SLASH『ORGY OF THE DAMNED』(2024)
2024年5月17日にリリースされたスラッシュの最新ソロアルバム。日本盤は同年5月22日発売。
近年はGUNS N' ROSESとしてのツアーと並行して、自身のバンド・SLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS名義でのソロ活動を充実させていたスラッシュ。純粋なソロ名義でのアルバムはセルフタイトルの初ソロアルバム『SLASH』(2010年)以来14年ぶり、THE CONSPIRATORSとしてのアルバム『4』(2022年)からは約2年ぶりのスタジオ音源となります。
今作では曲ごとにさまざまなフロントマン(シンガー)をフィーチャーした、『SLASH』に次ぐ内容。ただ、『SLASH』がオリジナル曲で構成されていたのに対し、今作では往年のブルース&ソウルナンバーをカバーしており、スラッシュというミュージシャン/ギタリストの根源にあるものをストレート&ダイレクトに届けるスタイルとなっています。
参加アーティストはクリス・ロビンソン(Vo, Harp/THE BLACK CROWES)、ゲイリー・クラーク・Jr.(Vo, G)、ビリー・F・ギボンズ(Vo, G/ZZ TOP)、クリス・ステイプルトン(Vo)、ドロシー(Vo/DOROTHY)、イギー・ポップ(Vo)、ポール・ロジャース(Vo/ex. FREE、ex. BAD COMPANYなど)、デミ・ロヴァート(Vo)、ブライアン・ジョンソン(Vo/AC/DC)、スティーヴン・タイラー(Harp/AEROSMITH)、タッシュ・ニール(Vo, G)、ベス・ハート(Vo)、ジョニー・グリパリック(B)、マイケル・ジェローム(Dr)、テディ・アンドレアディス(Key)などと、ジャンルの枠を超えた豪華な面々。ポップフィールドにまで幅を利かせているのは、初ソロアルバム『SLASH』同様ですね。その『SLASH』にも重複しての参加はイギー・ポップのみかしら。
選曲はCREAMの名演でお馴染み「Crossroads」をはじめ、「Hoochie Coochie Man」や「Key To The Highway」「Born Under A Bad Sign」「Papa Was A Rolling Stone」など誰もが一度は耳にしたことがある名曲から、FLEETWOOD MACの初期曲「Oh Well」やLED ZEPPELINがパクったことで知られる「Killing Floor」まで、クラシックロックのルーツナンバーが満載。これらの楽曲を原曲の空気感を大切にしつつ、スラッシュがエモーショナルで豪快なギタープレイを思う存分奏でている。また、曲ごとに色の異なるシンガーたちが、地味かつシンプルな原曲の世界に見事に華を添えており、全12曲/約70分と長尺ながらも比較的スルスルと聴き進めることができるはずです。
オープニングを飾るクリス・ロビンソン節炸裂の「The Pusher」を筆頭に、とにかくどの曲もボーカリストのカラーとスラッシュの(時に手癖に頼りつつ、時にはそこから逸脱した)エネルギッシュなギタープレイが印象的。中でも、イギー・ポップをフィーチャーした「Awful Dream」と、こういうオムニバス作品にソロで参加するのは比較的珍しいブライアン・ジョンソン参加の「Killing Floor」(しかもハープはスティーヴン・タイラー)、デミ・ロバートの色香漂うボーカルとスラッシュのマウスワウがスリリングさを醸し出す「Papa Was A Rolling Stone」は個人的にもお気に入りです。
ラスト12曲目には本作で唯一のオリジナル曲「Metal Chestnut」も用意。こちらはインストナンバーなので、アルバム本編の余韻を増幅されるようなエンドロール的役割でもあるのかな。
随所にスリリングさをはらみつつも、全体としてはリラックスモードで楽しめる本作。THE CONSPIRATORSとしてのアルバム『4』で円熟みを増し始めたスラッシュのギタープレイが、ここでさらに深まっていることに気づかされるはずです。
▼SLASH『ORGY OF THE DAMNED』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)