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カテゴリー「Biffy Clyro」の10件の記事

2021年10月25日 (月)

BIFFY CLYRO『THE MYTH OF THE HAPPILY EVER AFTER』(2021)

2021年10月22日にリリースされたBIFFY CLYROの9thアルバム。日本盤未発売。

昨年8月に発売された前作『A CELEBRATION OF ENDINGS』(2020年)から1年2ヶ月という短いスパンで届けられた本作は、その前作と対になる連作。ロサンゼルスで録音された前作とは異なり、今作は初めて故郷のスコットランドで、たった6週間で完成させたとのこと。それもあってかプロデューサーも、過去2作を手がけたリッチ・コスティー(AT THE DRIVE-INMUSEMY CHEMICAL ROMANCEなど)からアダム・ノーブル(PLACEBO、dEUS、リアム・ギャラガーなど)に交代しています。

前作が“陽”であれば、今作は“陰”。また、前作が“Before”であれば、今作は“After”というように、2枚は表裏一体の関係。当初は前作から漏れた楽曲を完成させるつもりでスタジオに入ったそうですが、セッションを重ねる中でアイデアが膨らんでいき、結果として『A CELEBRATION OF ENDINGS』の“先”にあるものが形となったようですね。

テーマも正反対ならタイトルも正反対。歌詞で表現されているテーマも、例えば前作が不屈な精神だとしたら、今作は人の弱さが扱われているとのこと。そういった要素を従来の彼ららしいアグレッシヴなハードロックや、ポップテイストの強いソフトなナンバーに落とし込んでいるのですが、不思議と爽快感が弱く、(良い意味で)モヤモヤする感覚が伝わってくる。そのへんは歌詞のテーマとリンクしているのでしょうか。このひねくれた感覚もいかにもBIFFY CLYROらしいなと、個人的には前作以上にのめり込んで楽しんでいます。

サンプリングを用いたオープニング曲「DumDum」といい、キャッチーなポップチューン「Witch's Cup」といい、アコースティック色の強い「Holy Water」といい、日本語の「春うらら」をタイトルに用いた穏やかな「Haru Urara」といい、良い意味で内向的な印象が強い。でも、だからといってダークさやネガティブさが強調されているのかというと、また違う。内省的な中から、そこから抜け出そうとするポジティブさも微かに伝わり、そこがもう1枚の『A CELEBRATION OF ENDINGS』とのつながりを感じさせるんですよね。だからこそ、アルバムのラストを飾る異色のアグレッシヴ・ニューウェイヴナンバー「Slurpy Slurpy Sleep Sleep」の意味がとても重要に思えてくる。「DumDum」から始まり「Slurpy Slurpy Sleep Sleep」で終わるこのアルバム、実は非常にストーリー性の強い1枚ではないでしょうか。BIFFY CLYROというクセの強いバンドの、もっとも濃い部分が凝縮された、ファンにはたまらない1枚だと断言します。

後付けの2部作となった今回のアルバム。コロナ禍を経て届けられた内容がこれという点においても、非常に興味深いものがあります。本作を楽しんだあとは再び前作にも立ち返り、この連作の魅力にじっくり浸ってほしいところです。

なお、本作のフィジカル盤(CD)は『A CELEBRATION OF ENDINGS』を完全再現したライブアルバム付き。注文したCDがまだ手元に届いていないので現時点では未聴ですが、ストリーミングサービスで耳にして気になったら、ぜひCDを購入することもオススメします。

 


▼BIFFY CLYRO『THE MYTH OF THE HAPPILY EVER AFTER』
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2021年9月11日 (土)

V.A.『THE METALLICA BLACKLIST』(2021)

2021年9月10日にデジタルリリースされたコンピレーションアルバム。フィジカル(CD、アナログ)は10月1日発売予定。

本作はMETALLICAの5thアルバムにして“ブラックアルバム”の愛称で知られる最大のヒット作『METALLICA』(1991年)の発売30周年を記念して、同作の最新リマスター盤&ボックスセットと合わせて制作・発表された、同作の録り下ろしカバー曲53曲を集めたCD4枚組/アナログ7枚組のコンピレーションアルバム。オリジナルの全12曲を53組が1曲単位でカバーしていくわけですから、そこは当然同じ曲のダブりも発生します。そのへんは、下の内訳を見ていただければご理解いただけるかと。

M-1. Enter Sandman [6組]
M-2. Sad But True [7組]
M-3. Holier Than Thou [6組]
M-4. The Unforgiven [6組]
M-5. Wherever I May Roam [4組]
M-6. Don't Tread On Me [3組/うち1組はM-8との組曲]
M-7. Throught The Never [2組]
M-8. Nothing Elese Matters [13組/うち1組はM-6との組曲]
M-9. Of Wolf And Man [1組]
M-10. The God That Failed [2組]
M-11. My Friend Of Misery [3組]
M-12. The Struggle Within [1組]

M-1、2、4、5、8といったシングルカット曲に人気が集中するのは理解できます。しかし、そんな中でMETALLICA初のスローバラードM-8を13組もがカバーするというのは、非常に興味深いものがあります。まあ、こういったシンプルでわかりやすいバラードのほうが使い勝手も良いのかもしれませんね。

参加アーティストはHR/HMの範疇に含まれるバンドからオルタナ系、パンク/ハードコア、ヒップホップ、R&B、クラブミュージック、ジャズ、ラテン、カントリーなどジャンルさまざま。そういった方々が少なからずMETALLICA(というか『ブラックアルバム』)から影響を受けているというのもあるのでしょうか。「え、その人がその曲をカバーするの?」という驚きから「想定の範囲内!」という安心安定のカバーまで、色とりどりの名曲群カバーを楽しむことができます。

「Enter Sandman」のように個性が確立され切った楽曲はアレンジが難しいのか、基本的にはメインリフを軸に歌やリズムで味付けをしている感が強いかな。そんな中で、フアネスの「Enter Sandman」はメインリフに味付けを加えることで、独特のカラーを作り上げていて好印象。リナ・サワヤマも4つ打ちダンスビートにメタルギターを被せ、歌でぐいぐい引っ張る方法で良き味付けを示しています。WEEZERは途中まで普通かな……と安心していると、途中に“らしい”フレーズを散りばめており、思わずニヤリ。彼らにしては淡白ですが、これはこれでアリかな。

「Sad But True」はリズムがシンプルなので、意外といじりがいがあるのかな。サム・フェンダーのピアノバラード風アレンジも良いし、JASON ISBELL AND THE 400 UNITのブルースロック風も良き。MEXICAN INSTITUTE OF SOUNDもラテンアレンジも、ST. VINCENTの70年代中盤ボウイ風もよかった。

……と細々解説していったらキリがないので、以下はお気に入りのカバーのみ挙げていきます。サイケデリックメタル調に再構築したBIFFY CLYROの「Holier Than Thou」、ゴシック風オルタナロックのCAGE THE ELEPHANT「The Unforgiven」、サイケなヒップホップに進化したJ.バルヴィン「Wherever I May Roam」、ドラムンベース調リミックスのTHE NEPTUNES「Wherever I May Roam」、不穏なピアノの音色にゾクゾクするPORTUGAL. THE MAN「Don't Tread On Me」、メロディを独自に解釈し浮遊感の強いクラブミュージックとミックスさせたトミ・オウォ「Through The Never」、エルトン・ジョンやヨーヨー・マ、ロバート・トゥルヒーヨ、チャド・スミスをバックに従えたマイリー・サイラスの正統派パワーバラード「Nothing Else Matters」、悲しみに満ちた鎮魂歌風のデイヴ・ガーンDEPECHE MODE)「Nothing Else Matters」、逆にメジャーキーに転調したことでパワーポップ風に生まれ変わったMY MORNING JACKET「Nothing Else Matters」、このバージョンで本家にもカバーしてほしいGOODNIGHT, TEXASのオルタナカントリー風「Of Wolf And Man」、スリリングな演奏が心地よいカマシ・ワシントン「My Friend Of Misery」、アコギ2本のみで構築されるインストアレンジがさすがのRODRIGO Y GABRIELA「Struggle Within」……といったところでしょうか。

さすがに4時間以上ある音源集なので、すべてを細々と紐解いていくにはいくら文字があっても足りないくらい。なので、これは配信から半日以上かけて2、3度通して聴いた初日の感想ということで。同じ曲が6曲とか10数曲とか続く構成なので、通して聴く頻度はそう多くはないと思いますが、気になるトラックを複数ピックアップしてプレイリストで聴くというのもアリかな。もちろん、『ブラックアルバム』からの印象的/特徴的なカバーは本作に収録された以外にもたくさん存在するので、それらを混ぜ込んだプレイリスト作りもありかもしれませんね。

 


▼V.A.『THE METALLICA BLACKLIST』
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2021年8月 5日 (木)

BIFFY CLYRO『OPPOSITES』(2013)

2013年1月28日にリリースされたBIFFY CLYROの6thアルバム。日本盤は同年1月22日に先行発売。

バンド最大のヒット作となった5thアルバム『ONLY REVOLUTIONS』(2009年)から約3年2ヶ月ぶりに発表された今作は、初のCD2枚組/全20曲(デラックス盤は22曲)というボリューミーな内容。にもかかわらず全英1位を獲得し、「Black Chandelier」(全英14位)、「Biblical」(同70位)、「Opposite」(同49位)、「Victory Over The Sun」(同152位)というヒットシングルを続発させました。シングルはチャート的には小粒ですが、それでもロックが低迷しつつあった2010年代半ばにしては大健闘ではないでしょうか。

プロデュースは過去2作を手がけたガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINEMELVINSSKUNK ANANSIEなど)のほか、バンドもコ・プロデュースで名を連ねています。ミックスはこれまでのアンディ・ウォレスからライアン・ウィリアムス(ATREYU、THE BLACK DAHLIA MURDER、THE VANDALSなど)に交代。1曲(「The Fog」)のみマイク・“スパイク”・ステント(マドンナOASISKEANEなど)が手がけています。

各ディスクはそれぞれ『THE SAND AT THE CORE OF OUR BONES』(DISC 1)、『THE LAND AT THE END OF OUR TOES』(DISC 2)と韻を踏んだサブタイトルが付けられており、1枚1枚を独立したアルバムとして楽しむことも可能です。ちなみに本作、2枚のディスクに収録された20曲から厳選した14曲で構成されたCD1枚ものの編集版も用意されているので、購入する際はご注意を。

『THE SAND AT THE CORE OF OUR BONES』はゆらゆらとしたオープニングから一気にギアが入る「Different People」で幕開け。以降は「Black Chandelier」などいかにも彼ららしいポップ&キャッチーなミディアムナンバーで独特の世界観を構築していきます。前作で確立させたBIFFY CLYROらしい個性が見事な形で拡張されており、フォローアップ作としては文句なしと言えるのではないでしょうか。

一方で、DISC 2『THE LAND AT THE END OF OUR TOES』はヘヴィなリフを持つ「Stingin' Belle」から幕開け。オープニングで慄くものの、歌が入ればいつもどおりの彼ららしいポップさ全開なので、ご心配なく。また、このディスクのみならず全編を通して散りばめられたストリングスアレンジは、前作から引き続きデヴィッド・キャンベル(ベックの実父)が担当。特に今回は「Stingin' Belle」でバグパイク、「Spanish Radio」でブラスなどもフィーチャーされており、音的な広がりは前作以上ではないかと思っています。

2枚のディスクの違いを言葉にするのは難しいですが、1枚目よりも2枚目のほうが少しだけ先鋭的な気がするのですが、それも誤差範囲と言ってしまえばそれまでかな。2枚の異なるディスクというよりは、それぞれにストーリーを持たせた対となる兄弟的な2枚といったほうが正しいのかもしれません。

なお、本作のデラックス盤(デジタル版含む)には各ディスクにボーナストラックとして、それぞれのサブタイトルと同名のインストゥルメンタル曲を追加。どちらも1〜2分程度の小楽曲なので、エピローグ的なものと捉えてもらえれば。このインストが入るバージョンも余韻を作ってくれていいんですよね。

 


▼BIFFY CLYRO『OPPOSITES』
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BIFFY CLYRO『ONLY REVOLUTIONS』(2009)

2009年11月9日にリリースされたBIFFY CLYROの5thアルバム。日本盤は同年12月23日発売。

前作『PUZZLE』(2007年)が初の全英1位を獲得し、名実ともに英国を代表するロックバンドの仲間入りを果たしたBIFFY CLYRO。続く今作は1位こそ逃すものの全英2位まで上昇し、初のダブルプラチナムを達成。現在までバンドの最高売り上げを記録する代表作として知られます。また、本作からは「Mountains」(全英5位)、「That Golden Rules」(同10位)、「The Captain」(同17位)、「Many Of Horror」(同8位)、「Bubbles」(同34位)、「God And Satan」(同36位)と6枚ものヒットシングルが生まれています。

プロデューサーにガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINEMELVINSSKUNK ANANSIEなど)、ミキサーにアンディ・ウォレス(NIRVANASLAYERHELMETなど)という布陣は前作から引き続き。要所要所にストリングスをフィーチャーした豪快さやスリリングさを強要したアレンジが魅力的なのもこれまで同様。ただ、前作と大きく異なるのは1曲1曲の完成度がさらに高まっている点で、それが先に触れた数々のシングルヒットにつながっているし、またアルバムとして通して聴いたときもその1曲1曲の高品質さが相乗効果を起こし、結果アルバムとしてのまとまりの良さに一役買っている。そりゃ売れるわけですよ。

本作ではジュシュア・ホーミー(QUEENS OF THE STONE AGE)が「Bubbles」でギターにてゲスト参加。ストリングスアレンジではかのデヴィッド・キャンベル(かのベックの実父)が主導権を握り、「The Captain」や「Many Of Horror」のような楽曲でダイナミックさを強調しています。この繊細さが備わったアレンジこそ彼らの醍醐味であり、アメリカのFOO FIGHTERSとは一線を画する点ではないでしょうか(フーファイもそういったトライを何度もしていますが、正直ここまで武器にはしていませんし)。

「Booooom, Blast & Ruin」や「Cloud Of Stink」のようなアップチューンも存在しますが、むしろ彼らの魅力は大らかなノリを持つミディアムナンバー。アルバムの冒頭を「The Captain」のような楽曲が飾る時点で、彼らの余裕が伝わるのではないでしょうか(そこも前作『PUZZLE』との大きな違いで、今作で得た自信が今後のスタイルに大きくつながっていくわけですね)。

本作での成功は彼らを国民的バンドの座へと引き上げ、続く2枚組アルバム『OPPOSITES』(2013年)のヒットがさらにダメ押しすることになります。

 


▼BIFFY CLYRO『ONLY REVOLUTIONS』
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2021年4月20日 (火)

WHILE SHE SLEEPS『SLEEPS SOCIETY』(2021)

2021年4月16日にリリースされたWHILE SHE SLEEPSの5thアルバム。現時点で日本盤未発売。

全英21位を記録した前作『SO WHAT?』(2019年)から2年ぶりの新作。ヘヴィさと親しみやすさ、さらにはエレクトロの要素も適度にフィーチャーするなど全体的にバランス感に優れており、軽く前作超えの1枚に仕上がっています。

バンドは昨年からPatreon.comというプラットフォームを通じて、「Sleeps Society」と呼ばれるサブスクリプションサービス型ファンコミュニティを開始。アルバムはこのサービス名と同名で、収録曲「Call Of The Void」にはこのサービスの会員による歌声もフィーチャーしています。さらに、「Nervous」にはサイモン・ニール(Vo/BIFFY CLYRO)、「No Defeat For The Brave」にはデリック・ウィブリー(Vo/SUM 41)がそれぞれゲスト参加。BIFFY CLYROのニール、最近はARCHITECTSの新作『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』(2021年)にも参加していたけど、交友関係広いのね。

さて、先にも書いたように本作は非常にバランス感が絶妙な内容で、冒頭2曲でヘヴィさを強調したかと思えば、ハードテクノのようなデジタルリフが気持ち良い「Systematic」があったり、「Nervous」や「Know Your Worth (Somebody)」などではキャッチーなメロディで親しみやすさを与える。また、「No Defeat For The Brave」ではオーケストレーションも取り入れ壮大さをアピールし、異色のピアノバラード「Division Street」はまるで賛美歌のように聴こえる。UKメタルコアの美味しいとこ採りでバラエティ豊かな内容なんだけど、散漫さは皆無。しっかり芯が存在し、かつ豪快さの中にも適度な甘さが散りばめられており、聴いていてまったく疲れないんですよ。

作品の方向性としては確実に前作の延長線上にあるんだけど、印象に残るかどうかでいったら今作のほうがダントツ上。なぜなんでしょう……これって結局、ライブができなかった2020年を制作に費やしたことが大きかったんでしょうか。だとしたら、どのバンドもみんな良い作品になるはず(暴言)。

とにかく、すべてにおいてきめ細やかな作りで、言い方はアレかもしれませんが「メタルコア/モダンメタルの良曲プレイリスト」的な1枚と言えなくもない。ああ、だから良いのか。しかも曲順が練られていて、軸がブレていないから気持ちよく楽しめる。正直なところ、彼らのアルバムの中で1枚通してここまで「これは良い!」と思えたのは、初めてかもしれません。それくらい文句なしの1枚。先のARCHITECTSの新作同様、2021年のUKモダンメタルシーンを象徴する傑作ではないでしょうか。

ARCHITECTSは新作でついに全英1位を獲得してしまいましたが、WHILE SHE SLEEPSもこの新作でいいところまでいくんじゃないか……そう強く実感させる、問答無用の1枚です。

 


▼WHILE SHE SLEEPS『SLEEPS SOCIETY』
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2021年3月 1日 (月)

ARCHITECTS『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』(2021)

2021年2月26日にリリースされたARCHITECTSの9thアルバム。現時点で日本盤未発売。

トム・サール(G, Key)の死を経て完成させた前作『HOLLY HELL』(2018年)が全英18位と3作連続でUK TOP20入りしたほか、全米89位と初のBillboard TOP100入りを果たしたARCHITECTS。初のウェンブリー・アリーナ公演も大成功を収めるなど、もはや一介のメタルコアバンドから“次世代を担うUKメタルバンド”へと成長を遂げたと言っても過言ではないでしょう。

そんな彼らが2年3ヶ月というスパンを経て完成させた本作は、前作から引き続きダン・サール(Dr/亡くなったトムの双子の弟)&前作から正式加入のジョシュ・ミドルトン(G/SYLOSIS)がプロデュースを担当。トムへ捧げられた楽曲が多く含まれた前作から一転、今作ではカオティックな要素や悲壮感は若干後退し、ポップさやストレートさが増した印象を受けます。

今作のテーマは「今からでも遅くはない」というポジティブさと「敗北主義」というネガティブさの狭間にある、地球の未来が直面している問題の数々。これらを彼ららしいキャッチーなメロディと硬質なメタルコアサウンドに加え、エレクトロの要素やストリングスなどによるオーケストレーション、クワイアなどをフィーチャーすることで楽曲本来が持つ親しみやすさを、よりわかりやすい形に拡張することに成功しています。

上記のようなアレンジは前作にも見られたものですが、今回の場合は曲によっては絶望感を強調する武器にもなり、またある曲では希望が伝わるような温かみにもつながっている。この変化の付け方に、前作以上に巧みさが感じられ、バンドとして(あるいはダン&ジョシュのプロデュースチームとして)表現力や技術力の成長が大いに感じられるのです。確かに以前のアルバムと比べたら“ヤワになった”ように映るかもしれません。しかし、僕はこの進化を非常に前向きに捉えており、これこそが“次世代を担うUKメタルバンド”としての覚悟の表れなんじゃないかと考えています。

また、本作はフィーチャリングゲストの多彩も魅力のひとつで、「Impermanence」にはPARKWAY DRIVEのウィンストン・マッコール(Vo)、「Little Wonder」にはROYAL BLOODのマイク・カー(Vo)、「Goliath」にはBIFFY CLYROのサイモン・ニール(Vo)がそれぞれ参加。PARKWAY DRIVEは同時代を生きる「メタルコアからアリーナ/スタジアムバンドへと登りつめた稀有な存在」同士だし、ROYAL BLOODやBIFFY CLYROはメタルコアというよりはオルタナティヴロックの範疇に含まれるものの、同じUKを代表するロックバンドとしての絆を感じさせるコラボだし、と何かと話題性も多いのではないでしょうか。

全15曲で約58分と非常にボリューミーな大作ですが、1曲1曲の作り込みが尋常じゃないので全編通して聴いても飽きることはないのでは。少なくともこの数日、本作を何度もリピートしていますが、聴くたびに新たな発見が見つかる。2021年のメタルシーンを象徴する1枚になるのではないか?と、個人的には確信しています。

数字的にもキャリア的にも、ここで一気に化けることが期待できる、“確変”の1枚です。

 


▼ARCHITECTS『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』
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2020年8月24日 (月)

BIFFY CLYRO『A CELEBRATION OF ENDINGS』(2020)

2020年8月14日にリリースされたBIFFY CLYROの8thアルバム。

オリジナルアルバムとしては前作『ELLIPSIS』(2016年)からほぼ4年ぶりとなりますが、その間にアコースティックライブアルバム『MTV UNPLUGGED: LIVE AT ROUNDHOUSE, LONDON』(2018年)、映画のサウンドトラックアルバム『BALANCE, NOT SYMMETRY』(2019年)を立て続けに発表しているので、何気に久しぶりという感覚はないかも。とはいえ、最後に来日したのが『ELLIPSIS』リリース直後の『FUJI ROCK FESTIVAL '16』なので、日本のファン的にはだいぶ長いことご無沙汰しました感があるんですけどね。

4年というスパンも過去最長。そんな「満を辞して」感の強い本作は、前作から引き続きリッチー・コスティー(AT THE DRIVE-INMUSEMY CHEMICAL ROMANCEなど)がプロデュースを担当。以前も書いたように「UK版FOO FIGHTERS」(本当はスコットランド出身)という形容がぴったりなアリーナ/スタジアムロックを展開しており、そのダイナミズムに関しては若干穏やかだった前作以上ではないでしょうか。

ただ、本作にはストリングスを大々的にフィーチャーした楽曲も少なくなく、そういった味付けで繊細さや穏やかさを表現。激しいバンドサウンドとの対比としてうまく活用しています。リード曲にしても「Tiny Indoor Fireworks」のようにソフトなものから、アグレッシヴさを前面に打ち出した「End Of」、シンセによる味付けがEDM以降のモダンポップ的な「Instant History」、ストリングスを導入したことで壮大さが一気に増したバラード「Space」まで非常に幅広く、単にロックファンにだけ届けようとするのではなく、もっと広い層にまで行き届くような工夫が感じられます。

そう聞くと、「アルバムとしてはブレブレなんじゃないの?」とお思いでしょうが、そもそもBIFFY CLYROってそういうバンドじゃないですか? 変態的なアレンジを多用しつつもメロディはキャッチー、だけどハードロック的な攻撃性も備え持つ。そこが先のFOO FIGHTERとも重なる点でもあるわけで、こんなに優秀なバンドがなぜもっと海外でブレイクしないのか、不思議でなりません。

個人的には前作以上の完成度だと思っているし、聴く頻度も明らかに前作超え。『PUZZLE』(2007年)や『ONLY REVOLUTIONS』(2009年)にも匹敵する1枚だと思います。日本盤も海外と同日に、ひっそりとリリースされていますので、ぜひ手に取ってみてください(まずはストリーミングでの視聴から初めてもいいので)。

なお、本作は『OPPOSITES』(2013年)から3作連続UK1位を獲得。ロック低迷と言われる中で大健闘の数字を残してくれました。

 


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2019年9月27日 (金)

BIFFY CLYRO『PUZZLE』(2007)

2007年6月発売の、BIFFY CLYRO通算4作目のスタジオアルバム。日本盤は少々遅れ、同年10月にリリースされています。

それまで名門インディレーベルBeggars Banquetから3作のアルバムを発表してきた彼らですが、チャート的にはTOP50に入るのが精一杯。ところが、Roadrunner Records移籍第1弾アルバムに当たる今作は、全英2位という大成功を収め、「Saturday Superhouse」(全英13位)、「Living Is A Problem Because Everything Dies」(同19位)、「Folding Stars」(同18位)、「Machines」(同29位)、「Who's Got A Match?」(同27位)と計5作ものシングルヒットを生み出すことになります。

プロデューサーにガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINE、MELVINS、SKUNK ANANSIEなど)、ミキサーにアンディ・ウォレス(NIRVANASLAYERHELMETなど)というアメリカでの売れっ子を起用した本作は、文字通りワールドワイドな活躍を目標として制作された1枚。アートワークなんて、かのストーム・ソーガソンですからね。ポスト・グランジ的手法のハードロックサウンドをベースに、時にエモ、時に古典的ブリティッシュロック、時にプログレ、時に正統派ポップスなど、さまざまな要素を器用に取り入れることで、ひとつの枠に収まりきらない変幻自在なサウンドを繰り出しています。

まあ、このアルバムはオープニングの「Living Is A Problem Because Everything Dies」を聴いた時点で「優勝!」と思わずにはいられないのでは。ストリングスをフィーチャーしたスリリングなイントロといい、オペラ調のコーラスを散りばめたアレンジといい、そのあとに続く疾走感の強いハードロックサウンドといい、キャッチーな歌メロといい、すべてが高品質で緻密に作り込まれているわけです。

その後も、上に書いたようなテイストを含む楽曲群が続くわけですが、これがどれも捨て曲なし。歌メロは本当にポップで親しみやすいものばかりだし、サウンドもヘヴィすぎない適度なハードさが備わっており、HR/HMが苦手なリスナーにも取っ付きやすい魅力的なものに仕上げられている。

そうそう、これってアメリカのFOO FIGHTERSがやっていたことをイギリス(正確にはスコットランドですが)というフィルターを通すとこうなりますという、ひとつの回答ではないのかなと。もちろん、BIFFY CLYROはここからアルバムを重ねるごとにその音楽性をどんどん進化させていき、結果として国民的バンドへと成長を遂げるわけです。

もちろん、それ以前の3作からここで大きく方向性が変わったわけではないですし、Beggars Banquet時代のアルバムも今聴いてもイカしてると思います。が、世界規模で通用する“垢抜けた”感は確実にこの『PUZZLE』から始まっており、この転換期がなかったら彼らはイギリスでの大成功も得られていなかったと思います。

残念ながらアメリカでの成功はいまだに収めることができていませんが、現時点での最新オリジナルアルバム『ELLIPSIS』(2016年)はスコットランド&UKで1位を記録したほか、ドイツやスイス、アイルランドでも1位を獲得。オーストリアで5位、フィンランドで10位、オランダで13位とヨーロッパ圏ではそれなりの結果を残せているわけですから、彼らの選択は間違っていなかったんだと思います。

 


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2018年6月 5日 (火)

BIFFY CLYRO『MTV UNPLUGGED: LIVE AT ROUNDHOUSE, LONDON』(2018)

ついにBIFFY CLYROまで『MTV UNPLUGGED』に出演。本国ではそこまで“求められる”存在なのは今に始まったことではないし、逆にここ日本では過去5年は『FUJI ROCK FESTIVAL』でしか来日していないため、あのライブのすごさがなかなか伝わりにくいという現実もあります。一度ナマで観ちゃえば、絶対にハマること間違いなしなんだけどね(筆者もそのクチです)。

本作に収められている音源は、昨年11月にロンドンROUNDHOUSE(1700人キャパ)で行われた収録の模様を収めたもの。アルバム発売日にはここ日本でもMTV JAPANで映像が放送されたので、ご存知の方も多いかもしれません。

本国ではCD単品とMP3(およびストリーミング)、CD+DVDなどの仕様でリリースされていますが、今のところ日本盤リリースは予定なし。輸入盤の映像は日本語字幕なしなので、今はMTV JAPANでオンエアされたものを楽しむほかありません(オンエア盤は全曲オンエアされてませんが)。筆者は録画したものを何度もリピートして楽しんでいるところです(MCで「今日は“肉”は用意してないよ」的なことを言ってたのには笑いました)。

もともとメロディがしっかりしたバンドなので、歪みや装飾を剥ぎ取ったところで、本来の魅力は色褪せることなく。むしろ通常のライブではハイテンションで攻めまくるあのテイストがなくなったことで、BIFFY CLYROというバンドの軸がしっかり見える好盤ではないでしょうか。

オープニングを飾る「The Captain」みたいに、ライブでは盛り上げに必須の1曲も、こうやって骨格がはっきり見えることでひたすらポップでキャッチーな1曲であることに気づかされるし(もちろん最初からわかってはいましたが)、アコースティックアレンジに生まれ変わったことでより地味になった(笑)「Black Chandelier」とか、実は美メロで馴染みやすい「Re-arrange」とか、とにかくこのバンドの入り口にふさわしい名曲群がより親しみやすいスタイルに生まれ変わっている。中にはBEACH BOYS「God Only Knows」のカバーや、このライブのために用意された新曲「Different Kind Of Love」まで聴くことができる。

きっと、「やっぱり素晴らしいバンドなんだ!」と再認識させられることでしょう。ぶっちゃけ、このバンドに対して妙な偏見を持っているリスナーにこそ聴いてほしい1枚です。

それにしても、オーディエンスが冒頭から大合唱しているのが羨ましい。日本でもこれくらい盛り上がってくれたなら、もっと来日してくれるんでしょうに。まあ、フェスであのスケール感を堪能できるのも嬉しいけど、もし日本でZeppやSTUDIO COASTキャパで観ることができたら、一気に人気が爆発するんじゃないか……そう信じて止みません。



▼BIFFY CLYRO『MTV UNPLUGGED: LIVE AT ROUNDHOUSE, LONDON』
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2016年12月18日 (日)

BIFFY CLYRO『ELLIPSIS』(2016)

2枚組ながらも初の全英1位を獲得した前作『OPPOSITES』(2013年)から3年半ぶり、通算7枚目のオリジナルアルバム。前作発表後、2014年に「FUJI ROCK FESTIVAL '14」で久しぶりの来日が実現し、WHITE STAGEヘッドライナーのMANIC STREET PREACHERSを食わんばかりの圧倒的なステージを繰り広げたのは記憶に新しいと思います。事実、僕もあのステージで完全にやられた者のひとり。アルバムは『PUZZLE』(2007年)以降毎作聴いてましたが、やっぱりライブを観ないとわからないものですね。

今回のアルバムもUK1位を獲得。いかにも彼ららしい壮大なミディアムナンバー「Wolves Of Winter」からスタートし、アップテンポな「Animal Style」のような楽曲はありつつも、アルバムの核をなすのはスケール感の大きなミドルチューン。明らかに数万人規模のアリーナやスタジアムで鳴らされることを意識して作られたであろう楽曲は、デカい音で聴けば聴くほどその魅力が増すものばかりです。もちろん穏やかなテイストの「Re-arrange」「Small Wishes」やアコースティックナンバー「Medicine」なども混在し、アルバムは緩急をつけながら進行していきます。全体的に見ても「Wolves Of Winter」で始まり切れ味鋭い「In The Name Of The Wee Man」で締めくくる構成に、このバンドの魅力が表れている気がしてなりません。

どことなく「UK版FOO FIGHTERS」(UKといいつつ、実はスコットランド出身)というイメージがあるBIFFY CLYROですが、このアルバムにはスコティッシュとしてのアイデンティティもしっかり感じられます。と同時に、よりワールドワイドな戦いを挑む上で必要な試みも随所に用意されており、そういう意味では「第二のデビューアルバム」的作品と言えるかもしれません。アメリカでの成功はまだつかんでいませんが、きっかけさえあれば確実に受け入れられると信じて止みません。



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