2017/06/27

BON JOVI『LOST HIGHWAY』(2007)

このアルバム、今から10年前の6月にリリースされたんですね。そうか、もうそんなに経つのか……。

とういことで、今回紹介するのはBON JOVIが2007年6月にリリースした通算10枚目のオリジナルアルバム『LOST HIGWAY』です。7作目『CRUSH』(2000年)で本格的な復活を果たし、続く『BOUNCE』(2002年)『HAVE A NICE DAY』(2005年)がともに全米2位という好成績を残してきましたが、この『LOST HIGWAY』でBON JOVIは4th『NEW JERSEY』(1988年)以来19年ぶりに全米1位に輝きます。

プロデュースには現在も共同制作者としてバンドに携わるジョン・シャンクスと、元GIANTのギタリストで現在はカントリー系プロデューサーとして知られるダン・ハフが各6曲ずつ参加。前作『HAVE A NICE DAY』からのシングル「Who Says You Can't Go Home」がカントリーチャートでヒットしたこともあり、同アルバムで見せた「カントリーテイストをにじませたアメリカンパワーポップ」路線をさらに推し進めた、よりアーシーで土着的なカントリーロックが軸になっています。もともと持ち合わせていたカラーではあるものの、ここでその後10年のBON JOVIの路線を決定付けたという意味では、非常に重要な1枚と言えるでしょう。

パワフルなビートが心地よいハードロック「Summertime」や、黒っぽさが強くにじみ出た(かつギターワウを用いた)「We Got It Going On」など従来のBON JOVIらしさも残しつつも、全体を覆うのは「Lost Highway」や「Whole Lot Of Leavin'」みたいに肩の力が抜けたカントリーロック。もはや「Livin' On A Prayer」も「Bad Medicine」も「Born To Be My Baby」も、ここには存在しません。が、聴けばそれが「BON JOVIだ」と認識できる楽曲ばかりなのはさすがといいますか。

かと思えば、カントリー界の人気アーティストBIG & RICHをフィーチャーした「We Got It Going On」や、ジョン・ボン・ジョヴィとリアン・ライムスのデュエットが楽しめる「Till We Ain't Strangers Anymore」みたいなコラボ曲もある。このへんは「Who Says You Can't Go Home」がもたらした成功が大きかったんでしょうね。ただ、それによって「80〜90年代のBON JOVI」は遠くになりけり……ということになってしまったわけですが。

今聴くと本当にリラックスして楽しめるアルバムですし、前作『HAVE A NICE DAY』が好きなら問題なく気に入ってもらえるんじゃないかな。ただ、残念ながら「Have A Nice Day」や「It's My Life」みたいな“キメの1曲”が存在しないことで、本作の印象を弱めているのも事実。特に「80〜90年代のBON JOVI」が好きな人、そのイメージが強い人にとってはこの『LOST HIGHWAY』を素直に楽しめるかどうかで、その後の諸作品にスッと入っていけるかが決まるような気もします。



▼BON JOVI『LOST HIGHWAY』
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投稿: 2017 06 27 12:00 午前 [2007年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2017/01/08

個人的に気になるメタル系職業作家15選

先日KIX『BLOW MY FUSE』を紹介した際、知人が文中に登場したテイラー・ローズやボブ・ハリガンJr.といった職業作家に興味を持ったらしく、「デズモンド・チャイルドやホリー・ナイトあたりは調べたことあるんですが、メタル職業作家の存在すごく気になります」というコメントをいただきました。

実際、80年代後半以降、特にBON JOVIやAEROSMITHの大ヒット以降こういった職業作家の存在はメタル系アーティストにとっても欠かせない存在になっています。90年代に入ると、SCORPIONSやオジー・オズボーンといった大御所ですら採用し始めるわけですからね。それまでバンドの力だけですべてをまかなおうとしていたところ、「もっといい曲を!」というバンド自身の姿勢から積極的に、もしくはレコード会社からの圧力からイヤイヤこういったアクションに行動を移すようになったのかもしれません。

また、職業作家の楽曲をアーティストが取り上げるケースには幾つかのパターンがあり、


①作家が以前発表した楽曲をカバー。
②作家とアーティストが共作(アーティストが書いた楽曲をテコ入れする、あるいは逆のケース)。
③プロデューサーとして制作に加わり、楽曲制作にも携わる。
④作家が書いた新曲をそのまま取り上げる。


の4つが考えられるかと。現在のメタルシーンでは多くの場合②が主流だと思いますが、まれに③で大ヒットを飛ばすケースも見受けられます(AEROSMITHの「I Don't Want To Miss A Thing」など)。

そこで今回は、CDのブックレットでよく目にする作家さんをピックアップしつつ、その中から個人的にピンとくる方々をここで紹介。作家の特性を上記の①〜④で分類し、代表曲な楽曲を紹介していきたいと思います。


<70年代〜>

●ラス・バラード(特性:①②)
この人の場合は楽曲提供というよりも、彼が自身のバンドや他のアーティストに提供した曲をメタル系アーティストがカバーしたことにより、その名が知られるようになったと言ったほうがいいかもしれません。きっかけはグラハム・ボネット期のRAINBOWがカバーした「Since You Been Gone」ですよね。RAINBOWは続くジョー・リン・ターナー期にも「I Surrender」をカバーしてますし。そのRAINBOWの数年前に、当時KISSのエース・フレーリーもラス・バラッド作「New York Groove」をカバーして全米トップ20入りのヒットを記録。KISS自身も90年代に「God Gave Rock And Roll To You」を「God Gave Rock And Roll To You II」と改題してカバーしてますしね。それと今回いろいろ調べて初めて気づいたのですが、NIGHT RANGERが最初の解散前に発表したアルバム『MAN IN MOTION』からのリード曲「I Did It For Love」もラス・バラッド作。加えて、これも全然気にしてなかったんですが、BAD ENGLISHのラストアルバム『BACKLASH』収録曲「So This Is Eden」はジョン・ウェイト(Vo)、ジョナサン・ケイン(Key)との共作曲。時代的に90年代に入ってからの作品なので、世の中的に職業作家との共作が当たり前になった時期にそれまでのカバーとは違った形でのコラボレーションが実現したわけです。

代表作品:ACE FREHLEY「New York Groove」「Into the Night」、BAD ENGLISH「So This Is Eden」、GRAHAM BONNET「Liar」「S.O.S.」、KING KOBRA「Dream On」、KISS「God Gave Rock And Roll To You」、NIGHT RANGER「I Did It For Love」、PETER CRISS「Let Me Rock You」「Some Kinda Hurricane」、RAINBOW「Since You Been Gone」「I Surrender」


●リチャード(リッチー)・スパ(特性:①②④)
AEROSMITH「Chip Away The Stone」の作者として知られる彼は、もともとソングライター兼ギタリストとして活動していたアーティスト。ソロアーティストとして70年代にアルバムも発表しており、この中からジョニー・ウィンターが「Stone County Wanted Man」をカバーしています。また、エアロにはその後も楽曲提供を幾つかしているだけでなく、ジョー・ペリーが脱退した際にはレコーディングにも参加(1979年のアルバム『NIGHT IN THE RUTS』収録の「No Surprize」「Mia」)。それ以外に目立った共演は、元BON JOVIのリッチー・サンボラの2ndソロアルバム『UNDISCOVERD SOUL』での共作ぐらい。メタル系以外では、P!NKやMIKAといったアーティストにも楽曲提供しています。

代表作品:AEROSMITH「Chip Away The Stone」「Lightning Strikes」「Amazing」「Pink」、OZZY OSBOURNE「Back On Earth」、RICHIE SAMBRA「Hard Times Come Easy」


<80年代〜>

●ジム・ヴァランス(特性:②)
この人はブライアン・アダムスとの共作者としての印象が強いですが、そのブライアンと一緒に書いた2曲がKISS『CREATURES OF THE NIGHT』に収録されたのが、メタル系との最初の接触でしょうか。その後、80年代半ばにはHEART「What About Love」の全米ヒットを皮切りに、AEROSMITH「Rag Doll」を機にエアロとの仕事が増えていきます。ちょうど80年代後半になると、ブライアンとジムの関係も一時的に疎遠になり、メタルのみならず幅広いジャンルのアーティストと共作を重ねていきます。

代表作品:AEROSMITH「Rag Doll」「Eat The Rich」、ALICE COOPER「Die For You」「Lullaby」、HEART「What About Love」、KISS「War Machine」、OZZY OSBOURNE「I Just Want You」、SCORPIONS「Tease Me Please Me」


●デズモンド・チャイルド(特性:②③④)
BON JOVI「You Give Love A Bad Name」「Livin' On A Prayer」でのイメージが強い彼ですが、実は70年代末にKISS「I Was Made For Lovin' You」をポール・スタンレー、ヴィニ・ポンシア(KISS作品でのコラボレーションが有名なソングライター)と共作しています。なので、上の世代の方々はBON JOVIがヒットした際に「KISSのラヴィン・ユー・ベイビーの人」と思ったかもしれません。BON JOVIでの大成功後、AEROSMITH、アリス・クーパーから引っ張りだこ。そのすべての楽曲がヒットにつながっています。興味深いところではRATTの5thアルバム『DETONATOR』のプロデュースおよび楽曲制作、DREAM THEATERへの楽曲提供といったものもあります。また、HR/HM以外にもジョーン・ジェット「I Hate Myself for Loving You」、リッキー・マーティン「Livin' la Vida Loca」、ZEDD「Beautiful Now」、WEEZER「Trainwrecks」といったところでも名前をみかけます。

代表作品:AEROSMITH「Dude (Looks Like A Lady)」「Angel」「Crazy」、ALICE COOPER「Poison」、BON JOVI「You Give Love A Bad Name」「Livin' On A Prayer」「Bad Medecine」、DREAM THEATER「You Not Me」、KISS「I Was Made For Lovin' You」「Heaven's On Fire」、MEAT LOAF「The Monster Is Loose」、RATT「Shame Shame Shame」「Lovin' You's A Dirty Job」、RICHIE SAMBRA「Rosie」


●ダイアン・ウォーレン(特性:②④)
カナダ出身の女性ソングライターで、80年代前半から作家としての活動を開始。最初にヒット曲はローラ・ブラニガン「Solitaire」でした。メタル系では80年代後半、HEART「Who Will You Run To」、BON JOVI「Wild Is The Wind」あたりで最初に名前を目にするようになったと記憶しています。が、メタルシーン彼女の名が本当の意味で知られるようになるのは、その10数年後に発表された映画『アルマゲドン』のテーマソングであるAEROSMITH「I Don't Want To Miss A Thing」でのこと。このインパクトは強かったと思います。しかし、非メタルシーンではホイットニー・ヒューストン、ビヨンセ、マライア・キャリーといったアーティストへの楽曲提供ですでにキャリアを積んでおり、中でも「Because You Loved Me」をはじめとするセリーヌ・ディオンとのヒットは「I Don't Want To Miss A Thing」と同じくらい大きなものでした。

代表作品:AEROSMITH「I Don't Want To Miss A Thing」「We All Fall Down」、ALICE COOPER「Bed Of Nails」、BON JOVI「Wild Is The Wind」「Thank You For Loving Me」、CHEAP TRICK「Ghost Town」「Wherever Would I Be」、HEART「Who Will You Run To」「I Didn't Want To Need You」、KISS「Turn On The Night」、MEAT LOAF「I'd Lie For You (And That's The Truth)」「Not A Dry Eye In The House」、RICHIE SAMBRA「Rosie」


●ホーリー・ナイト(特性:②④)
ダイアン・ウォーレンと同時期に名前を目にする機会が増えた、同じく女性ソングライター。そして、自身もシンガーとしての活動をしています。ティナ・ターナーやパット・ベネターといったポップ/ロック系を経て、HR/HM系ではHEART「Never」が最初だったのかな。そこからAEROSMITH「Rag Doll」、BON JOVI「Stick To Your Guns」でメンバーや他の職業作家と共作を繰り広げます。CHEAP TRICKやKISS、オジー、MEAT LOAFといった面々から想像される、ポップで親しみやすい楽曲作りがメイン。とはいえ、OTEPといったモダンラウド系へも楽曲提供しているから、なかなかあなどれません。

代表作品:AEROSMITH「Rag Doll」、BON JOVI「Stick To Your Guns」、CHEAP TRICK「Space」、HEART「Never」「There's The Girl」、KISS「Hide Your Heart」「I Pledge Allegiance To The State Of Rock & Roll」「Raise Your Glasses」、LITA FORD「Stiletto」、LOU GRAMM「Just Between You and Me」、MEAT LOAF「Monstro」「Alive」、OTEP「Perfectly Flawed」「UR A WMN NOW」、OZZY OSBOURNE「Slow Burn」、PAUL STANLEY「It's Not Me」


●ロバート・ジョン・マット・ラング(特性:②③④)
ソングライターというよりもプロデューサーのイメージが強い存在ですよね。古くはAC/DCやFOREIGNER、そしてDEF LEPPARD、90年代にはブライアン・アダムス、2000年代はNICKELBACKやMUSE、さらにはLADY GAGAあたりも手掛けております。主にDEF LEPPARDのメガヒット作『HYSTERIA』において、全曲にクレジットされているところから、曲作りの面においてもある程度コントロールしながらプロデュースしていくタイプなんでしょうね。他にはHEART、LOVERBOYの楽曲制作にも携わっているようです。

代表作品:DEF LEPPARD『HYSTERIA』全曲、「Promises」「It's Only Love」、HEART「All I Wanna Do Is Make Love To You」「Will You Be There (In The Morning)」、LOVERBOY「Lovin' Every Minute Of It」


●ジャック・ポンティ(特性:②③④)
BON JOVIのデビュー作に収録された「Shot Through The Heart」でその名を目にして以降は、BONFIRE、DORO、KEELとB級バンドとの仕事が多いイメージ。90年代に入るとNELSON、アリス・クーパーへの楽曲提供で再びその名を目にするようになります。彼自身はプロデューサー業も行っており、BATON ROUGEやDOROといった正統派からKITTIE、OTEPなどのモダン系まで幅広く手掛けています。

代表作品:ALICE COOPER「Hey Stoopid」「Love's A Loaded Gun」、BABYLON A.D.「The Kid Goes Wild」、BATON ROUGE「The Price Of Love」、BONFIRE「Sweet Obsession」「Hard On Me」、BON JOVI「Shot Through The Heart」、DORO「Eye On You」「Ceremony」、KEEL「Somebody's Waiting」、NELSON「We Always Want What We Can't Get」


●ボブ・ハリガン・Jr.(特性:②④)
自身もシンガーとして活動するソングライター。メタル系アーティストへの楽曲提供がメインで、JUDAS PRIESTのアルバム『SCREAMING FOR VENGEANCE』に収録された「(Take These) Chains」で始めてその名を目にした人がほとんどでは? プリーストには次作でも「Some Heads Are Gonna Roll」を提供したほか、ロブ・ハルフォードのHALFORDにも「Twist」を提供しています。また、80年代末にKIX「Don't Close Your Eyes」のヒットによって、さらに知名度を高めることに成功。90年代には自身のソロアルバムも2枚制作しているようです。

代表作品:BLUE OYSTER CULT「Beat 'Em Up」「Make Rock Not War」、BONFIRE「Bang Down The Door」、HALFORD「Twist」、HELIX「Rock You」、ICON「Danger Calling」、「Raise The Hammer」、JUDAS PRIEST「(Take These) Chains」「Some Heads Are Gonna Roll」、KISS「Rise to It」「Read My Body」、KIX「Midnite Dynamite」「Don't Close Your Eyes」


<90年代〜>

●テイラー・ローズ(特性:②④)
88年発売のKIX「Cold Blood」でその名を目にしたのが最初で、本格的に活躍し始めたのは90年代に入ってから、AEROSMITHとのコラボレーションが活発化して以降のこと。「Cryin’」というヒットシングルがひとつのきかっけになったことは間違いありません。

代表作品:AEROSMITH「Cryin'」「Blind Man」「Full Circle」、CHEAP TRICK「Back 'n Blue」、JOURNEY「All The Way」、KIX「Cold Blood」「Hot Wire」、LOVERBOY「Love Will Rise Again」、OZZY OSBOURNE「Back On Earth」、TORA TORA「Amnesia」「Faith Healer」、Y&T「Contagious」


●マーク・ハドソン(特性:②③)
シンガーソングライター、TVパーソナリティなどを経て、プロデューサーや職業作家としての道を進み始めます。AEROSMITH「Livin' On The Edge」でその名を広く知らしめ、グラミー賞も受賞しました。エアロとの仕事はアルバム『JUST PUSH PLAY』でスティーヴン・タイラー&ジョー・ペリー、次に触れるマーティ・フレデリクセンとのチームで「Boneyard Boys」と名乗り、プロデュースやソングライティングを行いました。他にはアリス・クーパー、オジー・オズボーン、BON JOVI、SCORPIONSと大御所ばかりと共作。他にはリンゴ・スターとのコラボレーションも有名どころです。

代表作品:AEROSMITH「Livin' On The Edge」「Gotta Love It」「The Farm」、ALICE COOPER「Cleansed by Fire」、BON JOVI「Two Story Town」、OZZY OSBOURNE「Ghost Behind My Eyes」「Denial」、SCORPIONS「No Pain No Gain」


●マーティ・フレデリクセン(特性:②③)
AEROSMITHのアルバム『NINE LIVES』で頭角を表して以降、同バンドとのコラボレーションを重ねていきます。上のマーク・ハドソンでも触れたように、スティーヴン・タイラー&ジョー・ペリー、マーク・ハドソンとの4人で「Boneyard Boys」というチームで、続くアルバム『JUST PUSH PLAY』のプロデュースやソングライティングも手掛けました。以降はBUCKCHERRY、MOTLEY CRUE、DAUGHTRYなどへの楽曲提供、DEF LEPPARD『X』のミキシングといったHR/HM系仕事のほか、キャリー・アンダーウッド、フェイス・ヒルとの共作でも知られています。

代表作品:AEROSMITH「Nine Lives」「Jaded」「Fly Away from Here」「Sunshine」、BUCKCHERRY「Next 2 You」「Sorry」、THE CULT「Breathe」、DAUGHTRY「Crawling Back To You」「Outta My Head」、JAMES DURBIN「Higher Than Heaven」「Love Me Bad」、MOTLEY CRUE「Saints of Los Angeles」「Mutherfucker Of The Year」、OZZY OSBOURNE「Dreamer」「That I Never Had」、RICHIE SAMBRA「Who I Am」、SCORPIONS「10 Light Years Away」「We Were Born To Fly」、STEVEN TYLER「(It) Feels So Good」


●グレン・バラッド(特性:②③)
この人は90年代中盤、アラニス・モリセット『JAGGED LITTLE PILL』のプロデュース&楽曲制作で一気に名を馳せることになりますが、それ以前にもソングライターやミュージシャン、プロデューサーとしてマイケル・ジャクソン、ポーラ・アブドゥル、WILSON PHILLIPSなどの代表作に参加して経験を積んできました。アラニスの成功により、AEROSMITHが1997年のアルバム『NINE LIVES』のプロデューサー兼コラボレーターとして白羽の矢を立てるのですが、その内容に納得できずに制作途中でコラボを解消。結果的には一部の楽曲をケヴィン・シャーリーのプロデュースで再録音したり新たに楽曲を書き足したりして、現在の形にまとまるという、エアロファンには忘れられない事件を引き起こします。以降、HR/HM系アーティストとの共作はほとんどなく、エアロ以前にVAN HALENにデイヴ・リー・ロスが一時復帰した際の新曲に携わった程度でしょうか。本来ならここで取り上げるまでもない存在なのですが、トピック的に面白かったので残してみました。

代表作品:AEROSMITH「Falling in Love (Is Hard on the Knees)」「Taste of India」「Pink」、VAN HALEN「Me Wise Magic」「Can't Get This Stuff No More」


<2000年代〜>

●アンドレアス・カールソン(特性:②)
スウェーデン出身のプロデューサー、ソングライター。現在40代前半と、上記の作家陣と比べると若手の部類に入ります。ということで、彼が活躍し始めたのも2000年前後から。一番の出世作はBACKSTREET BOYS「I Want It That Way」でしょうか。彼はブリトニー・スピアーズやWESTLIFE、NSYNCと当時のアイドルを手がけることが多かったのも特徴です。そういったポップフィールドでの活躍が評価されて、2002年にBON JOVIがアルバム『BOUNCE』で「Everyday」「Misunderstood」など、DEF LEPPARDがアルバム『X』で「Unbelievable」を共作します。同じタイミングにこの2バンドが彼を採用したことで、僕も印象に残っていました。HR/HM系では他にもポール・スタンレーのソロアルバム『LIVE TO WIN』、EUROPEの異色作『LAST LOOK AT EDEN』にも参加しています。

代表作品:BON JOVI「Everyday」「Misunderstood」「All About Lovin' You」、DEF LEPPARD「Unbelievable」、EUROPE「Last Look At Eden」「New Love in Town」、PAUL STANLEY「Live To Win」「Wake Up Screaming」「Bulletproof」


●ジェイムズ・マイケル(特性:②③)
プロデューサーやソングライターとしてより、現在はニッキー・シックス(元MOTLEY CRUE)とのバンド、SIXX: A.M.のフロントマンとして有名かな。さまざまなバンドを経て、2000年にソロデビュー。ちょうどこのころにニッキー・シックスと出会い、MOTLEY CRUEのトミー・リー不在アルバム『NEW TATTOO』にソングライターとして参加します。以降は同じくニッキーが参加したBRIDES OF DESTRUCTION、そしてSIXX: A.M.へと続いていくわけです。他にはPAPA ROACH、HALESTORM、ジェイムズ・ダービンといったモダンなアーティストのほか、SCORPIONS、MEAT LOAFなどの大御所との共演も実現しています。またプロデューサー/エンジニアとしてはHAMMERFALLのアルバムも手掛けています。

代表作品:BRIDES OF DESTRUCTION「Brace Yourself」「Natural Born Killers」、HALESTORM「Private Parts」、JAMES DURBIN「Higher Than Heaven」、MEAT LOAF「Couldn't Have Said It Better」「Did I Say That?」、MOTLEY CRUE「New Tattoo」「Sick Love Song」「Saints of Los Angeles」、PAPA ROACH「I Almost Told You That I Loved You」、SCORPIONS「Hour I」、SIXX: A.M.「Life Is Beautiful」「Lies of the Beautiful People」「Gotta Get It Right」


以上、15名を独断と偏見で挙げてみました。やはり80年代中盤、アメリカでHR/HMが大ヒットしたことがメタル系職業作家の繁栄につながったと言って間違いなさそうですね。正直2000年代以降はどういった人たちが主流なのかいまいち調べきれず、こういう形になってしまいました。

改めて思ったのは、BON JOVIやAEROSMITHといった先駆者たち、そしてオジーやSCORPIONSなどの大御所アーティストが新作を出すたびにクレジットに注目しておくのが、一番手っ取り早いなと思いました。

そういう意味でも、この(↓)アルバムは歴史を変えた重要な1枚かもしれませんね。



▼BON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 01 08 12:00 午後 [Aerosmith, Alice Cooper, Bon Jovi, Buckcherry, Def Leppard, Europe, Heart, Kix, Night Ranger, Ozzy Osbourne, Richie Sambora, Scorpions, Sixx:A.M., Van Halen, 「分析ネタ」] | 固定リンク

2016/12/13

BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』(2016)

2013年のアルバム『WHAT ABOUT NOW』以降、リッチー・サンボラ(G)のツアー離脱〜バンド脱退、契約消化のために突如発表された“ファンアルバム”『BURNING BRIDGES』(2015年)および所属レーベルからの一時離脱など、なにかとネガティブな話題が多かったBON JOVIの起死回生を占う3年ぶりのオリジナルアルバム。チャート成績では2007年の『LOST HIGHWAY』から続くビルボード1位を4作連続で獲得し、まずは数字の上で復活をアピールできたのではないでしょうか。

ひんやりとした音使いとアレンジから若干ダークなイメージを受けるリードトラック「This House Is Not For Sale」から始まるアルバムは、やはり全体的に冷た目なトーンで統一されています。2000年代前半から半ばの作品に存在した「カントリーを通過したアメリカンパワーポップ」風味は減退し、2009年のアルバム『THE CIRCLE』に比較的近い印象を受けました。が、『THE CIRCLE』ほどの熱量はボーカルやバンドサウンドから感じられず、どこか控えめ/抑え気味な気も。「Knockout」のような攻め気味ロックチューンやBON JOVIならではの王道ナンバー「Born Again」にすら、往年の暑苦しさは存在しません。リッチーのギターが入ってないことも影響していると思いますが(それにより、ギターロックアルバムというよりはジョンの歌を軸にしたボーカルアルバムとして仕上げられています)、これを大人になったと感じるか覇気がなくなったと感じるかで評価は大きく二分しそうです。個人的には前作『WHAT ABOUT NOW』は数回聴いてしばらく放置してしまうような扱いだったのですが、今作は何度も聴き返せるし、純粋に楽しめる作品集だと思いました。

ちなみに、海外盤は通常仕様が12曲入り(M12「Come On Up To Our House」まで)、デラックス仕様が17曲入り(M17「Goodnight New York」まで)と曲数が異なります。ボーナストラック5曲の出来も悪くないですが、個人的には久しぶりに12曲できっちり勝負してほしかったかな。前作もそうですが、曲数が多いと1曲1曲がなかなか印象に残りにくいので。なお、日本盤はDVD付きも通常盤も同じ18曲入り(ボーナストラックにM18「Touch Of Grey」追加)。多ければいいってもんじゃないってば。

そういえば海外では間もなく、本アルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』を曲順どおりに演奏したライブアルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE : LIVE FROM THE LONDON PALLADIUM』もリリースされます(日本盤は年明け1月発売予定)。こちらではデラックス盤収録の17曲をすべて披露しているので、もしかしたら17曲入りのほうが正式なトラックリストで、12曲入りのほうは「もっと手軽に楽しみたい人向け」なのかも。それでも17曲は多いけどね。

そういえばBON JOVIもMETALLICAみたいに、ニューアルバムからたくさんのMVを制作してるけど、これって流行りなんですかね?



▼BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』
(amazon:国内盤CD+DVD / 国内盤CD / 海外デラックス盤CD / 海外盤CD


【BON JOVI ディスクレビュー一覧】
『BON JOVI』(1984)
『7800° FAHRENHEIT』(1985)
『SLIPPERY WHEN WET』(1986)
『NEW JERSEY』(1988)
『KEEP THE FAITH』(1992)
『CROSS ROAD』(1994)
『THESE DAYS』(1995)
『LIVE FROM LONDON』(1995)
『CRUSH』(2000)
『TOKYO ROAD』(2001)
『ONE WILD NIGHT - LIVE 1985-2000』(2001)
『BOUNCE』(2002)
『HAVE A NICE DAY』(2005)

【BON JOVI ライブレポート一覧】
2000年7月13日@東京ドーム


投稿: 2016 12 13 12:00 午前 [2016年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2016/01/10

祝ご成人(1995年4月〜1996年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。昨年度に初めて実施したこの企画、今回も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1995年4月〜1996年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

並びはすべてアルファベット順です。(2015年の新成人編はこちら


Alice in Chains『Alice in Chains』(Amazon

Ben Folds Five『Ben Folds Five』(Amazon

Björk『Post』(Amazon

Blur『The Great Escape』(Amazon

Bon Jovi『These Days』(Amazon

The Chemical Brothers『Exit Planet Dust』(Amazon

Fear Factory『Demanufacture』(Amazon

Foo Fighters『Foo Fighters』(Amazon

The Fugees『The Score』(Amazon

Garbage『Garbage』(Amazon

King Crimson『Thrak』(Amazon

Oasis『(What's the Story) Morning Glory?』(Amazon

Pulp『Different Class』(Amazon

Queen『Made in Heaven』(Amazon

Red Hot Chili Peppers『One Hot Minute』(Amazon

Reef『Replenish』(Amazon

Sepultura『Roots』(Amazon

The Smashing Pumpkins『Mellon Collie and the Infinite Sadness』(Amazon

Teenage Fanclub『Grand Prix』(Amazon

The Wildhearts『P.H.U.Q.』(Amazon


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下ざっと候補を羅列します。

Alanis Morissette『Jagged Little Pill』
Anthrax『Stomp 442』
The Beatles『Anthology 1』
The Boo Radleys『Wake Up!』
Bruce Springsteen『The Ghost of Tom Joad』
The Charlatans『The Charlatans』
D'Angelo『Brown Sugar』
David Bowie『Outside』
In Flames『The Jester Race』
Michael Jackson『HIStory: Past, Present and Future, Book I』
Nine Inch Nails『Further Down the Spiral』
Ozzy Osbourne『Ozzmosis』
Paul Weller『Stanley Road』
The Rentals『Return of the Rentals』
Ron Sexsmith『Ron Sexsmith』
Sonic Youth『Washing Machine』
Supergrass『I Should Coco』
Terence Trent D'Arby『Terence Trent D'Arby's Vibrator*』
Terrorvision『Regular Urban Survivors』
Underworld『Second Toughest in the Infants』
White Zombie『Astro-Creep: 2000』

こうやって振り返ると、1995年から1996年初頭ってブリットポップの最盛期だったんですね。1995年3月にはElasticaやGeneのアルバムも発表されてるし、1996年後半になるとKula Shakerの1stもリリースされますし。やっぱり1995年夏のBlur vs Oasisの直接対決がピークでしたね、いろんな意味で。

あ、Underworldをあえて選外にしたのは、日本盤のリリースが1996年6月だったから。海外では3月発売ですが、その後の「Born Slippy」のヒットなど含めて考えると、このアルバムは1996年から1997年の作品かなと思いまして。来年はマストかな。

メタルの世界はグランジがひと段落したものの、ポストグランジ的サウンドのバンドが増えつつあり、前年からのMotley Crue、Dokkenの失敗など、あまり芳しくない状況でした。そんな中、1994年のKornデビューを機にグルーヴ感のあるヘヴィロックが台頭し始めます。前年デビューのMachine Headもその1つですね。Sepulturaは前作『Chaos A.D.』でのシフトチェンジから、ブラジル音楽のルーツを取り入れた傑作『Roots』で活動のピークを迎えるのも、1996年初頭のお話。Fear Factoryのようなデジタル要素を取り入れたヘヴィバンドも人気を集め始めたのも印象に残ってます。同時期に国内ではTHE MAD CAPSULE MARKETSが『4 PLUGS』をリリースしたのも、海外の動きとリンクしていて興味深いです。

ちなみに日本国内ではこの頃、ブルーハーツの解散(6月)やUP-BEATの解散(8月)、光GENJI(光GENJI SUPER5)の“卒業”(9月)、Winkの活動停止(96年3月)といった出来事がありました。いわゆるTKサウンドがチャートを席巻し、MY LITTLE LOVERやglobeがデビューしたのもこの頃でした。

投稿: 2016 01 10 12:00 午前 [1995年の作品, 1996年の作品, Alice in Chains, Ben Folds, Björk, Blur, Bon Jovi, Chemical Brothers, The, Fear Factory, Foo Fighters, Fugees, The, Garbage, King Crimson, Oasis, Pulp, Queen, Red Hot Chili Peppers, Reef, Sepultura, Smashing Pumpkins, Teenage Fanclub, Wildhearts, The, 「20年前」] | 固定リンク

2015/01/14

V.A.『Guilt By Association Vol. 3』(2011)

昨日のエントリーを書いてから、1994年頃にリリースされた作品を引っ張り出してiTunesにぶっ込んだり、バンドによっては「最近何やってるのかな?」とWikipediaで近況を調べたりといろいろやってたんですが、そんな中で1つ気になるアルバムを見つけまして。

Helmetの近況を調べていく中で見つけた、「Guilt By Association Vol. 3」というカバーアルバム。「そういえば再結成してアルバム3枚くらい出した後どうなったのかしら?」とWikiでディスコグラフィーをチェックしたら、2011年にLoudnessの「Crazy Night」をカバーしてることに気付きまして。「なにそれ?」ということでいろいろ調べてみると、こういうアルバムを見つけたと。で、現在に至るわけです。

ダウンロードオンリーの作品ということで、早速iTunes Storeでダウンロードして聴いてみたんですが……笑いました。まあ最初にHelmetのカバーを聴くわけですが……どこからどう聴いてもHelmet。原曲のあのギターリフはどこへ?といった具合で、歌メロこそ1オクターブ下で歌っているけど、どう聴いても「Crazy Night」なわけで。サビにいく前に入る「Hey...Hey...」というコーラスにオリジナリティを感じますが、まあ……メタルではないですよね(笑)。

この作品、全体を通して80年代の“ヘア・メタル”のヒット曲を、現代のオルタナギターバンド、フォークバンドがカバーするという試み。タイトルを見てわかるようにシリーズものなんですが、メタルに特化したのは本作のみ。で、参加アーティストですが……日本で知られてるのは先のHelmetと、Europeの名曲中の名曲「The Final Countdown」をカバーしたFarrahぐらいでしょうか。ごめんなさい、それ以外のアーティストに関しては本当にここで初めて知ったものばかりでした。

で、通して聴いてみると……原曲は全部知ってるわけで、そりゃ一緒に口ずさめるものばかりなわけです。中には原曲のメロディを完全に崩した「Seventeen」(Wingerのヒット曲)みたいなものもありますが、基本的には原曲のメロディに忠実です。全体的なトーンとしてはいわゆるオルタナカントリー的な色合いなのですが、そこにHelmetのようなバンドがいたり、Elk CityやMalibu Shark Attack!みたいにレトロな打ち込みあり、Twisted Sisterの代表曲「We're Not Gonna Take It」を牧歌的なカントリーソングにしてしまったり、Cinderellaのブルージーなバラードがモータウン調のアッパーチューンに変化していたりと……カバー曲大好きな人には、DJのネタ作品として打ってつけの1枚かもしれません。

とはいっても、真性メタルファンは「マジふざけんな! メタルに対する冒涜だ!」と真に受けてしまうかもですが……まあシャレはシャレとして受け流せる人向けの作品です。僕はこれ、何も考えずに楽しめる1枚としてしばらく愛聴すると思いますけど。



▼V.A.「Guilt By Association Vol. 3」
(amazon:MP3


あ、せっかくなので……このカバーアルバムから各曲に触れた人に向けて、原曲のMVを貼り付けておきます。その時代背景とあわせてお楽しみください(“ヘア・メタル”の意味も、映像を見ればおわかりになるかと)。


Don't Know What You've Got (Till It's Gone) [Original: Cinderella (1988)] ※全米Top20ヒット

Seventeen [Original: Winger (1988)] ※全米Top30ヒット

Nothin' But A Good Time [Original: Poison (1988)] ※全米Top10ヒット

Kickstart My Heart [Original : Motley Crue (1989)] ※全米Top30ヒット

Crazy Night [Original: Loudness (1984)]

Round And Round [Original: Ratt (1984)] ※全米Top20ヒット

Heavy Metal Love [Original: Helix (1983)]

You Give Love A Bad Name [Original: Bon Jovi (1986)] ※全米No.1ヒット

We're Not Gonna Take It [Original: Twisted Sister (1984)] ※全米Top30ヒット

I Remember You [Original: Skid Row (1989)] ※全米Top10ヒット

Photograph [Original: Def Leppard (1983)] ※全米Top20ヒット

More Than Words [Original: Extreme (1990)] ※全米No.1ヒット

Here I Go Again [Original: Whitesnake (1987)] ※全米No.1ヒット

The Final Countdown [Original: Europe (1986)] ※全米Top10ヒット


こうやって観ると、Helixのみ日本での知名度が低いのかな。海外の80年代メタルコンピでは必ずといっていいほど耳にする機会の多い1曲なので、海外的には“あの時代の、思い出の1曲”なんでしょうね。が、YouTubeではこの曲のみMVが見つからず。最終的にDailymotionで見つけてきました。

投稿: 2015 01 14 12:09 午前 [2011年の作品, Bon Jovi, Compilation Album, Motley Crue] | 固定リンク

2005/09/19

BON JOVI『HAVE A NICE DAY』(2005)

 BON JOVIの約3年振り、通算9作目となるオリジナルアルバム「HAVE A NICE DAY」がいよいよリリースされました。先行シングル "Have A Nice Day" は8月初旬から「iTunes Music Store Japan」にて先行配信されていたので俺はそっちで購入していたんだけど、今月に入って店頭に並んだCDシングルの方も売れに売れまくり、気づいたら日本のオリコン・シングルチャートに初のトップ10入りを果たしてしまう程のヒットを記録したのでした。まぁこっちはいろんな要因があると思うのですが(500円という「ワンコイン・シングル」が功を奏したり、等)、兎に角今BON JOVIというバンドが何度目かのピークを迎えようとしていることには違いないと思います。そしてそのピークを支えるのが、自分みたいな「'80年代の全盛期」を支えてきたオールドファンではなく、"It's My Life" 以降‥‥下手をしたらつい最、それこそ "Have A Nice Day" を聴いてファンになったような若い子達だという事実。このバンドの凄みは、そういった所にあるんじゃないか、とここ数年は常に感心しています。

 3年振りとはいうものの、実は彼等に対しての飢餓感みたいなものは全くなかったんですよね。というのも前作「BOUNCE」(2002年)以降、毎年BON JOVIは音源をリリースしてきてたんですよ。2003年秋には過去のヒット曲をアコースティックでリアレンジした企画盤「THIS LEFT FEELS RIGHT」、そして2004年秋にはバンドのデビュー20周年を記念する4CD+DVD(日本盤は更にCDがもう1枚付いた)ボックスセット「100,000,000 BON JOVI FANS CAN'T BE WRONG」もリリース。更に前者リリース後には、そのアルバムリリース時に行われた特別ライヴを収録したDVD「THIS LEFT FEELS RIGHT LIVE」も出てるし‥‥昔みたいに全く音沙汰なしな期間がゼロだったんですよ、今回。というよりも「CRUSH」以降は毎年何かしらの音源/DVDをリリースしてるんですよね、BON JOVIって。そこが凄いというか‥‥

 さ、前振りはこの程度にして、このアルバムの魅力について語りますか‥‥

 この「HAVE A NICE DAY」、実は今年の春にはリリースされる予定だったという話は既にいろんな所で語られていることだし、実際昨年末のボックスセットリリース時のインタビューでもジョン・ボン・ジョヴィ本人がそう語っていたので、そりゃみんな驚いたよねぇ‥‥へっ、ボックスセットのことしか考えてなかったから、心の準備が‥‥みたいなさ。ところが、実際には曲の追加&差し替え、更に煮詰めたりして、最終的なリリースはそこから更に半年ずれた秋口になってしまったという‥‥ま、それでも全然遅過ぎる!とか思わなかったけどね。むしろ春先に出ると信じたファンからすると、この半年の遅延のお陰でこのアルバムに対する期待感が更に高まったんじゃないかな?

 んで、実際我々の手元に届いたこのアルバム、もの凄い傑作に仕上がってるじゃないですか! いや、何かここまで褒めるのもシャクなんだけど‥‥ホント貶しどころがない。BON JOVIのアルバムって(過去にも何度も書いてるけど)前半気合い入れ過ぎて、後半ちょっと散漫になりがちだったんだけど(それって名作「NEW JERSEY」からずっとそうだったような気がする)、それも「CRUSH」辺りから解消されてきてたんだけど、特にここ2作のアルバムって最高に良い曲が揃ってるんだけど、すごく隙のない作風になってたのね。悪く言えば(勿論悪いとは思ってないんだけど)作り込み過ぎ、というか‥‥それっていうのはその当時のバンドを取り巻く状況だったりジョン自身の精神状態だったり、そして当時の情勢みたいなものも大きく影響してたんだろうなぁ‥‥特に「BOUNCE」にはそれが色濃く表れてるしね。

 でも、今回アルバムは‥‥確かに昨年のアメリカ大統領選を意識した内容になってるとはジョン本人も語っているけど‥‥もっと肩の力が抜けた、良い意味で「ラフ」なアルバムなんだよね。だけど、キメるところはしっかりキメてるし、どこからどう聴いてもBON JOVI以外の何ものでもない。シングル曲 "Have A Nice Day" でしっかり聴き手の心を掴んでおいて、これもBON JOVI以外の何ものでもない "I Want To Be Loved" ときて、アーシーなアコースティックバラード "Welcome To Wherever You Are" へと流れていく。その後はユルいアメリカンロックあり、ハードロッキンなナンバーあり、ゆったりしたバラードあり‥‥だけど後半5曲はただひたすら疾走するロックンロールナンバーが続いて、最後の最後に(兎に角歌詞が素晴らしい)名曲 "Story Of My Life" へと辿り着く。凄く完璧な流れだし、捨て曲も1曲たりとも存在しない。凄いというしかないよ‥‥しかも良い意味で「作り込まれてない」から、そんな完璧な流れであろうと緊張感や緊迫感を伴うこともなく、すんなりと最後まで聴けてしまう。先に書いた『肩の力が抜けた、良い意味で「ラフ」なアルバム』とは、正にこういうことを言うんだよなぁ‥‥という、ホントに素晴らしい作品なわけよ。

 ‥‥ってここまで書いたら、もう他に書くことないんだよなぁ。そうそう、「ラフ」っていうのは、例えばこれまでのBON JOVI作品の肝のひとつであったキーボード、今回はその比率が低くて本当にギターが前面に出まくってるんだよね。曲によっては殆どキーボードが聴こえない曲もあるくらい。多分そういった「ギターアルバム」的な作風に仕上がったことも、「ラフ」に聴こえる要因なのかもしれないね。で、リッチー・サンボラもソロやバッキング含め、相当気合い入れて頑張ったんだろうなぁ‥‥というのが手に取るように判るんだよね。しかもそれを聴き手にスラッと聴かせてしまう辺りも改めて凄いというか。日本盤ボーナストラックとなった3曲(当初アルバムに入る予定だったが、最終的には差し替えられてしまった4曲の内の3曲)と聴き比べれば、作風然りギタープレイ然り、その違いの大きさに驚くんじゃないかな‥‥多分この春にアルバムが出てたなら、間違いなく過去2作と同系統の作品で終ってたと思う。でも、そこから更に踏ん張ったから、そこから更に数歩進んだ、ある意味では最も「THESE DAYS」に近づいた、良い意味であのアルバムと近作の中間に位置するフラットでアーシーで親しみやすい作品に仕上がったんじゃないかな、と。

 俺の同世代の奴らもそうだけど、未だにBON JOVIというと "Livin' On A Prayer" や "Bad Medicine" といった曲名を挙げたり、そういった産業ロック臭が苦手だというんだよね。でもさ、ここ10年のBON JOVIっていうのは自身のルーツにとても忠実で、それこそライヴじゃ'50〜'60年代のソウルやR&Bの名曲をカバーしてきてるし、アルバム自体もブルース・スプリングスティーン化がどんどん進んでるし。要するにどんどん「ナチュラルなアメリカン・ロック」へと昇華してるわけですよ。先の「THESE DAYS」ではそれをやり過ぎてしまった感があったけど、今回のアルバムは従来のファンも、そしてこれまでそういう風に敬遠してきたロックファンとを繋ぐ橋渡し的1枚になったんじゃないかな‥‥そう信じて疑いません。

 とにかく、こんな素晴らしいアルバムをみすみすスルーしてしまうなんて、愚か者のすることですよ。絶対に聴け!



▼BON JOVI「HAVE A NICE DAY」(amazon:日本盤DVD付日本盤US盤

投稿: 2005 09 19 12:05 午前 [2005年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/12/03

ボーナスシーズンにボックスセット

 年末時期になると、日本でも海外でもそうなんですが、まぁ‥‥あれですよ、ベスト盤とかが多くリリースされるんですよね。特に海外の場合は「クリスマス・シーズン向け」ということもあり、パーティーでかけるもよし、プレゼントにあげるもよし、といった感じでリリースされることが多いみたい。実際、何かの記事で読んだんだけど、DEF LEPPARDのアルバム「HYSTERIA」が毎年年末になると数万枚売れるそうなんですよ。リリースから5年以上経ってからのお話ですよ。これ、厳密にはオリジナルアルバムですが、シングルヒットが全12曲中7曲も入ってるってことで、まだベスト盤が出る前は重宝されてたんでしょうね。

 というわけで、洋楽に限らず日本でも年末年始にベスト盤をリリースするというアーティストは意外と多いようで。

 ところが。ここ最近はベスト盤だけでは飽き足らず、ボックスセットをリリースするアーティストが増えてるんですよね。数年前にKISSが5枚組ボックスを出したかと思うと、昨年はSLAYERがDVD付き5枚組ボックスとか出したし、今年はBON JOVIやNIRVANAといった目玉商品が人気を呼んでるし。

 というわけで、幾つか気になるボックスセットを紹介。



▼NIRVANA「WITH THE LIGHTS OUT」[3CD+DVD](amazon

 その殆どが未発表テイクという貴重音源満載のボックス。ブートとかで流出した曲もあれば、代表曲のデモテイク、'80年代のライヴ音源まであるので‥‥正直クオリティが心配ではあるんですが、まぁ‥‥コアなファンには嬉しい1品かな、と。当然買いますが。



▼BON JOVI「100,000,000 BON JOVI FANS CAN'T BE WRONG」[5CD+DVD](amazon

 こちらも代表曲は殆ど入っておらず、あっても一部のヒット曲のデモテイクのみ。後は完全未発表のスタジオアウトテイクや映画のサントラにのみ収録された曲、去年出たアコースティック盤に収録される予定だった新曲2曲等、とにかく初聴きの音源てんこ盛り。更に日本盤はB面曲10曲入りのボーナスディスク付き。これも選曲かなり良いので、絶対に日本盤で買い!


▼岡村靖幸「岡村ちゃん大百科」[8CD+2DVD](amazon

 リリース自体は来年2月だけど、これから岡村ちゃんのアルバム揃えようって奴らは、正直これを買いなさい! エピック時代のオリジナルアルバム&未収録曲全部揃うし、DVDもレアなやつ満載だし。当然俺も予約済み!


▼モーニング娘。「モーニング娘。EARLY SINGLE BOX」[9CD](amazon

 8cmシングル時代("モーニングコーヒー" 〜 "恋のダンスサイト")までの8枚を12cm化、それぞれに貴重な未発表音源&テイクを収録。更に人気曲&アルバム曲のカラオケディスク付き。これもマニア向けですけど、"ふるさと" や "真夏の光線" のボーカル違いとか初期テイクとかって聞くと、それだけでもうヨダレものなんですが‥‥

 とりあえず、上の4つは全部予約済みのもの。アホだな相変わらず‥‥


投稿: 2004 12 03 12:40 午前 [2004年の作品, Bon Jovi, Nirvana, モーニング娘。, 岡村靖幸] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/04

とみぃ洋楽100番勝負(78)

●第78回:「In These Arms」 BON JOVI ('92)

 1992〜3年頃。世の中的にはイギリスからのマッドチェスターが下火になって、アメリカからのグランジに盛り上がっていた頃、海の向こうではBON JOVIやDEF LEPPARDを聴くことは、非常に恥ずかしい行為でした。所謂「インディーロック」「オルタナティヴロック」こそが主流になってしまった時代に、それ以前のメインストリームロックであったBON JOVIやDEF LEPPARDといったバンドを聴くことは、単なる「時代遅れ」として捉えられていたのです。当然ながら、セールス的にも大苦戦していた時期です(そういう意味では、そんな中でも善戦していたAEROSMITHやVAN HALENっていうのは、つくづく国民的バンドだったんだなぁ、と改めて思ったりして)。

 しかし。ここ日本では違いました。DEF LEPPARDは武道館公演を2〜3回もやってたし(満員にはなってなかったけど)BON JOVIに至っては武道館数回の他に代々木体育館でも数回、ジャパンツアーで10万人近い動員を記録していたんですよ、'93年という時代に(もうひとこと付け加えておくと、日本ではグランジって殆ど盛り上がってなかったように思います。その後の「ブリットポップ」と比べると雲泥の差ですよね)。

 周りの、ちょっと気取った「自称・洋楽ファン」は、そういった欧米や音楽雑誌メディアからの情報を鵜呑みにして、ちょっと前まで「高校時代はBON JOVIとかWHITESNAKEとか聴いてた」という自らの過去をひた隠ししようとするんですね。あーバカバカしい。インディーロックもハードロックもメタルもパンクもテクノもR&Bもラップも、全部同じ「音楽」として接していた俺からすれば、そんなの‥‥いや、バカバカしいからコメントは控えます。そんなことに無駄な時間を費やしたくないんで。

 で、BON JOVI。ファンの間では評価の低いこの「KEEP THE FAITH」というアルバム。確かにアルバム前半のテンション及び名極度の高さに比べると、後半のダメダメさがその当時彼等が置かれていた状況を物語っているようにも思えて、ちょっと悲しくなりますが‥‥大ヒットこそしなかったものの、この "In These Arms" という曲は彼等がこれまでにリリースしてきた楽曲の中でも、絶対に5本の指に入る至高の名曲なんですね。当然、(特に日本の)ファンの間でも評価が高い1曲なんだけど、何故かベスト盤には入ってなかったりで(UK及びEU盤には入ってたのかな?)ファン以外には知名度が低い1曲でもあるんですよね。惜しいなぁ‥‥ギターソロ明けのジョンのボーカルに、絶対涙するはずなのに。

 こうやって未だに現役として、しかも成功を収めているBON JOVIと、死ぬことで自らを神格化してしまったNIRVANAのカート・コバーン。どっちが重要とかどっちがより孤高とかいうつもりはありませんが‥‥けど少なくとも、今の俺にとっては間違いなくBON JOVIの方が大切ですね。だって、生き続けてくれてるから。生き続けて、活動し続けて、新しい曲を沢山生み出し続けてくれてるから。それだけで十分なんですよ。



▼BON JOVI「KEEP THE FAITH」(:
amazon

投稿: 2004 11 04 12:00 午前 [1992年の作品, Bon Jovi, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/08/30

とみぃ洋楽100番勝負(11)

●第11回「Runaway」 BON JOVI('84)

 やっとここでBON JOVI登場。丁度中学に入学すると同時にデビューだったんだよね。俺、音楽雑誌って最初に買ったのは「ROCK SHOW」だってのは前にも書いたけど、俺等のガキの頃の洋楽入門書って「ミュージックライフ」だったわけですよ。ミーハー度もある程度高いし写真も結構載ってるから、下敷きに挟むような写真は大体「ROCK SHOW」か「ミュージックライフ」から切り取ってたのよ。

 けど俺、正直な話BON JOVIは挟んだ記憶ないのよ。BON JOVIの場合は‥‥多分初めて部屋にポスターを貼った洋楽アーティストじゃないかな? 初めて貼ったのは「明星」か何かの付録のキョンキョンのポスターだったけど。

 んでBON JOVI。単純に曲にやられたよね。もうイントロのシンセ一発、みたいな。俺、小学生時代からエレクトーン習ってて、中一で先生やれる資格取っちゃったのよ。けどその頃って既にエレキギターに夢中になっちゃっててね。小学生の頃はそんなに夢中になれなかったのに。そんな状況下にも関わらず、しっかりエレクトーンで "Runaway" のキーボードパートを耳コピしたなぁ。ある程度スピード感があるから、JOURNEYやVAN HALENよりも弾いてて楽しいのな。後でアルバムとか借りて、結構キーボード主体の曲が多かったから、かなりコピーしましたよ、ええ。

 一時期、この曲を意識的に演奏しないBON JOVIでしたが、今年でデビュー20周年。やっぱり今聴いても名曲度は高いよね。サウンドはさすがに古くさくなってるけど、曲自体は全然色褪せてない。たまにカラオケに行った時、ふいに歌いたくなるもんなぁ。BON JOVIの曲で俺、カラオケで歌うのってこの曲くらいだなぁ。だって他のヒット曲って殆どがコーラスや掛け合い重視だしさ。

 今度さ、洋楽縛りのカラオケとかやろうよ!ねっ?(笑



▼BON JOVI「BON JOVI」(amazon

投稿: 2004 08 30 12:00 午前 [1984年の作品, Bon Jovi, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/05/18

BON JOVI『THESE DAYS』(1995)

いろいろ異論反論はあると思うけど、間違いなくBON JOVIの最高傑作は、1995年という時代にドロップされた6枚目のオリジナルアルバム『THESE DAYS』だと思う。世間的にはBON JOVIの第二のピークは『CRUSH』以降ってことになるんだろうけど、それってアメリカでの話ですよね? 確かにアメリカでの彼らは「KEEP THE FAITH」以降、失速していったように見えます。が、それって80年代と比べてってことでしょ? あの時代に、こんなメインストリームロックがチャートのトップ10内にアルバムを送り込んで、尚かつミリオン(=100万枚以上)セールスを、どれだけ記録した? せいぜいBON JOVIとDEF LEPPARDくらいじゃないの?(ま、そのLEPSもアメリカではドンドン苦戦を強いられていくわけですが)

94年秋にリリースされた初のベスト盤『CROSS ROAD』もチャート10位内にランキング、ミリオンセールスを記録。そこからのシングル「Always」はチャートのトップ5入りする大健闘を見せた。けど、時を同じくしてベーシストのアレック・ジョン・サッチが脱退・引退を表明。丁度新しいオリジナルアルバムの製作時期だったこともあり、バンドはそのまま活動がストップしてしまうのかと思いきや、ジョン・ボン・ジョヴィ含めメンバーと古い付き合いのベーシスト、ヒューイ・マクドナルドを準メンバーに迎え(BON JOVIは今後、4人として活動し、レコーディングとライヴにはサポートとしてヒューイが加わる形となった。ビル・ワイマンが抜けたROLLING STONESみたいなものですよ)、年末のチャリティー・ライヴで新生BON JOVIを初お披露目、そのまま6作目となるオリジナルアルバムのレコーディングに突入。そうして完成したのが、この『THESE DAYS』という傑作アルバム。逆境だったはずのメンバー脱退なんだけど、殆どバンドに影響しなかったのは、当時のジョンやリッチー・サンボラがソングライターとして如何に充実していたか、また久々の大ヒットが追い風となって、バンドとしていい波に乗れたというのも大きかったんでしょうね。

が、このアルバム。そんな勢いを感じさせるような作品かというとそうでもなく、実はBON JOVI史上最も地味な作品として挙げられることが多い1枚でもあるんですよね。ベスト盤収録の新曲群も手掛けたピーター・コリンズを共同プロデューサーに迎え、ジョンの自宅内にあるスタジオで制作されたこのアルバム、かなり「バンドのアルバム」としてのライヴ感を重視しているんですが、楽曲がとにかく地味。ボブ・ロックを迎えて制作した作品群と比べても、ハードロックとルーツロック、それくらいの違いが感じられる程なんですね‥‥音の触感という面でもそうだけど、やはりちょっとした曲のタッチやメロディ、歌詞の内容等、明らかに以前よりも高いハードルを目指しているのが伺えます。ただのパーティーロック、ティーンエイジャーの心の内を歌ったようなものではなく、30代を迎え父親となったジョンの、大人としての視点で描かれる物語‥‥既にそれはアメリカン・ハードロックといった枠で括れないような次元に達していると思います。言ってしまえば、「Livin' On A Prayer」で歌われたトミーとジーナの10年後‥‥そんな世界観でしょうか。英語が理解され難いここ日本で、果たしてそこまでの内容が認識されているかは疑問ですが、とにかくこのバンドの成長は、デビュー時から共に成長してきた俺にとっても非常に感慨深いものでした。

とにかくアルバム前半の流れは完璧。エリック・クラプトンばりに弾きまくるリッチーのフレーズが印象深い「Hey God」(アルバムからの5thシングル)、日本では自動車のCMソングに起用されたので記憶に残っている人も多いだろうBON JOVIらしいアメリカンロック「Something For The Pain」(アルバムからの2ndシングル)、R&Bの要素さえ感じさせる初のロッカバラード「This Ain't A Love Song」(アルバムからの先行シングル)、アルバムのタイトルトラックにしてBON JOVI史上三本指に入る名曲中の名曲「These Days」(アルバムからの4thシングル)、中盤のメロトロンの音が印象深いバラード「Lie To Me」(アルバムからの3rdシングル)、そしてライヴでも定評があるファンクロック「Damned」‥‥ここまでの6曲の流れ、本当に素晴らしいんだよね。特に頭5曲は全部シングル曲ということもあり、耳に残る名曲ばかり。ただノリの良さで攻めるのではなく、しっかり聴かせる曲も3~5曲目に並んでる辺りはさすがというか。

で、後半なんですが‥‥いきなりサイケで重々しい空気でスタートし、どんどんと展開していくグランジ調ヘヴィロック「My Guitar Lies Bleeding In My Arms」(これがもう本当に名曲!)、元々はジョンのソロ曲としてスタートした弾き語り風アコースティックナンバー「(It's Hard) Letting You Go」、BON JOVIらしいポップなメロディを持つロッカバラード「Hearts Breaking Even」、ダークな印象が斬新な新境地「Something To Believe In」、これまた彼ららしい大陸的なミディアムナンバー「If That's What It Takes」、そして『NEW JERSEY』時代から何度かレコーディングしてみたものの上手くいかず、最終的にこういう形で落ち着いたという曰く付きの「Diamond Ring」でアルバムは一旦幕を閉じます(この後、日本盤とEU盤ではボーナストラックとして「All I Want Is Everything」と「Bitter Wine」という2曲が収録されています。アルバム本編の12曲と比べるとちょっとだけ劣る気もするけど、まぁ悪くない佳曲だと思います)。

 アメリカではアルバムはかろうじてトップ10入りし、ギリギリ100万枚に達したようだけど、ヨーロッパで5枚リカットされたシングルはアメリカではたった3枚、しかもどれも思った程のヒットを記録することもなく、ツアーもアリーナクラスを数ヶ月回った程度で終わったようです。しかし、日本では初登場1位を記録するという異例事態が発生。またイギリスでも同時期にリリースされたマイケル・ジャクソンのアルバムを抑えて初登場1位を獲得、同時期には7万人以上も入るウェンブリー・スタジアムで数日間のソールドアウト公演を実現‥‥そう、確かにこのアルバムを発表した時期は、バンドにとって第二の世界的大ヒットを迎えたピークだったといえるでしょう。

後の『CRUSH』や『BOUNCE』とも違うヘヴィさ、ダークさ。世が世だったというのも大きいでしょうけど、やはりもとを正せば、メンバーチェンジだったりアメリカでの不遇が彼らに影を落としていたのかもしれません。実際、後にジョンもこのアルバムを「ダーク過ぎた」と認めていますしね。

けどさ‥‥だから何!? ダークだろうがヘヴィだろうが地味だろうが、名盤には違いないでしょ? 俺にとっても、そして多くのファンにとってもこのアルバムってとても大切な1枚なんですよ。耳障りが良い近年のアルバムや80年代の大ヒット作の間に挟まれて肩身の狭い思いをしているであろう1枚。中古盤屋でも1枚200円くらいで売られているのを見かけると、かなり切なくなってしまう1枚。内容が内容なだけにね‥‥いや、本当に名作なんだってば!

BON JOVIがデビューしてから今年で20年。彼らの20年の歴史の上で、現時点でこのアルバムはどういう風に位置付けされるのか‥‥非常に気になるところではあるんだけど‥‥きっと、もうこういう作風のアルバムって作らないんだろうなぁ‥‥何となくだけど、そう感じています。けど、だからこそこのアルバムが「オンリーワン」として燦然と輝いているってのもあるんだけど。うん、まぁあれだ‥‥BON JOVI好きって奴でこのアルバムを聴いてない若いファンがいたら、そいつはもぐりだ!ということですよ。今からでも遅くないから、早く聴きなさいって!



▼BON JOVI『THESE DAYS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 05 18 12:00 午前 [1995年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2003/09/20

BON JOVI『BOUNCE』(2002)

ひとりのアーティスト、ひとつのグループが一度頂点に達し、その地位を維持するために奮闘し、時代の流れと共に落ち目になっていく。こんな光景、ロックやポップスを長年聴き続けていれば何度も目撃するもの。そうやって我々の記憶に残り続けるモノもあれば、時代の徒花として瞬時に忘れ去れれる存在もいる。けど、例えばそんな落ち目時代を何年も耐え続け、ひたすら作品を重ねていく中で再び頂点に達したアーティスト/グループって、一体どれくらいいるんだろうね? みんなが好きなアーティストの中にそういった存在っている? 少なくともそんなに数いないと思うんだけど。

今回紹介するBON JOVIはある意味、その「数少ない存在」の中のひとつだと思うんですね。ここ日本では80年代後半から現在に至るまで、常に安定した人気を保っているし、他のアジア諸国やヨーロッパ諸国でもアルバムやシングルは常にヒットチャートの上位に君臨し、ライヴをやれば数万人規模のスタジアムを満員にしてきた。けどそれは「本国以外」での話。ご存じの通りBON JOVIはアメリカのロックバンド。最初にブレイクしたのはここ日本だったかもしれないけど、彼等が80年代に大ブレイクしたのはアメリカでの大ヒットがあったからこそ。2枚連続でアルバムが1位(しかも共に500万枚以上のセールスを記録)、シングルヒットも連発。誰もが「国民的バンド」になったと思ってた矢先‥‥90年代に入ってグランジやヒップホップの台頭があり、それまでメインストリームと呼ばれていたようなバンド達は時代遅れ扱いされ、特にBON JOVIなんかは本国で「空白の10年」と呼ばれるような時代を送るのでした。とはいいながらもアルバムは出せば常にトップ10入りしたし、94年には「Always」という過去最大のヒット曲も誕生してるわけで。そかし、00年代のメガヒットと比べれば明らかに落ち目と言われても仕方ないセールスなのも事実。同じ頃、海外(日本やヨーロッパ)では東京ドームやウェンブリー・スタジアムを連日満員にしていたというのに。

しかし、時は流れ00年。彼等は起死回生の『CRUSH』というアルバムをリリース。日本やヨーロッパは勿論、本国アメリカでも久し振りのヒットを記録します。シングル「It's My Life」はMTVやラジオでも頻繁にかかり、ライヴもアメリカでは久し振りのスタジアムクラスを経験。久し振りに「アメリカにBON JOVIが帰って来た!」的歓迎ムードを体感したわけです。そしてそんな上げ上げムードの中、'01年にはロックトラックを中心に編集されたライヴベスト『ONE WILD NIGHT』を海外でリリース(後に日本でも限定リリース)、その勢いのまま次作の制作に突入したのでした。

そんな感じで、満を持して発表されたのがこの『BOUNCE』。オリジナルアルバムとしては前作から2年3ヶ月という非常に短いインターバルでのリリース。ライヴ盤も含めると00年から毎年アルバムをリリースしてることになります。如何にバンドが「今の上昇気流から外れないように」と気合いを入れて活動してるかが伺えますよね。

アルバムを最初に聴いた時、非常に硬質な印象を受けました。オープニングからダウンチューニングしたヘヴィなリフを持つ「Undivided」で攻めの姿勢を示し、続くシングル曲「Everyday」は従来の持ち味とこれまでに感じたことのなかった新しい要素を上手く融合した実験作になってるし、3曲目「The Distance」も大きいノリを持ったBON JOVIらしいメロディの1曲なのですが、バックトラックは今までとはちょっと違う色合いを感じる。ダウンチューニングしたギターが放つ奇妙なサウンドのリフ、そんな重々しいバンドサウンドに被さる生オーケストレーション。異質なんだけどBON JOVIらしい。前作での成功をそのままに、更にバンドとしてワンステップ上に行こうという意欲が見え隠れします。

しかし、その後は比較的落ち着いた要素が続きます。フォーキーなバラード「Joey」や如何にも彼等らしい埃っぽい「Misunderstood」、名バラード「All About Lovin' You」の3曲で、頭3曲のイメージを完全に覆してしまいます。つまりここでの3曲は従来のBON JOVIらしさを、最も得意とする方法で料理してるわけです。勿論、そこには今のBON JOVIもしっかり感じられるわけですが。

後半6曲はそういったイケイケモードと落ち着いたモードが交互に押したり引いたりします。現代的なノリを持ったヘヴィチューン「Hook Me Up」、大人ならではの落ち着いたバラード「Right Side Of Wrong」、壮大なんだけどどこか落ち着いたイメージを感じさせる「Love Me Back To Life」、如何にもなアコースティックバラード「You Had Me From Hello」、「It's My Life」の流れを組む彼等ならではの「Bounce」、最後を締め括るに相応しいバラード「Open All Night」。こうやってみると全体的にバラードが多いことに気づきますよね。実際最初に通して聴いた時は「あー、バラードばっかりで、ちょっと聴く頻度高くないかも」と思ったのも事実で、買って暫くして聴かなくなってしまったんですよね。自分の彼等に対する興味や好奇心も以前ほどじゃなくなっていたのもあったし。

しかし、バンドはこのアルバムで本格的な復活を果たしてしまったのですよ。アメリカでアルバムチャート初登場2位。『CRUSH』が確か6位くらいだったと記憶してるから、更に上を行ったということになるんでしょうね。丁度アルバムリリース直前に「スーパーボウル」か何かに出演してゲストライヴをやったのも影響したでしょうし。まぁそれだけ多くの人に待たれたアルバムだったってことなんでしょう。来日公演も東京ドーム2公演分が久し振りにソールドアウトで、追加&再追加公演も出た程ですし。アメリカでもこの夏までツアーをやっていたようですから、それだけ人が入ったってことなんでしょう。とにかく完全に復活したと言っていいんでしょうね。

最近、自分の中でこういったアメリカンロックやアメリカンハードロックに対する興味が再び高まっていることもあって、久し振りに聴き返したんですよ、このアルバム。そしたらね‥‥本当に良かったんですわ。いや、確かにバラードは少し多いと思いますが、それは前作(『CRUSH』やロックトラック中心のライヴ盤『ONE WILD NIGHT』)からの反動でこうなったのでしょうし、まぁ彼等も皆40過ぎ、もうちょっとレイドバックした方向に行きたいのかもしれないし。けど同時にロックし続けたいという気持ちもある。バランス的には「柔」の方向に傾いているように感じられるんですが、全体を通して聴いてみると意外と「硬」な印象が強いアルバムだったことに改めて気づくわけで。そういう意味ではバラードが多いながらも硬派なイメージが強い『NEW JERSEY』と共通するものがあったりなかったり。『CRUSH』が『SLIPPERY WHEN WET』的アルバムと呼ばれることからも、この『BOUNCE』もそういった感じで出来ていったアルバムなのかもしれませんね。

BON JOVIは今世紀に入ってから本当に休み知らずな活動を続けています。来月にはアコースティック・アレンジや実験的なアレンジを施した過去の名曲達を集めた新録編集盤『THIS LEFT FEELS RIGHT』もリリースされるし、来年2004年はデビュー20周年記念のボックスセットも発表される予定。恐らくオリジナルアルバムは2005年以降になるんでしょうけど‥‥毎年こうやって何かしら音源をリリースしてくれるなんて、90年代後半では考えられなかったことだから、ファンにとっても嬉しいんじゃないですか?

最後に‥‥BON JOVIは決して「過去の焼き直し」をして再び頂点を手にしたんじゃない。80年代の偉業と比べれば最近の作品は質が下がったと嘆く旧ファンも多いだろうけど、アーティストはそうやってドンドン先へと進んでいくもんだと思ってます。それが我々の望んだ方向でなくても。それはどのアーティストにも当てはまることなんじゃない? ねぇ、心当たり、ない?



▼BON JOVI『BOUNCE』
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投稿: 2003 09 20 12:00 午前 [2002年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2001/05/28

BON JOVI『ONE WILD NIGHT - LIVE 1985-2000』(2001)

BON JOVI初のライヴアルバム。一応、売り文句はこうらしいです。で、レコード会社のサイトにはこう書かれています‥‥

今までに世界中のファンから絶大な要望がありながら、実現しなかったボン・ジョヴィのフル・ライヴ・アルバムがついに初リリース!もちろん、史上初めての公式のフル・ライヴ・アルバム!
ライヴ曲目14曲全て、CDとしては、過去の作品のエクストラとして発表されてきたものともダブらない初発表音源!

これ、大嘘です! 騙されちゃいけません。はっきり言って、殆どがCDシングルのカップリングに入っていた音源をリミックスしたもので、それ以外はビデオからだったり、テレビ放送された音源だったり‥‥ぶっちゃけた話、1曲目の「It's My Life」と12曲目「Just Older」(共に2000年11月@トロント)、5曲目「Someday I'll Be Saturday Night」と13曲目「Something For The Pain」(共に1995年11月@メルボルン)を除く10曲は、全て何らかの形で発表されてきたものです(と記憶してますが、間違っていたらご指摘お願いします)。

確かにミックスは若干違います。例えばギターの音をデカくしてたり、WOWOWで生中継された7曲目「Something To Believe In」(1996年5月@横浜スタジアム)なんかも改めてリミックスされてるはずです。また、1985年4月の来日公演の音源2曲分(「Runaway」「In And Out Of Love」)は以前、セルビデオとして発売されていた音源を元にしているし、それ以外は『THESE DAYS』や『CRUSH』からのシングルのカップリングに収録されていた音源ばかりです。

正直、こういう安易な発想で「BON JOVI初のライヴアルバム」を作られちゃあ、ファンとしては泣くに泣けません。国内盤が出なくてよかったとさえ思ってますよ‥‥

バンドがライヴアルバムを出すのには、幾つか理由があると思いますが、内容的には大体2つに大別できると思うんですよ。

①最も脂が乗り切った時期の、1本のライヴを丸ごと収めた実況中継盤
 (KISS『ALIVE!』、CHEAP TRICK『AT BUDOKAN』等がその代表)

②それまで録音されてきた数え切れないライヴの中から、より選られたテイクを集めたベスト盤的内容
 (AEROSMITH『LIVE BOOTLEG』、GUNS N'ROSES『LIVE ERA』等)

今回のBON JOVIの場合は、明らかに②。けど、エアロやガンズが実際の擬似ライヴのように曲を並べていたのに対し、このアルバムは(a)選曲的にダメ(ロックに拘りすぎた結果、持ち味のひとつであるバラードが1曲もなし)、(b)曲順も実際のライヴとかけ離れた流れの悪いもの、(c)しかも1曲1曲ブツ切りで(フェイドアウトしていて)ライヴ感ゼロに等しい、と「何故にこんな作りにしたのさ!?」という疑問しか残らない構成となっているのです。

いや、確かにこうやってまとまった形で彼らのライヴ音源を聴けるというのは、ファンのみならず興味があると思うし、嬉しいはずなんですよ。けど‥‥俺は嬉しくない。1600円払って買ってしまったけど、はっきり言ってこれからBON JOVIのアルバムに手を出そうとする初心者にはお勧めしません。マニアだったらここに入ってる殆どの音源を、既にシングル等で持っているはずなので、気が向いたら買う。これでいいと思います。

それにしても、2曲目の「Livin' On A Prayer」。昨年末に発売されたチューリッヒでのライヴビデオ&DVDと同じ音源なのだけど‥‥なんかエンディングのサビの繰り返し部分、変じゃねぇか? これ、エディットされてるわけ? 曲ぶち壊しじゃねぇか!? そうえいばこの日のライヴってWOWOWでも放送されたけど、そっちもちょっと変だったしな、エンディング部分。上手く録音出来てなくて苦肉の策としてのエディットだったとしたら‥‥もっと調子のいい日の音源、あったんじゃないの!? 何も2000年に拘らなくてもさぁ‥‥はぁ~‥‥。

この数ヶ月の間に、日本では『TOKYO ROAD』というベスト盤、海外ではこのライヴ盤がリリースされたわけですが、正直両方とも中途半端。あの完璧主義者のジョン・ボン・ジョヴィらしからぬ仕事振りですな。本気でやる気あんの?(怒) まさかBON JOVIのレビューで、こんなに批判的なものを書く日がこようとは思ってもみなかった‥‥ガッカリです。もし今後、日本盤が出る予定ができたら、悪い事はいいません。「特別仕様で2枚組、日本独自選曲(ロックに偏らず、ちゃんとバラードも入れること!)、曲順構成は実際のライヴに沿った流れ、フェイドアウトは一切なし」な作品にしてください。じゃなきゃファンは買いませんよ。不買運動起こされますよ!? 既発テイク使っても構わないんで、ちゃんとした「ライヴ盤」にしてくださいね!!!(怒)

けど、いいところもひとつくらい書いておかなきゃって思って。改めて追記しております(苦笑)。


で、このライヴ盤最大の売りは、ズバリ‥‥

・リッチーのギター&コーラス

・ティコのドラム

‥‥以上っ!



▼BON JOVI『ONE WILD NIGHT - LIVE 1985-2000』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2001 05 28 12:01 午前 [2001年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

BON JOVI『TOKYO ROAD』(2001)

日本オンリーでリリースされた、通算2枚目となるベストアルバム。しかし今回は前のベスト『CROSS ROAD』のようなシングルコレクションという趣旨と異なり、サブタイトルにあるとおり(「BEST OF BON JOVI ROCK TRACKS」)、ロックに拘った選曲となっている。選出したのは日本のレコード会社らしく、その選曲を後でジョン達が確認してOKを出したそうだ。

既発曲が殆どの中、唯一の未発表曲(バージョン)となるのは、『CRUSH』収録の「One Wild Night」の2001年リミックスで、これがこのアルバムの「売り」となるわけだ。

まず、この新しいリミックス。新たにルーク・エヴィン(『CRUSH』のプロデューサー)、リッチーとデズモンド・チャイルドがプロデュースに携わっていて(デズモンドはこの曲の共作者でもある)、「ロック」に拘っているためか、ギターが前面に出されていて、新たにダビングもされているようだ。曲の構成も若干変わっていて(「Na,Na,Nana~」がギターソロ後にしか登場しない)、更にブラスも加わっていて、より「黒」っぽさが色濃くなった。個人的にはオリジナルバージョンよりも、こっちの方が普遍的な感じがして好きだ。ちなみにこの曲が『CRUSH』からの第4弾シングルとなっていて、5月に日本以外で発売された初 のライヴ盤『ONE WILD NIGHT - LIVE 1985-2000』にも収録されている。

さて、その他のベスト選曲についてだが、前のベストと重複するのは、日本オンリーの「Tokyo Road」を含めて6曲。各アルバムからの選出は以下の通り。

・1st‥‥‥‥1曲(Runaway)
・2nd‥‥‥‥1曲(Tokyo Road)
・3rd‥‥‥‥3曲(Livin' On~, You Give Love~, Wild In The Streets
・4th‥‥‥‥3曲(Bad Medicine, Born To Be My Baby, Blood On Blood
・5th‥‥‥‥2曲(Keep The Faith, I'll Sleep When I'm Dead
・6th‥‥‥‥2曲(Hey God, Something For The Pain
・7th‥‥‥‥4曲(It's My Live, Next 100 Years, Just Older, One Wild Night

ちなみに太字が今回初選出の曲。

新作『CRUSH』からの4曲はまぁよしとして‥‥問題は、『KEEP THE FAITH』と『THESE DAYS』だろう。ライヴでの定番2曲を選んだ『KEEP~』だが、これじゃあ平凡すぎないか? BON JOVIのダイナミックさは伝わるだろうけど、もっとメロディアスでロックしている曲は他にもあるんじゃないか? 例えば「I Believe」だったり、もっと言えば‥‥何故「In These Arms」が収録されていない!? 日本人が選曲した割には、ちょっと疑問。

そしてもっと問題なのは、『THESE DAYS』だろう。名曲中の名曲、「These Days」を選曲しないとは、どういうことなんだ!?(怒) 確かにロックロックしてないが、あの哀愁の旋律をこのまま埋もれさせてしまうつもりなのか? 最近BON JOVI自体がこのアルバムからの曲をライヴで演奏しなくなっている。たまに1~2曲披露されてはいるが(例えばこのベストにも収録されている2曲や、「Damned」といった曲)、何かないがしろにされているような気がする。勿体ないよ、本当に。


つうか、俺に選曲させろよ、マジで!(かなり怒)


ただ、ちょっとはいい面もある。例えば前のベストからは落とされてしまった「Born To Be My Baby」や、アルバムトラックである「Blood On Blood」のようなライヴ定番曲が初めて選出された点。アルバムを1枚も持っていないファンが彼らのロックな面を知るためにはちょっと役不足な気もしないではないが‥‥つうか、もっとシングルに拘らない選曲にしてもよかったんじゃないの?

結局は来日の為のプロモーション素材として発売されたものなんでしょう。ライヴCDをカップリングした「メガ・エディション」は昨年の来日後に出してしまったから、苦肉の策ともいえるけど。まぁバンドがよくこれを許可したなぁという点では、確かに快挙かもしれない。何せ日本オンリーだから(まぁオンリーじゃなくてもいいんだけど)。

そうそう、初回50万枚には、ライヴシングルCDがおまけでついていて、これが結構いいかもしれない。1985年4月の来日公演の音源「Tokyo Road」や昨年のツアーから「Next 100 Years」、そしてジョンとリッチーのソロツアーから各1曲ずつの計4曲、約20分の代物。まだ新品でも手に入るみたいだから(2001年5月28日現在)、これだけのために買ってもいいかも‥‥但し、コアなファンのみね(苦笑)。



▼BON JOVI『TOKYO ROAD』
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投稿: 2001 05 28 12:00 午前 [2001年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2000/11/28

BON JOVI『CROSS ROAD』(1994)

ON JOVI としての、初のベストアルバムをデビュー10周年の年にリリース。これがベスト盤としては異例の大ヒットを記録し(アメリカでもトップ10入り、ヨーロッパでは軒並み1位を記録、ここ日本に関してはオリコン総合チャートで初登場2位、ミリオンセールスを記録した)全世界で1500万枚以上ものセールスを記録し、今現在もその数字は伸び続けているという。

しかもこのアルバム、ただのベスト盤なら既発曲のみで構成されたものでもおかしくないのに、完全な新曲を2曲収録、しかもリリースされる地区によって収録曲が若干異なるというコレクター心をくすぐる内容となっている。更にこのアルバムからの先行シングル「Always」がアメリカやヨーロッパで、シングルとしては過去最高のセールスを記録したのだ。イギリスで最高2位、アメリカでは4位までしか上昇してないが、この4位というのが曲者で、なんと12週に渡って4位をキープし続けたのだ。結果、売上としては4週連続1位を記録した87年の「Livin' On A Prayer」をも軽く抜いてしまったのだった。

ここでその収録曲の違いについて説明しておこう。まず日本盤。リリース当時の仕様は全15曲入りで、10曲目に日本のみの収録ということで2ndアルバムから「Tokyo Road」を、更に15曲目にはボーナストラックとして3rdアルバムから「Never Say Goodbye」が収録されている。

次にアメリカ盤。全14曲入りで、10曲目には「Livin' On A Prayer」の別バージョン(アコースティック仕様)「Prayer 94」を収録、ボーナストラックはなし。

EU(ヨーロッパ)盤は全15曲入りで、10曲目には5thアルバムから「In These Arms」を、15曲目には日本盤同様「Never Say Goodbye」を収録している。

最後にあまり見かけないが、存在しているという事で‥‥一風変わったラテンアメリカ盤。実はその存在を噂でしか耳にしておらず、現物にお目にかかったことはない。しかし、仕様としてはアメリカ盤+ボーナストラックとして5thアルバム収録の「Bed Of Roses」のポルトガル語バージョン「Cama De Rosas」の全15曲入りらしい(ちなみにこの曲は日本盤でも、限定盤だったが5thのメガ・エディション2枚組にも収録されていた。現在高額で取引あされているが、「In These Arms」のライヴトラックも入っているので、興味があったら探してみては如何だろうか?)。

というわけで、現在上記の4バージョンが存在していたのだが‥‥数年前に始まった旧譜のリマスター化に伴い、どうやら世界各国共通仕様になりつつあるようだ。現在までに確認されているリマスター盤仕様は2バージョン。日本盤とアメリカ盤が同じ仕様で、94年当時の14曲入り仕様(10曲目が「Prayer 94」)になり、EU盤は曲目・曲数に変化はなし。まぁ日本盤の「Tokyo Road」ってのが本来、どうだかなぁ的選曲だったので、これから手を出す人にとっては有難いことだろう。

内容に関しては特に記しておくべきことはないだろう。どの仕様に手を出すか?は聴き手の判断に任せるとして‥‥新曲2曲(「Always」「Someday I'll Be Saturday Night」)は本来なら、これに続く6枚目のオリジナルアルバムに収録される予定だったそうだが、ファンサービスという事で先にこっちで発表することにしたそうだ。しかし結果、これが次作への橋渡しとしては想像以上の結果を収めたため、続く『THESE DAYS』は半年近くリリース日程を早めなければならなくなってしまった‥‥嬉しい誤算である。

ちなみにこの時期にレコーディングされていながら、『CROSS ROAD』にも『THESE DAYS』にも収録されなかった曲がもう1曲あって、それは映画のサウンドトラックとして使用されている。「Good Guys Always Wear White」というアップテンポなナンバーで、『THIS COWBOY WAY』という映画の主題歌として発表された。当時サントラ盤も日本発売されたが、現在なら先の「Someday I'll Be Saturday Night」のマキシシングル日本盤で聴く事が出来る(他にも「Prayer 94」も収録されているので、お買い得だ)。

94年秋にリリースされ、その間も新作の為の作業は続行していたが、ベスト盤があまりにもビッグセールスを記録したため、急遽95年4月からワールドツアーを開始することになった。しかもこれまでにニューアルバムを完成させなければならず、本来はこのツアーが終了してから(10月頃)発表されるはずだったが、結局援護射撃の形をとって6月にリリース(何と日本はそれよりも1ヶ月先行だった)されることになったため、BON JOVIの周囲は更に慌しくなり始める。

そうそう、オリジナルメンバーのアレック・ジョン・サッチ(B)が脱退したのもこの頃だった。結果、レコーディング参加作品としてはこのベストでの新曲2曲が、PVでは「Always」が最後となってしまったのだった。



▼BON JOVI『CROSS ROAD』
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投稿: 2000 11 28 12:01 午前 [1994年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

BON JOVI『KEEP THE FAITH』(1992)

90年にツアー終了後、バンドは長期休暇に突入した。その間にジョンは『BLAZE OF GLORY』(90年)を、リッチーは『STRANGER IN THIS TOWN』(91年)をそれぞれ発表。それなりの成功を収めた。ソロ活動の最中、90年末には再びバンドとして日本の地を踏み、カウントダウン形式のフェスティヴァルを行った。(CINDERELLA、SKID ROW、QUIREBOYSが出演)しかし、いざツアーを行ったものの、やはり休養前と状況が何も変わっていないことが判明し、再び彼らは沈黙を守ることに。

そんな彼らが再び結集したのが、92年に入ってからだった。ジョンは存続をかけてメンバーとミーティングを重ね、その結果当時のマネージメントを離れ、新たに独立。またジョンがそれまで書き溜めていた楽曲を元に、そのままレコーディングに突入した。プロデューサーにはそれまでミックスを担当していたボブ・ロックが担当。当時彼は既にMOTLEY CRUEやMETALLICAで売れっ子となっていたので、当然の組み合わせと言える。4年の沈黙にも関わらずアルバムはトップ5入りし、プラチナディスクを獲得。アメリカでは4曲がシングルカットされ(「Keep The Faith」「Bed Of Roses」「In These Arms」「I'll Sleep When I'm Dead」)、特に「Bed Of Roses」はトップ10入りを果たした。またアメリカ以外のヨーロッパ諸国や日本ではその他にも「I Believe」と「Dry County」がシングルカットされ、大ヒットしている。

バンドはこのアルバムの為に30曲以上を用意したという。当時ブートレッグでもそれらのデモ曲が出回っていたが、どうも迷いが伺えた。この頃は既にNIRVANAやPEARL JAM、METALLICAが一時代を築いていた頃で、80年代を支えてきたDEF LEPPARDやBON JOVI のようなバンドには風当たりが強かった。そう考えると、LEPS『ADRENALIZE』の初登場1位やこの『KEEP THE FAITH』の第4位というのは1位以上の意味を持つといえる。だって、いろいろ迷いながらもアルバムとして発表された楽曲群はこれでもか!?って位に前向きな内容だったのだから。方や「I Hate Myself And I Want To Die」(NIRVANA)と唄っているのに対し、「I Believe」や「Keep The Faith」という前向きなメッセージを掲げて戻ってきたのだ。これが4年もブランクがあるバンドか!?っていうポテンシャルの高い楽曲が詰まった、隠れた名盤だろう。

ちなみにこのアルバム、古くからのファンにはいまいち印象が薄いらしい。当時俺の周りではそういう声が多かったのを覚えている。それと同様に、「バンドというより、ジョンのソロアルバムみたい」という声も多かった。確かにジョン単独で書いた楽曲が多いのもその理由のひとつだろう。実際にジョンは後にこのアルバムを「“I”的(私的)なアルバム」と表現している。まぁバンドとしてのミーティングで解散が決定していれば、これらの楽曲はジョンのソロとして発表されていたのだろうから、あながち間違いでもないのかもしれない。「Bed Of Roses」のような6/8拍子のバラードも、ソロを通過していなければ出来ていなかったかもしれないし。

それにしてもこのアルバム、ダンスビートにU2のエッジ(ギタリスト)を思わせるストロークギター(カッティング)を導入した新境地「Keep The Faith」や、「どうしてこれが当時大ヒットしなかったの?」って思わせる名曲中の名曲「In These Arms」、METALLICAも真っ青なヘヴィ路線「If I Was Your Mother」、プログレッシヴな大作「Dry County」等名曲目白押しな前半の充実振りに比べると、後半テンションが落ちるのが惜しい。まぁ名バラード「I Want You」のような曲もあるが‥‥確かライヴでもアルバム前半の曲ばかりが演奏されていたように記憶している。

こうやって曲名を読んでいくと、時代に合わせてなのか、非常にシンプル且つ短いタイトルが多い。上に挙げたものの他にも"Fear"なんてのもあるし。そう考えていくと、従来のBON JOVI らしさを基本に、時代に合わせて変化しようとしているのが伺えるように思う。BON JOVI なりの90年代スタイルを見つけ出そうとするかのように‥‥それがまだ完成しきっていない、過渡期的作品集なのかもしれない。そういえば、当時の雑誌レビューで「ジョンの書く曲とリッチーのギターソロがかみ合っていない」なんて声もあったっけ‥‥。

このときのツアーは93年に入ってから開始され、アメリカを回った後に6月来日。ジョンの第1子が生まれたため来日が遅れ、初日のみ延期という形をとったものの、続く2日目は3時間を越えるボリュームでファンを魅了させた。この頃から「BON JOVI のライヴは2時間以上やる」というのが常識になったような気がする‥‥また、1曲目もフレキシブルに変えていったようで、アルバム通り「I Believe」から始まることが殆どだったが、たまに「With A Little Help From My Friends」(BEATLESのカヴァー。ジョー・コッカーのカヴァーバージョンで演奏)から始まったり、「Livin' On A Prayer」のアコースティック・バージョン(後の「Prayer 94」の原型)から始めるなんて意表を突いたオープニングもあった。ちなみに俺はその3つを体験している。



▼BON JOVI『KEEP THE FAITH』
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投稿: 2000 11 28 12:00 午前 [1992年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2000/10/09

BON JOVI『NEW JERSEY』(1988)

それまで1年に1枚のハイペースでアルバムを発表してきたBON JOVI。前作が空前の大ヒットを収めた結果ツアーは延びに延び、結局15ヶ月にも及んだ。87年10月にツアーが終了し、年内はそのまま休養に当て、年明けからジョンとリッチーは再び曲作りを開始、春には前作と同じスタッフ(プロデューサーにフェアバーン、ミックスにボブ・ロック)でスタジオ入りした。今回はソングライター・チームにデズモンドの他に、今やセリーヌ・ディオンやエアロスミス「I Don't Want To Miss A Thing」でお馴染みのダイアン・ウォーレン等も加わっている。アルバムは勿論前作の余波を受け1位に、当時だけで500万枚以上のセールスを記録。シングルも5曲をリカットし(「Bad Medicine」「Born To Be My Baby」「I'll Be There For You」「Lay Your Hands On Me」「Living In Sin」)全てがトップ10入り、特に「Bad Medicine」と「I'll Be There For You」は1位を記録した。「Bad Medicine」はここ日本でサンヨーのテレビCM(メンバー達本人が出演)に起用されていたので、覚えている方も多いだろう(「まるでBON JOVI」なんてキャッチコピーもあったっけ)。

前作での勢いをそのまま受け継いだ、ある意味延長線上にある内容だが、このアルバム辺りからいよいよ彼等(というかジョン)のルーツ的側面も見え始める。前作での「Wanted Dead Or Alive」におけるアコースティックギター導入がその後のHM/HRシーンに大きな影響を与えたのは上で書いたが、ここでは更にそれを押し進めた楽曲が揃っている。「Wild Is The Wind」「Stick To Your Guns」なんて曲がそうだ。また「Love For Sale」なんてお遊び的な曲も収録されている。しかしここで声を大にして言いたいのは、「Blood On Blood」の存在だろう。それまで同郷のブルース・スプリングスティーンからの影響を口にはしていたが、ここまであからさまにその影響を出したのは、この曲が初めてである。スプリングスティーンの名曲「Born To Run」のBON JOVI版とも言えるこの曲は、初期BON JOVIの代表曲でもあるし、その後のライヴでもハイライトとなった。

また、ライヴでもオープニングを飾った「Lay Your Hands On Me」の導入部でのドラムにも当時は度肝を抜かれたものだ。明らかに前作における「Let It Rock」導入部(当時のCDには「Pink Flamingos」と曲名も付いていたし、1曲としてカウントされていたのだが‥‥)を意識したものだろう。(音楽的にではなく、作品的に)様式美的な前作に対し、拡散方向へ向かった新作。当時のインタビューでやたらとLED ZEPPELINの名前を挙げていたのをふと思い出した。

楽曲に関しては前作同様、文句なしの出来ではないだろうか? 正直甲乙付け難い。特にアナログでいうA面(1~5曲目)の充実振りは絶品である。最初に手を出すならこのアルバムか前作だろう。共に購入して、その成長振りを感心するのもアリだろう。まぁベスト盤でもいいが、この2枚にはヒットシングル以外にも名曲がやライヴでの定番曲が多いので、是非アルバム単位で聴いて貰いたい。

このアルバムに伴うツアーは88年10月31日にダブリンからスタートした(確かDEF LEPPARDのジョー・エリオットが飛び入りして、THIN LIZZYの「The Boys Are Back In Town」を共演したのだった)。その年の年末には日本にて初の東京ドーム公演を、カウントダウンのフェスティバル形式で実現。RATT、KINGDOM COME、BRITNEY FOXが出演した。翌89年8月にはロシア(当時のソ連)にて初のライヴをSCORPIONS、MOTLEY CRUE、OZZY OSBOURNEらと実現した。その充実振りとは裏腹に、彼等のストレスは次第に溜まっていき、ツアー終了と同時にピークに達した結果、次のアルバムまでに4年という歳月を要することになるのだった。



▼BON JOVI『NEW JERSEY』
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投稿: 2000 10 09 12:01 午前 [1988年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

BON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』(1986)

このアルバムを切っ掛けに彼等を好きになったという20代後半以上の人は多いのではないだろうか? 当時洋楽を聴いていた人のみならず、普通の邦楽しか聴かないような人をも巻き込んで大ヒットした、名作中の名作。86年8月リリース。再びここ日本からツアーがスタートしたために、またしても他国より1ヶ月先行で発売された。プロデューサーには当時LOVERBOYやBLACK'N'BLUEを手掛けていたブルース・フェアバーン、ミックスにはその門下生のボブ・ロックという、このアルバムを切っ掛けに超一流になったスタッフを起用。またソングライターチームもバンドメンバーだけにとどまらず、デズモンド・チャイルドという職業ソングライター(KISS「I Was Made For Loving You」等で既に有名だった)との共作を開始し、「純粋にいい曲」という1stアルバムの課題と「ロック比重」という2ndアルバムの課題を見事にクリアした、完全無欠のアルバムが完成した。シングルとして「You Give Love A Bad Name」(米1位)、「Livin' On A Prayer」(米4週1位)、「Wanted Dead Or Alive」(米3週7位)、「Never Say Goodbye」(米以外でシングルカット。英21位)をリカット、アルバムも発売3ヶ月で1位を記録し、その後8週間1位に居座った。当時だけでも800万枚という、ロックとしては(勿論HM/HRとしても)異例のモンスターヒットを記録した。

ちにみにこのアルバム、日本と欧米とではジャケットが違う事でも有名だ。現在の日本盤ジャケットは本来正式なジャケットとして採用されるはずだったが、「エロティックすぎないか?」という事でアメリカやイギリス等では別のジャケットに差し替えられた。ちなみに本来のジャケットが採用されたのは、日本とフランス、その他数カ国のみと聞いている。差し替えジャケットは、ジョンが濡れた車のボンネットにアルバムタイトルを指でなぞっただけという代物。けどこっちのが格好よくねぇか?

純粋にいい曲が10曲詰まったいいアルバム‥‥これ以上何を言えばいい? BON JOVIがこのアルバムで歴史を、全ての流れを変えてしまったのは紛れもない事実だ。折からのLAメタルブームが一段落しようとした時に、彼等はこのアルバムで勝負に出た。当時アルバムを聴いたレコード会社スタッフが「これは凄い! トッププライオリティ(レコード会社が世界的に売り出すためにイチ押しする事)に押そう!」と考えたのも納得がいく。しかしそれまでの流れを考えると、誰もBON JOVIごときがトップを取るなんて考えてもみなかっただろう。そういう意味では躊躇した、とも聞いている。

しかし、たった1曲のビデオクリップが全てを変えたのだ‥‥「You Give Love A Bad Name」である。このビデオとDAVID LEE ROTH「Yankee Rose」のPVがその後のPVの作りを根本から変えてしまったのだ。派手なステージセットを使った疑似ライヴを収めた内容。これを観た多くのキッズがライヴ会場に足を運びたくなるような、レコードを欲しがるような内容。まだBON JOVIは前座で回る事が多かったので、自分達のセットなど持っていない。そう、全てはビデオのためだけのものなのだ。これはある意味賭けだったとも言える。しかし彼等はその勝負に勝ったのだった。

興味深い話をひとつ。このアルバムに収録された「Wanted Dead Or Alive」は、その後のHM/HRシーンのみならず、音楽の流行さえをも決定づけてしまった1曲だ。この曲の大成功により、「HM/HRでのアコースティック・ギターの導入」「カウボーイ的イメージ」というひとつの成功への鍵みたいなものを生みだした。その結果、多くのバンドがこの点を踏まえた上で成功を収めた。POISON、CINDERELLA、WARRANT等々。HM/HRバンドがバラードでヒットするということは一種貧弱なイメージを与えかねない。しかし、成功を目標とするバンドとしては背に腹は代えられない。

そうこうしてるうちに、これに目を付けた業界人もいる。BON JOVIの成功によってアコースティック・ギターが再び脚光を浴びた結果、アコギが再び売れるようになった。そしてMTVは89年に「アンプラグド」という番組を始めた。一流人気アーティストにアコースティック・ライヴをやってもらうのだ。この番組からエリック・クラプトンの大ヒットアルバムも生まれた。事実、この番組のプロデューサーは番組のアイディアとして「Wanted Dead Or Alive」の成功を挙げ、番組第1回目のゲストとしてBON JOVIに出演をオファーしている。しかし彼等が実際に出演するまでには、その後3年を要する事となった。

内容に関しては多くを言うまい。未だにライヴで半数近くの曲が演奏されている事からも判るだろう。あくまでギターを中心に置き、それを見事にフォローアップするキーボード。とにかくギターが前2作とは比べものにならないくらい、いい。音質もクリアだし、適度にヘヴィ。軽すぎず、重すぎず。当時大ヒットしていたブルース・スプリングスティーンの『BORN IN THE USA』やブライアン・アダムス『RECKLESS』をもっとハードにしたような内容で、HRに疎い人にも取っ付きやすい作りとなっている。



▼BON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』
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投稿: 2000 10 09 12:00 午前 [1986年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2000/08/01

BON JOVI『7800° FAHRENHEIT』(1985)

1stアルバムが思いの外ヒットしたため、急ピッチで制作された(曲作りに6週間しか与えられなかった)のがこのアルバム。全作から丁度1年後にリリース。特にここ日本では4~5月に初のジャパンツアーが決定していた為に、欧米より1ヶ月早くリリースされた。製作陣は前作を手がけたランス・クインを再び起用(が、後に彼の仕事に満足いかなかった、とジョンは言っている)。シングルとして「Only Lonely」「In And Out Of Love」「Silent Night」がカットされ、それぞれヒットを記録。またここ日本ではバラエティー番組のテーマ曲として87年になってから「Price Of Love」がカットされている。チャート上ではビルボード・アルバムチャート37位まで上昇し、初のミリオン(当時)を達成した。

SCORPIONSやKISSといった大物のサポートとしてツアーに出た結果、1stに足りなかった何かに気づき始めたジョンは、アルバムタイトルからも想像できるように「ロック比重を高くした内容」を意識したそうだ(タイトルは「岩=ロックをも溶かす絶対温度」を意味する)1曲目「In And Out Of Love」やアナログB面(6曲目以降)が特にそうだ。しかし本来の持ち味である「哀愁漂う泣きのメロディ」を生かした曲が少なくなった為、いまいち煮え切らない内容となっている。確かに前作よりも売れたが、何もBON JOVIがこれをやる必要はなかったのではないだろうか? まぁ周りを見渡せばMOTLEY CRUEが『SHOUT AT THE DEVIL』を、RATTが『OUT OF CELLER』を大ヒットさせていたことも関係あるのだろう。既に大ヒットしていたDEF LEPPARD『PYROMANIA』だって、今の音楽性よりもよっぽどハードだし。が、差別化を図るという意味でこの2ndアルバムは個性を生かし切れていないのだ。

勿論そういう個性を生かした佳曲もある。先のシングルナンバー「Only Lonely」や「Price Of Love」がそうだ。ミディアムテンポのヘヴィな曲が大半を占める中、これらはある意味異色だ。そして初のバラードらしいバラード「Silent Night」も忘れられない。これらのシングルナンバーがその後の彼等の雛形となっているのが、お判りいただけるだろうか? それに引き替え、アルバムラスト数曲の出来といったら‥‥。

このアルバムには日本での思い出(84年夏の「SUPER ROCK '84」)を唄った「Tokyo Road」という曲も収録されている。余程この日本の地での成功が嬉しかったのだろう。既にライヴではこのアルバムから1曲も演奏される事はないが、日本に来るとツアー中に1度は演奏されることがある(が、ここ2回のツアーでは披露されていない)。それ程いい曲とも思わないが‥‥。

ジョン自身も一番気に入っていない事からもお判りの通り、期待された程に内容的・セールス的にも思った通りにならなかった。その割にツアーは大成功したのだが‥‥もし全作品を揃えるつもりなら、一番最後に買えばいいアルバムである。



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投稿: 2000 08 01 12:01 午前 [1985年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

BON JOVI『BON JOVI』(1984)

84年春にアメリカ及び日本等世界各国で発表された、記念すべきBON JOVIのデビューアルバム。プロデューサーはランス・クイン(後にDANGER DANGERのデビューアルバム等を手掛ける)と、ジョン・ボン・ジョヴィの従兄弟であるトニー・ボンジオヴィ。このアルバムからのシングルとしては「Runaway」「She Don't Know Me」がリリースされ(ここ日本ではその他に、今となっては懐かしい12インチシングル「Burning For Love」もリリースされている)、共にアメリカチャートではチャート上でそれなりの成功を果たし、アルバムもそれに後押しされトップ50にチャートインし(最高43位)、当時50万枚以上のセールスを記録した。

当時アメリカで火がついたLAメタル・ブームのお陰でHM/HRバンドにとって非常にデビューしやすい状況にあり、またそれまで影ながらシーンを支えてきたVAN HALENやJOURNEYがチャート上でもNo.1を獲得する等、そういう新人にとっても大きなチャンスが巡ってきていた。そんな中、アルバムより先にリリースされたデビュー曲「Runaway」が全米トップ40入りする、無名の新人としては正に快挙ともいえるスタートを切った。

また、アメリカのみならずイギリスでも「She Don't Know Me」(英国ではこっちがデビュー曲だった)がヒット、ここ日本でも麻倉未樹というシンガーが「Runaway」をカヴァーし、ドラマの主題歌として起用されヒットしたこともあり、洋楽リスナーの一般認知度もそこそこだったように記憶している。BON JOVIというとここ日本で最初にブレイクした、というイメージがあるようだが、実は日本よりも先にちゃんと欧米で成功していたという事実を改めて知ってもらいたい(まぁ欧米のそれと比べれば、日本での人気は音楽云々以外にもアイドルとしての人気が高かったのだが‥‥。

現在の彼等から考えると、音楽性や目指すべきものが多少違っているように思える。確かにカラっとしたアメリカンHRが主体なのだが、メロディに潤いがあり、彼等が現在までに発表してきた作品の中では一番ヨーロピアン・テイストが濃いのではないだろうか?(「Love Lies」等は正にその代表とも言えるだろう)そういう事もあり、ここ日本ではHRファンにも受けたのかもしれない。またソングライターに注目してみると、BON JOVI結成前に録音された「Runaway」やカヴァー曲を除いた7曲中、ジョンとデヴィッド・ブライアン(当時はデヴィッド・ラッシュバウムと名乗っていた)との共作が2曲、ジョンとジャック・ポンティ(ジョンがかつて在籍したバンドTHE RESTのメンバーであり、KISSのプロデューサーとしても有名)との共作が1曲、残り4曲がジョン/リッチー・サンボラの共作となっている。その後大半の曲をジョン/リッチーで書き上げている事から、ジョン/デヴィッドの共作は貴重かもしれない(ジョン/デヴィッドの共作は続く2ndまで目にする事ができる)。そのデヴィッドとの共作曲(「Love Lies」と「Breakout」)はキーボード主体の曲で、共に独特な雰囲気を持った名曲である。

また、後の大ヒット曲「You Give Love A Bad Name」や「Born To Be My Baby」のプロトタイプとも言える「Burning For Love」のような曲も既に登場していて、この時点で定番の曲調(泣きのマイナー)となりつつある。

今のBON JOVIをイメージして手を出すと、少々辛いかもしれないが、メロディアスなHRアルバムと考えれば、当時としてはよく出来た作品だ。いや、意外とこれ、名盤ではないだろうか? 現在ライヴでも「Runaway」以外の曲が披露される事はまずないので、最初に手を出すべきアルバムではないが、先に挙げたような音楽性を好む人には胸を張ってお薦め出来る作品である。

それにしても、純粋なHRファンにもトップ40モノが好きな一般ファンにも(この時点で)アピールしたという意味では、非常に興味深い作品ではないだろうか?



▼BON JOVI『BON JOVI』
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投稿: 2000 08 01 12:00 午前 [1984年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2000/07/17

BON JOVI JAPAN TOUR 2000@東京ドーム(2000年7月13日)

よくよく数えてみたら、俺のBON JOVIライヴ体験は今回で15回目となった(ジョンのソロも含めると)。それは以下の通り。


1回目:1987.09.30.@日本武道館
2回目:1990.12.31.@東京ドーム
3回目:1991.01.03.@横浜アリーナ
4回目:1993.06.03.@日本武道館
5回目:1993.06.04.@日本武道館
6回目:1993.06.06.@代々木オリンピックプール(昼の部)
7回目:1993.06.06.@代々木オリンピックプール(夜の部)
8回目:1993.06.07.@代々木オリンピックプール
9回目:1993.06.17.@横浜文化体育館
10回目:1995.05.19.@東京ドーム
11回目:1996.05.18.@横浜スタジアム
12回目:1996.05.19.@横浜スタジアム
13回目:1996.05.20.@横浜スタジアム
14回目:1997.07.07.@日本武道館(ジョンのソロ)


‥‥何やってんだ、俺!?(苦笑) とまぁ、とにかくこれだけ観ても飽きないのが彼等のライヴなわけであって、何で俺がこれまでに何度も「BON JOVIの真の魅力はライヴにあり!」と叫んできたかがお判りいただけるだろうか‥‥はっきり言って、これだけ観ても同じ内容だったショウはただの1回もなかった。そりゃ各ツアー毎に核になるアルバムがあるわけで、それを中心にセットリストが組まれるわけだから、選曲的には似てるのだが‥‥けど、観に来た人を楽しませて帰らせるという意味では彼等は常にプロフェッショナルだった。そしてそれは今回も同様だったと思う。

今回のワールドツアーはここ日本、しかも東京公演からスタートする。これまでにも彼等は85年と86年のワールドツアーを日本からスタートさせているし、『THESE DAYS』ツアーのラウンド2(96年)もここ日本からスタートしている。そういう意味では特別嬉しいというのはない。むしろ心配だったりする‥‥どんなアーティストでもそうだが、やはりワールドツアーの初日というのはどれだけナーバスになるものか‥‥あのストーンズでさえ、初日はボロボロだからなぁ。(笑)ただ、あの百戦錬磨のBON JOVIでさえも最初はナーバスになるんだ、というのが観れるという「いやらしい」楽しみ方はあるが(爆)。

俺が行った7月13日は2日目公演。前日はやはりというか、案の定ナーバスになり結構ボロボロだったと聞いた。そういえば翌日のスポーツ新聞でその一幕を写真で見たが‥‥なんなんだ、あのロックスターらしからぬ衣装は!? グレーっぽい薄手のシャツを着て‥‥何か、俺が知ってるジョンじゃねぇよ、そんなの!って腰を抜かしたのを覚えている。(笑)つうかさぁ‥‥いや、やめておこう。問題は今日、13日のステージなのだから。

俺の席はD15ブロックという、ステージに向かってかなり右寄りの位置だった。それでもこれまでのドーム体験の中ではまずまずの位置だった。俺のドームのポジションで一番良かったのは、ドーム初体験のストーンズ90年2月、A8ブロックだった。しかも前から10列目程度の位置。それ以降アリーナなんて1度もなかったなぁ‥‥。

開演前のBGMに選ばれたのはAC/DC『HIGHWAY TO HELL』。久し振りに聴いたけど、やたらかっこいい。つうか、やっぱり彼等は大音量で聴くに限るね。リマスター盤発 売前に全作品売っ払っちまったから、今度買い直そう(笑)。

19時を10分程回り、ようやく会場が暗転、いよいよスタートだ。そういえば俺の左隣の席には40代半ばくらいの女性がいたのだが、最初はその隣にいた学生風の男性の付き添いだとばかり思っていた。そころがティコがドラムを叩き始めると、それに合わせてノッてるんだよね、彼女♪ 好きなんか? ドラムに続いてベースが加わり、更にデヴィッドやリッチーが加わり‥‥何の曲だろう?とみんな顔を見合わせている。俺は判っちゃったけど‥‥そしてジョンがいつもの黒のテレキャスターをぶら下げて登場。ジョンもリズムを刻み‥‥そう、この曲はBON JOVIの曲ではない。『THESE DAYS』ツアーから何度か演奏されている、本邦初登場、ニール・ヤングの「Rockin' In The Free World」だ。ツアー初日からこんなマニアックな選曲でいいのか?とか思いながら、内心はハッピー度180%といったところか(笑)。とにかく、ここ日本でこんなアメリカチックな曲を、しかも1曲目から聴けて嬉しかったりする。が、その反面多くのお客は「?」だったようだ。ノリもイマイチだったな‥‥みんな大ヒット曲での大合唱を期待したんだろうけど。ツアー初日の緊張感をいい意味で解す、好カヴァーだった。言われていたよりも演奏は悪くないようだ。が、音は極悪。ドラムのスネアのヒットがモコモコしてて、気持ち悪い。ただ、歌はよく聞き取れたね。そしてジョンの衣装も前日の趣味の悪さから一転し、これまで同様の黒の革パンにブルーのタイトなロングスリーブ・シャツ。曲のエンディングではギターソロまでキメる。なかなかノリノリ(死語)だ。

曲が終わりそのままアコギに持ち替えたジョン。2曲目はいきなり新作から「Just Older」。この2曲だけでも俺は今日来た甲斐があったってもんだ。すっげーアメリカン。何だろう、この高揚感は? 既に15回も観てるのに、初めて観た頃と変わらないこの気持ち。ロックスターになるんだ、と心に決めた87年9月30日から13年経ってるにも関わらず‥‥仕事に疲れたこの俺を16歳の、まだ田舎の少年だった俺に引き戻すこのバンドのサウンド。中盤のジョンの語り部分に鳥肌。涙がちょちょぎれそうな程。

この曲が終わると聞き覚えのあるキーボードのイントロが‥‥そうか、ここに持ってきたか!の「Livin' On A Prayer」。初日は1曲目で、今日は「Rockin' ~」と判った瞬間「ああ、最後に持ってきたか」と思ってたけど、こういうのもアリかな? 大体「Livin' ~」って1曲目かラストってイメージがあるからさぁ、ちょっと新鮮だったな。続く4曲目もお約束の「You Give Love A Bad Name」という流れ。特筆すべき点は特になし。だって良かったもん♪ ただ、やっぱり最初の2曲と比べれば、歓声の大きさが比じゃなかったけど。やっぱりみんなこれを望んでるのね? もうそれこそライヴでは15回毎回聴いてるけど、やっぱりコール&レスポンスの部分では思いっきり唄い叫んでしまう俺。単純なり、我ながら。

ちょっとクールダウンする意味で、5曲目にニューアルバムから「Two Story Town」がここで初登場。前日プレイされなかった曲だがやはりリハーサル不足というか、どうも噛み合っていない印象を受けた。ただでさえ曲調がもったりした感じなのに、さらにもったり感を与えている。ティコのドラムもどうもイマイチだ。新作でも新機軸となっていた打ち込みとの融合。この曲ではシーケンサーを使ったバックトラックに合わせてドラムを叩いていたが、リハーサル不足の感は否めなかった。その後も毎回演奏されていたそうだが、どうだったのだろうか?

続いてニューアルバムからの、新しいアンセムソングとなった「It's My Life」だ。この曲への観客の声援は大きなものだった。そう、それは「Livin' ~」や「You Give Love~」に対してのそれと何ら変わらないものだ。それだけの魅力を持った曲。きっとこれからの10年もこの曲は変わらず演奏し続けられるんだろうなぁ‥‥けど、どうせなら先の大ヒットメドレーに続けて欲しかった。やっぱり「Two Story Town」は前半に持ってくるべきじゃなかったと思う。特に今回のツアー、選曲に難がある。それは後に述べるが‥‥。

更に新作からのハイライトのひとつ、「Next 100 Years」の登場。曲の前にジョンはMCでこの曲でのリッチーのギターソロの素晴らしさについて絶賛していたが、それはアルバム同様ライヴでも素晴らしいものだった。今までリッチーのギターソロで感心する事はあっても感動するような事はなかった。が、今回ばかりはちょっと鳥肌ものだった。悔やまれるのは、やはりドームの音響(苦笑)。せめて同内容のギターソロだけでも、ブルーノート辺りで聴きたい。いや、マジで(笑)。

ここで小休止。メンバー全員がステージ中央に集まり、右と左、どっちの歓声がデカイか競争させる。ジョンは向かって右側を選んだ。けど毎回右側らしい(笑)。右側のプロジェクターの下に小さなステージセットが組まれ、そこに5人がクラブバンドのように身体を寄せ合ってのアコースティック・セットのスタート。これは前回のツアーと同様だ。まずは4th『NEW JERSEY』から「Love For Sale」。5万人集まった東京ドームが、まさにブルーノートあたりのクラブに変わった瞬間だった。メンバーもノリノリでアドリブが入ったりで、特にティコのコーラスにしびれた。いい声してるわ、やっぱ。

続いてアドリブ的に始まったのが、エルヴィス・プレスリーの曲「It's All Right」。とにかく今日はカヴァー率が高いな? しかもここ日本では初めて演奏するような曲ばかり。気分はちょっとだけアメリカ。更にアコースティックセットが続くわけだが‥‥その前にジョンの語りが入る。「もう20年近くも前の曲で~」とか「新しいアレンジで初めてプレイする~」とかいうような事を言ってるのは理解できたが、まさかそれに続いて始まった曲があのデビュー曲「Runaway」だとは‥‥意外と俺の周りでは評判悪かったようだが、俺は気に入った。つうか彼等にこの手のアレンジの曲やらせたら、右に出る奴らはいないと思う。それくらい心に響いた。その余韻を引きずったまま、お馴染みの「Someday I'll Be Saturday Night」へ突入。そんなに人気の高い曲だとも思わないのだが、必ず毎回演奏される曲。まぁ世界的大ヒットを記録したベスト盤に収められた楽曲だからかもしれない。けど、これやるならせめて「Always」とか聴きたかったな?

この曲でアコースティックセットは終了。メンバーはジョンの掛け声でメインステージに駆け足で(笑)戻る。そして聞き覚えのある、ホンワカした童謡のような曲が会場を包む。思わずニヤけてしまった‥‥新作『CRUSH』からの「One Wild Night」だ。個人的には絶対にライヴで盛り上がるであろうと思っていたのだが‥‥それ程でもなかったのはどういう事だろうか? 「It's My Life」はシングルだから盛り上がっただけで、まだアルバム全体は浸透していないって事だろうか? ただ、演奏もよくなかったように思う。まだこなれていない印象を受けた。「第二の"You Give Love A Bad Name"」になってもおかしくないと確信していただけに、ちょっとショックだった。

そこからアンコール前のエンディングまでは、恒例のヒットメドレーというか、いつも通りの選曲で、ちょっと肩すかし。「I'll Sleep When I'm Dead」に挿入されたのは、前回の東京ドーム公演(95年5月)にも披露された、ジョン・フォガティーの曲(STATUS QUOのカバーでも有名)「Rockin' All Over The World」だった。前日「Bad Medicine」とメドレーで演奏されたアイズレー・ブラザーズの「Shout」も今日はなしで、非常に淡々と終わった感じがした。本当に特筆すべき点は何もなかった。下手な事書くなら、「『LIVE FROM LONDON』のビデオでも観てね♪」と言った方が早いくらい。つまり、あそこで繰り広げられているものと、殆ど同じと思ってもらってよい。ここ5~6年の定番エンディングとでもいったところだろうか?

そしてアンコールに期待する俺‥‥知っての通り、BON JOVI のライヴはアンコールからが長いのだ。アンコールだけで10曲近く披露した時もあったくらいだ。そしてこの日のアンコール1曲目は、新作でも1,2を争う程の名曲「Captain Crash & The Beauty Queen From Mars」だ! 意外とアンコール1曲目にピッタリの選曲だったように思う。アップテンポだけど比較的落ち着いたノリだし。そして更に新作から「Mystery Train」。これも名曲だと思う。新作は「全曲ライヴで演奏したいくらい」と言っていただけに、この日の新作率は高い方(12曲中7曲)だったんじゃないだろうか? この曲も落ち着いたノリを持っているので、クールダウンするには持ってこいの2曲だった。

続いてリッチーが定番のオベーション(アコースティックギター)ダブルネックを持って登場。もうお判りだろう。「Wanted Dead Or Alive」だ。悪い曲ではないのだが、毎回聴いてるだけにそろそろ飽きてきたなぁ、と俺自身は感じている。けど、やっぱリッチーがギターソロ前に、あのアコギからエレキに持ち替えてソロに移る瞬間ってのは、何度観ても(聴いても)かっこいい。リッチーのソロにそれ程感銘を受けない俺でも、この曲のギターソロは大好きだ。そしてアンコール1回目はこの曲で終了する。メンバーはステージ前に集まって全員手を繋いで万歳をしてお辞儀。これで終わりです、と言わんばかりだ。けど、ファンならお判りの通り、本編はこれから(笑)だろう、本当の真骨頂は‥‥。

一度袖に引っ込んで、再び登場。2度目のアンコールは静にかにスタート。聞き覚えのない曲だった。またカバーか? しかしジョンが唄い出したら、たまたま知ってる曲だった。ビル・ウィザーズというシンガーの「Lean On Me」という曲だ。80年代にクラブ・ヌーヴォーというブラック・グループがカバーして全米ナンバー1になっているので、意外と覚えている20代後半以上の方は多いかもしれない。BON JOVI バージョンはゴスペルチックに、全員のコーラスを重視した、半ばアカペラに近い感じ。演奏もデヴィッドのピアノのみだったように記憶している(間違ってたらごめんなさい)。本当に今日はカバー率が高い日だな?

そしてその静寂を破るかのように、お馴染みのベース・リフが‥‥そう、「Keep The Faith」だ。ジョンはお約束のマラカスを持って踊るわけだが、いつ観てもいい腰の動きしてる。ギターソロの後のブレイクではいつもジョンのセクシーなアドリブが延々続くのだが、今日は原曲に忠実な淡泊なバージョンだった。でもやっぱり盛り上がるし、エンディング近くでのティコのドラミングはいつ聴いても気持ちいい。そして2度目のアンコールはこの曲で終了。メンバー全員再びステージ前で挨拶。そして「See you in next year…」の言葉を残して、ジョンはステージを後にした‥‥って、おい、まさか‥‥会場の灯りが着き、終演を告げるアナウンスが場内に響いた。ブーイングに近い「エェ~ッ?」という声。時計に目をやると、ほぼ2時間ピッタリ。彼らにしては短いショウだった。って、本当にこれで終わりなの!?と何度も会場を見回し、暫く席に座って再び暗転するのを待った‥‥待ったが何も起こらなかった。

もしかしたら、今回はこういう構成(つまり、2時間前後のショウ)でライヴを重ねていくつもりなのかもしれない。考えてみれば、前回のバンドとしてのツアーは丁度4年前だ。あれから4つも歳を重ねているわけだし、全員それなりに年寄りになったというわけか?(苦笑)けど‥‥物足りない。こんなんなら前日も観ておけばよかった。大阪も名古屋も福岡も追っかければよかった。まぁそれが事実上無理なのは判っているが‥‥。

今回何が一番物足りなかったかといえば、間違いなく選曲だろう。新作からの曲にしてもそうだし、過去のヒット曲にしても‥‥バラードが1曲もないというのはどういうことだろう? 確かにアコースティックセットはあったものの、例えば「I'll Be There For You」や「Always」といった大ヒット曲が完全に無視され、新作からの名バラード「Thank You For Loving Me」も「Save The World」もないがしろにされた。何故!?

これは完全に憶測でしかないが、まず彼らはバンドとしてのグルーヴ/ノリを取り戻したかったのではないだろうか? 確かに日本公演の前にウォームアップ・ギグを数本こなしてはいるものの、それはあくまで小会場(或いはライヴハウス)でのことで、ドームのようなアリーナでの動き回るショウは7/12の東京ドームが最初だった。だから今回の日本公演というのは手探り状態だったのかもしれない。それは選曲にも表れていて、比較的ノリのいいアップテンポな曲を重点的に選んだんじゃないだろうか? じゃなかったら、日本ではドラマ主題歌にまでなった「Thank You For Loving Me」を演奏しないなんておかしい。計算高いいつものジョンなら絶対に演奏していたはずだ。

そしてもうひとつ。前回の『THESE DAYS』というアルバムが、ダウナーな内容だった事も関係していると思う。ダウナーといっても別にグランジとかあの手のダウナーではなく、ミドルテンポ~バラードが大半を占めていたという意味。そしてジョンが最近のインタビューで度々口にするように「前作は歌詞が暗かった」とネガティヴなイメージがあるらしい。やはり前作の核となる楽曲にはミドル~スロウが多かったため、ツアー自体もそういう楽曲が多く選出されていたし‥‥それに対して新作は溌剌としたイメージがある。やはり前作での反動だろう。という事は、それはツアーにも反映されているのではないだろうか? じゃなかったら、あれだけ名曲揃いの前作からの曲が1曲も披露されないなんておかしすぎる。せめて「These Days」だけでも聴きたかったのだが‥‥

とまぁ、いろいろと不満も残ったライヴだったが‥‥やはり最後には楽しかった、この一言に尽きるような気がする。何だかんだ言ってもライヴの最中はそんな事考えないで、純粋に楽しんでいたし。あれだけの観衆を惹きつけるだけの魅力と実力を持ったバンドはそうはいない。それをデビュー17年目の彼らが未だに持ち続けている、いや、更に磨きがかかっているというのはどういう事だろう? きっと次のアルバムはデビュー20周年とかに引っかけるんだろうな?なんて邪推をしながら「次のツアーはどう楽しませてくれるんだろう?」なんて期待をする。未だにそういう存在なのだ、俺にとってのBON JOVI は。

‥‥あ、忘れてた。来年も来るんだっけ?(苦笑) 是非来年の再来日の時には、完璧な状態で、完璧なセットリストで、完璧なショウを期待してます、ジョン・ボン・ジョヴィ様。


<セットリスト>
01. Rockin' In The Free World
02. Just Older
03. Livin' On A Prayer
04. You Give Love A Bad Name
05. Two Story Town
06. It's My Life
07. Next 100 Years
[Sub Stage : Acoustic Set]
08. Love For Sale
09. It's All Right
10. Runaway
11. Someday I'll Be Saturday Night
[end of Acoustic Set : back to Main Stage]
12. One Wild Night
13. Lay Your Hands On Me
14. I'll Sleep When I'm Dead
  ~Rockin' All Over The World
  ~I'll Sleep When I'm Dead
15. Bad Medicine
—encore—
16. Captain Crash & The Beauty Queen From Mars
17. Mystery Train
18. Wanted Dead Or Alive
—encore—
19. Lean On Me
20. Keep The Faith

投稿: 2000 07 17 12:00 午前 [2000年のライブ, Bon Jovi] | 固定リンク

2000/05/17

BON JOVI『CRUSH』(2000)

どんなアーティストにも「代表作」といえるアルバム、または楽曲が1枚(1曲)はあるはずだ。10年20年と活動を続けるアーティストになると、何時まで経っても「古いイメージ」、つまり代表作のイメージが固定されてしまう事が多い。特に一般的な音楽ファンや、ごく一般の、普段ヒットチャートものしか聴かないような‥‥方々になると、尚更だ。ビートルズといえば「Yesterday」「Let It Be」、ROLLING STONESなら「Satisfaction」‥‥極端な例だが。小田和正が昔、「どんな凡人(ミュージシャン)でも、一生の内に3曲は名曲を書く事ができる」というような事を言ったと記憶している。どんな奴にでも一生の内に3度はチャンスがあるはずだって事ではないだろうか? 俺はそう解釈している。逆に、誰でも知ってるような曲を3曲も持つ事ができたら、それはミュージシャンとして大成功した証ではないだろうか?

中にはアルバムを出す毎に、必ず1曲はアンセムソングとなるような代表曲を生み続けているアーティストも少なくない。例えばBLUR。例えばRADIOHEAD。例えばMANIC STREET PREACHERS。みんな地道に頑張っている。ところがここに、アルバムを出す毎に世界レベルでの成功の度合いがアップし、必ず毎アルバムに代表曲が3曲以上収録しているバンドがいる。音楽に疎い人にも知られている存在だ。それがBON JOVIである。そして今回紹介するこの最新作(オリジナルアルバムとしては通算7作目)『CRUSH』である。

普通の観点から語れば、BON JOVIの代表作と言えるアルバムは86年にリリースされ、彼等を一躍有名にした『SLIPPERY WHEN WET』(邦題『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ』)だろう。そして代表曲と言えば、そのアルバムに収められ全米で4週連続1位を記録し、日本ではカセットテープのCMソングとしてもお馴染みの「Livin' On A Prayer」だったり、同じくCMに使われた「Bad Medicine」なのかもしれない。または日本人アーティストにもカヴァーされたデビュー曲「Runaway」かもしれない‥‥これだけで3曲だ。

ところが彼等はその後もアルバムをリリースする毎に成功のレベルがスケールアップし、多くの代表的ナンバーを生み出している。アルバムに関して言えば、普通頂点を極めた作品をリリースした後は、それに甘んじたレベルの作品を量産し続けるか落ち目になるか、そのどちらかだ。ところが彼等は毎作少しずつレベルアップし、現時点で多くの人間がイメージするBON JOVI像から掛け離れたところまで成長した。

そしてこの『CRUSH』というアルバム‥‥とうとうやってしまったというか‥‥既にその代表作『SLIPPERY WHEN WET』さえも軽く越えてしまう作品を生み出してしまったのだ。あれから14年、彼等は前進し続けここまで辿り着いた。感動というよりも、驚愕である。

BON JOVIを嫌う、良識的な「ロックファン」は数多くいる。それだけでなく、未だに彼等を「HM/HRの範疇」にカテゴライズし、毛嫌いする輩も多い。まずこの誤解を解かない限り話は進まない。みんなが思い描くBON JOVIは、やはり「Livin' On A Prayer」の彼等なのだろう。ところが90年代の彼等はどんどん祖先帰りし、現在では「アレンジとしてのHM/HR色」は感じさせるが、楽曲自体はシンプルな、古くからあるアメリカン・ロックなのである。ジョン・ボン・ジョヴィが影響を受けたブルース・スプリングスティーン、サウスサイド・ジョニーやジョン・メレンキャンプ、そしてトム・ペティー辺りに近い存在なのだ。そこをまず知って欲しい。

そして次に、楽曲のイメージ。メロディーを追えば判るかもしれないが、彼等の曲はR&Bの影響が強い。「You Give Love A Bad Name」でもいいし、新曲「It's My Life」でもいい。これは間違いなくソウルである。勿論、スプリングスティーンが唄っても違和感がない。が、例えばサム・クックが唄ったら‥‥俺は全く違和感がないと思う。これは先にも挙げたアレンジの問題なのであって、アレンジというのはその時代時代に合わせて変わっていくものだから、仕方ないと思う。けど、根本にあるものにもっと目を向けていいのではないだろうか? そういう意味では彼等は現在のAEROSMITHに非常に近い存在なのかもしれない。

新作の話題に戻ろう。1曲目から話題の最新シングル「It's My Life」である。ライヴもこの曲から始まるのだろうか‥‥だとしたら、俺は悶絶死するだろう。なんで‥‥何でデビュー20年近い大物クラスのバンドが、今でもこうやって過去の楽曲を軽く越えてしまうような名曲を作る事が出来るのだろう!? これが出来るアーティストの少ないこと、少ないこと‥‥外部のソングライターとの共作だからダメ!? ふざけるな! 曲が良ければ何やったって構わないだろうが! AEROSMITHだってKISSだってやってる事だろ? 嫌いだからって、それは理由にはならない。

 それにしても‥‥前作「THESE DAYS」も素晴らしかったが、これはどうだろう! 捨て曲が1曲もないアルバムなんて、AEROSMITH「GET A GRIP」以来じゃないだろうか!?正直な話、俺は90年代に入ってからのBON JOVI(ジョンのソロも含む)のアルバム‥‥前半に名曲が固まり過ぎたせいか、後半に入るとテンションが下がったり、楽曲の質が下がったりしているように感じていた。ところが今回の新作は前半は今まで以上に名曲のオンパレードだし、後半に入ると新境地を伝える楽曲が続いたり、ラスト2曲にアップテンポの曲を持ってきたりと、全くダレる事がない。トータルで60分近い作品だが(ボーナストラックを除く)、全く飽きがこない、最後まで緊張感を保った内容になっている。CDの時代になり、60分を超える作品が殆どとなってきたが、これは異例の事じゃないだろうか?

従来のタイプの楽曲が今までの2番煎じになっていない事も凄いが、ここにきて新境地を伝える楽曲が数多くある事も特筆すべき点だろう。「Say It Isn't So」のような風変わりなリフをもったサイケなナンバー‥‥これはBON JOVI流ブリット・ポップへの答えと受け取れるが、如何だろうか? そしてメンバー自らが「THIN LIZZYとグラムロックの融合」と言う「Captain Crash & The Beauty Queen From Mars」。ラジオで初めて聴いた時、一瞬彼等の曲だとは気づかなかった‥‥何のアナウンスもなかったし。地中海的な香りさえ漂う「She's A Mystery」もAORの一言で片付けられてしまう可能性もあるが、聴き流してしまうには存在感がありすぎる名曲だ。

そしてジャニーズファミリーのJ-FRIENDSに提供した楽曲のセルフカヴァーとなる「Next 100 Years」‥‥ここで初めての試みを実行している。それはリッチー・サンボラの3分近くもあるギターソロだ! これには正直腰を抜かした。リッチーは決して上手いギタリストではない。カッティングも下手くそだし、テクニック的にはもっと上手い奴は山程いる。けど彼がここまで残ってこれたのは、例えばKISSのエース・フレーリーのように「楽曲あってのギターソロ」「楽曲の一部としての、口づさめるギターソロ」を心掛けてきたからである。ギターヒーローになる必要はない。あくまでバックに徹すればいい。そのリッチーが今回、いたるところで自己主張しまくっている。前作でもそれは感じられたが、ソロアルバムを通過した今、それが明確になったのかもしれない。もし「Next 100 Years」という曲に軟弱なイメージを持っているなら、一度BON JOVIヴァージョンを耳にして欲しい。これこそこのアルバムからのアンセムナンバーとなるべき曲である。ライヴで盛り上がる事うけあいだ。

そして最後の2曲‥‥珍しくアップテンポのロックナンバーを2曲も続けて収録しているが、これがまたよい。ここまでルーツ的ナンバーをBON JOVI流に料理し、オリジナルとして確立させてしまう実力。さすがである。その2曲‥‥「I Got The Girl」「One Wild Night」‥‥前者はゴスペル、後者はソウルだ。俺は常々言ってきているが、ジョンとリッチーが書く曲には“黒さ”を感じさせる。R&Bというのは、日本で例えれば演歌なのかもしれない。だから浪花節的な「Livin' On A Prayer」や「Born To Be My Baby」のようなベタな曲が日本でウケるのかもしれない。今回の新曲をオーティスやTEMPTATIONSがカヴァーしたら‥‥滅茶苦茶カッコイイはずだ。

THUNDERやOASIS、REEFといったバンドはイギリスの伝統的な音楽を現代的に表現して人気を得た。だったらBON JOVIにも同じ事が言えないだろうか? 彼等は幼い頃から耳にしてきたR&Bやカントリーやポップソングを消化して今風に演奏するバンド‥‥何でこんな簡単な事にみんな気付いてくれないのだろうか? やれ産業ロックだのハードロックだのポップ・メタルだの‥‥くだらないカテゴライズで自分の周りに壁を作る前に、一度ちゃんとアルバム1枚通して聴いてみたらどうだろうか? もう「BON JOVIだから嫌い」という次元ではすまないレベルまで来ている。俺達BON JOVIファンが笑うか、アンチ的存在な「rockin'on」的一般“自称”ロック・ファンが笑うか‥‥答えはじきに判るはずだ。



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投稿: 2000 05 17 12:00 午前 [2000年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2000/05/03

BON JOVI『LIVE FROM LONDON』(1995)

BON JOVI初のライヴビデオといううたい文句で95年11月に発売されたこのビデオ。実はこれ、嘘だよ‥‥「オフィシャル初の~」という枕詞をつけるべきである。だって、初来日の「スーパーロック」@西武球場でのライヴも日本では発売されたし(20数分のものだが‥‥)、翌85年の初のジャパンツアーのビデオも日本オンリーで発売されていた。(現在は廃盤。ちなみに前者は数年前に再発されたはずだ)それに93年にもアンプラグドならぬMTV「半プラグド」ライヴがビデオでリリースされてるし‥‥まぁ純粋な意味での「普段通りのライヴ」を収めた作品としては初めてだし‥‥いいか?(笑)

俺が常々「BON JOVIはライヴだ!」って言ってきたその答えが、このビデオの中にある。残念ながらこの作品、90分程度の縮小編集版なのだが(実際のライヴはこの倍近く、あるいはそれ以上ある)これでも十分伝わってくる。如何に彼等が「ROLLING STONESやAEROSMITHの後継者」であるかが、この90分に凝縮されている。

以下にこのライヴの収録された95年6月25日のイギリス・ウェンブリースタジアムでのセットリストを記しておくので、御参考までに。(太字がビデオ収録曲)

01. Livin' On A Prayer
02. You Give Love A Bad Name

03. Wild In The Streets
04. Keep The Faith
05. Blood On Blood
06. Always
07. I'd Die For You
08. Blaze Of Glory
09. Runaway
10. Dry County
11. Lay Your Hands On Me
12. I'll Sleep When I'm Dead
  ~ Papa Was A Rolling Stone (TEMPTATIONS)

  ~ Jumpin' Jack Flash (ROLLING STONES)
  ~ I'll Sleep When I'm Dead
13. Bad Medicine
  ~ Shout (ISLEY BROTHERS)

—ENCORE—
14. Bed Of Roses
15. Hey God
16. These Days
17. Rockin' All Over The World (STATUS QUO)
18. I Don't Like Monday (BOOMTOWN RATS)
19. Wanted Dead Or Alive
20. Stranger In This Town (Vocal : Ritchie Sambora)
21. Someday I'll Be Saturday Night
22. This Ain't A Love Song

ねっ、半分カットされてるでしょ? しかも山場となる「Blood On Blood」や「These Days」、「Dry County」といった大作やゲストを交えたカヴァー曲(「Rockin' ~」にはブルース・スプリングスティーンのE.STREET BANDのギタリスト、リトル・スティーヴンスが、「I Don't Like Monday」には当の御本人、ボブ・ゲルドフがゲスト参加)までもがカットされている権利の関係とかいろいろあるだろうが、日本でそういう客演をあまり拝見した事がないので(せいぜいGN'Rでのロニー・ウッドくらいか?)豪華に完全収録して欲しかった。

このライヴは95年4月から始まったツアーのクライマックスといえる、ウェンブリースタジアムでの3日連続公演の内の3日目だ。当時の最新作『THESE DAYS』はツアースタート時はまだリリースされておらず、新曲も1~2曲程度で、どちらかといえばその半年前にリリースされ大ヒットしたベスト盤『CROSS ROAD』をフォローアップするツアーのようだった。実際に内容からそう言ってもおかしくない選曲だと思うし。その年の5月に彼等は日本で、福岡ドーム~西宮スタジアム~東京ドームという日程で来日し、上のセットリストとほぼ同じ選曲でライヴを行っている(もちろん日によって若干の違いもある)。日本ではこの数週後にシングル「This Ain't A Love Song」がリリースされるという状況で、新作からはその他にも「Hey God」「Diamond Ring」が披露されている。

アルバムは6月上旬に発売され、日本でもチャート誌の総合チャートで1位を記録し、同じくイギリスでもチャートの1位を記録した(マイケル・ジャクソンを蹴落として、である)。このライヴはその余韻に浸るメンバーを目にする事ができる。実際にビデオ内のMCでもジョンはファンに対して感謝の言葉を述べている。

それにしても‥‥本当にスケールがでかいバンドになったもんだな?と再確認したビデオだ。7万人だよ!?それを3日間‥‥前座には英国を代表するTHUNDERと、アメリカではBON JOVIよりも人気/セールス共に格が上のVAN HALENだよ? ある意味、屈辱的ともとれるこの行為‥‥でも実際に、ヨーロッパでのBON JOVIの人気を考えれば当たり前だし、VAN HALENはデイヴ・リー・ロスがいた頃以来、ヨーロッパではライヴはやっていなかったそうなので、これが妥当なのである。日本から見れば「うそぉ~!?」的な組み合わせだが(笑)。それにしても豪華な組み合わせだ。

改めてライヴの魅力を‥‥って、観れば判るって! とりあえず、観なさい!!!ロックは何も排他的な、アンチ的なイメージばかりではない。こういう肉感的な、ポジティヴで観ている人に希望と勇気を与えるのもロックのひとつのテーマなのではないだろうか?

「BON JOVIは売れてるから嫌い」「曲が売れ線だから嫌い」「日本に媚びているから嫌い」「ジョンの胸毛が嫌い」「ボーカルよりギターの方が歌上手いから嫌い」「産業ロックっぽくて嫌い」「80年代的バブルバンドだから嫌い」‥‥以上が彼等を嫌いという人達の、代表的な意見だろうか? 売れてて何が悪い? 曲が良くて何が悪い? 逆に言わせてもらえば、80年代以降、こういう「普段ロックを聴かない人にもアピールできる曲が書けて、何万人もを惹き付けるライヴをする事が出来る」当たり前のバンドが、どれだけいる? OASIS? 確かに彼等はそれに近い。しかし全世界で本当に同じ状況だろうか? ヨーロッパや日本を除けば‥‥どうなんだろうか。だがBON JOVI‥‥既に彼等は本国アメリカよりもヨーロッパで絶大な支持を得ており、ここ日本よりも他のアジア諸国‥‥韓国やタイやフィリピンなど‥‥で全盛期以上の人気を獲得している。そんなライヴできるバンドが他にどれだけいる? ROLLING STONES? AEROSMITH? KISS? 彼等は確かに凄い。しかし彼等は70年代、あるいはそれ以前から活動しているバンドである。そういうバンドに影響を受けて音楽を始めた人達が、彼等に追いついているか‥‥どれだけそういうバンドが現存するか? ガンズもモトリーも過去の遺物となりつつある2000年、再び彼等は大規模なツアーを始める。日本は4大ドームツアー、イギリスは再びウェンブリーだ。毎回毎回こんな事ができるバンド、他にはいねぇぞ‥‥

ライヴの醍醐味はやはりその場に行って「生で」体験することに限る。ビデオはただの「記録」であり、そのライヴへと誘う「促進資料」に過ぎない。彼等の曲に興味を持って、更に彼等のライヴ未体験の人、まずはこのビデオで予習をしてからドームに足を運んでいただきたい。そして「あ~、本当にビデオと一緒だ!!」と感激して欲しい。

作品の評価云々ではなく、今回は「BON JOVIのライヴをなめんじゃねぇ!」って内容で終始攻撃的に書いてきたが、それだけこのバンドはライヴを観なきゃ本当の凄みが理解できないのである。まぁ興味ない人間に8000円も払ってドームに足運べとは言えないから、せめてこのビデオでも観て考え改めて下さい。



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投稿: 2000 05 03 12:00 午前 [1995年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク