カテゴリー「Black Sabbath」の31件の記事

2023年2月 8日 (水)

BLACK SABBATH『BORN AGAIN』(1983)

1983年9月12日にリリースされたBLACK SABBATHの11thアルバム。邦題は『悪魔の落とし子』。

ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)とヴィニー・アピス(Dr)の脱退を受け、体勢を立て直そうとしたBLACK SABBATH。当初はロバート・プラント(ex. LED ZEPPELIN)やデヴィッド・カヴァーデイルWHITESNAKE、ex. DEEP PURPLE)といった有名どころから、当時はまだ無名だったマイケル・ボルトンまでもが候補に上がったものの、新たに契約したマネジメントから当時GILLANとして活動中だったイアン・ギラン(ex. DEEP PURPLE)をプッシュされ、この豪華なコラボレーションが実現することとなりました。

そもそもトニー・アイオミ(G)やギーザー・バトラー(B)はこのセッションから生まれた楽曲を、BLACK SABBATH名義として発表するつもりはなかったようで、最終的にはマネジメント側からの猛烈なプッシュでBLACK SABBATH名義でリリースされてしまったとのこと。それもあってか、楽曲の数々はオジー・オズボーン時代ともディオ時代とも異なる、不思議な浮遊感を醸しさすハードロックが展開されています。もちろん、随所からオジー時代はディオ時代の香りは多少するものの、最終的にギランの特徴的なボーカル&シャウトによって打ち消されてしまうのです。

アイオミのギターワークや、ベースとのユニゾンを基調としたリフ作りはどこかモダンさを感じさせ、のちのグルーヴメタル的でもあるような……そう、「Zero The Hero」を筆頭に、意外にもここで展開されている手法って90年代以降のグランジやオルタナメタル的なものに近いんですよね。僕自身がそれに気づいたのも、実はつい最近のことなんですが。だって、それ以前はどうしても“失敗作”“SABBATH PURPLE”みたいな揶揄がお似合いの1枚だと思い込んでいましたから。

とはいえ、アートワークの酷さは苦笑ものですし、ぼんやりしたミックスや安っぽいギターの音作りは減点対象以外の何ものでもありませんが。あと、「Digital Bitch」はどう聴いても“SABBATH PURPLE”と呼ぶにぴったりな仕上がり。「Disturbing The Priest」や「Born Again」などいいところいってる曲もなくはないんですが、もうちょっと頑張れたんじゃないかなという気も。まあ、歌うのがギランじゃねえ……と言っては失礼かもしれませんが、キャラクターのオジー、表現力のディオの後釜としては荷が重すぎますよ。

母国イギリスでは最高4位と好記録を残すものの、本作完成後にはビル・ワードが再脱退(その後、1998年まで復帰せず)。ギランも再結成DEEP PURPLEに参加するため、短期間でバンドを離れることとなります。その後、BLACK SABBATHはやむを得ず活動休止に突入するのでした。

 


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2023年2月 7日 (火)

BLACK SABBATH『MOB RULES』(1981)

1981年11月4日にリリースされたBLACK SABBATHの10thアルバム。邦題は『悪魔の掟』。

トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ビル・ワード(Dr)のオリジナル編成にロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo/ex. RAINBOW)が加入して制作された前作『HEAVEN AND HELL』(1980年)が、本国イギリスで最高9位、アメリカでも最高28位とヒットを飛ばし、辛うじて低迷期を脱したBLACK SABBATH。しかし、その成功も束の間、『HEAVEN AND HELL』を携えたツアー途中でビルが脱退してしまいます。

しかし、そのツアーを支えたのが、リック・デリンジャーなどと活動をともにしてきたヴィニー・アピス(Dr)。バンドはそのままヴィニーを正式メンバーに迎え、ジェフ・ニコルズ(Key)をレコーディングメンバーに迎えて、再びマーティン・バーチ(IRON MAIDENWHITESNAKEDEEP PURPLEなど)とスタジオ入りします。

ロニー、トニー、ギーザーの3頭体制で制作された楽曲の数々は、『HEAVEN AND HELL』の雰囲気を引き継ぎつつも若干オジー・オズボーン期のテイストも復調。それもあってか、前作ほど様式美を追求した方向性というわけでもなく、「Neon Knights」をより陽気にさせたアップチューン「Turn Up The Night」やひたすらヘヴィさに振り切ったミドルナンバー「The Sign Of The Southern Cross」、豪快さが増した「The Mob Rules」、オジーが歌っても何ら違和感のない「Country Girl」など比較的バラエティ豊かな楽曲群はどこか軸を失ったようにも映り、聴き手に散漫な印象を与えます。

1曲1曲の仕上がりは非常に高く、トニーのギターワークもオジー時代のおどろおどろしさ&ヘヴィさ、そして『HEAVEN AND HELL』で得たメロディアスなスタイルの両面を発揮しており、アーティスト/プレイヤーとしての成長を強く感じさせる。しかし、それがアルバムのトータル面に直結したかといえばそうでもなく、残念ながら1枚のまとまったアルバムとしての完成度は前作より劣っていると言わざるを得ません。

ロニーの持ち味を見事に活かした「Falling Off The Edge Of The World」のような名曲も存在するものの、この方向でひっぱり切ったらもっと成功できたんじゃないか……そんなもどかしさを伴う1枚です。個人的には嫌いになりきれない魅力もしっかり感じているんですけどね。結局、本作での活動を経て1982年にロニーとヴィニーがバンドを脱退し、そのまま新バンドDIOを結成。その後、サバスは意外なシンガーをリクルートすることになります。

 


▼BLACK SABBATH『MOB RULES』
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2022年10月30日 (日)

OZZY OSBOURNE『PATIENT NUMBER 9』(2022)

2022年9月9日にリリースされたオジー・オズボーンの12thアルバム(スタジオアルバムとしては通算13作目)。

コロナ禍ということもあり、前作『ORDINARY MAN』(2020年)から約2年半という非常に短いスパンで届けられた今作。前作が10年ぶりの新作だったことを考えると、この間隔の短さは異常と思わずにはいられません。

全米3位という過去最高順位を獲得した前作に倣い、今作も引き続きアンドリュー・ワット(ポスト・マローン、ジャスティン・ビーバー、マイリー・サイラスなど)がプロデュースを担当。ただ、前作がダフ・マッケイガン(B/GUNS N' ROSES)とチャド・スミス(Dr/RED HOT CHILI PEPPERS)、そしてアンドリュー(G)がベースのトラックをレコーディングにしたのに対し、今回はベースにダフ、ロバート・トゥルヒーヨ(METALLICA)、クリス・チェイニー(ex. JANE'S ADDICITIONなど)、ドラムにチャドのほかテイラー・ホーキンス(FOO FIGHTERS/本作が生前最後のレコーディング作品)が参加し、ギターのベーシックトラックもアンドリューに加えザック・ワイルドBLACK LABEL SOCIETY )もプレイしていることから、前作以上に“戻ってきた感”が強まっています。

また、リードギター/ギターソロに関しても曲ごとに豪華なゲストを迎えているのが本作最大の特徴。ザックが4曲でそれらしいプレイを披露しているほか、マイク・マクレディ(PEARL JAM)が1曲、BLACK SABBATH時代の盟友トニー・アイオミが2曲、60年代“3大ギタリスト”のうちの2人……ジェフ・ベックが2曲、エリック・クラプトンが1曲にゲスト参加と、ツアーが行えず固定バンドを持たない今のタイミングならではのバラエティ豊かな布陣が華を添えています。

楽曲の指向自体は『ORDINARY MAN』の延長線上にある、“BLACK SABBATHのいいとこ採り+『NO MORE TEARS』(1991年)以降の王道ハードロック”路線を踏襲した楽曲ばかり。例えば、アイオミ参加の「No Escape From Now」はアレンジ含め完全にサバスを踏襲したものだし、ジェフ・ベックがプレイするタイトルトラックも前作に収録されていても不思議じゃない仕上がり。そんな中、クラプトンがいかにもなプレイを披露する「One Of Those Days」が“サバス meets CREAM”みたいなサイケデリックハードロックで、思わずニヤリとしてしまいます。

かと思えば、ザックが豪快なギタープレイを聴かせてくれる「Parasite」や「Evil Shuffle」はもろにBLACK LABEL SOCIETY経由のオジーサウンドだし、「Mr. Darkness」や「Nothing Feels Right」は良い意味で『NO MORE TEARS』以降を思わせるコラボレーションといった印象。さすが息が合っていると言いますか、痒いところに手が届く仕上がりです。

個人的には、マイク・マクレディ参加の「Immortal」が曲調/メロディ含め『NO REST FOR THE WICKED』(1988年)〜『NO MORE TEARS』期のオジーっぽかったり、終盤に収められた「Dead And Gone」も『THE ULTIMATE SIN』(1986年)期を彷彿とさせたりと好印象。さらに、ラストを飾る2分程度のスローブルース「Darkside Blues」もお遊び以上の魅力があり、非常に気に入っています。

前作に存在したピアノバラードなどスローナンバー皆無、全13曲で60分強と非常にボリューミーな内容で、消化するまでに少々時間を要する作品ですが、個人的には今作って前作『ORDINARY MAN』と対で存在することで成立する1枚なのかなという気がしています。これ1枚だけで評価するとミスリーディングしてしまいそうだけど、『ORDINARY MAN』から地続きの連作として捉えると初めて見えてくるものがある。そんな意味深な良作ではないでしょうか。

 


▼OZZY OSBOURNE『PATIENT NUMBER 9』
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2022年2月11日 (金)

BLACK SABBATH『LIVE EVIL』(1982)

1982年12月14日にアメリカでリリースされたBLACK SABBATH初のライブアルバム。本国イギリスでは翌1983年1月18日発売。

オジー・オズボーン(Vo)在籍時はライブアルバムを1枚も制作することもなく、オジー脱退後に1973年の音源がバンドの許諾なしに『LIVE AT LAST』(1980年)と題して発表されたのみ。バンド公認のライブアルバムはこのロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)在籍時の音源が最初の正式リリースとなるわけです。

本作はディオ加入後2作目のスタジオアルバム『MOB RULES』(1981年)を携えて、1982年4〜5月に実施されたUSツアーからセレクトされたもの。当時のメンバーはトニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)のオリジナルメンバーにディオ、『MOB RULES』から参加のヴィニー・アピス(Dr)、そしてツアーメンバーのジェフ・ニコルス(Key)という布陣。『HEAVEN AND HELL』(1980年)や『MOB RULES』からの楽曲をライブで再現するにはキーボードは欠かせませんものね。

アルバムのキモとなるのは、もちろんディオ加入後の楽曲……「Neon Knights」や「Children Of The 」シー「Heave And Hell」といった『HEAVEN AND HELL』収録曲や、「Voodoo」「The Mob Rules」「The Sign Of The Southern Cross」をはじめとする『MOB RULES』収録曲。スタジオ音源以上に生々しくワイルドなディオのボーカルと、ライブならではのフリーキーさも織り交ぜたアイオミのギタープレイは聴き応え満点で、個人的にはスタジオテイク以上にお気に入りです。特に長尺ギターソロをフィーチャーした12分にもおよぶ「Heave And Hell」と、続く「The Sign Of The Southern Cross」からメドレー形式で「Heave And Hell」へと戻っていく構成では、ライブならではの醍醐味を堪能できるはずです。

一方で、ディオが歌うオジー時代のサバス曲も味わい深くて、これはこれでアリと思わされるものばかり。「N.I.B.」なんて完全に自分のモノにしてしまっていますし、暑苦しいまでに歌い上げる「Black Sabbath」なんてオジーバージョンとは異なる黒魔術感が伝わる、別モノとして楽しめるのではないでしょうか。それもこれも、アイオミとギーザーがプレイしている点、そしてヴィニーのハードヒットなドラミングがマッチしているからこそ。「War Pigs」のドラマチックさも全然アリですよね。

ですが、「Iron Man」や「Paranoid」といったシンプルな楽曲に関しては、どうしてもオジーの印象が強すぎて「ちょっとこれは……」と思ってしまうかも。演奏自体は非常に素晴らしいのですが、気合入れて力みすぎなディオの「Iron Man」は最初なかなか馴染めなかったものです。しかし、90年代に制作された『DEHUMANIZER』(1992年)を通過したあとに振り返ると、「まあ、これはこれで……」と寛大な気持ちで接することができるように。あのアルバム、今となっては非常に重要な役割を果たしていたんですね……。

ちなみにサバスが初めて日本に訪れるのは、1980年のこと。つまり、『HEAVEN AND HELL』リリース後のディオサバスだったわけです。そう考えると、当時のリスナーにとってはこの『LIVE EVIL』という作品は初来日公演を追体験するに最適なアルバムだったのかな。

なお、本作はアナログ盤(2枚組)やデジタル版(ストリーミング含む)では全14トラック/約84分の収録内容ですが、CDに関しては複数のバージョンが存在するのでご注意を。特に初期のCDは「War Pigs」がカットされた全13トラック/1枚もので流通しており、のちに「War Pigs」を追加した全14トラック/CD1枚ものが再発。しかし、こちらは収録容量の関係でMCなどがカットされた不完全版で、デラックス・エディションと題したCD2枚組バージョンこそが当初のアナログ盤(と現行のデジタル版)と同内容となっています。紛らわしいったらありゃしない(苦笑)。

 


▼BLACK SABBATH『LIVE EVIL』
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2020年9月30日 (水)

BLACK SABBATH『TECHNICAL ECSTASY』(1976)

1976年9月に発売されたBLACK SABBATHの7thアルバム。

前々作『SABBATH BLOODY SABBATH』(1973年)を経て、前作『SABOTAGE』(1975年)にて初期のスタイルからの脱却および転換期を迎えたBLACK SABBATH。音楽シーン的にはパンクやニューウェイヴなど新しいムーブメントがアンダーグラウンドで沸々と盛り上がり始めていたタイミングであり、サバスのようなバンドはオールドウェイヴ扱いされ出していた時期でもあります。

そんな中、バンドは『SABOTAGE』でうっすら見せていたプログレ路線やシンセを前面に打ち出したニューウェイヴ路線をさらに強め始めます。本作ではジェラルド・ウッドラフをキーボーディストとして前面的にフィーチャー。さらに、アートワークではPINK FLOYDLED ZEPPELINなどでおなじみのヒプノシスを迎え、それまでのおどろおどろしいイメージを払拭する施策に取り組みます。

オープニングを飾る「Back Street Kids」のニューウェイヴ風味を散りばめた豪快なハードロック、続く「You Won't Change Me」でのプログレタッチなハードロックは、前作での作風をさらに強調したもので、一瞬ギョッとされられるものの、今の耳で聴けば全然「あり」。ただ、BLACK SABBATHのイメージで接すると若干に違和感は否めません。当時はそれこそ、オジー・オズボーン(Vo)がこういう曲を歌うことに対してメタルファンは拒否反応を示したのでしょうか。今やメタルシンガーとしてもポップシンガーとしても受け入られているオジーですから、リリースから44年経った2020年なら普通に楽しめる楽曲群だと思います。

また、本作にはビル・ワード(Dr)がまるまる1曲歌う「It's Alright」も収録。ピアノを軸にしたバラードで、トニー・アイオミ(G)のアコースティックギターも良い味を出しています。この曲は90年代初頭、アクセル・ローズがGUNS N' ROSESのライブで「November Rain」を歌う前にピアノで弾き語りしていたことでおなじみですよね(ライブアルバム『LIVE ERA '87〜'93』にも収録されています)。さらに、ドラマチックな作風の「Gypsy」はのちのオジーソロ(特に90年代の『NO MORE TEARS』以降)にも通ずるテイストがあり、それも踏まえて今の耳では当たり前のように受け入られるはずです。

後半に入ると、若干ソウルやブルースのフィーリングが復調しているものの味付けは本作のテイストという「All Moving Parts (Stand Still)」(中盤での展開がサバスらしいような、らしくないような)、のちのオジーソロにもつながるような軽快なアメリカンロック「Rock 'N' Roll Doctor」、ストリングスを大々的にフィーチャーした、オジー『DIARY OF A MADMAN』(1981年)の世界観に通ずるバラード「She's Gone」、そしてプログレッシヴな展開&アレンジがサバスの未来(ロニー・ジェイムズ・ディオ加入後)を髣髴とさせる「Dirty Women」と、前半以上に粒ぞろいな楽曲がずらりと並びます。全体的にポップ色が強まっており、そういった意味ではソロに移行してからのオジーの習作と言えなくもないかな。

本作リリース後にはオジーがバンドを一時脱退するハプニングもありましたが、1978年にはもう1枚『NEVER SAY DIE!』も制作しています。サバスとしては本作と次作『NEVER SAY DIE!』はディオ加入後にあまりつながらなかったかもしれませんが、オジー自身にとってはソロへ移行する上での良きレッスンになったようです。そういった耳で触れると、非常に聴きどころの多い“隠れた名盤”かもしれません。

 


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2020年9月29日 (火)

ZAKK SABBATH『VERTIGO』(2020)

2020年9月4日にリリースされた、ザック・ワイルドBLACK LABEL SOCIETYOZZY OSBOURNE)率いるZAKK SABBATHの1stアルバム。日本盤未発売。

ZAKK SABBATHはその名のとおり、ザック・ワイルドが敬愛するBLACK SABBATHトリビュートの名目で結成したバンドで、現在のメンバーはザック(Vo, G)のほか、オジー・バンドでの盟友ブラスコ(B/ROB ZOMBIE)、そしてジョーイ・カスティロ(Dr/ex. QUEENS OF THE STONE AGE、ex. DANZIG、ex. EAGLES OF DEATH METALなど)の3人。2014年頃からこの名義で活動しているそうで、2017年6月にはアナログ盤限定でライブEP『LIVE IN DETROIT』をリリースしています。

今回発表された初のアルバム、および初のスタジオ作品はCDおよびアナログ盤のみの限定リリースで、デジタル配信はなしとのこと。Bandcampでは「CD/アナログ+デジタルアルバム」という項目がありますが、これはブラスコによる40秒程度のアルバムアイキャッチ(メッセージ)のことで、「THIS ALBUM WILL NOT BE RELEASED DIGITALLY FOR DOWNLOAD OR STREAMING - only physical formats are available!」と明記されているのでご注意を。

さて、BLACK SABBATHの名デビューアルバム『BLACK SABBATH(黒い安息日)』(1970年)リリースから50年という節目に、これを祝うために制作された本作。アルバムタイトルは同作のオリジナル・リリース元のVertigo Recordsから冠したもので、収録内容もアルバム『BLACK SABBATH』アメリカ盤をそのまんまなぞったもの。なので、UK盤などに収録されていた「Evil Woman」は未収録(代わりに「Wicked World」が収められています)。また、トラックランニングも「Behind The Wall Of Sleep」や「N.I.B.」などが単曲としてカウントされず、「Wasp / Behind The Wall Of The Sleep / Bassically / N.I.B.」と前後のギター/ベースソロを含めて1トラック、CD自体は全5トラックとカウントされています。

内容的にはオリジナル盤をほぼ完コピに近い形で再現。チューニングこそ半音〜1音半まで下げられておりザックらしさ全開ですが、特に原曲のイメージを損なうようなことはありません。また、ギターソロもトニー・アイオミ(G)のオリジナルフレーズを尊重しつつも、要所要所にザックらしい豪快さやカントリーフレイバーが織り交ぜられており、サバスカバー集としてもザックの新作としても楽しむことができるはずです(個人的にはブラスコのベース音色が固すぎて、「N.I.B.」前のベースソロ「Bassically」に違和感を覚えたり。全体的にメタル色が強すぎて、原作にあったジャジーさが薄れているのが大きいんでしょうかね。そこだけが残念)。

特に本作をサバスらしく成立させている要因に、ザックの声質が挙げられると思います。昔からザックとオジーの歌声が似ていると評判でしたが、改めてこうやってサバスの楽曲を歌われると、本当に“近い”なと驚かされます。アルバム1曲目「Black Sabbath」での歌い出しの時点で、完全にオジーまんまですからね(笑)。BLACK LABEL SOCIETYでは作品を重ねるごとにザックの個性がより際立っていましたが、サバスに寄せようとすればするほどオジーになれるんだなと。しかも、これをあんな豪快なギタープレイをしながら再現しているんだから、持って生まれたものなんでしょう。

サバスファンやザックのファンなら持っていて当然の1枚。ビギナーはまずサバスの1stをじっくり聴き込んでから、本作に臨んでほしいなと思います。

 


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2020年6月20日 (土)

BLACK SABBATH『SABOTAGE』(1975)

1975年7月に発表されたBLACK SABBATHの6thアルバム。

『VOL.4』(1972年)までの初期4作で音楽的にピークを迎え、前作『SABBATH BLOODY SABBATH』(1973年)では臨界点に達し新たなスタイルを模索し始めたサバス。その試行錯誤は本作でも続いているように感じます。

オープニングを飾る「Hole In The Sky」の破天荒さは「これぞオジー・オズボーン(Vo)」と言いたくなるくらい“らしい”仕上がりで、文句なしの1曲だと思います。そこから1分にも満たないインタールード「Don't Start (Too Late)」を挟んで、スラッシーなギターリフが印象的な名曲「Sympton Of The Universe」へとつなぐ構成はさすがの一言。サバスの勢いはまったく衰えていないように感じます。

しかし、この「Symptom Of The Universe」という曲がなかなかの曲者でして。メタリックな序盤の印象から一変、後半はジャジーなフレージングとトニー・アイオミ(G)のアコギを大々的にフィーチャーした展開に。このサイケデリック感も彼らの持ち味ではあるものの、1曲の中で前半/後半と分断される雰囲気の変化には若干煮詰まりも感じずにはいられません。フェードアウトで終わるアレンジといい、もうちょっと作り込んだらドラマチックな1曲に仕上げられたんじゃないかと思うんですよね。

で、アナログ盤だと前半のクライマックス(早い。実質3曲目じゃん。笑)となる10分近い大作「Megalomania」へ。序盤のドゥーミーさと中盤での曲展開、ピアノを用いたアレンジなど従来の“らしさ”と新しさを求める“らしくなさ”の間で揺れ動く、どうにも評価の難しい1曲なんですよね。アイオミのリフワークは相変わらずの一言だし、オジーのボーカルもそのヒステリックさ含め最高にカッコいい。だけど、どうにもすべてがベストな形でかみ合っていると言い切れないのがもどかしいところ。ぶっちゃけ10分はキツいので、6分くらいコンパクトにまとめていたらもっと締まりのある楽曲になったんじゃないかな。そこだけが残念でなりません。

後半はドゥーミーさよりもサイケさが際立つ「The Thrill Of It All」(ギターが相変わらずカッコいい)、クワイアをフィーチャーしたドラマチックなインスト「Supertzar」、シンセを前面に打ち出したニューウェイヴっぽい「Am I Going Insane? (Radio)」と雑多な曲が並び、最後に再び9分近い長尺の「The Writ」で締めくくり。この曲も、もうちょっと煮詰めたらコンパクトでインパクトの強い楽曲に仕上がったんじゃないかなと思うんですよ(歌メロは良いしね)。そこが本当に勿体ない。

初期の邪悪さやダークさは完全に薄れ、アートワーク含め普通のハードロックバンドになってしまった……と書くとネガティブな印象を与えてしまいますが、ポジティブに解釈すると数年後に始まるオジーのソロ活動への布石と受け取ることもできます。本作で実践している雑食性って、要は今のオジーそのものですからね。バンドとしては完全に過渡期ですが、長い歴史を振り返ると「そりゃこういうのもあるよね」と不思議と許せてしまう。それは単に、僕がオジーの歌声が好きだからというのも大きいのでしょう。だって、基本的にオジー・サバスにハズレなし!と思ってますから(なので、中途半端ながらもこれはこれでアリと受け止めています)。

万人向けではないですが、サバス初期5作からオジーのソロをある程度まで聴き終えたら、ここに足を踏み入れてもいいのかな。そういう、ある種マニア向けの1枚。

 


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2020年5月 2日 (土)

V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』(2014)

2014年4月初頭にリリースされた、ロニー・ジェイムズ・ディオのトリビュートアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年3月下旬に発売されました。

2010年5月にがんのためこの世を去ったディオを追悼すべく、メタル界の重鎮から次世代バンドまで幅広い層が一堂に会したこのアルバム。全14曲(ボーナストラック除く)中、本作のために録音された未発表テイクは10曲と単なる埋め合わせ的アルバムでないことが伺えます。

そのラインナップもロブ・ハルフォードJUDAS PRIEST)やグレン・ヒューズ(ex. DEEP PURPLE)、SCORPIONSMOTÖRHEAD、ビフ・バイフォード(SAXON)といった大御所からMETALLICAANTHRAX、DOROなど直接的なフォロワー、そしてHALESTORM、コリィ・テイラー(SLIPKNOTSTONE SOUR)、KILLSWITCH ENGAGEなどの次世代アーティスト、さらにはヴィニー・アピス、ダグ・アルドリッジ、ジェフ・ピルソン、ルディ・サーゾ、クレイグ・ゴールディ、サイモン・ライト、スコット・ウォーレンといったDIOオールスターズまで、世代的にもかなり広いものとなっています。

本編ラストに収められたDIO「This Is Your Life」(1996年の『ANGRY MACHINES』収録曲)を除く13曲中、RAINBOWナンバーを選んだのが5組、BLACK SABBATHナンバーが3組、DIOナンバーが5組とやはりRAINBOWへの人気が集中。METALLICAに至ってはメドレー形式で4曲取り上げてますからね。ズルいわ(笑)。

サバス曲は当然すべて80年代の……と思いきや、オニ・ローガン(Vo/ex. LYNCH MOB)は『DEHUMANIZER』(1992年)からの「I」を選ぶ通ぶりを発揮。こちらはジミー・ベイン(B)やローワン・ロバートソン(G)といった旧DIO組も参加しています。この曲、こうやって聴くと思ったほどモダンなテイストが少なくて、80年代のディオ・サバスを踏襲してたんだねと気づかされます。

1曲ずつ解説していたらキリがないので割愛しますが、ANTHRAX「Neon Knights」におけるジョー・ベラドナのモノマネぶりが相変わらず最高なことと、SCORPIONS「The Temple Of The King」が完全に自分のものと化していること、METALLICAメドレーの強引ぶりなどは特筆すべきものがあるかなと。もちろん、ほかの楽曲も最高なので、原曲を知らないリスナーでも楽しめるはずです。

なお、日本盤にはSTRYPERによる「Heaven & Hell」、DIO DISCIPLES(DIO最終ラインナップのディオ抜き)による「Stand Up And Shout」を追加収録。ストリーミングなどのデジタルバージョンではHATEBREEDのフロントマン、ジャスタによる「Buried Alive」を聴くことができます。ここはぜひ、日本盤を手に入れておきたいところです。

 


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HEAVEN & HELL『THE DEVIL YOU KNOW』(2009)

2009年4月末にリリースされたHEAVEN & HELL唯一のスタジオアルバム。

HEAVEN & HELLはロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ヴィニー・アピス(Dr)という『MOB RULES』(1981年)や『DEHUMANIZER』(1992年)を制作したBLACK SABBATHの面々による変名バンド。2007年にディオ在籍時の楽曲を集めたコンピレーションアルバム『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』をリリースした際、この4人による新曲を3曲制作しましたが、ここで得た手応えから再度スタジオ入りし、アルバムまで完成させるに至るわけです。

オジー・オズボーンとのBLACK SABBATHも“生きている”ちゃあ生きているタイミングだったので、サバス名義ではなくディオ・サバスの1作目に当たるアルバム『HEAVEN AND HELL』(1980年)のタイトルをそのままバンド名に用いて、ツアーやレコーディングを続けますが、本作リリースから1年後の2010年5月16日、ディオはこの世を去ることに。結果として、本作が生前最後のレコーディング作品となってしまいました。きっと、ディオ自身も死期を悟り、最後にもうひと花という意味でサバス復帰を選んだのでしょうね。

作風的には『HEAVEN AND HELL』や『MOB RULES』よりも、再編後に制作した『DEHUMANIZER』に近い、ミドルヘヴィナンバーを中心とした内容。ですが、『DEHUMANIZER』のようなモダンヘヴィネス的色合いはまったくなく、むしろ『HEAVEN AND HELL』や『MOB RULES』に含まれていたミドルヘヴィナンバーをより熟成させた、濃厚でねっとりしたディオ・サバス曲で構成されています。要するに、悪いわけがない。最高の仕上がりなのです。

当時のアイオミのスタイルを考えると、本作の次に制作されたオジー・サバスの最終作『13』(2013年)にも通ずる作風と言えるでしょう。つまり、アイオミが「BLACK SABBATHとは?」という命題と向き合い、2人の代表するシンガーとともに完成させた“答え”という意味で、本作と『13』は対となる2枚だと思うのです。

『13』ではひたすらドゥーミーでミドルスロウな楽曲ばかりにご執心でしたが、ここではミドルを軸に若干のアップダウンが用意され、その緩急が聴き手に心地よさを与えてくれる。つまり、同じミドル続きでも『13』ほど退屈しないのが今作最大の特徴であると。それには、ディオという稀代の名シンガーの尽力も大きいと思います。ディオ御大、最後の最後にベストパフォーマンスを残そうと制作に臨んだのでしょう。どこをどう切り取ってもディオ以外の何者でもありません。

わかりやすい派手さは皆無ですが、ディオ・サバスを愛する者、あるいはロニー・ジェイムズ・ディオというシンガーの歌が好きなリスナーなら間違いなくハマる1枚。モダンメタルが台頭する2009年という時代に、オールドスクール世代がかましたカウンターという意味においても非常に重要な作品だと断言できます。

日本盤CDには先のコンピ盤『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』に収録された新曲3曲が、ボーナストラックとして追加されています。つまり、『THE DEVIL YOU KNOW』日本盤を購入すれば、HEAVEN & HELLとしてレコーディングしたオリジナル曲はすべて手に入ることになるので、これから購入する際には迷わず日本盤をゲットしておきましょう。

 


▼HEAVEN & HELL『THE DEVIL YOU KNOW』
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2020年2月24日 (月)

BLACK SABBATH『DEHUMANIZER』(1992)

1992年6月末にリリースされたBLACK SABBATHの16thアルバム。日本盤は約1週間遅れの、同年7月上旬に発売されました。

トニー・アイオミ(G)にトニー・マーティン(Vo)、コージー・パウエル(Dr)を中心とした布陣で14thアルバム『HEADLESS CROSS』(1989年)を制作し、同作のツアーからニール・マーレイ(B)が加入。その編成で15thアルバム『TYR』(1990年)を制作したBLACK SABBATHは、ロニー・ジェイムズ・ディオ時代の名盤『HEAVEN AND HELL』(1980年)を思わせる様式美スタイルでリスナーを喜ばせてくれました。

しかし、この布陣は長くは続きませんでした。「ロニー時代のサウンドに挑むなら、せっかくだし当の本人呼んじゃえよ!」ってことで(いや違うけど)、トニー・マーティンに代わりロニー御大を呼び戻したアイオミ。さらにベーシストをオリメンのギーザー・バトラーに交代し、ディオ/アイオミ/ギーザー/コージーという夢のような編成が実現します。

ところが、コージーが落馬により骨折。バンド離脱を余儀なくされ、後任にヴィニー・アピスが加わることになります。これにより10thアルバム『MOB RULES』(1981年)の編成が復活することになり、いわゆる“ディオ・サバス”としての3作目『DEHUMANIZER』が生まれるわけです。

アルバム発売前に、映画『ウェインズ・ワールド』のサウンドトラックに新曲「Time Machine」を提供。『HEAVEN AND HELL』に収録されていしょうなアップテンポのハードロックで、我々の期待を煽ってくれましたが、いざ届けられたアルバムは『HEAVEN AND HELL』や『MOB RULES』とも、それこそ直近の『TYR』とも異なる、現代的なヘヴィさが強調された異色作でした。

様式美を意識した作風というよりは、当時流行り始めていたモダンヘヴィネス系を彷彿とさせる、リフでグイグイ引っ張り続けるダークなミドルチューンが中心。そこにディオのボーカルが乗ることで“らしさ”は若干維持されているものの、歌メロの抑揚が過去の名作ほど起伏に富んだものではない。この平坦さ(今聴くとそこまで平坦でもないけど)こそ1992年という時代ならではで、ディオにしろアイオミにしろ「過去の焼き直し」ではなく「今のシーンと対峙する」ことを念頭に置いたアルバム作りに臨んだことが伺えます。

アイオミのリフワークはさすがの一言だけど、オジー・オズボーン在籍時のヘヴィさとも異なる新たなダークさ、ヘヴィさを表現している。かつ、そこに従来らしさもにじませているもんだから、リリース当時は非常に複雑な新曲になったものです。「あれ、アイオミ先生……トニー・マーティンをクビにしてまでやりたかったことがこれなの?」と。

ところが。ディオ・サバスはこの1枚で再び頓挫。アイオミ先生は再びトニー・マーティンを呼び戻し、『HEADLESS CROSS』路線を推し進めた傑作『CROSS PURPOSES』(1994年)を完成させ、一方のディオ御大はモダンヘヴィネス路線に特化した『STRANGE HIGHWAYS』(1993年)をリリースするのでした……はい、戦犯が誰かおわかりですね(笑)。

でもね。本作のリリースから30年近くを経た今、このアルバムとしっかり向き合うと……めっちゃ良いんですよ。ディオらしさもしっかり表現できているし、アイオミのリフメイカー/ソングライターとしての才能も際立っている。むしろ、グランジやモダンヘヴィネス系が台頭し始めたタイミングに、HR/HMのオリジネイターとしてちゃんと“今”と向き合い、そこで自分ができることを提示してくれている。退屈な曲がゼロとまでは言いませんが、全体を通して普通に楽しめる1枚だと思います。

個人的にはイントロで異彩さを放つ「Master Of Insanity」や、途中での展開がいかにもな「Computer God」、サイケなメロディラインが新鮮な「Sins Of The Father」、もっともディオ・サバスらしい「Too Late」などお気に入り多数。まあ、ここでの経験がさらに10数年後にHEAVEN AND HELLという変名ディオ・サバスへとつながっていくわけですが、それはまた別の機会に。

 


▼BLACK SABBATH『DEHUMANIZER』
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