2003/04/27

THE ELEPHANT KASHIMASHI PRESENTS VERSUS EVENT LIVE "BATTLE ON FRIDAY" エレファントカシマシ vs BRAHMAN@赤坂BLITZ(2003年4月25日)

  エレファントカシマシが今年に入って行っているイベント、それがこの「BATTLE ON FRIDAY」という名前のライヴハウス対バンイベントなんですが、この日観たのはその終盤戦といえるステージで、対バン相手には正しく「異種格闘技戦」に相応しいバンド、BRAHMAN。一体どんなステージになるか‥‥

  ところで、まずこれについてちゃんと書いておかないと‥‥知らないエレカシ・ファンもいるかもしれないので。俺は昨年末にリリースされたエレカシのミニアルバム「DEAD OR ALIVE」は未だに買ってもいませんし、視聴すらしてないし、恐らく今後も「今の形態」では買いません。勿論CCCDだというのが一番の理由なんですが‥‥それ以上に、何故この時期にエレカシは、そして宮本はあんなに「怒り」を表現しなくてなならなかったのか、そしてそういう音に向かわねばならなかったのか、ちょっと理解できなかったからというのも大きいのですよ。昨年春にリリースされた「LIFE」というアルバム、ファンの間でも賛否が激しいと思いますが俺、大好きなんですよね。昨年の10枚にこそ選ばなかったものの、これってもしかして「GOOD MORNING」よりも内容的に充実したアルバムなんじゃないか‥‥と今でも思ってます。『30代の宮本にとっての「生活」('90年の4作目)』、そういう風に俺は捉えてるんですよ。だからこそ‥‥その路線で突き進まないのは判っていたけども‥‥あんなあからさまに攻撃的な路線に逆戻りするバンドに対して、ほんの少しだけ居心地の悪さを感じていたんです。

  そういう気分のところに、突如決まった「BATTLE ON FRIDAY」というイベント。金曜にライヴハウス(数百程度からブリッツクラスまで)で、最近メキメキと実力をつけつつある若手バンド、既にエレカシ以上に若い子には知名度のあるバンドまで、とにかくそういった「10代に人気のある」バンドとのタイマン勝負をするという事自体は決して異論はないんですよ。ただ‥‥言い方が悪いけど‥‥最近の、固定ファンしか聴いてないんじゃないか!?というような現状を打破するために、10代に人気のあるバンド達と共演することでもっと若いファン層を広げようとしてるかのようにも映るんですよね‥‥言いたくなかったけど。確かにエレカシなら余程のことがない限り、そういった若手に(いろんな意味で)負けることはないだろうけど‥‥何か俺、ちょっと自虐的過ぎるかな? とにかくね、最初に思ったのは「‥‥大丈夫か!?」って。エレカシが(というか、エレカシファンが)会場で他のバンドやそのファンに負けることを考えちゃったんですよ。「戦う前から負けること考えてる奴がいるかよ!」と猪木さんにビンタされそうですが、ホントそんな感じで当日挑んだんですね。

  ところが‥‥ちょっと事情がありまして、19時スタートの公演、俺が会場入りしたのが20時だったんですよ。ま、BRAHMANを先に観てしまったら、余計にエレカシに対してネガな気持ちで接することになりそうだったし、更に‥‥掲示板の方で教えてもらってたんですが、4月からのエレカシ、本編全曲完全未発表の新曲披露という大胆な行動に出てるらしいんですよ。もうね、「DEAD OR ALIVE」の曲すらちゃんと知らないのに、その上全曲全然知らない曲って‥‥やっぱり冷静に判断する為にはBRAHMANを蹴るしかなかったんです。

  20時に会場入りすると‥‥既にBRAHMANのライヴは終了していて、ロビーには汗だくになった10代のブラフファン達がそこらじゅうに座り込み&倒れこんでる、正に「野戦病院」状態。しかも当日外は雨ってのもあって湿度が高いのに、会場内は更に汗かいた身体から立ち上がる湯気で不快指数が200%以上。そんな若い子達を後目に、フロア前方に移動。フロア内はエレカシファン以上に依然ブラフファンの方が多い感じでした。服装や年齢で大体判るしね、どっちのファンかって。ま、俺はBRAHMANも嫌いじゃないし、むしろ好きなバンドなんで(じゃあ最初っから観ろって話ですが)。

  入場してすぐ会場暗転。何のアナウンスもなくメンバーがステージ上に登場。この日の宮本は全身黒。ギターは一切持たず、これといった煽りもなく神妙な顔。そして始まる新曲‥‥どの曲もタイトルすら判らず、しかも10曲全部初めて聴く曲だったので「これがこうだった」という明言は避けますが‥‥個人的にはかなりいい感じだと思いましたよ。全体的にミディアムヘヴィなハードロックという印象で、かなりアレンジに凝った構成になってましたね。石くんは常にストラトを弾き、しかも結構コーラスまで取ってるし。成ちゃんのベースが一番凝ってて、ピックによるライン弾きは抑えめに、かなり複雑なフレーズ(和音やアルペジオ的なもの)を多用、ギター以上に目立ってました。そしてトミのドラム。もうね、激しいの何のって。一音一音がこれまで以上にハードヒット。ミディアムヘヴィな曲が多いせいか、本当に一音の重みが凄くて、実際固定されていたバスドラが途中で動き出す程(スタッフが慌てて固定し直してたけど)。そして宮本。一切ギターを持たず、歌うというよりは叫ぶといった歌い方で、また曲調が初期に近いイメージだったこともあって、本当に「あのエレカシが帰ってきた!」といった錯覚を何度もしてしまったよ。声の状態は良好とはいえなかったけど、なかなか良かったんじゃないでしょうか。

  ただね。新曲の話に戻りますが‥‥曲のバリエーション的には狭まったかな、という気も。ミディアムヘヴィなハードロックという全体的な印象は、2~3曲を除けば大体そんな感じで、ホント殆どの曲が似たようなテンポで、しかもメロウというよりは煽り系ボーカルだったことも大きく影響して、更にそう感じました。しかも、それに喜んでたのはエレカシファンが殆どといった感じで、若いブラフファンの子達はどう反応すればいいのか判らない様子。そのまま棒立ちで、反応に困ってる様子。そりゃそうだろう。メロディアスでテンポも速い楽曲がメインのBRAHMANで大暴れした後に、こういったオールドスタイルのハードロック、しかもボーカルが異常にテンション高過ぎて何歌ってるか判らない‥‥そんなバンドを見せられたら、普通に退くかもね。1曲終わると若い子がフロアから出ていき、もう1曲終わるとまた出ていき‥‥そんなことの繰り返しで、結局ソールドアウトした公演だったにも関わらず、最後の方はかなり余裕を持って観られる環境になってしまった程。音楽で人の心を動かすとか、そういう以前の問題。既に満足し切ってしまった10代の子達にとっては「エレカシ? テレビで観たことある、あの変なボーカルのバンドか。ま、ちょっと観てみよっかな、折角だし」程度の気分で見始めたんだろうけど、そりゃねぇ‥‥俺が10代でブラフファンだったとしてもあれはキツかったかも。

  中にはパンキッシュでアップテンポの曲もあったし、ちょっと聴かせるような歌もあったんだけど、やっぱりリフが重くてアンサンブルが凝ったハードロック。けど初期のような破天荒なイメージはなく、そこはちゃんと「大人の色気」を感じさせるのはさすが。変に凝った録音をせずに、このままの形で真空パックしてアルバムにしてしまえばいいのに‥‥そんな気さえする程、個人的にはこの日のステージで披露された10曲が気に入りました。しかも聞くところによると、数週間前に下北沢でやった時と曲が3曲入れ替わってたというんだから‥‥既に10数曲も新曲があるってことですよね? 更に細かいアレンジまで変わってたというし、正にライヴしながら楽曲が成長してくという、ある意味「ココロに花を」や「GOOD MORNING」の頃みたな感じで、ホントにあの2枚に肉迫する凄いアルバムになるんじゃないか‥‥ちょっと疑問が強まってただけに、これは本当に嬉しかった。ああ、やっぱりBRAHMAN観ないでよかったと思いましたね。

  でもね‥‥ちょっとショッキングな曲もあったんですよ。7曲目くらいだったかな、歌詞の中にいきなり「37歳で俺の青春は終わったけど~」というような一節が出てきて、すっげードキリとさせられました。俺の中では宮本=人生・青春・生活というイメージが強かっただけに、これからもこのみっつのキーワードを歌っていってくれるんだろうな、と信じ切ってたんだけど‥‥ま、その他の細かい歌詞が聞き取れないのもあったので全体的な内容は把握できませんでしたが、とにかくこの一節のインパクトが大きくて、俺の中で。その曲の中で等かそのフレーズが登場するんだけど、その度に心が痛みましたね。これはちょっと俺の中で(エレカシに対する)重要な曲になりそうな予感。とにかく「普通のCDで」リリースされることを切に願います。

  MCも殆どなく(それにしても宮本の「今日はこんなに素敵なイベントに呼んでくれてありがとう」ってのはどうなのよ? 一応「エレカシPRESENTS」名義なんですが‥‥)、淡々とした状態で10曲終了、いつも通りステージを去る4人。当然アンコールを求める拍手が沸くわけですが‥‥求めてるの、明らかにエレカシファンだけ。しかも前の方だけね。すっげー弱々しいアンコールを求める声援。そしてフロアを後にする大勢の客。ローディーがベースやアコギ(恐らくアンコールで宮本が弾くのだろう)のチューニングをしてる中、急に客電が点き、明らかに終わりモード。時計に目をやると20時50分。アンコールもなく終了したこの日のエレカシ。もともとやるつもりで準備してたら「アンコールなし」をメンバーから告げられたのか、それとも最初からその予定がなかったのか‥‥聞くところでは、このイベントに関しては数える程しかアンコールはやってないようですが‥‥ま、予定調和なアンコールを何曲をやられるよりも全然いいんですけどね‥‥けどさ、こういう環境の中で「アンコールありがとう!」って再登場されても、それはそれで更に「寒さ」を増長するだけだったから、空気を読んでアンコール取り止めたんだと受け取りたいですね。

  どっちが勝ったとか負けたとか、あんまりそういうのは言いたくないんですが‥‥更にBRAHMANを観てない俺が言うのもアレですが‥‥全体の空気的に明らかに後攻めのエレカシのが分が悪かったですよね。そして、結局その流れを変えられないまま終わったといった印象。恐らく"ガストロンジャー"や"コールアンドレスポンス"、"悲しみの果て"のような代表曲を連発するステージをやったなら、もっと盛り上がるステージになったんでしょうけど、この日はフェスではなくて「VERSUS EVENT LIVE」と銘打たれ、単発イベントではなく数本あるわけですから毎回それをやるわけにもいかないしね。「今のエレカシ」を見事に表現したという意味では評価すべきでしょうけど、ファン以外にはアピールが弱かったのもまた事実。う~ん、難しいですね評価が。

  俺自身、エレカシを生で観るのがほぼ1年振りだったんですが、観る前の不安な気持ちはものの見事に一掃され、逆に「あーこんなスゲー曲が沢山入ったアルバム、どうしても聴きたいからCD-DAで出せよな?」とアンケートに書いてしまった程ですよ(アンケートなんて書いたことない俺がね!)。ここ最近のエレカシに対して俺と同じような疑問を持ってるファン、そして前作にガッカリして「DEAD OR ALIVE」にガッツポーズを取ったファン。大丈夫、次のアルバムは間違いなく期待に応える内容になりますよ。下手にプロデューサー立てたり時代性を取り入れようとせずに、このままの形でレコーディングされればね!

投稿: 2003 04 27 12:00 午前 [2003年のライブ, BRAHMAN, エレファントカシマシ] | 固定リンク

2003/04/19

BRAHMAN『A FORLORN HOPE』(2001)

  BRAHMANが'01年6月にリリースしたセカンドアルバム。ファーストアルバム「A MAN OF THE WORLD」が'98年秋のリリースだから、まる3年振りのアルバムってことになるんだよね。しかもその間の3年間にリリースされた音源といえば、このアルバムにも再録音され収録されたシングル「DEEP / ARRIVAL TIME」1枚のみ。しかもそれがリリースされたのが'99年秋‥‥如何にこのバンドの創作ペースがゆっくりかが伺えると思います。実際、このアルバムリリースから約2年経った今現在も、新しい音源がリリースされる情報が入ってこない程ですから。だからといって何もしていないわけではなく、地道にツアーにツアーを重ねてるんですよね。自分達がメインのツアーだけでなく、いろんなイベント‥‥それこそフジロックのようなバカでかいステージから、数百人しか入らないクラブクラスまで‥‥に出演したり、海外にも足を伸ばしたり。活動の規模は更に大きくなってるんですよ。一時は「メロコア系の新星」だの「AIR JAM系」だのといった括りで語られることの多かった彼等。Hi-STANDARD等の周辺バンドといったイメージがあった彼等も、今では以前のレビューで書いたように、本当に「日本を代表する」バンドになってしまったなぁ‥‥という気が。もはや「AIR JAM系」なんて括りすら必要ない存在の彼等、毎年少なくとも1回はライヴ観る機会があるんですが、意外とムラのあるステージングなんですよね。最高に素晴らしい時と、惜しいなぁ‥‥と感じる時と‥‥これだけ年間何十本、何百本とやってれば、そりゃ調子悪い時もあるかなぁと。ただ‥‥これは俺が彼等に慣れてきたのも関係あるのかもしれないけど、観る回数を重ねる毎に‥‥観てるこっちが地団駄踏みたくなるような内容だったりするんですよね、どういうわけか。ま、その辺は最後にもう一回述べるとして‥‥

  前作の延長線上にある内容。ただ、いい意味で「硬質感」が増して、ストロングスタイルの楽曲はより力強く、歌を聴かせる楽曲ではより歌を引き立てるような演奏をしてたりと、ファーストアルバムのリリース後3年間の成長を改めて感じさせる出来となってます。ただ、正直に書くと‥‥初めてこのアルバムを聴いた2年前は、ファーストよりもいいとは思わなかったのね。なんつうか、期待が大きかったんでしょうね。ファーストアルバムのレビューを改めて読んでみて、当時の自分がどれくらいBRAHMANに期待してたか再確認できた程だからさ。けど、その後に観たフジロックのステージの出来が酷かったから、彼等に対する興味が急速下降してっちゃって。翌年のフジロックの時も正直、彼等を観るつもりなかった程で。けど、去年のステージは悪くなかったと思います。期待してなかった分、良く思えたのかもしれないけど。

  こうやって今改めてこのアルバムを聴いてみると、当時の彼等が「AIR JAM系」に括られていたことに対して俺が感じていた「違和感」の意味が何となく判った気がしました。やっぱりね‥‥当時もよく例えとして言ったかもしれないけど‥‥パンクというよりも、ヘヴィメタルのメロなんだよね。メロコアってのは、要するに「メロディック・ハードコア」の略でしょ。メロディアスなハードコアパンク‥‥昨今、'80年代の洋楽ポップスをメロコア風にカバーするバンドが多いですが、そういう安っぽさはBRAHMANには感じられないのね。もっとさ‥‥'80年代、そのパンクの対極にあったようなIRON MAIDENみたいなヘヴィメタル・バンドみたいな硬質サウンド、そしてメロウさを強く感じるんだよね。表現方法自体は昨今のパンク的なものなのかもしれないけど、その根底にあるのは間違いなくそういったメタル的。メロの判り易さ、親しみ易さは日本人が最も親しみ易い‥‥語弊があるかもしれないけど‥‥歌謡曲的なものに近く、そういう点からもメタル的といえるかも(要するに「泣き」の要素としての例えですね)。その辺が所謂「メロコア」との大きな違いではないか、と。

  初めて"DEEP"を聴いた時、その流れるようなメロディに惹かれたのと同時に、ギターソロの様式美性に強く感心したのを今でもよく覚えています。そしてその要素を更に強調~拡散していった先が、この「A FORLORN HOPE」だったのではないか、と今思うわけです。ファーストではその要素がいい意味で中途半端だったお陰で、何か新しいバンドが登場した、メロディアスでパンキッシュだから「メロコア」でいいや、ってことになったんでしょうけど、完全にこのセカンドアルバムで個性を確立したといっていいでしょう。

  となると、今度はこの確立してしまった個性をどういう方向に進めていくか、ですよね。このスタイルに固執して、時代時代に合った装飾を被せていくのか‥‥いや、それはこのバンドに最も似合わない手段だな。つうことは、やはり‥‥更なる「進化」あるいは「深化」のどちらかでしょうね。更にディープになっていくのか、それともここから新しい地平へと向かっていくのか‥‥個人的には「深化」よりも「進化」して欲しい気がします。昨年のフジロックで披露された唯一の新曲は、メジャーキーを多用した、確かにこれまでのBRAHMANとはちょっと違う毛色の楽曲でした。勿論、聴けばそれがBRAHMANの曲だとは判る1曲なんですが‥‥まだまだ未完成といった感もありつつ、手探りで新しい地点を見つけている最中なんでしょうね。恐らく、最近俺が彼等に対して地団駄踏みたくなる程感じていたのは、そういう変化に対する物足りなさだったのかもしれませんね。

  所謂「AIR JAM系」がもてはやされたのは、既に数年も前の話。今の中高生はメロコアよりもヒップホップ的なものに肩入れしだし、しかもそれすらも今や風化しつつあり、更に新しい「何か」を探しているように感じられます。そしてそんな「AIR JAM系」と括られたバンド群の中で、今でも大きな成功を収めているのはこのBRAHMANとHUSKING BEEくらいじゃないでしょうか。共に新しいスタイルを模索しつつ、新しいファンを開拓していった「オリジナル」な存在。この2組はある意味「勝ち組」なのかもしれないけど、BRAHMANの場合の本当の勝負は、間違いなく近い将来リリースされるであろう新曲‥‥ニューアルバムでしょうね。未だに彼等を毛嫌いするロックファンは多いと思うんですが、そういったファンをも振り向かせるようなアルバムを期待してます。そう、俺がこれまで全く興味がなかったのに、新作「the steady-state theory」で完全にハマってしまったHUSKING BEEのように‥‥



▼BRAHMAN『A FORLORN HOPE』
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投稿: 2003 04 19 12:00 午前 [2001年の作品, BRAHMAN] | 固定リンク

2001/08/13

「FUJI ROCK FESTIVAL '01」DAY 3@苗場スキー場(2001年7月29日)

◎BRAHMAN (at GREEN STAGE / 11:00~11:40)

  3年振りの最新作「A FORLORN HOPE」を引っ提げてのフジロック、しかも今回はグリーンステージだ。お約束の沖縄チックなSEに乗せてメンバーが続々とステージに現れる。最新作同様、1曲目は「For One's Life」からスタート。徐々に盛り上がるタイプの曲だが、すでにイントロから最前ブロックの客はヒートアップ気味。演奏がガツンとくるパートに入ると、モッシュ&だいぶの嵐。3日通したトップバッターの中で、一番殺伐とした空気が流れる。

  この曲の時点で気づいたのが、ボーカルのTOSHI-LOWの状態が芳しくないという事実。明らかに上のキーの音程が取れていない。音程が取れていて外すのと、完全に見失って外すのとでは明らかに違う。結局、終始辛そうな状態で40分を乗り切るのだった。

  新作から立て続けに、アルバムの曲順通りに5曲披露した後に前作から「See Off」や「Answer For…」といった人気曲を挟むものの、従来の切れやしなやかさを上手く表現できずにいる、もどかしそうなTOSHI-LOWを観るにつれ、こちらまで痛々しい気持ちになり、聴いてるのがつらくなる。彼らの最大の魅力である、独特なメロディーが全く伝えられない状況。そしてそれが全く伝わってこない状況。正直、途中でグリーンステージを後にしようかとも考えたくらいだ。ラストの「Arrival Time」での悲痛な叫びも何だか尻切れトンボの如くフェードアウトしていく。

  これが事実、これが現実だ。はっきり言う。この日のBRAHMANは最低だった。これはメンバー自身、特にTOSHI-LOW本人も認めるところだろう。これで「最高だった」と言い切ってしまうようだったら、いっそのこと解散してしまった方がいい。そのくらい、プロとしてはレベルの低いモノを、よりによってフジロックの大舞台で見せてしまったという失態。今後の彼らがこの現実とどう向き合っていくのか、そしてそれをあの場にいたファンがどう捉えるのか、非常に興味深い。最低なものは最低だったと言える勇気、そして正直さ。ファンならこれだけは決して忘れないでほしい。「やっぱサイコー」とかいう馴れ合いが、バンドを潰してしまうことだってあるのだから。


◎JOUJOUKA (at WHITE STAGE / 12:40~13:20)

  トランス系テクノのアーティストだという事しか知らなかった。一昨年、そして昨年もフジに出演してるそうだが、一昨年、観なかったなぁ。DJ Tsuyoshiが中心となっているユニットだが、ライブではどういう感じになるのか。

  ホワイトに着いた時点で、すでにステージは始まっていて、遠くからそのトランシーな音は聞こえてきていた。気持ち良さそう、それが第一印象。ようやくステージが見える位置までたどり着く。メンバー構成はDJ陣が2名、ギタリストがひとり、そして時々引っ込むベースがひとりの計4人編成。ギターは常時ステージ上で煽りまくっているので、どうやらベーシストはゲスト出演のようだ。基本的にはDJ陣がプレイするトランシーなサウンドの上に生楽器を重ねて、普通のトランステクノとしては終わらせない、魅せる要素も兼ね備えている。生楽器を被せるのは、どうやらDJ Tsuyoshiの信条らしく、とにかくギターのザクザクしたリフが気持ちよく、またベースもスラップまではいかないけど、バキバキしたサウンドでこれまた気持ちいい。ちょっと聴いた感じでは、UNDERWORLDにも通ずるロック感を見出すことができる。でも、歌がないぶん、こっちの方がよりダンスに徹することができる気もする。

  最初、軽い気持ちで観るはずが、結局終始気持ちよさげに踊り狂ってしまった。3日間の疲労が相当足にきてるにも関わらず、アホみたいに踊る俺を見て、友人に心配される始末。結局踊ってるうちに調子が戻ってきて、疲れなんて吹っ飛んでしまった。

  最後にはホワイトステージの総合MCであるブライアン・バートン・ルイスがボーカル&MCとして、即興で歌う。やっぱり歌が入ったほうが、それなりに盛り上がるけど、個人的には最後のは蛇足って気もしないでもない。このユニットは2人のDJ陣のプレイと、そこに被さるギター(時にベース)、そこから生み出されるトランシーで腰にクるテクノサウンド、それだけで十分だ。


◎SION (at FIELD OF HEAVEN / 13:20~14:20)

  SIONは、俺が知ってるあの頃のSIONのままだった。選曲的には、きっと先頃リリースされた最新作が中心になってるんだろうけど、俺の心臓が鷲掴みされたのは、名曲「Sorry Baby」。酔っていたせいもあるだろうけど、炎天下の中、ただステージ一点を見つめる俺。言葉のひとつひとつを噛みしめながら、一緒に歌う。このフジロックってフェスは、自分の現在・過去・未来を見つめ直すイベントなのか?って思えるくらいに、心にズシンとくる瞬間が非常に多かった。特に今回、30を目前としていただけに、そういう過去の想い出が走馬燈のように蘇ることが多かった。音楽で振り返る30年……人に自慢できるような大したモノじゃないけど、俺にとってはかけがえのない大切なもの。改めて音楽っていいな、歌っていいなと思った瞬間だった。

  気づけばラストの頃は前まで行って一緒に歌ってたっけ。よく知りもしない歌に合わせて。それだけのパワーを持っているのが音楽であって、歌である。きっと帰宅後もSIONの音楽に再び触れる機会はないのかもしれないが、それでも今この一瞬を大切にしたい。そう思って、力一杯踊った。このSIONのステージは、ちょっと俺の中では大切なものとなりそうだ。


◎SYSTEM OF A DOWN (at GREEN STAGE / 17:10~18:10)

  正直に言う。FOHのムーンライダーズを観るために、冒頭の数曲のみで移動してしまった。あとになって「なんで最後まで観なかったんだよ!」っていまだに後悔しているアクトのひとつ。

  今でもよく覚えているのは、始まる直前の場の異様な空気。あの瞬間の「別に人がそこまでパンパンではないんだけど、なぜか急に暴動が起こるんじゃないか?」と勘違いしてしまいそうなヒリヒリした空気だけは忘れられない。そしてステージに出てきた4人。すでに2人は半裸の状態だ。ダロンがギターを爪弾きながら、「ドラッグで病んでる?」「ドラッグやってる?」的変な日本語を交えつつ歌い、サージはそこにハーモニーを重ねていく。そこから「War?」へとなだれ込み一気に激しさを増す。すでに最前ブロックの盛り上がりは手に負えない状況だ。そこから数曲知らない曲が続くが、今思えばこの中には「TOXICITY」の1曲目「Prison Song」も含まれていた。イントロが異常にカッコよかったことだけは覚えており、のちにアルバムを聴いた瞬間に「あ、あの曲!」とすぐに気づいた……が、結局ノリきれずに途中で退散したのだった。


◎ムーンライダーズ (at FIELD OF HEAVEN / 17:20~18:30)

  この方々も活動歴が長い割に、実はちゃんと聴いてこなかったバンドのひとつ。とにかく、実験的要素満載にして極上のポップ。終始あっけに取られっぱなし。白井氏のギターは相変わらず変だし(ギターのブリッジ周辺にサンプラーをそのまま打ち付けてるし、しかもストラップの前後にギターのネックとボディーがそのままくくり付けてあるし)、鈴木慶一氏は終始クール。曲によってメインボーカルが変わるのだけど、基本的には慶一氏。あれは作曲者がリードを取るのだろうか。逆にキーボードとドラムの方々はコーラスに加わったり加わらなかったりで、演奏に徹していただけ。そこが職人っぽくて素敵だったけど。

  ちょっとトッド・ラングレンを彷彿とさせるくらい、楽曲のバラエティーが多彩で、なおかつそれらがすべてポップなのがすごい。コアなファンが多かったのか、周りの年齢層はやけに高かった。フジにも親子連れが多くなったようだね。最前列には初老の夫婦に小学生くらいの子供という親子がいたけど、前に押されることもなく、気持ちよさげにステージを楽しんでいたのが印象的だった。そうそう、3日目になってようやく、名物のトンボを多く見かけるようになった。マイクに止まったトンボを捕まえて、空に逃がす白井氏の姿も印象的だった。普段、進んで聴くことのないタイプの音楽だが、こういう場でならすんなりと聴けてしまう。しかもストーンと心の中に先入観なく入ってくるんだから、不思議だ。


◎TOOL (at GREEN STAGE / 19:10~20:30)

  一種異様ともいえる不穏な空気が流れる暗闇の中、照明やぐらの右隣に陣取りスタートするまで座って待つ。モッシュピットはすでに満員御礼、直前に演奏したSYSTEM OF A DOWNの熱気も冷めやらぬ状態で、みんな今にも暴れ出しそうな勢いだ。

  待望の初来日。俺は常々言ってきた。1998年の豊洲にKORNが初上陸した後、1999年にブレイク後の勢いのままLIMP BIZKITが苗場の地を踏んだ後。決まって「次はTOOLだな」と。もうTOOLしかないだろう、オーディエンスの度肝を抜かす存在は。その願いがいよいよ叶うときが来たのだ。しかも約5年振りの、全米ナンバー1アルバムを引っ提げて。

  ステージにメンバーが現れた。左にギターのアダム、右にベースのジャスティン……多分ね。照明がほとんど当たらない、非常に暗い状態の中で終始彼らはプレイしていたのだ。そして後方右側に、ドラムのダニーが陣取り、その左側には大型スクリーンとお立ち台のような一段高くなった舞台が‥‥そこに人影のようなものが常に動いている。そうこうしてるうちに、あのミステリアスなイントロが聞こえてくる。「The Grudge」だ。スクリーンには新作ジャケットをモチーフにした映像が終始流れている。歌がうっすらと聞こえてくる。しかしPAの調子が悪いのか、いまいち聞き取り難い。そして明るくなったスクリーンの前には、明らかに人影が。そう、そのお立ち台で怪しいダンスをしているのが、ボーカルのメイナードなのだ。ほとんど全裸に近い状態(パンツ一丁で、全身青塗り)で曲の起伏に合わせてユラユラと踊る、殆ど姿や表情は確認できないが明らかに存在感、カリスマ的オーラを感じることができる。

  噂には聞いていたが、これは衝撃的だ。流される映像も曲をイメージさせるというよりも、エログロに近いもので、PVが存在するシングル曲に関してはそれをモチーフにして再編集されているようだった。登場した時点で湧いていたモッシュピットも、気づけばみんな棒立ちでステージを見つめる者が続出。ノれないのではない、動けないのだ、この音とこの映像とあのバンドから発せられるオーラを前にしたら。背筋がゾッとしたのは、何も気温のせいではない。こんばバンド、今まで見たことがない。何なんだよ、こいつら。

  続く2曲目は、前作のトップナンバー「Stinkfist」の登場だ。さすがにオーディエンスがさっき以上の歓声で応える。しかし、それも最初だけ。曲が進むにつれて、やはり身動きがとれなくなってしまう。衝撃的なんて言葉、簡単には使いたくなかったのだが、それ以上もそれ以下でもない、本当の衝撃なのだ。こんなもん、見たことないんだから他の何ものとも比べようがない。唯一、映像を駆使するという点では、NINE INCH NAILSと比較することができるのかもしれないが、あれとはまったくの別物だ。

  それにしても、3曲目までボーカルが聞き取りにくかったなぁ。新作からの「Schism」あたりから、ようやくボーカルもクリアに聞こえるようになった。演奏に関しては、もう完璧すぎて何も言うことなし。確かにミスする場面もあったものの、そんなことが気にならないほど、アルバムと寸分違わぬ緻密で計算され尽くされた演奏を披露する。さらに、そこに乗るメイナードのボーカルも、時に力強く、時に潤いを感じさせる。決して「暗黒大将軍」ってわけではなく、あのボーカルとあの演奏が融合するからこそ生まれる浮遊感、それがさらにこの苗場という環境にマッチしていた。ギターのザクザク感はヘヴィロックのそれに近いのだが、パーカッシヴなドラム、時にリード楽器にもなりうるベース。4人それぞれの自己主張がぶつかり合いながらも、互いの持ち味を引き出そうと機能している。計算なのか、単なる偶発的事故なのか。終始握りしめていた拳に、ジワリと嫌な汗をかく。

  終盤はファーストからの「Sober」やセカンドの「Aenema」を交えながら、新作からのムーディで濃い楽曲群を我々に叩きつける。途中、メイナードが曲間に何かしゃべった。一瞬の出来事で聞き逃しそうだった。英語だと思ったのだが、二度目にようやく聞き取れ、理解できた。


「ポジティヴなものを生み出す、その気持ちを忘れるな。」


こんなことを第一声で発した来日アーティスト、これまでいただろうか? この一言にメイナードの、TOOLというバンドの揺るぎない姿勢を垣間見た気がした。「ニホンノミナサン、コンニチワ」でもなければ「アナタワ、ウツクシイ」でもない。「ココニコレテ、トテモウレシイ」といった社交辞令の挨拶ではない。オーディエンスとバンドの間に明確な信頼関係が、この一言で生まれたと思う。

  難解且つホラー映画と言っても過言ではない映像と、ステージ上が薄暗くてほとんど表情を伺うことができないバンドの演奏から、言い表しようのない威圧感が終始あったが、このメイナードの一言は、そしてそれを日本語で発したという事実は、そういう他の表現要素よりも深く、俺の心の中にえぐり込まれた。一生忘れない、忘れられない初来日公演となりそうだ。


01. The Grudge
02. Stinkfist
03. 46 & 2
04. Schism
05. Disposition
06. Reflection
07. Sober
08. Parabola
09. Aenema
10. Lateralus


◎EMINEM featuring D12 (at GREEN STAGE / 21:30~23:00)

  例の前妻に対する暴力沙汰の裁判、来日直前に審判が下り、その結果外国へも行くことができるようになったEMINEM。オーストラリアを回った後の来日ということもあり、きっと調子も昇り調子のはずだ。一体どんなステージを見せてくれるのだろう。TOOL同様、まったく予想がつかない展開になりそうだ。

  21時半を回った頃に、ステージ上手にDJらしき人物が現れるも、そのままの状態が10分程続く。すると急にステージが暗くなり、スクリーンに何か映像が流れ始める。ドキュメンタリー形式のドラマみたいだ。どうやらハンディーカメラを持って、EMINEM宅へ忍び込む青年2人組の話のようだ。カメラを持ったひとりが、もう一方にインタビュー形式で話しかける。あれっ、どこかで観た光景……次の場面で、EMINEM宅らしき家に忍び込んだ2人。ひとりが地下の方へと向かう。カメラを持ったもう一方が壁を映す。そこには「MY NAME IS...」「SLIM SHADY」「MARSHALL MATHERS」等といった文字がずらずらと書き殴られていた。あぁ、なるほど。先頃公開された2作目がコケた、例の低予算ホラー映画のパロディーなわけね。すると、例のごとく地下室から悲鳴が……カメラは走りながら地下室へと近づく。悲鳴を上げた若者をカメラが捕らえた瞬間、目の前にはチェーンソーを持ったジェイソン・マスクの男が……。

  フィルムがそこで終わると、ステージ上からチェーンソーの音が。ステージ上手からフィルム同様のジェイソン・マスクの男がチェーンソーを持って現れる。どこからどう観てもEMINEMだ。こりゃ面白い。ここまで馬鹿馬鹿しくやってくれると、逆に気持ちいい。

  ヒップホップ系のステージっていうと、個人的には昔観たRUN DMC初来日のイメージがあったので、どうしても中弛みしそうな感じがあったのだが、ことEMINEMに関してはそんな心配皆無だった。まず曲がポップだし、オーディエンスに対してコール&レスポンスを求め、一体感を大事にしている。確かにMCがネイティヴ・イングリッシュ(しかもバリバリのスラング入り)だったため、何度か理解に苦しむ場面に遭遇したが、それを補うだけのエンタテインメントが満載だった。

  曲毎に現れるD12の面々や、同じグリーンステージに登場したXZIBITのメンバー。日本酒やエクスタシーを持ってきたり、「PURPLE RAIN」で踊るエクスタシー錠剤の着ぐるみ(背中に「E」の文字が)、中盤再びスクリーンに映し出されたアニメ「THE SLIM SHADY SHOW」、「日本のオーディエンスに『俺の名前は何?(MY NAME IS)』か言わせるんだ」とEMINEMがDJに言うと、わざとヒット曲「My Name Is…」のイントロを流す等の寸劇、そしてパイロ。これだけ馬鹿馬鹿しい要素を含んだショー、今まで観たことないわ。ある意味、俺の中では「ZOO TV」ツアーでのU2を超えたんじゃないかな。

  そして、笑いだけではない。ちゃんとオーディエンスに合いの手を求めたり、一緒に歌ってくれといって流れ出す「Stan」のあのフレーズ。どれを取っても笑顔と感動の瞬間だった。これはもう、言葉で言い表すよりも一度は観てほしい。終始笑いっぱなしで、90分が短いと感じるほど充実した内容だった。

投稿: 2001 08 13 12:00 午前 [2001年のライブ, BRAHMAN, Eminem, FUJI ROCK FESTIVAL, JOUJOUKA, SION, System of a Down, Tool, ムーンライダーズ] | 固定リンク

2001/06/04

BRAHMAN『A MAN OF THE WORLD』(1998)

  日本が誇るバンド、BRAHMANが1998年9月にリリースした初のフル・アルバム。インディーズからのリリースながら長い間売れ続け、確かオリコンの「インディーズ・チャート」で1年以上1位だったのでは、と記憶している。このアルバムを契機に彼らは大躍進し、翌年秋にはメジャー配給のマキシシングル「Deep / Arrival Time」を発表し、これはオリコン・シングルチャートのトップ10入りを果たす。彼らのブレイクを決定づけたのが、まさしくこのアルバムなのだ。

  勿論、ブレイクにはその他にも様々な要因がある。地道に行われたライヴだったり、大きなイベントやAIR JAM、フジロック等野外フェスティバルへの出演。こういう人目に出る機会が増えた結果、人伝いに噂は広がり、'99年最も注目されるバンドとなったわけだ。

  では、彼らは何故ここまで注目され、そして人気を得たのだろうか?

  彼らの魅力のひとつに、「親しみやすい、純日本風メロディー」がある。これは俺自身、過去のライヴレポートの中にも書いているが、初期のシングルからも伺うことができたその要素が、このアルバムでいよいよ完成型に近付いているのである。まだ荒削りながらも、やろうとしていることの輪郭は既にハッキリしている。後に出た「Deep / Arrival Time」は、この延長上にある楽曲であり、サウンドプロダクションが更に良質なものになり(これはメジャー経由のため、お金をかけることができたのだろう)、より判りやすくなった。

  「純日本風~」とはいうものの、それは演歌や歌謡曲のような下世話なものではなく、もっと古くから存在する日本古来の音楽‥‥民謡的なメロディーといえるのではないだろうか? 特に沖縄からの影響を強く感じさせる"Tongfarr"がその代表といえるだろう。

  当然、その他の曲も親しみやすいメロディーを兼ね備えていて、頭からお尻までの11曲、アッという間に聴き終えてしまう。1曲1曲が短く、そして聴きやすいからアッという間に終わり、そして何度も聴き返してしまう。ただうるさいだけじゃなく、しっかり聴かせる要素を兼ね備えている。この手の音を「暴れ系」と大きく括ることもできるだろうけど、それだけじゃ終わらない、独特な「色」と「味」を持っている、それがこのバンドの特徴であり、魅力なんだと思う。じゃなきゃ、既にリリースから3年近く経ってるのに、まだ売れ続けているっていう事実をどう説明すればいい?

  カヴァー曲も同じ日本のゴダイゴの曲("Cherries Were Made For Eating")を取り上げている点に共感が持てるし、英語曲に拘らず、美しい古来の日本語を用いた曲("Answer For...", "Toki No Kane")もいいスパイスとなっている。これからもこういう曲を削ることなく、バランスの取れた作品を作り続けてもらいたいものだ。

  近くこのアルバムに続く作品がやっと発表されるが(「A FORLORN HOPE」というタイトルで、6月下旬リリース。勿論メジャー配給なので、サウンド的にも期待できるはずだ)‥‥この人達、曲作りが遅いのか、それともツアーの方が好きなのか‥‥1枚のアルバムで3年も引っ張るのは、ここ日本ではかなりリスクを強いられると思うのだが‥‥まぁ見方を変えれば、それだけこのアルバムが徐々にブレイクしていき、そして彼らを求める声がそれだけ長い間続いたということなのだろう。果たして次のアルバムはこの名盤を越えることができるのか、それとも全く違った側面を見せつけるのか、非常に興味深い。また今年も彼らから目が離せなさそうだ。



▼BRAHMAN『A MAN OF THE WORLD』
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投稿: 2001 06 04 12:00 午前 [1998年の作品, BRAHMAN] | 固定リンク

1999/09/09

「FUJI ROCK FESTIVAL '99」DAY 2@苗場スキー場(1999年7月31日)

  2日目に突入です。1日目同様、気の利いたことは書けません。


◎RORY McLOED (at GREEN STAGE / 10:30~11:00)

  プログラムにはないスペシャルゲストかと思ったのだが、FIELD OF HEAVENに出演する方だった。英国出身で、世界中を放浪しているシンガーソングライターだそうな。基本的にはギターとハーモニカのみ。本当ならほんわかした雰囲気の中で聴きたいタイプの音なのだが、どうも周りの雰囲気はそうではない。すでに人が多いし、日射しも強くなってきている。日よけもない場所で聴いたのもあり、いまいち記憶に残ってない。ただ、ひとつ……ちょっとロン・セクスミスを思い出した。が、あそこまで繊細な感じはしないけど。

  3曲くらいの演奏だったか。最後の曲には前日にも現れたナワン(1日目のハイスタ参照)が再び現れ、共演。またまた「Free Tibet!」のコール&レスポンス。結局30分以上やったのか。


◎東京スカパラダイスオーケストラ (at GREEN STAGE / 11:00~11:40)

  5月に不慮の事故でドラムの青木氏を失い、6月のツアーから助っ人としてブランキー・ジェット・シティーの中村達也が参加。あの達也がお揃いの衣装を着る、それだけで注目のステージとなったはずだ。

  さてそのステージだが、いきなり達也のドラムからスタート。銀色のスーツをまとった彼。やけにデカく感じる。いや、ドラムセットが小さいだけか。ジャケットの下は素肌。達也の激しいドラミング以外は、いつも通りのスカパラに見えた。「青木氏の弔い合戦」というイメージはまったくなく、いつも通りのエンタテインメント性を全面に出した楽しいステージだった。


◎DMBQ (at WHITE STAGE / 11:30~12:10)

  轟音系なんだけど、いい意味で音が「古臭」く、70年代のビンテージって感じ。ちょっと前のグランジとも違う。うまい表現が見つからないけど、すごくいい感じ。個人的には趣味。これでもっとエンタテインメント性があったりすると、いかにも70年代的なんだろうけどね。そうしないところが、現代的ってことなのか。


◎BRAHMAN (at WHITE STAGE / 12:50~13:30)

  とにかく人が入ってる。昨日のNEVEが嘘のようだ(昨日は前の方に客が固まってるだけで、後ろの方はがらーんとしていて客が寝転がっていた)。後ろまでびっしり客が詰まってる。みんな期待してるってこと。考えてみると2日目って日本のパンク系バンドが多かったね(eastern youth、BACK DROP BOMBなど)。

  1曲目がいきなり「Tongfarr」だった、と思う。何せ暑かったのと、風が強くて砂埃がひどくて、記憶がいまいちはっきりしない。が、この曲をやったことは鮮明に覚えている。日本的なメロディを聴かせる、「歌」にこだわってるように感じた。あとはもう……モッシュの嵐。この日のステージを観て、間違いなくこれからも追い続けるバンドのひとつになったことだけは断言できる。


◎UA (at GREEN STAGE / 13:20~14:00)

  今回のバンド編成は元ルースターズが2人(ドラムの池畑氏、ギターの花田氏)いて、さらに浅田氏も参加。期待しないわけがない。選曲がこれまた、グレイテストヒッツ的なもので大満足。花田氏のスライドギターもこれまた渋い。気がついたらステージに向かって走ってた。


◎SKUNK ANANSIE (at GREEN STAGE / 16:00~17:00)

  久しぶりに生で見た彼ら、この日は新作「POST ORGASMIC CHILL」のオープニング曲「Charlie Big Potato」からスタート。イントロの長いインダストリアル系SEにうざったさを感じながらも、バンドが入ると途端にイメージが逆転。レイジもびっくりのハードな演奏。最初、お客は前の方だけだったのに、演奏がスタートしてそのハードさが伝わった途端に前へ前へと走り出す。そりゃそうだって。

  そしてスキン(Vo)が登場して、歌う。時に優しく、時に絶叫し、サビのハイトーンのところで多くの客がステージに向かって走っていくのが判った。いやいや、爽快。今まで彼等のことを知らなかった人はラッキーだと思う。だって、いきなりライブの洗礼を受けることができたのだから。1999年フジロックのベストアクトのひとつと言ってもいい。

 自分は続くリンプ~ケミ~ブラーに備えて、後ろで泣く泣く体力温存していたのだが、やっぱりお客が続々と増えていく光景を見てるのは圧巻というか爽快というか。個人的にはこのSKUNK ANANSIEとCATATONIAがどう受け入れられるかが、今後の海外アーティスト来日公演への布石になるはずと思っていたが、大成功だったようだ。

  選曲自体は先にリリースされたサードと大ヒットしたセカンドからの曲が中心。あの厳ついイメージのあるスキン嬢だが、ことMCになるとかわいらしい声で喋る。このギャップがたまらないし、レイジやKORNとは違った良さがある。絶対に、絶対に日本でもっと人気が出てもいいはずだ。


◎LIMP BIZKIT (at GREEN STAGE / 17:50~18:50)

  勿論リンプには期待していた。あのアルバムを聴けば誰もがそう思うだろう。実際、あの新作を聴いてフジ2日目だけ参戦を決めた方は多かったはずだ。

  噂には聞いていたが、ここまでエンタテインメント性重視のバンドだとは思わなかった。アルバムレビューで「バカ=とっつきにくい説」なんてのを書いた俺だが、そうか、作られたバカだったのか。とにかく客を楽しませることに徹している。レイジとは明らかに別の世界のバンドだということがよく判った。レイジにはロックバンド特有のストイックさを感じるのだけど、リンプの場合は例えばBEASTIE BOYSから受ける「あの」感じ。それと同様なものを感じ取る事ができた。それだけでも大きな収穫だと思う。

  正直、モッシュしまくってたし、思いっきりコケたし、命がけで暴れてたので、ここに気の利いたことは書けない。ただ、ファーストの曲とセカンドの曲って、ライブ会場で聴くと明らかに質感が違う。改めて「SIGNIFICANT OTHER」のすごさを実感した瞬間だった。

  それと、ライブ恒例の「大カバー大会」にも楽しませてもらった。「Do you like KORN?」の一言の後にあの印象的なドラムとギターリフが(「Blind」)。しかし、イントロの「Are you ready?」のところで演奏をストップ。続くはレイジの「Bombtrack」。ギター&ベースのユニゾンに笑った。そしてここでも「1、2、3!」で演奏ストップ。ここで終わるのかと思ったら、ギターがいきなり聴き覚えのあるリフを。あ、メタリカだ。しかも「Master Of Puppets」。今度は歌まで披露。歌うのはギターのウェス。「Master! Master!」のところまで演奏される。客は勿論盛り上がる。で、最後の最後にお約束でフレッドが一言、「Fuck You!」。これが言いたいがための前振り。リンプの芸人魂見たり、ってところか。


◎THE CHEMICAL BROTHERS (at GREEN STAGE / 19:40~20:50)

  いきなり1曲目が「Hey Boy Hey Girl」。ウッドストックと一緒か? カレーを抱えたまま、ステージ近くまで走ろうと思ったが断念。贅沢に後ろのほうで食事しながらケミカルを聴くという、これも野外フェスの醍醐味。腹いっぱいになって体力的にも余裕ができたあと、地味に踊った。満天の星空の下、サイケな映像に目がやられ、無機質な機械音に耳と頭をやられる。そして体だけが勝手に動く。これが気持ちいいのだよ。

  前作発売時にリキッドルームで観たときよりも、断然今回のほうが良かった。勿論クラブレベルで観る(踊る)彼等も最高だが、グループの規模感がデカくなった今、イギリスと同じ条件で観られるってのが幸運だと思う。

  曲に関してはほぼ原曲通りだったが、圧巻は名曲「Setting Sun」のぶち壊し振り。前回の来日もほとんど歌のパートを聴かせないプレイに度肝を抜かれたが、今回はバックトラックが4つ打ちに差し換えられていた。カッコイイじゃないか! しかもまた歌を無視! ざまぁ見やがれ、と大暴れ。疲れてたはずなのに、そんなことすら忘れさせるステージだった。


◎BLUR (at GREEN STAGE / 21:40~23:00)

  ステージにメンバーが現れまず驚いたのが、デーモンの衣装。いや、衣装とも言えない普段着。これじゃあリアムだよ!?ってな格好に無精髭、覇気のなさ、いや、オーラのなさが気になる。この「これじゃあリアムだよ!?」ってのは結局最後までつきまとった。もちろん今やってる音楽のイメージを考えれば、ちょっと前までの「ハイパーアクティブな」イメージを求めるのは酷なのかもしれないが、あの覇気のなさがすごく気になる。リアムの場合はそこにオーラがあるのだけどね。

  そして気になること、その2。1曲目の「Tender」なのだが……何かが違う。聴いていてすごく居心地が悪い。何故だ? 自分なりにいろいろ考えたのだけど、こういう結論に達した。つまり、あの日「Tender」が“みんなのうた”になれなかったのではないか。どんなに作者が個人的なことを歌おうが、それがCDとして流通され、ラジオから流れ、テレビから流れ、ライブで披露されたその瞬間に、“ぼくのうた”から“みんなのうた”に変わる。作者の手元を離れてしまうのだ。そして俺達はその「瞬間」を、その爽快感を味わいたくてCDを買い、ライブに足を運ぶ。なのにデーモンはその切っ掛けを与えてくれなかった。それがあの覇気のなさと関係あるのかはわからないが、俺はその拒絶された感じに違和感を覚えたのかもしれない。

  ライブが進むにつれて、客は盛り上がりを見せるが、俺は盛り下がり続けた。唯一救われたのは、過去の曲、特に「The Universal」を聴けたことかもしれない。唯一そのときだけは自分の中で盛り上がりを見せたが、最後の最後の名曲3連発、「Girls & Boys」「Parklife」「Song 2」で再び盛り下がっていく。体とは相反して、心はブルーのままだった。楽しめることは楽しめたのだが、何かしっくりこないとうか。

  ライブは演者側がどういう状態であれ、観る側にとって“One And Only”なものでなければならない。バンド活動が長くなれば長くなるほど予定調和さが伴うだろう。が、特に日本のような国へは2、3年に一度しか来られないわけだし、フェスだったらチャンスは一回こっきり。「どうせこの後、単独で来るし」とナメていたのかもしれない、バンド側もファン側も。だが、次はないかもしれない。そのときは俺の多くの友人が俺に尋ねたように「BLURってあんなもん?」ってイメージが植え付けられたまま、また2、3年、いや、最悪一生そのイメージが残るのかもしれない。期待していただけにちょっと残念な内容だった。


‥‥‥‥‥‥To be continued.

投稿: 1999 09 09 12:00 午前 [1999年のライブ, BLANKEY JET CITY, Blur, BRAHMAN, Chemical Brothers, The, DMBQ, FUJI ROCK FESTIVAL, Limp Bizkit, Skunk Anansie, UA, 東京スカパラダイスオーケストラ] | 固定リンク