BLACK VEIL BRIDES『THE PHANTOM TOMORROW』(2021)
2021年10月29日にリリースされたBLACK VEIL BRIDESの6thアルバム。日本盤未発売。
1stアルバム『WE STITCH THESE WOUNDS』(2010年)のリメイク作『RE-STITCH THESE WOUNDS』(2020年)やアンディ・ブラック(アンディ・ビアサック/Vo)のソロアルバム『THE GHOST OF OHIO』(2019年)はあったものの、バンドのオリジナル新作としては『VALE』(2018年)以来3年9ヶ月ぶり。『RE-STITCH THESE WOUNDS』からメジャーのLava / Universal Republicを離れ名門インディーズレーベルSumerian Recordsへと移籍しており、今作がSumerianから初のオリジナル新作となります。
今作は『WRECHED AND DIVINE: THE STORY OF THE WILD ONES』(2013年)や前作『VALE』に続くコンセプトアルバム。1分少々のイントロダクションやインタールードを挟みつつ、3〜4分台の楽曲を中心に全12曲41分というコンパクトな形で「空想上の世界における、追放者とその世界を収めるミステリアスなヒーロー」の物語が進行していきます。
サウンドや楽曲スタイル自体はこれまでの延長線上にある、ゴシック感を散りばめたメロディアスな王道ハードロック。適度なヘヴィさを伴いつつも、全編を通じてメランコリックな要素が強く、過去作以上にスルスル聴き進められる1枚ではないでしょうか。
ただ、そのぶん刺激的要素は少なく、極度なダークさやアグレッシヴさを求めると肩透かしを喰らうかもしません。また、「これ!」といったキラーチューンが見当たらないのも気になるところ。どの曲も平均点は軽く超えているものの、アルバム1枚通して聴いたときに「これが特別だった」と記憶に残るものがあまりない(「Crimson Skies」は相当いい線いってますけどね)。特にこのバンドの場合、ここ数作はそういった課題が常につきまとっており、今作でもその課題をクリアすることはできていないようです。残念。
そのルックスやビジュアルから破天荒な印象を受けるものの、思いのほか品行方正な正統派ハードロック。モダンヘヴィネス以降のテイストも味付けとして取り入れられているので、正統派といってもそこまで古臭くは感じられない。そのへんを意識して接すると、そこそこ楽しめるのではないでしょうか(そういった意味ではSIXX:A.M.あたりと同じ匂いを感じますよね)。
デビュー時は新たなダークヒーロー登場といった形で、若年層から強い支持を獲得した彼らも、今や10年選手。あの頃バンドを応援していたティーンエイジャーもすでに20代後半なのかな。となったときに、今のこのバンドを支持する層がどのあたりになるのかが気になります。デビュー以来、アルバムは常に全米TOP40入り(2ndアルバム『SET THE WORLD ON FIRE』(2011年)以降はすべてTOP20入り)してきた彼らですが、ロック低迷期のアメリカで本作がどこまで検討するのか、注目しておきたいと思います。
▼BLACK VEIL BRIDES『THE PHANTOM TOMORROW』
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