GUNS N' ROSES『USE YOUR ILLUSION: SUPER DELUXE EDITION』(2022)
2022年11月11日にリリースされたGUNS N' ROSESのボックスセット。
本作は1991年9月に同時リリースされた、GUNS N' ROSESのオリジナルアルバム『USE YOUR ILLUSION I』および『USE YOUR ILLUSION II』に最新リマスタリングを施し、未発表ライブ音源&映像を大量に詰め込んだアニバーサリー作品。本当なら発売30周年の昨年2021年に発表予定でしたが、コロナ禍などが影響しここまで大幅にズレ込んだようです。
最新リマスタリング盤に1991〜93年にかけて開催された『Use Your Illusion World Tour』から抜粋されたボーナスライブディスク(『I』『II』それぞれ内容異なる)付きデラックス仕様の『USE YOUR ILLUSION I』『USE YOUR ILLUSION II』も同時発売されていますが、本稿ではCD6枚組+Blu-ray2枚組仕様のスーパー・デラックス仕様について触れていきます。
アルバム本編(CD DISC-1〜2)は現代的なリマスタリングが施され、内容自体はさほど大きく変わった印象は受けません。もともと音がダイナミック&クリアな作品で、古臭さをそこまで感じさせないサウンドプロダクションだったので、音圧的なところをいじった程度でしょうか。これはイヤホンなどで聴くよりも、スピーカーを通して大音量で聴いたときに差を感じるポイントかもしれません。
本編で変わった点はひとつ、『I』(DISC-1)収録のヒットシングル「November Rain」のストリングスがシンセ→生音に差し替えられた新バージョンになっている点。確かに生弦に変わっただけで曲の印象も少々変わります。30年も聴き慣れたオリジナルバージョンより壮大さ、端正さはより増しており、無駄に大袈裟だった原曲がさらに大袈裟になった印象(笑。いや褒め言葉ですよ)。オリジナルバージョンはベストアルバム『GREATEST HITS』(2004年)や、今も配信継続中の『I』オリジナル版でも聴くことができ、抹消されるわけではないのでご安心を。
さて、本作のハイライトといえるのが未発表ライブ音源&映像でしょうか。今回は1991年5月16日のニューホーク・Ritz Theater公演と、1992年1月25日のラスベガス・Thomas & Mack Center公演がそれぞれCD(DISC-3&4、5&6)とBlu-ray(DISC-7、8)に音源&映像収録されています。前者は『Use Your Illusion Tour』本編開始前に実施された3本のシークレットギグの3本目、当然アルバム発売前であり、イジー・ストラドリン(G,Vo)の姿も確認できます(なもんですから、セトリにはイジー歌唱の「Dust N' Bones」も含まれています)。また、この日のライブは2ヶ月後に発売されるシングル「You Could Be Mine」のMV用に映像収録もされていたので、残されたBlu-ray映像もかなりクリア。なぜ今までお蔵入りしていたんだと言いたくなるほどの代物です。
ライブの出来自体はかなりラフで、「Right Next Door To Hell」や当の「You Could Be Mine」など、要所要所で演奏ミスも目立ちますし、アクセル・ローズ(Vo)のボーカルの出来も決して褒められたものではありません。セトリも「Paradise City」が7曲目に披露されていたり、ラストが「Welcome To The Jungle」だったりと、今ではあまり想像できない構成。そういった衝動性の強さおよび計画性のなさ(笑)が伝わる内容からは、1991年というギリギリの危うさで保たれていたバンドの空気が伝わるのではないでしょうか。なお、「Don't Cry」や「You Aint't The First」には当時メジャーデビュー前のBLINE MELONからシャノン・フーン(Vo)がゲスト参加しています。
そして、1992年1月のラスベガス公演は脱退したイジーに代わりギルビー・クラーク(G, Vo)が加わり、さらにブラスやマニピュレーター、女性コーラスなど大所帯でのスタジアムツアー編成へと切り替わったタイミングの1本。翌2月下旬には東京ドーム3DAYS公演も控えたタイミングで、セットリストやちょっとした構成含め、のちにVHS〜DVDで残された当時の日本公演にかなり近い内容です。アクセルのボーカルも比較的安定しており、演奏自体もどっしり構えた印象が伝わるもの。イジーがいなくなったことで、ダフ・マッケイガン(B, Vo)のボーカルワークの比重が高まり、今レッグからMISFITSのカバー「Attitude」が加わっています。思えばこのカバー、ライブテイクはこれが初音源化なので非常にありがたいです。
そのほかにも、曲と曲をつなぐスキット的役割として、「Patience」の前にはTHE ROLLING STONES「Wild Horses」、「Seet Child O' Mine」の前にはQUEEN「Sail Away Sweet Sister」、「Knockin' On Heaven's Door」の前にはアリス・クーパー「Only Women Bleed」などがフィーチャーされています。個人的にはこのへんのカバーの印象が強いツアーなので、このあたりも音源として正式に残されたのはうれしい限りです。
デビュー作『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)のスーパーデラックス盤(2018年)のように、未発表スタジオ音源やデモ音源も豊富にあったはずなのに、あえて録音状態よさげなライブ音源に全振りした今回のボックスセット。最初に未発表曲やデモテイクなしと知ったときはがっかりしたものの、あの時期を生で体験した世代としては当時の「危ういガンズ」から「完全無欠のガンズ」へと移行する過渡期を完全パッケージ化した本作品は「結果、これで正解!」と断言できるものでした。本当なら映像付きですべて楽しんでほしいですが、約5万円とかなり高価な代物ですので、音源だけでもいいって人はサブスクやダウンロード購入(5000円以下で入手可能)で済ませてもいいかもしれません。
▼GUNS N' ROSES『USE YOUR ILLUSION: SUPER DELUXE EDITION』
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