オリジナル版の『THE HOLY BIBLE』は光り輝いたわけで、そこの読みは実際のところどうだったんだろう?と思わざるを得ません。結果、リリースは叶わなかったわけですが、もしUSリミックス版があの当時世に放たれていたら、少しは歴史が変わったのでしょうか。

ギターの音像/押し引きがオリジナル版以上にメリハリが効いていて、ドラムのタイトさも嫌いじゃないし、「Yes」のエンディングや「She Is Suffering」のエフェクトなどオリジナル版にはないものも追加されており、そのへんの聴き比べも非常に面白いんじゃないでしょうか。

DISC 3にはシングルのカップリングで聴くことができた「Too Cold Here」や「Love Torn Us Under」などの隠れた名曲などを網羅。このへんは続く『EVERYTHING MUSG GO』(1996年)への布石だったんだなと気づかされる部分もあるので、改めて興味深いものがあると思います。このほか、オリジナル・リリース時の日本盤にボーナストラックとして収められたライブ音源や、バーナード・バトラー(G)がゲスト参加したSUEDE「The Drowners」のカバーライブ音源、THE CHEMICAL BROTEHRSなどによるリミックス音源、さらには「Revol」の未発表バージョンも聴くことができます。

DSIC 4はリリース当時、英BBCで収録されたAstoriaでのライブ音源や、2014年にBBC Radio 4のために収録されたスタジオライブ音源4曲を収録。Astoriaでのライブはフルスケール収録ではありませんが、それでも全13曲とかなりボリューミーな内容となっています。そして、新録のスタジオライブはすべてアコースティックアレンジを施されたもので、「This Is Yesterday」といったいかにもな楽曲のほか、「Faster」や「P.C.P.」などパンキッシュな楽曲が日和ることなくアコースティックバージョンで生まれ変わっています。これはこれで今のマニックスらしくて、個人的には嫌いじゃないかな。

『THE HOLY BIBLE』をこれから初めて聴く人には、まず13曲入りのオリジナル版をオススメします。ストリーミングなら1994年のオリジナル版も2014年のリマスター版も両方聴けますので、どちらから入ってもいいかな。で、本作を気に入ってマニックスというバンドを十分理解した上で、このボックスを存分に味わうといいんじゃないでしょうか。なので、まずは10数枚におよぶオリジナルアルバムを先に堪能して、デラックス・エディションは余生のお楽しみとして残しておいてもいいと思いますよ(笑)。

 


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2019年6月 7日 (金)

SUEDE『DOG MAN STAR』(1994)

1994年10月に発表された、SUEDEの2ndアルバム。

デビューアルバム『SUEDE』(1993年)はブリットポップ前夜のリリースながらも全英1位を獲得し、早くもトップバンドの仲間入りを果たします。と同時に、ブレット・アンダーソン(Vo)のスキャンダラスな発言が一人歩きすることで、音楽面以上にそちら側で話題になることも増え、そういった状況に嫌気がさしたバーナード・バトラー(G)は2ndアルバム完成直前にバンドを脱退。ギターのレコーディングはすでに完了していたこともあり、本作『DOG MAN STAR』はバーナード在籍時最後のスタジオ作品となってしまいました。

アルバムリリースと前後して、オーディションを経て新ギタリストのリチャード・オークスが加入。当時まだ17歳というその年齢に驚かされましたが、個人的には「バーナードのいないSUEDEなんて……」という思いが強く、この時期の彼らに対しては消極的だったことをよく覚えています。

しかし、それと作品の完成度は別の話。1stアルバムも確かに素晴らしい内容ですが、現在までにおいてSUEDEというバンドのなんたるかが的確に表現されているのが実はこの2ndアルバムではないかと信じています。それくらい寸分の隙もない、徹底した完成度の1枚なのです。

いわゆるギターロック然としたイメージの強かった前作と比べると、本作はその要素も残しつつ(「Heroin」「New Generation」など)、よりダークでディープな方向へと突き進んでいます。どこか黒魔術を思わせる不気味なオープニングトラック「Introduction The Band」や、重量級のロッカバラード「This Hollywood Life」なんて、前作では考えられなかった方向性でしょう。ブラスセクションをフィーチャーした「We Are The Pigs」もまた然り。

ですが、本作最大の聴きどころ(山場)は多数用意されたスローナンバー、これなのですよ。前半だったら超名曲の「The Wild Ones」や「The Power」といったドラマチックでセンチメンタルな楽曲群は、グラムロック期のデヴィッド・ボウイと完全に重なるし、後半のクライマックスとなる「The 2 Of Us」から「Still Life」までの4曲の流れは本当に壮絶なものがあるし、中でも9分半にもわたる「The Asphalt World」のアレンジ(およびバーナードのギタープレイ)・構成は圧巻の一言です。この後半のためだけに本作を購入しても決して損しないと言い切れるほど、名作中の名作なのです。

ここで初期のスタイルを完璧な形で完結させてしまったSUEDE。ギタリストの交代ということもあり、この後の方向性を模索することになるのは仕方ないわけですが、にも関わらず次作『COMING UP』(1996年)で新たな最盛期を築き上げてしまうのですから、本当にこの時期の彼らは神がかっていたわけです。

 


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2018年1月 9日 (火)

BERNARD BUTLER『PEOPLE MOVE ON』(1998)

SUEDEのギタリスト、バーナード・バトラーが1998年春にリリースした初のソロアルバム。本作ではギター、ソングライティグのみならずボーカルやプロデュースも手がけており、マルチアーティストぶりが存分に発揮された力作に仕上がっています。

SUEDEで2枚のアルバム(1993年の『SUEDE』、1994年の『DOG MAN STAR』)に携わったあと、1995年にMcALMONT AND BUTLER名義でも活動を行うものの、シングル2枚を発表したあとに分裂(解散後にアルバム発売)。しばらく音沙汰がなかったものの、1998年に入ると1月にシングル「Stay」(全英12位)、3月に「Not Alone」(全英27位)を連続リリースし、4月にこのアルバムを発表。アルバムは全英11位とまずまずの成果を残しました。

楽曲的はSUEDEなどで聴けたエモーショナルさが凝縮されたものが多く、ギタープレイは“あの”バーナード・バトラーそのもの。時に泣きまくり、時にのたうち回る。けど、楽曲のトーンが全体的に抑えめであることから、派手に暴れることはなく、あくまでこの世界観の中でできる最大限の派手なプレイを聴かせてくれます。中でも9分近い「Autograph」は圧巻の一言。緩急を効かせたアレンジの上で、ボリュームを巧みにコントロールしたギタープレイを聴かせるバーニー、最高です。

一方のボーカルですが、これが意外と悪くない。抑揚を抑えることで無駄にエモくなりすぎず、落ち着いて楽しむことができる。むしろ、ギターが泣きまくっているので、歌まで感情的になることがない……そこでバランスを取っているんでしょうかね。

とにかく、曲が良い。先行シングル「Stay」「Not Alone」がともに名曲すぎるのです。ストリングスを効果的に取り入れた「Not Alone」なんて、時代を超えたスタンダードナンバーとして愛されるべき1曲だと思いますし、歌メロのみならずスライドギターも泣きまくりな「A Change Of Heart」(本作からの第3弾シングル)も良いし。この人、本当にすごいソングライターですね。

ということで、本作はいわゆるギタリストのソロアルバムとしてではなく、ギターのうまいブリットポップ寄りシンガーソングライターの作品として楽しんでもらいたい1枚です。

ちなみに彼のソロステージは1999年夏のフジロックと、翌2000年2月の単独公演を観ているのですが、どちらも素晴らしかった記憶が残っています。また、1999年秋にリリースした2ndソロアルバム『FRIENDS AND LOVERS』も本作に負けず劣らずの内容。こちらも機会があったらチェックしてみてください。



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2000年5月 7日 (日)

BERNARD BUTLER JAPAN TOUR 2000@赤坂BLITZ(2000年2月27日)

バーニーの動く姿は昨年のフジロックで初めて目にした。不幸な事に、SUEDE時代の彼の勇姿はブラウン管の中でしか目にする機会はなかった。何故か‥‥まぁタイミングが悪かったのだろう。結局最初の来日にしか同行してないわけだし。一昨年の単独来日にも足を運んでいない。何故なら、彼のファーストアルバム『PEOPLE MOVE ON』を聴いたのが、彼が帰国した後だったからだ。けど、「次は絶対に!」っていう風にはならなかったのも、また事実。やはり全ては99年のフジロック3日目だ。本人は「調子が良くなかった」と言ってたそうだが‥‥「じゃあ、絶好調のステージはどんな事になってんだ!?」ってくらいに良かったんだけどなぁ、俺にとっては

以前、掲示板でだったか他のアーティストについて書いた時だったかは忘れたが、俺は'90年代を代表する英国3大ギターヒーローとして、元KULA SHAKERのクリスピアン・ミルズ、MANIC STREET PREACHERSのジェームズ・ディーン・ブラッドフィールド、そしてバーナード・バトラーの名前を挙げていたはずだ。いや、もしかしたらバーニーではなく、元STONE ROSESのジョン・スクワイアだったかもしれない。まぁジョンは厳密には80年代末期に登場してるので、ここに入れるべきではないかもしれない。(活躍したのは90年代だから、まぁいいか?)この際、クリスピアン、ジェームズ、バーニーの3人に正式決定させてもらうよ!(笑)彼等の共通点は、①ボーカリスト兼ギタリストである、②リズムギターだけでなく、リードを取らせても天下一品、③スタイルが非常に70年代的、だという事である。多少こじつけの感もなきにしもあらずだが(苦笑)そういう事である。何で俺が彼等を愛するかが、この辺から伺えるかもね?

さって、前置きが長くなったが、1週間前になって急遽決定したライヴ行き。タダ観とはいえ、やっぱり交通費をかけて行くわけだから、それなりのものを見せてもらわないとね?(笑)そんな気持ちで開演時間10分前に会場に到着。インビテーションカードがかなりの数出回っていたと聞いて「そんなに客、入ってないのかな?」と少々不安になったものの、いざスタートしてみれば8割強は入ってたんじゃないの?って印象を受けた。同じ時期に来日してるOASISやPRIMAL SCREAMに食われただの、噂だけはいろいろ耳にしたが、ファン層って被ってないんじゃないの? 唯一、イギリス人ってだけじゃないか、共通項って? むしろジェフ・バックリーや、俺がバーニーの新譜を聴いた時の第一印象として挙げたカナダのロン・セクスミスあたりのファンが足を運んだんじゃないだろうか?(事実、客入れBGMでは両者の曲がかかっていた)そして勿論、SUEDEのファンもね?

ステージ上のメンバーは前回、前々回と変わっておらず、新作もこのメンバーで作られたそうな。その傑作『FRIENDS AND LOVERS』を中心に進行したライヴ‥‥文句なしっ! これ以上、何て言えばいいのさ!?へっ、「こんなのレビューでもレポートでもない!」だって!? 当たり前じゃんか!(爆)いいんだよ、これで。

歌が上手い、ギターも上手い、ルックスがいい、元人気バンドのメンバー‥‥欲しい要素は全て持っている。でも、彼がステージ上でアピールするのは最初の2項目だけ。それも「これでもかっ!」って位にアピールするのではなく、ごく自然に、下手したら地味ぃ~な位にしかアピールしない。なのに聴き手の心の中にしみ込んでくる。「感情に訴えかける音楽」とは正にこの事だろう。時に情熱的に、時に優しさで包み込むように、時に聴いてるこっちまでが悲しくなる位にブルージーに。彼の歌・プレイは正直であり、そして繊細だと思う。だからこそ、それが聴き手にダイレクトに伝わるのだ。

そんな彼の感情が更にダイレクトに伝わったのが、アンコールでのアコースティックセットだった。噂には聞いていたが、こんなにも素晴らしいものだとは‥‥バーニーよりも先走って、お客がキメのパートを唄ってしまう一幕もあったが、それは御愛嬌。そういうのはライヴならではのものだ。微笑ましいじゃないか?(これが嫌!って感じるのなら、家でCDでも聴いてればいい、自分の思い通りに。あの場ではあれは全くうざったく感じなかったな、俺は。それにあれはある種お約束みたいなもんなんでしょ?)

バーニー自身は勿論だが、その彼を支えるバンドのメンバーもまた素晴らしかった。波長が合っているのか、それとも彼が指示してその通りにプレイしてるだけなのか‥‥いや、違うな。間違いなくそれだけの実力を持った強者ばかりだと思う。

きっと彼のやってるような音楽は頂点に立つ事はないのかもしれない。けど、なくなってはいけないタイプの音楽である。ジャンル的にこれを「ブルーズ」と呼ぶには多少語弊があるかもしれないが‥‥こういう音楽こそが、現代における「ブルーズ」なのではないだろうか? エリック・クラプトンだったと思うが、彼はこう言った。「ブルーズとはプログレッシヴな音楽だ」と。そう、型としてのブルーズは保守的かもしれない‥‥けど、これをブルーズの発展系と呼ぶ事は出来ないだろうか?

彼はこの先もずっと、こういうジャンルの音楽を奏でていくだろう。是非そうして欲しいものだ。そして、急激にではなく、地味ぃ~に成長していって欲しいものだ。それが彼にはぴったりだと思うから。ショービズ界の波に巻き込まれず、独自の歩幅で活動していって欲しいものである。


<セットリスト>
01. Friends And Lovers
02. You Must Go On
03. Cocoon
04. You Just Know
05. Change Of Heart
06. I'd Do It Again If I Could
07. It's Alright
08. No Easy Way Out
09. Let's Go Away
10. What Happend To Me
11. Autograph
12. Not Alone
—ENCORE—
13. My Domain (Acoustic)
14. Woman I Know (Acoustic)
15. The Sea (Acoustic)
16. Stay
—ENCORE—
17. More Than I Thought

1999年9月10日 (金)

「FUJI ROCK FESTIVAL '99」DAY 3@苗場スキー場(1999年8月1日)

  無事フジロック・ライブレポ、完結編です。


CATATONIA (at GREEN STAGE / 11:20~12:10)

  SKUNK ANANSIE同様、今回秘かに期待していたのがこのCATATONIA。今年初旬に来日の噂もあったようだが、ようやくこういう形ででも来日してくれたことを嬉しく思う。このバンド、切っ掛けさえあれば絶対にここ日本でも人気が出るはずなのだから。すでに英国ではアルバムがナンバー1、ヒット曲も数々持ち、ライブも満員にしている。が、ここ日本での彼等の知名度はと言えば『カルト的人気のウェールズバンド』『マニックス、ステフォニと同郷』『ヒット曲が「Xファイル」の主人公を歌った曲』とか、その程度のもの。すでに2枚のアルバムを全英ナンバー1にしているというのに。

  この日のタイムテーブルだが、実際には予定より1時間遅れで始まった。俺はちょっと車の中で休んでいてすっかりCATATONIAの事を忘れていて、会場に着いたのは12時半近くだった。が、よく話を聞けば今始まったばかりだと言う

  Voのセリーズ(ウェールズ語ではケリスと読むのか)の男勝りなステージングに多くのオーディエンスが引き付けられている。ワインボトル片手に歌うなんて武勇伝もあるくらいだしな。しかも、演奏がしっかりしてるし、曲も良い。フロントマンがカリスマ的で、バックは‥‥華、一切なし。まぁそこを「今のイギリスらしい」と言ってしまえばそれまでだが。


◎ASH (at GREEN STAGE / 12:40~13:30)

  実は4人編成になってから観るのは初めてだったりする。ただ、いい曲やってるバンドの音が分厚くなった、そしてステージに華がある、ボーカルが歌に集中できる。そういう意味では、ホントに面白いライブだと思った。が、3日目はお客が少なかったせいもあって、最前ブロックでさえ一杯にならなかった。本当に勿体ない。


◎ラフィータフィー忌野清志郎 (at GREEN STAGE / 14:00~14:40)

  忌野清志郎、今回は「ラフィータフィー」という特別なバンドを従えての参戦。2年連続かぁ。前回はいきなり「雨上がりの夜空に」から始まったそうだけど、今回はバンド名と同タイトルのソロアルバムをリリースしたばかりなので、そこからの曲が中心だった。初めて聴く曲ばかりなのだけど、初めて聴いた気がしない曲ばかり。

  バンドメンバーには元村八分のドラマーやあのブームタウン・ラッツのギタリストまで参加してて、それでいて出す音はシンプルなR&R。カッコよすぎ。ラスト前になって登場したのが、現在話題沸騰中の「君が代」パンクバージョン。最初に歌い出しを聴いた瞬間、鳥肌が立った。そして次の瞬間、側にいた人たちと顔を見合わせ大爆笑したよ。だってさ、世間ではやれ「国旗・国家法令案」だので大騒ぎしてるのに、それを嘲笑うかのようなパンクバージョン。しかも村八分のメンバーやイギリス人がバックを支えてるってのも洒落がきいてる。

  この曲のせいでアルバムが発売中止になったりしたけど、何がいけない? だってアメリカではジミヘンが自分の国歌をイカしたバージョンで聞かせてるし、QUEENもイギリス国家、やってるよね? でも今まで、日本で「君が代」をこういう形でプレイしたミュージシャン、いなかったじゃん。そうすることがまるで「ダサい」っていうイメージ、なかった? 清志郎がそれをやってしまった、と。いや、清志郎だからできたんだよ、カッコよくさ。そういう洒落が判らない人間がレコード制作に携わってるんだから……。


◎OCEAN COLOUR SCENE (at GREEN STAGE / 15:10~16:10)

  実はこのライブの最中、うとうとしてた。疲れがピークまできてたってこと。特に印象に残ってないんだけど、ヒット曲プラスこの秋にリリース予定の新作からも何曲か演奏されてたな。演奏は上手い、歌も上手い。以上。って、それほど印象に残らなかったというのが、正直な感想。


◎BERNARD BUTLER (at GREEN STAGE / 16:50~17:50)

  あとで聞いたところによると、この日のバーニーのコンディションは最悪だったそう。にもかかわらず、あそこまで素晴らしいプレイ/歌を聴かせた彼に、この日のベストアクト賞をあげたい。いや、3日間通してでも3本指に入る素晴らしさでしたよ。

  特に印象に残ったのは、「Autograph」での鬼気迫るギタープレイ。そのへんの下手なハードロックギタリストよりもアグレッシヴかつエモーショナル。正直、鳥肌立った。この頃から空には雨雲が立ち込めていたのだけど、あの天気がまた雰囲気を作り出していて。夏の思い出のひとつとして心の中に永遠に残ることでしょう。HOLEの代役として急きょ数週間前に来日が決まったのだけど、バーニーでよかったね?というのが正直な感想。


◎JOE STRUMMER and THE MESCALEROS (at GREEN STAGE / 18:40~19:50)

  ステージにいたのは紛れもなく、あのTHE CLASHにいたジョー・ストラマーその人であり、その音楽であった。これ以上何を言えばいい? そう言わせるだけのステージだった。感涙。


◎ZZ TOP (at GREEN STAGE / 20:40~22:00)

  感涙した後のボーナスといったところだろうか。俺たちのようなモロMTV世代にとっては馴染み深い彼らだが、今の若い人達にとっては「車のCMのヒゲ親父ども」くらいなんだろうな。

  実際のステージを観るのは今回が初めてだが、観てよかったと思う。これぞロック、これぞエンタテンメント。バーニーからの3連チャン、玄人受けしそうなアーティストばかりが目に付くが、3日目を観た人こそが真の意味での「フジロック・サバイバー」なのかもしれない。何となく、そう思ってしまった。

  それにしても、知らない知らないと思っていたけど、結構知ってたんだな、彼らの曲。そういやぁ昔バンドでもカバーした事あったのをふと思い出した。


◎TODOS TUS MUERTOS (at GREEN STAGE / 22:30~23:00)

  初日ではあまりいなかった客も、今日は本当の最後の最後ということもあってか、大歓迎で迎えられ、みんな祭りの余韻を味わっているように感じられた。内容は初日とまったく同じだったけど、インパクトの点ではやはり初日が勝っている感じだった。

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