カテゴリー「Black Star Riders」の8件の記事

2023年1月26日 (木)

BLACK STAR RIDERS『WRONG SIDE OF PARADISE』(2023)

2023年1月20日にリリースされたBLACK STAR RIDERSの5thアルバム。日本盤未発売。

前作『ANOTHER STATE OF GRACE』(2019年)から3年4ヶ月ぶりの新作。2021年にスコット・ゴーハム(G/THIN LIZZY)とチャド・スゼリガー(Dr/ex. BREAKING BENJAMIN、ex. BLACK LABEL SOCIETY)が相次いで脱退し、新たにLAを拠点に活動するザック・セント・ジョン(Dr)が加入するも、新たなギタリストを加えることなくBLACK STAR RIDERSは4人編成で活動を継続することを決意します。

その後、デビュー時から在籍してきたNuclear Blast Recordsを離れ、新たに名門Earache Recordsと契約。プロデューサーには2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』(2015年)からバンドに関わり続けているジェイ・ラストン(ANTHRAXSONS OF APOLLOARMORED SAINTなど)を迎え、リードギターをクリスチャン・マルトゥッチ(G/STONE SOURコリィ・テイラー)とリッキー・ウォリック(Vo, G)とで分け合いながら制作を進めました。

基本路線はこれまでと一緒で、リッキーらしいTHE ALMIGHTYの男臭い哀愁感漂うハードロックに、スコットこそいなくなってしまったものの、それでもバンドのアイデンティティとしてキープし続けているTHIN LIZZYからの影響を散りばめた、王道感の強いUK/アイリッシュロックが展開されています。彼らにモダンな要素を求めるなんてことはありえないし、そんな彼らの姿も見たくない。そういった意味では、ファン納得の1枚ではないでしょうか。

オープニングを飾るタイトルトラック「Wrong Side Of Paradise」がどことなく『JUST ADD LIFE』(1996年)あたりのTHE ALMIGHTYと印象が重なるのは、最近リッキーがTHE ALMIGHTYの再結成について「絶対にないなんて言わない」とSNSで発言したことでの補正もあるのかな。なんとなくですが、スコットがいなくなったことで、今まで以上にTHE ALMIGHTYっぽさが強まっているのは気のせいでしょうか。

かと思えば、「Hustle」や「Better Than Saturday Night」ではモロにTHIN LIZZY節を展開。コード使いがまんまTHIN LIZZYな後者にはDEF LEPPARDのジョー・エリオットもハモりでゲスト参加しており、それっぽさを強調させることに成功しています。カッコいいったらありゃしない。

序盤に派手めな楽曲を揃える一方で、中盤に入ると地味でマニアックな楽曲が続きます。そんな中、THE OSMONDSのカバー「Crazy Horses」のタフなアレンジに光るものが見つけられ、今までどおりなのにネクストレベルに片足ツッコミ始めた感も伝わる。そんな予感めいたものを提示しつつ、「Don't Let The World (Get In The Way)」や「Green And Troubled Land」などで再び加速し、序盤こそダークだけど実はソウルフルっていう良曲「This Life Will Be The Death Of Me」で締めくくる終盤の流れも良し。デジタル限定のスペシャル・エディションにはさらに「Cut 'N' Run」「Suspcious Times」が追加されており、どちらも捨て曲と呼ぶには少々勿体ない仕上がり。ただ、「This Life Will Be The Death Of Me」でエンディングを迎えるのがアルバムとしては正しいので、あくまでオマケ程度に受け取っておくのが吉。

本作完成後にはクリスチャン・マルトゥッチがコリィ・テイラーとの活動に専念するためにバンドを脱退。WAYWARD SONSのサム・ウッドが新メンバーとして正式加入。基本的には4人編成で活動を続けるものの、今年2月からスタートするバンドの10周年記念英国ツアーにはスコットに加え、創設メンバーのひとりジミー・デグラッソ(Dr)もゲスト参加するそうです。それはそれで観たいぞ。

 


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2021年9月24日 (金)

SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』(2021)

2021年9月24日にリリースされたサミ・ヤッファの1stソロアルバム。日本盤は同年9月22日に先行発売。

HANOI ROCKSのベーシストとしてシーンに登場し、バンド解散後はジョニー・サンダース(ex. NEW YORK DOLLS)との活動を経てJETBOYに加入。90年代は盟友マイケル・モンローJERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.といったバンドで活動し、以降はJOAN JETT & THE BLACKHEARTSNEW YORK DOLLSMICHAEL MONROEで活躍してきたサミ。40年以上のキャリアの中でソロ活動を一切行ってこなかった彼ですが、ここにきてついに重い腰を上げてソロアルバムを完成させました。

パンクの洗礼を経て、シンプルで生々しいロックンロール、レゲエやダブ、スカ、ラテンミュージックなどを通過したサウンドは、いかにも彼らしいもの。そこにマイケル・モンローやアンディ・マッコイといったHANOI ROCKS時代の仲間たちとの共通点も見つけられ、またサミならではの独自性も見つけられる。というか、ほかの2人と比べてかなり器用な人なんだなと驚かされました。

とにかく、ここで聴けるロックンロールの多彩さとそのナチュラルさ、そして完成度の高さには舌を巻くばかり。ソングライティング面では現在活動をともにするリッチ・ジョーンズ(G/MICHAEL MONROE、ex. THE BLACK HALOS、ex. AMEN、ex. THE YO-YO'Sなど)のサポートが非常に大きく、彼の手腕によるものもかなりあるようです。実際、マイケルのアルバムでも彼のソングライティング力は非凡なものがありますからね。

レコーディングは地元フィンランドの旧友たち、ヤンネ・ハーヴィスト(Dr)やラネ(G/ex. SMACK)、ティモ・カルティオ(G)、そしてクリスチャン・マルトゥッチ(G/STONE SOURコリィ・テイラーBLACK STAR RIDERS)、マイケル・モンロー(Sax, Harp)、リッチ・ジョーンズ(Cho)などが参加。サミもボーカルやベース以外に、ギターやグロッケン、メロディカとさまざまな楽器に挑戦しています。歌声も意外とサマになっており、この派手すぎない、けど地味すぎもしないサウンドと見事にマッチしています。

彼がこれまでに参加してきたバンドのテイストは随所から感じられるし、またそのルーツもしっかり伝わる仕上がり。2021年に聴くには古臭いと敬遠されそうな音かもしれませんが、裏を返せば時代を選ばないロックンロールサウンドでもあるのかなと。説得力とその重みが、同系統のバンドとはまったく違うものが感じられるのもこの人ならでは。HANOI ROCKSやマイケル・モンローのファンはもちろんのこと、1980年代のバッドボーイズ・ロックンロールや2000年代以降のリバイバル・ガレージロックのリスナーにも間違いなくヒットする、捨て曲ゼロのご機嫌な1枚です。

 


▼SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』
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2021年2月22日 (月)

RICKY WARWICK『WHEN LIFE WAS HARD & FAST』(2021)

2021年2月19日にリリースされたリッキー・ウォリックBLACK STAR RIDERSTHIN LIZZY、ex. THE ALMIGHTY)の5thアルバム。

オリジナル・ソロアルバムとしては『WHEN PATSY CLINE WAS CRAZY & GUY MITCHELL SANG THE BLUES』(2014年)から約7年ぶり、カバーアルバム『STAIRSELL TROUBADOUR』(2015年)からも約6年ぶりの新作音源。その間にBLACK STAR RIDERSとして3枚のアルバムを制作しているので、まあ順当なスパンと言えるでしょう。

過去数作はリッキーがひとりで録音したプライベート感の強い作風でしたが、今作では元BUCKCHERRYのキース・ネルソン(G)がプロデュース&楽曲制作で参加。レコーディングにもギタリストとして参加したほか、同じく元BUCKCHERRYのザヴィエル・ムリエル(Dr)や、BLACK STAR RIDERSのロバート・クレイン(B)がバンド形態としてレコーディングに加わっています。また、ゲストプレイヤーとしてジョー・エリオット(Vo/DEF LEPPARD)、ルーク・モーリー(G/THUNDER)、アンディ・テイラー(G/ex. DURAN DURAN、ex. THE POWER STATION)、ディジー・リード(Key/GUNS N' ROSES)といった錚々たる面々が名を連ねており、リッキーの人脈の太さを改めて感じることができます。

が、そういったゲストの名前なしでも、本作はTHE ALMIGHTYからTHIN LIZZY、BLACK STAR RIDERSまでリッキーの活動を追ってきたリスナーに存分にアピールするクラシカルなハードロック作品に仕上がっており、特に近年のリッキー参加作品に心ときめかせてきた者なら誰もが一発で気にいる作品だと断言できます。基本的にはBLACK STAR RIDERSの延長線上にある、THIN LIZZYテイストの王道ブリティッシュハードロックが展開されておりますが、そこにキース・ネルソンのカラーが加わることで、初期THE ALMIGHTYを思わせる破天荒なパンクロックテイストの強い楽曲も存在。これらが良いバランスでミックスされることで、リッキーの約30年にわたる音楽活動の総決算とも言える内容になったのではないでしょうか。

リッキー自身は本作を「トム・ペティのようなシンプルなメロディに、JOHNNY THUDERS & THE HEARTBREAKERSの快楽主義的怒りを掛け合わせたもの」と描写していますが、その例えが本当にぴったりな1枚。モダンメタル期のTHE ALMIGHTYっぽさは皆無ですが、初期&末期の彼らやのちのTHIN LIZZY〜BLACK STAR RIDERSへの流れもしっかり踏まえられており、個人的にもかなりツボな仕上がり。中盤の「Gunslinger」「Never Corner A Rat」あたりはBUCKCHERRY的な側面もしっかり伝わるし、リッキー&キース両者の個性が良い形で反映された、見事なタッグ作ではないでしょうか。

UKらしい湿り気の強い王道ハードロックあり、軽快なパンクロックあり、内省的なアコースティックナンバーありと、聴き応え満点の1枚。かなりの高ポイントです。

なお、日本盤や海外盤デラックス・エディションのみ2015年発売のカバーアルバム『STAIRSELL TROUBADOUR』がボーナスディスクとして付属。こちらは「You Spin Me Round (Like A Record)」(DEAD OR ALIVE)、「Ooops!... I Did It Again」(ブリトニー・スピアーズ)、「Summertime Blues」(エディ・コクラン)、「I Don't Want To Grow Up」(RAMONES)、「I Fought The Law」(THE CLASH)、「Wrathchild」(IRON MAIDEN)などのカバーに加え、THE ALMIGHTY「Jesus Loves You... But I Don't」のセルフカバーという全10曲を収録。カントリータッチにアレンジされた「You Spin Me Round (Like A Record)」や原曲のイメージどおりの「Summertime Blues」、アコースティックアレンジで完全にブルースと化した「Wrathchild」など、1枚通して十分に楽しめる仕上がりです。

ただ、先の『WHEN LIFE WAS HARD & FAST』本編とは切り離して聴くべき1枚かなと。録音時期も相当ズレていますし、制作過程も参加メンバーもまったくことなるので、本当にオマケ程度で切り分けて考えてもらえればと思います。2枚合わせて考えてしまうと、こっちが足を引っ張る結果になりかねないので……。

 


▼RICKY WARWICK『WHEN LIFE WAS HARD & FAST』
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2020年11月21日 (土)

ELLEFSON『NO COVER』(2020)

2020年11月20日にリリースされたデイヴィッド・“ジュニア”・エレフソン(B/MEGADETH)のソロアルバム第2弾。

日本では今年3月に発売された初のソロアルバム『SLEEPING GIANTS』(海外では2019年7月リリース)に続く今作は、全曲豪華ゲストを迎えたカバー集。全19曲の大半はエレフソンのルーツ的楽曲になるのでしょうが、そんな中にFIGHTの「Nailed To The Gun」があったり、ビリー・アイドル「Rebel Yell」やW.A.S.P.「Love Machine」といったMEGADETHのデビューと非常に近しい時期の楽曲も含まれています。これは相方のトム・ハザート(Vo)の趣味なんでしょうかね。

さてさて。そんな本作のレコーディングメンバーですが、ベーシックはトム、エレフソン、アンディ・マルトンジェリ(G/ARTHEMIS)の3人が中心で、曲によって以下のようなゲストが参加しています(とにかく長いのでご注意を)。

※ボーカル
ジェイソン・マクマスター(DANGEROUR TOYS、WATCHTOWER)、ドロ・ペッシュ、ジェイコブ・バントン(ミック・マーズ、LYNAM、ex. STEVE RILEY'S L.A. GUNS、ex. MARS ELECTRICなど)、アンドリュー・フリーマン(LAST IN LINE)、アル・ジュールゲンセン(MINSTRY)、ブランドン・イーグレイ(CROBOT)、デイヴ・アルヴィン(WHITE TRASH)、トッド・カーンズ(THE AGE OF ELECTRIC)、マーク・スローターSLAUGHTER)、チップ・ズナフENUFF Z' NUFF

※ギター
ロン・“バンブルフット”・サール(一部ボーカルも/SONS OF APOLLOASIAなど)、ガス・G(FIREWIND)、アンディ・ジェイムズ(ex. SACRED MOTHER TONGUE)、エディ・オヘダ(ex. TWISTED SISTER)、グレッグ・ハンデヴィット(KUBLAI KHAN、ex. MEGADETH)、フランク・ハノン(TESLA)、ラス・パリッシュ(STEEL PANTHER、ex. FIGHT)、ジョン・アクイリノ(ICON)、タイソン・レズリー、デイヴ・シャープ(DEAD BY WEDNESDAY)、シャニ・キメルマン、ドリュー・フォーティアー(ZEN FROM MARS)

※ドラム
パオロ・カリディ(HOLLOW HAZE、ex. KILLING TOUCH)、デイヴ・マクレイン(SACRED REICH、ex. MACHINE HEAD)、チャック・ビーラー(ex. MEGADETH)、チャーリー・ベナンテ(ANTHRAX)、デイヴ・ロンバード(SUICIDAL TENDENCIESDEAD CROSSMR. BUNGLE、ex. SLAYER)、ジミー・デグラッソ(ex. BLACK STAR RIDERS、ex. MEGADETH、ex. Y&Tなど)、ダーク・ヴェルビューレン(MEGADETH、ex. SOILWORK)、オーパス(DEAD BY WEDNESDAY)、トロイ・ルケッタ(TESLA)、マイク・ヘラー(RAVEN、ZEN FROM MARS、ex. FEAR FACTORY

演奏はどれも原曲に忠実で、可もなく不可もなくといったところ。トム・ハザートがメインで歌う前半はダミ声中心なので、曲によっては「う〜ん……」と思うものも含まれています。が、中盤から後半……「Riff Raff」(AC/DC)、「Over The Mountain」(オジー・オズボーン)、「Sweet F.A.」(SWEET)、「Downed」(CHEAP TRICK)あたりはトム不参加でそれぞれマイク・マクマスター、アンドリュー・フリーマン、トッド・カーンズ、チップ・ズナフが歌っているので安心して楽しめるはずです。また、「Sheer Heart Attack」(QUEEN)や「Love Me Like A Reptile」(MOTÖRHEAD)にはドロ・ペッシュが、「Say What You Will」(FASTWAY)にはマーク・スローターがそれぞれ参加しており、聴けばそれとすぐにわかるボーカルで楽しませてくれます。

まあ、こういうアルバムはああだこうだ言わずに無心で楽しむのが一番なんでしょうね。強いて言うなら……ジュニアってそんなにCHEAP TRICK好きだったんだ、と(笑)。あと、DEF LEPPARDもね(アートワークの話)。なんだかんだこの人、ポップなものが好きなんでしょうかね。

 


▼ELLEFSON『NO COVER』
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2019年9月 9日 (月)

BLACK STAR RIDERS『ANOTHER STATE OF GRACE』(2019)

2019年9月6日に世界同時リリースとなった、BLACK STAR RIDERSの4thアルバム。

全英6位と大健闘した前作『HEAVY FIRE』(2017年)から2年半ぶりに発表された本作ですが、ここまでの間にバンド内に大きな変化が訪れました。それは、アルバム発表後のジミー・デグラッソ(Dr)脱退と、ツアー終了後のデイモン・ジョンソン(G)の脱退というアクシデント。前者はチャド・スゼリガー(ex. BREAKING BENJAMIN、ex. BLACK LABEL SOCIETY)を迎えて乗り越えましたが、後者であるデイモン脱退はバンドに大きな影響を及ぼしたはずです(とはいえ、デイモンの離脱は友好的なものであり、以降もTHIN LIZZYやリッキー・ウォリックとのプロジェクトには参加するとのこと)。

結果、その後新たに決定した南米ツアーをTHUNDERのルーク・モーリーがサポート参加することでことなきを得、2019年に入ってから新ギタリストとしてSTONE SOURのクリスチャン・マルトゥッチが加入。リッキー・ウォリック(Vo, G)、スコット・ゴーハム(G)、ロビー・クレイン(B)にチャド&クリスチャンという新編成で制作されたのが、このニューアルバムなわけです。

プロデュースを手がけたのは、2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』(2015年)や前作『HEAVY FIRE』のミキシングを担当したジェイ・ラストン(ANTHRAXSONS OF APOLLOARMORED SAINTなど)。BLACK STAR RIDERSのことを熟知している人間が手がけたこともあってか、非常にナチュラルでリラックスした内容に仕上がっています。

オープニングトラック「Tonight The Moonlight Let Me Down」からして、完全無欠のTHIN LIZZY節。特にこの曲はサビでタイトルを歌い上げることで、サビ入りが同じ〈Tonight〜〉ってことで「Jailbreak」がフラッシュバックするんですよね。曲調的にも非常に近いものがありますし、これはナイスオマージュじゃないでしょうか。

続く「Another State Of Grace」のマイナー調3連ビートも“いかにも”だし、「Ain't The End Of The World」も「そうそう、これこれ!」と言いたくなるくらいの“らしさ”に満ち溢れているし。

かと思えば、ハモンドオルガンをフィーチャーしたファンキーなノリの「Soldier In The Ghetto」や、アコースティック色を強めた「Why Do You Love Your Guns?」「What Will It Take?」などバラエティに富んだ楽曲も含まれている。これまで同様、「単なるTHIN LIZZYのコピー」ではなく「THIN LIZZYをリスペクトし、オマージュしながらもオリジナリティを極めていく」姿勢は変わっていませんし、むしろそれぞれの要素が強まっているのかなという印象を受けました。うん、良き良き。

クリスチャンからソングライティング面でのインプットがあったようですし、新編成による大きな変化は本作以降に訪れるのかなという気がしないでもないですが、これはこれで非常に良くできた新世代クラシックロックアルバム。安心して楽しめる1枚です。

 


▼BLACK STAR RIDERS『ANOTHER STATE OF GRACE』
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2018年11月25日 (日)

V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』(2018)

2018年10月リリースの、ゲイリー・ムーアのトリビュートアルバム。アルバムジャケットにあるように、ゲイリーの諸作品やライブに参加してきたベーシスト、ボブ・デイズリーが中心となって制作された本作には、ニール・カーター(Key)やドン・エイリー(Key/DEEP PURPLE)、エリック・シンガー(Dr/KISS)、グレン・ヒューズ(Vo)に加え、元SKID ROW(「Youth Gone Wild」じゃないほう)のブラッシュ・シールズ(Vo)といったゲイリー・ムーアと馴染み深い面々、ゲイリーの実子であるガス・ムーア(Vo)とジャック・ムーア(G)のほか、豪華ゲストプレイヤーが多数参加しています。

そのメンツもジョン・サイクス(G)やダニー・ボウズ(Vo/THUNDER)、スティーヴ・ルカサー(G/TOTO)、ジョー・リン・ターナー(Vo)、リッキー・ウォリック(Vo/BLACK STAR RIDERS)、スティーヴ・モーズ(G/DEEP PURPLE)、デーモン・ジョンソン(Vo, G/BLACK STAR RIDERS)、ダグ・アルドリッチ(G/THE DEAD DAISIES)などなど。とにかく、無駄に豪華です。

選曲的にはブルースに傾倒した『STILL GOT THE BLUES』(1990年)以降の作品にこだわることなく、初期の『BACK ON THE STREETS』(1978年)から『VICTIMS OF THE FUTURE』(1983年)、『WILD FRONTIER』(1987年)の楽曲も収録。ボブ・デイズリー自身が関わっていることもあってか、『POWER OF THE BLUES』(2004年)という晩年の作品から3曲も選ばれていることがちょっと意外でした。

基本的にはどの曲もゲイリー独特の粘っこいギターフレーズを活かしつつ、オリジナルを尊重しながら随所に自身の個性を取り入れていく手法で、またボブが中心となって制作していることもあって統一感も強く、この手のトリビュートアルバムとしてはかなり水準の高いもののように思います。HR/HM系ギタリストが多く参加しているものの、各自そこまで出しゃばることもないので、本当に気持ちよく楽しめる1枚です。

やはり本作最大の聴きどころは、久しぶりにシーン復帰を果たしたジョン・サイクス参加の「Still Got The Blues (For You)」になるかと。ゲイリーからの影響も大きく、彼と同じTHIN LIZZY(=フィル・ライノット)にもお世話になった関係もあり、そりゃあもうディープなソロを聴かせてくれています。まあこの曲自体、基本的にメインフレーズの繰り返しになるのでそこまでアドリブを効かせることは難しいのですが、特に終盤のソロはサイクスらしいもので、フェイドアウトせずにこのままずっと聴いていたい!と思わせられるはずです。

で、この曲を歌うのがTHUNDERのダニー・ボウズというのが、また最高。思ったよりも感情抑え気味ですが、それがギターのエモーショナルさに拍車をかけているように感じました。うん、これ1曲のために購入してたとしても無駄じゃないと思います。

個人的にはこのほか、リッキー・ウォリックが歌い、スティーヴ・モーズがギターを弾く「Parisienne Walkways」、グレン・ヒューズが最高のボーカルパフォーマンスを聴かせる「Nothing's The Same」、思ったよりもゲイリー・ムーア色の強いダグ・アルドリッチのプレイが印象に残る「The Loner」、デーモン・ジョンソンが歌って弾いてと大活躍の「Don't Believe A Word」あたりがお気に入り。もちろん、そのほかの曲も文句なしに良いです。

来年の2月で、亡くなってから早8年。ゲイリー・ムーアというギタリストがどんな存在だったか、改めてロック/ブルース/HR/HMシーンに与えた影響をこのアルバムから振り返ることができたら、と思います。彼の名前しか知らないという若いリスナーにこそ聴いてほしい1枚です。



▼V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』
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2017年10月19日 (木)

『LOUD PARK 17』DAY 2@さいたまスーパーアリーナ(2017年10月15日)

Loudpark17_b昨日のエントリーに続いて、こちらでは『LOUD PARK 17』2日目公演について書いていきたいと思います。なんのことかわからない人は、このひとつ前のエントリーをごらんください。


<DAY 2:10月15日(日)>

寝不足でラウパー初日に臨み、このまま帰宅して再びたまアリに戻ってくるようなことしたら、絶対に初日よりもひどい時間に起きるだろうなと思い、この日はさいたま新都心にて一泊。ライブ終了後20分以内には宿に着いて、さすがに笑いました。

で、15日。11時チェックアウトだったので、ギリギリまでホテルにいてOUTRAGEから始めようかなと思っていたのですが、10時半になった途端にシークレットアクトがBLACK EARTHだと知り、焦ってチェックアウトして会場へ。ドアtoドアで10分ちょっとで会場に着き、後半のみ観ることができました。よかった。


BLACK EARTH
ちょっと前のエントリーに書きましたが、BLACK EARTHとは初期ARCH ENEMYの面々が勢ぞろいしたスペシャルバンド。もともとは2年前のラウパーでのARCH ENEMYのステージに初代ボーカルのヨハン・リーヴァとクリストファー・アモット(G)がゲスト参加したことがきっかけで、昨年春に同編成でジャパンツアー敢行。先頃そのツアーの模様がDVD+CD化されたこともあり、今回のシークレットゲスト出演となったようです。「なんでシークレットにするんだよ! 名前出したほうが客入るし! なんなら行ったのに!」という人も多いようですが……僕はこの試み、嫌いじゃないです。フェスって「人で選ぶ」んじゃなくて、最終的には「器で選ぶ」ようになったら成功した証拠だと思うので……って話は置いておいて。残念ながら「Bury Me An Angel」も「Dead Inside」も観れませんでしたが、「Beast Of Man」の途中からなんとか会場入り。初のヨハンは……あれ、昔よりもデス声じゃん! いいじゃん!と自分の予想を裏切る仕上がり。後日、昨年のツアーのDVD+CDも購入しましたが、この20年近くでかなり鍛え上げられたんですね。納得。ラストの「Fields Of Desolation」、終盤のツインリードで思わず泣きそうに。ああ、早起きしてよかった……(いや、実際は早起きじゃないんだけど)。

OUTRAGE
久しぶりにライブで観るOUTRAGE。直近の新作『Raging Out』の出来が素晴らしかっただけにどうしても観たかったわけですが、オープニングから「My Final Day」「Madness」の連発にノックアウト。さらに新作から「Doomsday Machine」「Hammer Down and Go」と冒頭の2曲をやられて、勝手にガッツポーズ。「Death Trap」や「Under Control Of Law」といった初期の楽曲、現編成が復活して最初の1曲「Rise」と彼らが何者かを存分に理解できる選曲が続き、ラストは「Megalomania」でクライマックス。確かに短くて物足りなさはあったけど、代表曲&新曲を詰め込んだコンパクトな内容はフェスに最適だと思いました。いやぁ、良かった。

LOUDNESS
本当なら次のAPOCALYPTICAも観るつもりだったのですが、ここでBLACK EARTHのTシャツ買いに行ったり仕事をしたりと、いろいろ野暮用に。結局、ラストの「Nothing Elese Matters」の終盤を観たのみなので、レポートは割愛します。で、LOUDNESS。高崎晃さんが出てきてサウンドチェックをするのですが、すでにギターの音が他のバンドよりもデカイ(笑)。まぁ直前がAPOCALYPTICAだから余計にそう感じるのかもね……と思っていたら、オープニングのインストナンバー「Fire of Spirit」の時点で耳が……本当に音デカかった(苦笑)。さすがに昨日からの耳疲れもあったので、耳栓を使用してライブに。序盤は2000年代以降のモダンヘヴィネス系楽曲が並び、「The Sun Will Rise Again」「Metal Mad」といった比較的メロウな楽曲もあったのですが……後半の「Crazy Nights」「In The Mirror」「Crazy Doctor」「S.D.I.」といった80年代の楽曲とどうしても比較してしまい……リフは最近の楽曲もカッコ良いのに、メロが弱いんだよなと改めて感じてしまったわけです。まあこのメロが現代的と言われてしまったら返す言葉もないのですが、僕としてはやはり……うん。そこだけが本当に勿体ないと思うんです。あと、『LIGHTNING STRIKES』30周年のバックドロップを使ってるのに肝心の同作からの代表曲がなかったり、二井原さんのルックスが完全にMETALLICAのジェイムズになっていたりでいろいろ驚きました。

DEVIN TOWNSEND PROJECT
デヴィン・タウンゼンドを観るのは、たぶん90年代後半のSTRAPPING YOUNG LADだったかソロだったかで来たとき以来。だからほぼ20年ぶりでした。最近のアルバムもほとんど聴いてなかったんだけど、なるほど、こういう音なのね、と感心して観てました。かなりプログレッシヴメタルっぽい雰囲気で、デヴィンの声もかなりよく出ているし、キーボードの人以外みんなスキンヘッドなところ含め、いろいろ気になりました。昨年リリースされた最新作、聴いてみます。

BLACK STAR RIDERS
今年発売された3rdアルバム『HEAVY FIRE』もなかなか良かったし、そもそもTHE ALMIGHTYTHIN LIZZYも好きなので、ここは観ておかないと。リッキー・ウォリック(Vo, G)含むトリプルギター編成は見応えあるし、音はそれまでの出演バンドと比べれば軽いんだけど、今の自分の耳には優しい存在。リッキーの男臭いボーカル、スコット・ゴーハム(G)のソロプレイ含め、ブリティッシュ&アイリッシュハードロックの王道感が強く出ていて好印象でした。オリジナル曲に含めて、THIN LIZZY「The Boys Are Back In Town」のカバーも飛び出し、これもまったく違和感なし。そこに、真の意味でTHIN LIZZYを継承したことを強く感じました。もし今度単独来日したら、もっとじっくり観てみたい。そう素直に思えました。

CRADLE OF FILTH
昔から聴いてるのに、気づいたらライブを観るのは初めて? 自分でも意外でした。女性ボーカルも随所にフィーチャーした、シンフォニックなブラックメタルなんでしょうけど、前日のEMPERORとは完全なる別モノ。本人たちも「ブラックメタルというよりはエクストリームメタル」と言ってるようですし、現在は独自のスタイルを築き上げたってことなんでしょうね。ダニ・フィルス(Vo)の高音デスボイスは圧巻の一言で、「ああ、これ本当に自前で出してるんだ」と感心してしまいました。変な話ですが。選曲はリリースされたばかりのニューアルバム『CRYPTORIANA – THE SEDUCTIVENESS OF DECAY』からは1曲のみで、『NYMPHETAMINE』(2004年)からの曲多め。アルバムを全部聴いてるわけではないので知らない曲もあったものの、そのドラマチックな曲構成には完璧に惹きつけられました。これはぜひ単独でも観てみたいかも。

MESHUGGAH
もしかして彼らをライブで観るのって、2008年の『LOUD PARK 08』での初来日公演以来? っていうか、それ以降って来日してないですよね? 前回の来日からの9年間で新作、2枚しか出してないですし。その彼らも、45分のセットで7曲を披露……したのですが、不思議なことに、彼らの楽曲(主にギターの音)を聴いてると……眠くなるんですよね。いや、彼らのことは大好きなんですが、ずっと聴いてると寝落ちしそうになるという。そういえば、前回の来日公演でもたったまま寝そうになったわ……特にミドルテンポの楽曲に多いのですが、そやって周波数的なものが影響することってあるんでしょうか。たまたま自分の波長的に、彼らのギターサウンドがそこに合致してしまうとか。名前は出せませんけど、同系統のテンポ感&サウンドを持つ他のバンドのライブでも寝落ちしそうになったこと、何度もあるのですよ。これ、誰かに科学的検証をしてほしいです。と、ライブとは全然関係ない話になってしまいましたが、後半テンポアップしてからはまた目が覚め、彼らのライブにのめり込んでいったのでした……演奏は最高でした。文句なし。またすぐに来てください、マジで。今度は寝ないように頑張るので。

SABATON
2年前の『LOUD PARK 15』で初来日を果たした彼ら。大きさ含め完全に戦車そのもののドラムセット(戦車の上にドラムセットがある)や、古今東西の戦という戦を題材にした楽曲の数々、そしてカッコ良いんだけどどこかコミカルで親しみやすいルックスやパフォーマンス、今回も最高以外の何モノでもなかったです。前回からギタリストが1人交代していますが、基本やることは変わらず。終盤、最新アルバム『THE LAST STAND』収録曲で日本の戦を題材にした「Shiroyama」が披露され、『サイレントヒル』などのゲーム音楽を手がける作曲家・山岡晃さんがギターでゲスト参加。おそらくその場にいた多くのメタルファンが「誰?」と思ったでだろうリアクション、忘れません。そんなサプライズも含め、前回以上の盛り上がりを見せたSABATON。いい加減に単独来日を決めていただきたい。絶対に彼ら、“新世代のACCEPT”としてもっと人気を集めるはずだし、なんならメディアがもっと大々的に取り上げるべき。それくらいのことをしてほしいですよね、今後のためにも……。

GENE SIMMONS BAND
KISSのジーン・シモンズが初のソロツアーを開始すると聞いたときは、これまでに出した2枚のソロアルバムからの曲が半分、残りはKISSの自分ボーカルの曲なんだろうなと思っていたら、予想に反して“ほぼKISS”、あるいは“演奏のうまいメンバーを集めた、ひとりKISS”だったという(笑)。「Deuce」「Parasite」という初期KISSナンバー2連発にのけぞり、「I Love It Loud」で大合唱……のはずが、実はこの会場にいる大半のメタルキッズは、そこまでKISSを通ってないんだなということに気づくわけです。コーラス、ちょっと違うぞって……。まあそれは良しとして、その後も「Cold Gin」なんていうおなじみのジーン曲が続くのですが、驚いたのは「Do You Love Me」というポール・スタンレー曲や「Shout It Out Loud」みたいにポールとジーンが歌パートを分け合う曲まで披露されたこと。バンドメンバーが優秀なので、しっかりポール役もこなせるわけですね。後半は「ヘヴィメタルの前にKISSあり」とジーン自らの宣言にギョッとした「War Machine」(火吹きなし)や、最新アルバム『MONSTER』収録曲の「Wall Of Sound」といったレア曲も登場。『LOVE GUN』収録の「Got Love For Sale」も意外な選曲で驚かされました。「Watchin' You」「She」をライブで久々に聴けたのも、ファンとしては嬉しいかぎり。ラストはおなじみの「Rock And Roll All Nite」なのですが……ここでファンをステージに上げてお祭り騒ぎ。これ、先日のDURAN DURAN来日公演におけるCHICでも同じ場面に遭遇したのですが……盛り上げ役でステージに上がってる一般の皆さん、写メ撮りまくり(苦笑)。大スターと同じ舞台に立てる喜びは痛いほど理解できるのですが、演奏してるメンバーとツーショット撮影始めたりするの、はっきり言ってみっともないですよ。ケータイがなかった時代は、みんなもっと一緒に盛り上げることに徹していた記憶があるんですが……時代なんですかね。悪くは言いたくないんだけど、やっぱりあれだけは受け入れられないっていうか苦手です。というわけで、最後の最後で苦い気分でライブを見終えることに。

MICHAEL SCHENKER FEST
大好きなKISSのジーンをあんな気持ちで見終えるなんて。ここはもう、“神”に最後のひと盛り上げをしてもらうしかない。そんな気持ちでした。とはいえ、僕はそこまでシェンカーに思い入れがある人間ではなく、ちょっと前のエントリーでも書いたように、リアルタイムで聴き始めたのはMcAULEY SCHENKER GROUPから。代表作はそれなりに聴いてるし、代表曲はほぼ知ってる。だけど世代なのか、マイケル・シェンカーというギタリストにはそこまで惹かれなかったんですよね。僕よりもひとつ上の世代が熱心に聴いている印象。そもそも僕、ギター云々よりもやっぱりボーカルや曲が魅力的であることが大前提で、そこにすごいギタリストが参加してたら尚良しって人間なので。なんて予防線を張ってから話を進めますが……。

いや、すげえ良かった! ああ、神ってこういうことか、と初めて実感&納得しました。2曲目「Into The Arena」のプレイだけでもう圧巻……散々音源では聴いてきたこの曲も、生で観ると&聴くとまったく違う印象を受けるんだから不思議。この曲、こういう表情を持っていたのかって。ああ、これ好きだわ、このギターじゃなきゃダメだわ、って。もうね、この1曲だけでノックアウトでした。その後、ゲイリー・バーデンやグラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーが順番に出てくるのですが、ゲイリーはさておき(笑)、グラハムは無駄に声がデカイし、今年の12月で70歳だというのにあの声量&高音にはただただ驚くばかり。それに続くロビンもまた声が出ていて……この人、こんなに歌うまかったんだ、と見直しました。さらに圧巻だったのは「Save Yourself」。もともと大好きな曲なんですが、シェンカーのギターが泣きまくり(歌いまくり)のところを、それを邪魔せず、なおかつ自己主張するロビンのボーカルにうっとり。すげえです。

で、さらにさらに鳥肌ものだったのが、UFO「Rock Bottom」でのシェンカーのギターソロ。中盤に5分くらい弾きまくってたんだけど、もうね、ずっと聴いてたいと思った。ああ、やっぱりどんなアーティストも生で観ないと答え出せないな、って改めて実感させられました。この人は音源じゃなくて、ライブの人なんだね。20数年前にUFOで観たときは正直そこまで惹かれなかったんだけど(それもあって、以降そこまで熱心に聴いてこなかったんですが)、この日の彼は水を得た魚のように胸に突き刺さるフレーズを、次々に叩き込んでくるわけです。

この時点で終演予定の21:30をゆうに超えており、最後に全出演者がステージに揃って終わるかと思いきや、シェンカーの「One more?」の一言でダメ押しの「Doctor Doctor」! 結局2時間近いほぼフルスケールのショーを見せてくれたわけですよ。本当にありがたい!(セットリストには、さらに「Lights Out」も載っていたので、時間が許せばそれもあったのかも……ゴクリ)

こうして最後の最後、シェンカーに全部持っていかれた今年のラウパー。2日目はマイケル(・アモット)に始まりマイケル(・シェンカー)で終わった、なんとも清々しい1日でした。今年は『OZZFEST』も『KNOTFEST』もなさそうですし、5月に予定されていた『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』も中止になっちゃったしで、メタルファンにとってはなんだかなーな1年でしたが、僕自身はこの2日間ですべてが報われた気持ちです。確かに今年は1ステージ(3rdステージの「EXTREME STAGE」が)減ったため、出演者数は減ってしまいましたし、それなのに例年と同じチケット代はちょっと無理があるんじゃないの?という声も理解できます。でも、それでも元を取った!と思えるだけのパフォーマンスをたくさん観ることができたので、個人的には満足しております。

往年の大物がたくさん出てくれるのはありがたいですが、ニューカマーにも注目する機会を与えてほしいですし、もっと言えば日本のフェスなのに日本のバンドの扱いがあまりよろしくなかったりなど気になる点もたくさんあるのですが、もう12回もやったんだから、そろそろ変化が必要な気もします。そういう意味では、今回のシークレットアクトはその一環だったのかもしれませんね。もし来年も開催されるのでしたら、そのへんもっとテコ入れしていただきたいなと勝手に思っております。



▼MICHAEL SCHENKER『MICHAEL SCHENKER FEST LIVE: TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL A』
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2017年3月 9日 (木)

BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』(2017)

THE ALMIGHTYのリッキー・ウォリック(Vo, G)、元THIN LIZZYのスコット・ゴーハム(G)を中心に結成された、“THIN LIZZYの正統的後継バンド”BLACK STAR RIDERS。彼らが2015年の2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』に続いて発表したのが、本作『HEAVY FIRE』です。2月初頭に発表された今作は、すでにイギリスで初登場6位という好成績を残しています。

もともとは“フィル・ライノットのいないTHIN LIZZY”がライブ活動の延長で、オリジナル曲を発表する上でTHIN LIZZYの名前を使わないため、そして「THIN LIZZYの物語を次のステップに進めるため」に新た結成されたのがBLACK STAR RIDERSというバンド。現在はリッキー、スコットのほか、BROTHER CANEなどで活躍したデイモン・ジョンソン(G)、ヴィンス・ニールのソロプロジェクトやRATTに在籍したロビー・クレイン(B)、Y&TやMEGADETHなど数々のバンドで活動し、最近はRATTにも参加しているジミー・デグラッソ(Dr)という5人で活動しています。

確かに本作にはTHIN LIZZYの“香り”がそこらじゅうから感じられます。それはリッキーの「どことなくフィル・ライノットに似た」男臭い歌声だったり、独特な節回しを含むメロディだったり、随所にフィーチャーされるツインリードギターだったり……それらがミックスされることでTHIN LIZZYっぽい“香り”になるのですが、あくまで“っぽい”止まり。そこにアイリッシュトラッド的な要素ではなく、アメリカンロック的な大らかなノリやブルース、フォークなどのテイストが加わることで独自の世界観が作り上げられています。

今作は前作同様、アメリカ・ナッシュビルでレコーディングを敢行。プロデューサーには前作から引き続きニック・ラスカリニクス(ALICE IN CHAINSDEFTONESFOO FIGHTERSなど)を迎えて制作されており、そのへんも本作の方向性に大きな影響を与えているのかもしれません(それ以前にバンド内のアメリカ人比率が高いことも大きいと思いますが)。THIN LIZZYが本来持ち合わせていた音楽的“アイリッシュ訛り”が払拭され、よりワールドワイドで戦える音に昇華されています(もちろんこれは、THIN LIZZY元来のサウンドがワールドワイドで戦えないという意味ではありません。「クセが弱まったぶん、より幅広い人たちに聴いてもらえる体制が整った」ということです)。

王道THIN LIZZY調の「Testify Or Say Goodbye」みたいな曲を残しつつも、全体ではTHIN LIZZYテイストは調味料程度で、リッキーやスコットなどのメンバーが本来持つ個性がより強く出始めています。それを良しとするか、それともなしとするかで本作の評価は大きく分かれるかもしれません。個人的には全体のバランス感が絶妙で、過去2作以上にお気に入りな1枚です。

 


▼BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』
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