カテゴリー「Blur」の17件の記事

2023年12月31日 (日)

2023年総括

大晦日ということで、2023年のまとめ記事をアップしておきます。

2022年同様、「ジャンル/アルバム/シングル/楽曲と枠にこだわらず、30作品に縛る」という形にさせていただきました。特に順位付けをせずアルファベット→50音順で30作品、掲載していきます。

 

BARONESS『STONE』(アルバム)

 

BLUR『THE BALLAD OF DARREN』(アルバム)

 

BRING ME THE HORIZON「LosT」(楽曲)

 

BUCK-TICK『異空 -IZORA-』(アルバム)

 

CAROLINE POLACHEK『DESIRE, I WANT TO TURN INTO YOU』(アルバム)

 

CODE ORANGE『THE ABOVE』(アルバム)

 

††† (CROSSES)『GOODNIGHT, GOD BLESS, I LOVE U, DELETE.』(アルバム)

 

DEPECHE MODE『MEMENTO MORI』(アルバム)

 

DURAN DURAN『DANSE MACABRE』(アルバム)

 

HEY-SMITH『Rest In Punk』(アルバム)

 

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2023年8月25日 (金)

SUMMER SONIC 2023(2023年8月19日、8月20日)

最初にBLURの出演が発表された時点で、今年は2日とも行こうと決意し、先行でチケットを確保。しかし、夏が近づくにつれて今年の尋常じゃない猛暑ぶりに不安を覚えるわけですが……。さて、2023年のサマソニはどんな感じだったんでしょう。レポというよりもメモ程度に受け取ってもらえると幸いです。


Img_7377 ●8月19日(土)

■SUMMIT All Stars(MARINE STAGE)

NewJeansで早々にマリンスタジアムに到着したのですが……スタンド席の座席、熱すぎ!(笑) なるべく日陰を探して退避しつつ、普段あまり接することのない国内ヒップホップシーンの一部を味わいました。ノンアル状態だったけど偏見なく、気持ちよく楽しめましたよ。


■NewJeans(MARINE STAGE)

で、肝心のNewJeans。曲の良さはさることながら、パフォーマンスは……平均的かな。悪くはないけど、ステージ慣れしていない感も多々見受けられたし、何よりこの猛暑にメンバーがついていけてない印象もあり。やりたいことはわかるんだけど、あとひとつといったところか。


■PassCode(PACIFIC STAGE)

久しぶりに観たけど、現編成もだいぶ板についた感。ラウドなバンドサウンドをバックに、気持ちよく楽しめた。ただ、突き抜けるにはプラスアルファというかSomething Specialというか、あとひとつ何かが足りない気も。海外に行けばいいとかそういう問題ではなく、ね。


■GABRIELS(MOUNTAIN STAGE)

まったく予習せずに触れた、大収穫のひとつ。いわゆるモダンでジャジーなソウルなんだけど、アメリカンエンタメの強さを改めて実感させられたパフォーマンスに圧倒された。とにかく歌の力よ。これは音源よりもステージを観たほうが一発でハマるやつですね。これだからフェスは面白い。


■HONNE(MOUNTAIN STAGE)

マリンスタジアムに移動するため、頭数曲だけ。音源よりもバンド感が強まっており、好みだったな。


■FALL OUT BOY(MARINE STAGE)

ずいぶん久しぶりに観たけど、改めて知ってる曲ばかりで驚いた。シンガロングまで含めてライブが完成する、まさに現場に足を運ばないとその魅力を完全に理解できない。そういった意味では、彼らのようなバンドはコロナが明けてようやく本領発揮といったところでしょうか。あと、彼らはポップパンクの文脈で語るのではなく、エモを通過したアリーナロック/スタジアムロックとして語るべきだなとも思いました。


■BLUR(MARINE STAGE)

Img_7384 直前に8年ぶりのアルバム『THE BALLAD OF DARREN』を発表したものの、サマソニも海外でのフェス同様にグレイテストヒッツ的なセトリで臨むのかなと思っていたら、オープニングから新曲「St. Charles Square」で始まるもんだからびっくり。新作から5曲も披露していたことからもわかるように「意外と新作モードなんだな」と、思わず唸ってしまいました。

とはいえ、それ以外はグレイテストヒッツモード(+α)。いつぶりだよ?ってくらい久しぶりに生で聴けた「Country House」をはじめとする名曲群に加えて「Trimm Trabb」や「Villa Rosie」、『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993年)のインタールードを披露するサービスぶり。ああ、やっぱりこのバンド大好きだ……1999年夏のフジロックぶりに実現した、グレアム・コクソンを含む編成での来日公演(僕が彼らを観るのもそれ以来)、満喫しました。

セットリスト
01. St. Charles Square
02. Popscene
03. Beetlebum
04. Goodbye Albert
05. Trimm Trabb
06. Villa Rosie
07. Coffee & TV
08. Country House
09. Parklife
10. To The End
11. Barbaric
12. Girls & Boys
13. Advert
14. Song 2
15. The Heights
16. This Is A Low
17. Tender
18. The Narcissist
19. The Universal


Img_7394 ●8月20日(日)

■METALVERSE(MOUNTAIN STAGE)

今年に入ってからのBABYMETALのライブにたびたび登場していた謎の存在、ついに本格的なお披露目。サウンド的にはメタルの枠からはみ出たものも少なくなく、メンバーも歌唱する子以外(全部で5人くらいいたのかな)は固定なのか流動的なのかも不明。新たな何かが始まるぞ!という期待感だけは十分伝わりました。


■NOVA TWINS(MOUNTAIN STAGE)

個人的2日目メインアクト、待望の初来日。サポートドラマーを含むトリオ編成で、音源どおりゴリゴリしたアグレッシヴなラウドサウンドで、かつ動きも華やか。メイツとモノノフが多く集っていることもあってか、非常に盛り上がりました。気づいたら、後ろまでお客さんパンパンだったな。

セットリスト
01. Fire & Ice
02. Cleopatra
03. Taxi
04. Puzzles
05. K.M.B.
06. Sleep Paralysis
07. Antagonist
08. Choose Your Fighter


■ももいろクローバーZ(MOUNTAIN STAGE)

気づいたら、4人になってから初めて観る気が(そんなことないか)。安定のバンド編成、しかもマーティ・フリードマン(G)を含む編成で、もはや王道エンタメの装い。なんの不安もない。ただ、最近の楽曲の弱さだけは弱点か。なかなか難しいですね。


■THE SNUTS(SONIC STAGE)

期待してフロアに足を運んだけど、思っていた以上にスペシャル要素が感じられず。よくあるギターロックバンドのひとつ、といった印象でとどまり。数曲で移動してしまいました。


■WILLOW(MOUNTAIN STAGE)

マシンガン・ケリーの「Emo Girl」やYUNGBLUD「Memories」などへの客演で名前を目にしていたアクト。最近のPARAMOREやPVRISの流れを汲むサウンド、楽曲でめちゃくちゃ好み。まだ22歳なんでしよ? 将来有望すぎる。


■THE KID LAROI(MARINE STAGE)

この日唯一のマリンスタジアム。昨日より暑くない……と思ったものの気持ち悪い蒸しっぷりで、で用意した水分も飲み果たし、やはり数曲で退散。ノリの良い曲が多いものの、若さだけが印象的だったかな。


■女王蜂(PACIFIC STAGE)

『推しの子』のあとだけに注目度も高く、客入りも上場。こういうときの女王蜂は本当に強い。今日も一寸の隙もなし。完璧でした。


■EVANESCENCE(MOUNTAIN STAGE)

そういえばコロナ禍に入る直前、和楽器バンドのゲストとしてエイミー・リーが来日して、大阪でインタビューしたんだよな。翌月に控えた『DOWNLOAD JAPAN』の話もしたっけ。そういう意味でも、非常に感慨深いライブでした。最新作『THE BITTER TRUTH』(2021年)からの楽曲を中心に、今年リリース20周年を迎えたデビュー作『FALLEN』(2003年)の名曲群を交えた、まったく無駄のないセットリスト。楽しくないわけがない。熱心なファンも少なくなく、それなりにシンガロングも起こっていたけど、日本での人気/認知度はまだまだか。フェスでもこういうバンドの集客が形にならないと、単独来日は難しいんだろうな……なんて悲しい気持ちにもなったものの、個人的には大満足。

セットリスト
00. Artifact/The Turn
01. Broken Pieces Shine
02. What You Want
03. Going Under
04. Take Cover
05. Call Me When You're Sober
06. Lithium
07. Wasted On You
08. Whisper
09. End Of The Dream
10. Better Without You
11. Imaginary
12. Use My Voice
13. My Immortal
14. Bring Me To Life


■BABYMETAL(MOUNTAIN STAGE)

MOMOMETALが正式メンバーになってから初観覧(前回は召喚される直前でしたから)。とはいえ、この3人でのステージは今に始まったことではないので、安定感は抜群。セトリ的には春に観たワンマンのショートバージョンといったところか。しかし、今回は直近リリースの新曲「メタり!!」が加わっているので、だいぶ印象が異なるかも。直近のアルバム『THE OTHER ONE』(2023年)がシリアスモードだっただけに、ようやく“あの”BABYMETALが戻ってきた感濃厚。いつも以上にあっという間に感じられたな(実際短かったんだけど)。ケンドリック・ラマーではなくこちらを選んで正解だったのか、ライブが始まる前は迷いもあったけど、結果大正解。2日間の締めくくりにふさわしいアクトでした。

セットリスト
01. BABYMETAL DEATH
02. ギミチョコ!!
03. PA PA YA!!
04. Distortion
05. BxMxC
06. MAYA
07. Monochrome
08. メタり!!
09. メギツネ
10. ヘドバンギャー!!
11. Road of Resistance
12. イジメ、ダメ、ゼッタイ

2023年2月 4日 (土)

BLUR『LEISURE』(1991)

1991年8月26日にリリースされたBLURの1stアルバム。日本盤は同年9月20日発売。

1990年10月にシングル「She's So High」(全英48位)でデビューを果たしたBLUR。続く1991年4月発売の2ndシングル「There's No Other Way」(同8位)、7月発売の3rdシングル「Bang」(同24位)とスマッシュヒットを連発し、アルバム自体も最高7位という新人としては上出来な成績を残しています。

以降も長きにわたりタッグを組むスティーヴン・ストリート(THE SMITHS、モリッシー、THE CRAMBERRIESなど)が全体像をまとめる役割を果たした本作は、次作『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993年)以降に色濃く表れる王道ブリティッシュロック色&ストレンジなポップ感こそ完全開花してはいないものの、それでも独自性が随所に見受けられる良質な1枚。今聴くとBLURの王道からは若干逸れるかもしれませんが、これはこれとして楽しめる内容ではないでしょうか。

サイケデリックさと浮遊感が同居する「She's So High」や「Bad Day」、ダンサブルなビートが心地よい「Bang」や「There's No Other Way」あたりからは、当時ブレイクしていたTHE STONE ROSES以降の流れを汲むスタイルで、その後の彼らとは多少色が異なるかな。また「Slow Down」を筆頭に、MY BLOODY VALENTINEなどシューゲイザー影響下にあるオルタナ感も1991年という時代ならではか。こういった曲を聴くと、まだまだ彼ららしい個性が掴みきれていなかったんだなと再認識させられます。

その一方で、のちのブリットポップ路線にも通ずる「Fool」や、どこか捻くれた感が伝わる「Repetition」あたりに、その後のBLURの片鱗を感じ取ることができる。そのもっともたる1曲が、のちに映画『トレインスポッティング』を通じて再評価される「Sing」ではないでしょうか。先に記した“らしくない”要素と、その後の“らしさ”が集約されたクロスロードのような1曲でもあるのですが、1991年というブリットポップ“勃発前”にすでにブリットポップ“以降”を彷彿とさせる曲を完成させていた事実に、やはり恐るべしバンドだなと実感させられます。

我々がよく知るBLURは本作リリース直後に発表されたシングル「Popscene」(全英32位/アルバム未収録)からスタートするわけですが、その前夜感がひしひしと伝わる、まさに処女作と呼ぶにふさわしい1枚。デーモン・アルバーン(Vo)やグレアム・コクソン(G)の類い稀なる才能のかけらを、ぜひ感じ取っていただきたいです。

 


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2021年12月 2日 (木)

DAMON ALBARN『THE NEARER THE FOUNTAIN, MORE PURE THE STREAM FLOWS』(2021)

2021年11月12日にリリースされたデーモン・アルバーンの2ndソロアルバム(オペラ『DR DEE: AN ENGLISH OPERA』のサウンドトラックとして制作された2012年の『DR DEE』を含めれば3作目)。

BLURGORILLAZのフロントマンとして知られるデーモンですが、ソロ作としては『EVERYBODY ROBOTS』(2014年)以来7年半ぶり。バンド時代から長らく在籍したParlophone Recordsを離れ、新たにインディーズレーベルのTransgressive Recordsからの第1弾作品として制作されました。

もともと本作はアイスランドの風景にインスパイアされたオーケストラ作品として制作予定でしたが、昨年のロックダウンを受けて脆弱性、喪失、出現、再生のテーマをさらに探求する11のトラックへと各曲を展開。結果、「自らをストーリーテラーとする曲のパノラマコレクションを完成させた」(以上、プレスリリースより)とのことです。

それもあってか、全体を覆う空気は若干重苦しいものがあり、どことなくBLURの90年代後半〜2000年代のオルタナ路線にも通ずるものがあるのかなと。ただ、ここではもっと自由度の高い、ロックに限定されないピュアな音楽が展開されているようにも感じます。ベースとなる楽曲がもともとオーケストラを意識したものだったこともあり、その片鱗も随所から伝わりますしね。

デーモン自身、本作の制作に対して「このレコードを制作している時、僕は自分自身の暗い旅(dark journey)に出ていた。そして、穢れがない源(pure source)がまだ存在するかもしれない、と信じるようになった」と語っていますが、この発言がすべてではないでしょうか。闇の中にも一筋の光が見つけられ、荘厳な中にも柔らかさや軽やかさが感じられる。この緩急の付け方、相反する要素の結合こそがデーモンの持ち味であり、そういった意味では本作もこれまでのデーモンらしさに満ち溢れた1枚と判断することもできます。

ただ、先にも書いたように、本作を語る上で2020年からの世の中の出来事は避けては通れないものであり、その影響が質感や空気感に多少なりとも影響を与えている。その上で無理をするのではなく、今できることを自然体で示した結果が本作なんでしょうね。

BLURというホームを通じてアウトプットする機会を失った今、バンドの4分の1としてBLUR的なこと、BLURでやってもおかしくなかったことを交えながらソロ活動をすることは正解だと思います。もちろん、ソロはBLURではないので、本作を『THE MAGIC WHIP』(2015年)の続きとして受け取るのはちょっと違う。だけど、少なからずつながるポイントはいくつも見つけられる。そういう点ではGORILLAZ視点で語るよりも、むしろBLUR視点で進めるほうがエラーは少ないのかなという気がしています。

まあなんにせよ、後期BLURが好きな方、デーモンがこれまで着手してきたソロワークス/コラボレーションに多少なりとも興味がある方なら間違いなく引っかかる作品だと思います。『EVERYBODY ROBOTS』はもちろん好きだけど、今の自身の感性に引っかかるという点では、本作は非常にど真ん中の1枚です。

 


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2021年10月30日 (土)

DURAN DURAN『FUTURE PAST』(2021)

2021年10月22日にリリースされたDURAN DURANの15thアルバム。日本盤は同年10月27日発売。

前作『PAPER GODS』(2015年)で本国イギリスでは『ASTRONAUT』(2004年)以来11年ぶり、アメリカでは『DURAN DURAN (THE WEDDING ALBUM)』(1993年)以来22年ぶりのトップ10入りを果たしたDUNRA DURAN。約6年という過去最長のスパンを経て届けられた本作は、バンドの原点ともいえるニューウェイヴ/ニューロマンティック的なサウンドを現代的に昇華させた意欲作に仕上がっています。

全体を統括するプロデューサーとしてエロール・アルカン、ジョルジオ・モロダー、そして過去数作でタッグを組んできたマーク・ロンソンを迎えた今作。フィジカル通常盤およびデジタル版は12曲、海外デラックス版CDは15曲、日本盤はデヴィッド・ボウイ「Five Years」のカバーを加えた16曲入りという、前作を継承した構成となっています。

固定のギタリストを置かない現在のDURAN DURANですが、今回はレコーディングメンバーとしてBLURのグレアム・コクソンをフィーチャー。グレアムはギタープレイ以外にも、「All Of You」「Give It All Up」など9曲でソングライターとしてもクレジットされています。意外な人選に驚きを隠せませんが、タイトルトラック「Future Past」で耳にすることができるシンプルなギターソロを聴く限りではマッチしているように映ります。が本作、そこまでギターを全面に打ち出していない現代的な作風なので、グレアムの色はそこまで濃く出ていません。BLURファンはそのへんご注意を。

サウンドメイクやちょっとしたアレンジには初期3作を彷彿とさせるものがありますが、メロディの運びや楽曲の軸部分はマーク・ロンソンががっつり絡んだ前々作『ALL YOU NEED IS NOW』(2010年)や前作の延長線上といったところでしょうか。つまり、今のDURAN DURANを80年代初頭なアプローチで表現した、と。前作が黄金期(80年代半ば)を思わせるテイストだったことを考えると、デビューから40年を経ての原点回帰と言えなくもありません。

それでも、サイモン・ル・ボン(Vo)のボーカル含め大人になった彼ららしい深みも随所から伝わり、そのへんは軽薄さが売りだった初期との大きな違いなか。まあ、音的には今作も十分に軽薄ではあるんですが。

また、先のグレアムに加えトーブ・ロー(Vo)、アイヴォリアン・ドール(Vo)、日本のバンドCHAIがそれぞれゲストボーカルとして参加。アルバムのラストを締め括る「Falling」にはデヴィッド・ボウイとの共演で知られるマイク・ガーソン(Piano)をフィーチャーしています。特に日本盤ではこの曲の前にボウイ「Five Years」カバーが置かれているので、一部ファンにはたまらないものがあるのではないでしょうか(個人的にはこのボートラ、なくてもいいんですけどね)。

12曲バージョンはシンプルでスルッと聴ける流れで、15曲バージョンはインストの「Velvet Newton」は流れを作る上でもよかったけど、残りの2曲(特に「Laughing Boy」)は90年代のDURAN DURANっぽかったので、蛇足だったかな。そういう意味ではデジタル配信されている12曲バージョンのほうが構成はベストだと思います。

前作もなかなかの内容でしたが、今作はそれ以上の仕上がりでは。個人的には『ALL YOU NEED IS NOW』が大好きだったので、そことの共通点が多い今作は近年でベストな1枚でした。

 


▼DURAN DURAN『FUTURE PAST』
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2021年3月27日 (土)

BLUR『THE GREAT ESCAPE』(1995)

1995年9月11日にリリースされたBLURの4thアルバム。日本盤は同年9月6日に先行発売。

バンドを国民的存在へと導いたメガヒット作『PARKLIFE』(1994年)から1年5ヶ月という非常に短いスパンで届けられた本作は、2ndアルバム『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993年)から始まった“ブリットポップ三部作”の完結編にあたる、初期の集大成的内容。『PARKLIFE』が依然ヒットチャートを賑わす中、堂々と全英1位に輝き、セールス的にも『PARKLIFE』に次ぐヒットアルバムとなりました。また、本作は初めて全米チャートにランクイン(最高150位)した記念すべき1枚でもあります。

シングルに関しても、OASIS「Roll With It」との同時期リリースでチャート上での直接対決が注目された「Country House」が初のシングル全英1位を獲得したほか、「The Universal」(同5位)、「Stereotypes」(同7位)、「Charmless Man」(同5位)とすべてのシングルがTOP10入りを果たす快挙を成し遂げました。まさにBLURの最盛期と呼べる時期の、神がかった1枚と言えるかもしれません。

ブリットポップと呼ばれるムーブメントのトップランナーに勝手に認定され、OASISと常に比較される中で完成させた本作。当然、そういった葛藤や苦悩、あるいは闘争心といったものが作風にも反映されており、冒頭を飾る「Stereotypes」のどこかギラついたサウンド、“very british”ながらも神経を擦り減らすような感覚も伝わる名曲「Country House」などは、そういった側面の象徴的楽曲といえるでしょう。また、楽曲のバラエティ豊かさに関しても過去イチで、そのとっ散らかりぶりに最初は拒否反応を示すリスナーも少なくないかもしれません。かくいう自分も、リリース当時は「やりすぎ!」と若干拒絶気味でした(苦笑)。

しかし、続く5thアルバム『BLUR』(1997年)で方向転換したあとに本作に触れると、不思議と受け入れられるものがあるんですよね。さらに、より時間が経ってから久しぶりにこの『THE GREAT ESCAPE』を引っ張り出して聴くと、最初に触れたとき以上にその魅力が感じられるようになった自分に気づく。なぜなんでしょう。

アルバムの作風的に言えば、実は本作ってサブスク/プレイリスト全盛の昨今にぴったりな1枚だと思うんです。20年以上はまだアルバム・オリエンテッドな考え方が当たり前の時代でしたし、そりゃ時代を先取りしすぎでしょ、と(笑)。もちろん、楽曲1つひとつの完成度や質感に関しても、あの頃より今のほうが伝わるものがあるから、よりそう思えるわけですが。

いわゆるブリットポップ的なものをイメージして本作に触れると、実はすべてがすべてブリットポップ的とは言い難い。次作『BLUR』を予兆させるテイストも含まれているし、もっと言えばそれ以降の変化の序章と受け取れる楽曲も存在する。バンドとしては最盛期にして過渡期と呼べる時期だったかもしれませんが、そんな混沌の中で制作された本作は異様に研ぎ澄まされており、かつ先を進みすぎていた。それが当時、バンドの意図した通りに受け入れられていたかはわかりませんが、少なくとも自分のようなリスナーも少なからず存在したと記憶しています。

ブリットポップというブームが去り、丸裸になったBLURがよりアーティスティックな側面を強めていったからこそ、本作がその原点であり処女作であったことにも気付かされた。そんな方もいるのではないでしょうか。15曲ものバラエティ豊かな、高品質のポップ/ロックソングが詰め込まれた60分近いボリュームの本作は、『PARKLIFE』と『BLUR』というエポックメイキングな傑作に挟まれたことで印象的には地味さが伴いますが、実は今こそ再評価されるべき名盤ではないかと信じています。

 


▼BLUR『THE GREAT ESCAPE』
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2021年3月26日 (金)

BLUR『THE MAGIC WHIP』(2015)

2015年4月27日にリリースされたBLURの8thアルバム。日本盤は同年4月29日に発売。

グレアム・コクソン(G, Vo)抜きで制作された『THINK TANK』(2003年)以来12年ぶり、グレアムを含むオリジナル編成となると『13』(1999年)以来16年ぶりのアルバム。2009年に再始動したBLURにとっては、「Fool's Day」(2010年)、「Under The Westway」「The Puritan」(ともに2012年)に続く新作となります。

2013年春、BLURは日本で開催予定だった大型野外フェス『TOKYO ROCKS』に出演する予定でした。しかし、香港滞在中にフェス中止が告げられ、5日間の空き時間が生じることになります。ここでバンドはイギリスからレコーディングエンジニアを呼び出し、香港でスタジオを押さえて新曲制作に取り組みます。ここでの音源はしばらくお蔵入り状態でしたが、2014年後半にグレアムがデーモン・アルバーン(Vo)に「香港でレコーディングした新曲を完成させよう」と提案。その後、グレアムとBLURの過去作に携わったプロデューサーのスティーヴン・ストリートを中心に制作が進められ、同年末にはバンドメンバー4人が勢揃いして作業を継続。こうして、思いも寄らないニューアルバムが完成したわけです。

香港でのレコーディングが中心ということもあり、アートワークはバンド名とアルバムタイトルをそれぞれ漢字で表現。サウンドにアジアテイストが影響しているかというと、それもせいぜい「Mirrorball」でのストリングスの音色くらい。全体的には我々がイメージする「BLURらしさ」をベースに、この10数年にデーモンやグレアムが積み重ねた「新たな要素」を散りばめた、非常に“らしい”1枚に仕上がっています。

適度なブリットポップ感は随所に満載で、オープニングを飾る「Lonesome Street」の時点でそのラインを求めているリスナーにはヒットするのではないでしょうか。しかし、一筋縄でいかないのがBLUR。以降はダウナーでオルタナロック色の強いサウンドや、デーモンが当時傾倒していたアフロミュージックテイスト、打ち込みを多用したポップチューン、映画のサウンドトラックを彷彿とさせるドラマチックな楽曲など、多種多様な顔を見せるという、ある意味では90年代半ばのBLUR黄金期にもっとも近い作風と言えるでしょう。しかし、本作の場合そこに『BLUR』(1997年)や『13』、『THINK TANK』のテイストもしっかり活かされているので、バンドの総決算的1枚と呼ぶこともできるはずです。

内省的な作風は90年代後半のBLURや、直近に制作されたデーモンのソロアルバム『EVERYDAY ROBOTS』(2014年)に近いものがあるので、その流れを踏まえて触れたらスッと入っていける内容と言えるでしょう。90年代半ば、もしくは『BLUR』あたりで“止まって”しまっている懐古厨の皆さんには厳しい作品かもしれませんが、そういった意味では15年という時間の重みが強く伝わる「聴き手の立ち位置によりまったく響き方が異なる」1枚かもしれませんね。

 


▼BLUR『THE MAGIC WHIP』
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2019年1月13日 (日)

祝ご成人(1998年4月〜1999年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で5回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、今回は当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)が被っていることから、選出時もいろいろ感慨深いものがあります。いやあ、長く続けるもんだ。

さて、この企画の説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1998年4月〜1999年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。今年度は残念ながら、選出した20枚すべてがSpotifyおよびApple Musicに揃っているものではありませんでした(各サービスともに1枚足りないという)。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちらです)


ASIAN DUB FOUNDATION『RAFI'S REVENGE』(1998年11月発売)(Spotify

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998年8月発売)(Spotify)(レビュー

BEASTIE BOYS『HELLO NASTY』(1998年7月発売)(Spotify

BLUR『13』(1999年3月発売)(Spotify)(レビュー

BOARDS OF CANADA『MUSIC HAS THE RIGHT TO CHILDREN』(1998年4月発売)(Spotify

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2018年9月26日 (水)

BLUR『PARKLIFE』(1994)

1994年4月はイギリスの音楽シーンにとって大きな分岐点となりました。それはOASISがシングル「Supersonic」でデビューを果たし、BLURが通算3作目のアルバム『PARKLIFE』を発表したから……このブリットポップ2大バンドが、その後を大きく変えてしまうスタイルでシーンのど真ん中に立とうとした、そんな記念すべき瞬間でした。

BLURはデビュー作『LEISURE』(1991年)の時点で全英7位を記録し、マッドチェスターやらシューゲイザーやらが流行りつつある英国シーンの中で大健闘します。ですが、続く“very british”な2ndアルバム『MODERN LIFE IS BUBBISH』(1993年)がセールス的には前作に及ばず(全英15位)、このまま人気を落としていくのかと思いきや、『MODERN LIFE IS BUBBISH』での“very british”路線をさらに濃くした『PARKLIFE』というアルバムでキャリア最大の成功を収めることになります。

チープな打ち込みリズムにグルーヴィーなベースライン、途中から加わるオルタナティヴロック色の強いザラザラしたギター。そんな中、デーモン・アルバーン(Vo)はサビでシンプルなフレーズをひたすら繰り返す。この中毒性の強い「Girls & Boys」が全英5位を記録したのを筆頭に、ひと昔前のポップス的アレンジで聴き手を惹きつける「To The End」(同16位)、映画『さらば青春の光』で主演を務めた俳優フィル・ダニエルズをフィーチャーした“90年代の英国国家”「Parklife」(同10位)、前作からの延長線上にありながらもよりBLURらしさが極まった「End Of Century」(同19位)と、とにかくインパクトの強いヒットシングル満載。アルバムは当然1位を獲得し、本国イギリスだけで100万枚を超える大ヒット作となりました。

もちろんこのほかにも、イギリスのバンドらしいひねくれ感満載の「Tracy Jacks」や「Jubilee」、グレアム・コクソン(G, Vo)のオルタナ感がストレートに表れた「Bank Holiday」や「Trouble In The Message Centre」、ファンキーなリズム&ギターフレーズが心地よい「London Loves」、そしてアルバム終盤を劇的に盛り上げる「This Is A Low」など、とにかく名曲目白押し。さらに、「The Debt Collector」などアルバムの合間に用意されたインスト/インタールードも良い味を出しており、アルバムを通して聴く際の箸休め的役割を果たしています。

前作『MODERN LIFE IS BUBBISH』と本作、そして続く『THE GREAT ESCAPE』(1995年)がBLURにおける“ブリットポップ3部作”と呼ばれており、デーモンの「ブリットポップは死んだ」宣言が記憶に残る『BLUR』(1997年)以降の作品と一線が引かれています。にしてもさ、『MODERN LIFE IS BUBBISH』から『THE GREAT ESCAPE』までのBLURって、年に1枚アルバムを出しているんですよね……そりゃあ燃え尽きますよ。しかも、周りからはOASISとの比較でいろりろ焚きつけられたわけですから、「ブリットポップは死んだ」と宣言する権利は彼らにこそあると思います。そんな、良くも悪くも“時代”を作ってしまった1枚です。



▼BLUR『PARKLIFE』
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2018年4月27日 (金)

BLUR『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993)

このアルバムも今年で25周年。1993年5月にリリースされた、BLUR通算2作目のスタジオアルバム。マンチェスタームーブメントの恩恵を受け、デビューアルバム『LEISURE』(1991年)が全英7位、同作からのシングル「There's No Other Way」が全英8位と新人ながらも好成績を残したものの、この2ndアルバムでは大胆な方向転換に取り掛かり、“Very British”な作品を完成させます。

まだブリットポップ前夜の1枚ではあるのですが、このアルバムがブリットポップを象徴する1枚だという声も多く、そういう意味では本作が発表されたところでブリットポップムーブメントは始まっていたと言えるでしょう。

事実、ここに含まれている楽曲群は“いかにも小難しいイギリス人が書きそうな、ポップでキャッチーなのにどこかひねくれている”ものばかり。だけど、ところどころに引っ掛かりがあるせいか何度も聴きたくなる中毒性が高い。自分がBLURの作品中このアルバムがもっとも好きなのは、そういったところに理由があるのかもしれません。

名曲中の名曲「For Tomorrow」からスタートし、そこから軽やかなピアノが心地よいアップチューン「Advert」、ヘヴィさが際立つ「Pressure Of Julian」、BLURらしいポップさが際立つ「Star Shaped」と、序盤からクセの強い曲がズラリ。デーモン・アルバーン(Vo)の淡々としたボーカルと耳に残るグレアム・コクソン(G, Vo)のコーラス、そのグレアムによる鋭いギタープレイは全編にわたり聴き応えがあります。

中盤以降も「Chemical World」を筆頭に、途中インタールードを挟みつつ独自のテンポ感で進行。「Oily Water」みたいなサイケ色強めのミディアムチューンもあれば、イントロのギターフレーズが印象的な「Villa Rosie」、シンプルなギターリフがただひたすらカッコいい「Coping」、ダウナーさが際立つ「Resigned」と、1曲1曲の個性/クセが強い楽曲ばかり。当初はXTCのアンディ・パートリッジをプロデューサーに迎えて制作していたというのも、なるほど頷ける内容です(のちに方向性の違いで解任)。

聴く者を選ばずわかりやすさをとことん追求したOASISとは相反し、英国民の心に訴えかけるマニアックなサウンドを追求したBLUR。この両巨頭が1年後にここ日本を巻き込む一大ムーブメントを作り上げるなんて、このアルバムを初めて聴いた頃は想像もできなかったはず。それくらい、最初は地味な印象しかなかったので……だって、前作とこのアルバムの間に発表されたシングル「Popscene」みたいなアップテンポなロックナンバー皆無で、ミディアム中心にジリジリ攻める内容は派手なロック好きな自分には少々ストイックすぎて……。でも、気づけばこのアルバムがクセになって手放せなくなっていた。そんなスルメ的な名作です。



▼BLUR『MODERN LIFE IS RUBBISH』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

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