2019年1月27日 (日)

BRING ME THE HORIZON『AMO』(2019)

BRING ME THE HORIZON通算6枚目のオリジナルアルバム。その音楽的指向の変化に対して賛否両論を巻き起こしながらも全米・全英で2位を記録した前作『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)から約3年半という、彼らとしては非常に長いスパンを経て届けられました。

2016年初頭にキャンセルとなり、以後実現していない“『THAT'S THE SPIRIT』以降”の日本での生パフォーマンス。正直、あの時期のステージを体験できなかったことは、ここ日本のファンおよびメタル/ラウド系リスナーにとっては不幸以外のなにものでもありません。それもあって、続くこのアルバムで遂げられる進化がしっかり受け止められるのか、そこだけがずっと不安でした。

昨年8月、突如届けられた新曲「Mantra」。個人的にはこの1曲だけで次作に対する期待は一気に高まりました。『THAT’S THE SPIRIT』での路線を一歩推し進めたスタイルでしたが、おそらく第一歩としては前作に比較的近いものを選んだのでしょう。事実、当時のインタビューでオリヴァー・サイクス(Vo)は次作について「今までやってきたようなサウンドではない」と発言していましたから。

そして、2ヶ月後の10月には第2弾シングル「Wonderful Life」を発表。CRADLE OF FILTHのフロントマン、ダニ・フィルス(Vo)をフィーチャーしたこの楽曲は「Mantra」の延長線上ではあるものの、ブラスセクションを導入した“無駄にハッピー”な色合いも感じられ、少しずつ「今までやってきたようなサウンドではない」発言の真意が見え始めます。

今年に入ってすぐに、第3弾シングル「Medicine」を発表。前作にもあったスロウでメロディアスな楽曲と同系統ではあるものの、エレクトロ色を強めたモダンなポップソング調のこの曲は“振り切った”感が思い切り伝わるものでした。さらにリリース直前には「Mother Tongue」「Nihilist Blues」の2曲が公開。前者は「Medicine」と同系統のポップチューンで、メロディアスさが際立つ1曲。後者はカナダの女性アーティスト、グライムスをフィーチャーしたエレクトロチューンで、トランシーなトラックだけを聴いたらこれがBMTHの新曲だとは気づかないのではないでしょうか。

このように、少しずつその本性を現し始めた『AMO』(ポルトガル語で愛を意味する)というアルバム。先行トラックで心構えはできていたものの、いざアルバムを通して聴くとさらに驚かされるのですが、と同時に「Mantra」や「Wonderful Life」のようなラウド系ナンバーがまったく浮いていない、必要不可欠な存在であることにも気づかされます。曲順含め、非常に収まりが良いんですよね。しかも、ほかの新機軸ナンバーと同じくらいに作り込みが異常すぎることも見えてくる。なんだ、この徹底さは!?って。

オープニングトラック「I Apologise If You Feel Something」での驚きと、そこから「Mantra」へと流れていく気持ち良さ、ヒップホップ的手法を用いりながらもロックバンドとしての個性を残す「In The Dark」や「Why You Gotta Kick Me When I'm Down?」の新鮮さ、トリッピーな「Fresh Bruises」やシンフォニックな「I Don't Know What To Say」に漂う繊細さと「Sugar Honey Ice & Tea」「Heavy Metal」(後者には元THE ROOTSのMCでヒューマンビートボクサーのラゼール参加)で見せる豪快さ。ここまでバラバラな色を包括しつつも、しっかりとひとつのアルバムの中で散漫になることなく、つながりを見せながら聴かせることができるのは、前作で得た自信によるものが大きいのではないでしょうか。

もはやデスコアだメタルコアだとカテゴライズすることも馬鹿馬鹿しいくらいに“ロック”しているし、こうやってラウドなバンドは進化していくんだってことをちゃんと形として証明し続けている。すごいことだと思いますよ。だって、本当にすごいアルバムだもの。前作以上にスルメ度の高い1枚。今度こそ、これらの楽曲を生で聴きたいな。



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投稿: 2019 01 27 12:00 午前 [2019年の作品, Bring Me The Horizon, Cradle of Filth] | 固定リンク

2017年12月22日 (金)

BRING ME THE HORIZON『SEMPITERNAL』(2013)

2013年春にリリースされた、BRING ME THE HORIZON(以下、BMTH)の4thアルバム。本作の制作途中でギタリストのジョナ・ウィーンホーフェンが脱退し、それと替わるようにキーボーディストのジョーダン・フィッシュが正式加入。これまでのツインギター編成からシングルギター+キーボードという、メタルコアバンドとしてはちょっと異色のバンド編成となりました。

正直、このメンバーチェンジに不安を覚えたファンは少なくなかったはずです。だって、確実にそのサウンドに変化を及ぼすわけですから。しかし、この変化こそがBMTHをさらに一段上へとステップアップさせるための重要なトピックとなったのでした。

初期こそデスコアなんてジャンルで括られた彼らですが、前作『THERE IS A HELL, BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN, LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)で若干その片鱗を見せていたプログレッシヴな方向性が続く本作『SEMPITERNAL』でさらに進化し、シンセなどエレクトロの要素が加わったことでモダンな色合いを強めることになります。

そのカラーが顕著に表れたのが、リードトラック「Sleepwalking」や「Go To Hell, For Heaven's Sake」「And The Snakes Start To Sing」あたりではないでしょうか。ヘヴィさを保ちながらもシンセやサンプリングなどの装飾を施すことで、不思議とポップにも感じられるこのアレンジは、メタルコアバンドがモダンな要素を取り入れるとこうなるという見本的な仕上がりに。これらの楽曲および本作の成功が、続く大ヒット作『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)へとつながったことは想像に難しくありません。

もちろん、従来のメタリックで攻撃的でファストな要素も失ったわけではありません。「The House Of Wolves」「Antivist」はアレンジこそ以前よりシンプルですが、間違いなく過去のBMTHの延長線上にありますし、全体を覆うエッジの立った作風は、前作の流れを汲むものだと思います。

そういった楽曲と先の「Sleepwalking」や、ドラマチックなアレンジの「Crooked Young」「Hospital For Souls」が並ぶ本作は、一気に振り切ってポップになった『THAT'S THE SPIRIT』とヘヴィでプログレッシヴな前作(タイトルが長いので省略)の中間に位置する、このバンドの歴史を語る上で非常に重要な1枚と言えます。つまり、過去と現在をつなぐ、非常にバランスの良い内容ではないかと。新作は苦手だけど、このアルバムは受け入れられるという初期からのファンも少なくない気がしますが、いかがでしょう?

本作や『THAT'S THE SPIRIT』が、以降のメタルコアシーンに与えた影響は計り知れないものがあります。もちろん、BMTHだけではなく、同系統のバンドが同じタイミングにいくつかいたからこそ、メタルコア/ラウドロックシーンに新たな扉が開かれたわけですが……そういった史実を抜きにしても、本作は非常に優れた、ラウドロック/メタルファンが聴くべき傑作だと断言します。



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投稿: 2017 12 22 12:00 午前 [2013年の作品, Bring Me The Horizon] | 固定リンク

2016年12月21日 (水)

BRING ME THE HORIZON『THAT'S THE SPIRIT』(2015)

2015年秋にリリースされた、BRING ME THE HORIZONにとって通算5枚のオリジナルアルバム。全英2位、全米2位という、それまでのキャリアでともに最高位を記録しただけでなく、バンドの新境地を伝える斬新な1枚でもあります。

初期のデスコア路線こそがBMTHだ!という人にとっては、キーボーディストを正式メンバーに迎えて制作された前作『SEMPITERNAL』(2013年)以降の流れには不満かもしれません。事実、僕も最初に『SEMPITERNAL』からのリード曲「Sleepwalking」を聴いたときは正直ショックでしたし、慣れるまでにしばらく時間がかかりました。とはいえ、『SEMPITERNAL』というアルバム自体はそれ以前の作風も含まれており、聴き込めば聴き込むほぼハマっていく不思議な魅力が備わっていたのも事実です。

その流れで発表されたこの『THAT'S THE SPIRIT』では、いわゆるスピードナンバーを完全排除し、ミドルテンポ中心の中でサウンドメイキングで緩急をつけるという挑戦的な内容。ギターのローサウンドとメランコリックなシンセサウンドの融合、そこにオリヴァー・サイクス(Vo)の歌メロを大切にしたボーカルが乗る作風は、それまでのBMTHを考えれば新鮮以外のなにものでもなく、曲によっては「LINKIN PARKかよ!」とツッコミたくなるくらい屈託ない楽曲が並びます。

彼らがこのタイミングでいわゆる売れ線を狙ったとは思えませんし、単に音楽の趣味が拡散した故のこの作風なんだと思いますが、いかがでしょうか。彼らがそれまで軸足を置いていた村からはケチョンケチョンに酷評されたようですが、僕自身はバンドとしての新たな可能性を感じたし、むしろ「この次」こそが真の勝負作なんじゃないかと感じています。過去からの脱却を経て、彼らがどこに進むのか。それがヘヴィロックの未来につながるんじゃないか、そう信じています。

昨年、僕は自身のサイトや各誌で求められた年間ベストアルバムにて、このアルバムを1位に選びました。あれから1年経ちましたが、その考えは今も変わっていません。事実、今年1年も本当に聴きまくったアルバムですし。だからこそ、今年頭に予定されていた久しぶりの単独来日公演が延期(事実上の中止)になってしまったのは残念でなりません。このアルバムのタイミングで彼らを日本で観ることができないなんて……ライブを見せることで、このアルバムに対する評価も少しは変わったかもしれないのに。



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投稿: 2016 12 21 12:00 午後 [2015年の作品, Bring Me The Horizon] | 固定リンク