2018年3月16日 (金)

BRUCE DICKINSON『SKUNKWORKS』(1996)

90年代のロブ・ハルフォードの迷走ばかりに触れるのもかわいそうなので、JUDAS PRIESTと双璧をなすブリティッシュHMバンド、IRON MAIDENブルース・ディッキンソンのソロ活動(の迷走)についても触れておきましょう。

本作『SKUNKWORKS』は1996年2月(日本では1月)にリリースされた、ブルース通算3作目、メイデン脱退後2作目のソロアルバム。ソロとはいいますが、本作は本来“SKUNKWORKS”というバンド名義で発表されるべき1枚でした。

グランジ真っただ中の1994年に正統的ブリティッシュHMに傾倒した『BALLS OF PICASSO』で健在ぶりを示したブルース。アルバムではロイ・Z(G)などが参加したものの、その後のツアーではアレックス・ディクソン(G)という若き才能と組むことで、音楽性もより若々しいものへと変化。それが先のSKUNKWORKS結成につながるわけです。

本作のプロデューサーは、NIRVANA『BLEACH』(1989年)をはじめ、MUDHONEYの諸作を手がけてきたジャック・エンディーノが担当。もうこの時点で何がやりたいのかが見え見えですよね。実際、完成したアルバムは3分前後のコンパクトな楽曲が中心で、その大半はPEARL JAMにも通ずる“シンプルなギターリフを軸にしたミディアムテンポのダークなハードロック”。ブルースのボーカルもハイトーンに頼ることなく、それでいてブルースの楽曲とわかるような歌声をしっかり聞かせる“わかる人にはわかる”1枚に仕上がっています。

オープニングを飾る「Space Race」の浮遊感、アメリカンロック的なストレートさが斬新な「Back From The Edge」など、前作『BALLS OF PICASSO』はおろか、アメリカナイズされた派手なハードロックサウンドも含む『TATTOOED MILLIONAIRE』(1990年)とも違う……単純にカッコいいんですよ。そりゃあメイデン的なプログレッシヴさや仰々しさも嫌いじゃないけど、あの時代にこういうサウンドに積極的に挑戦したブルースの心意気、嫌いじゃないです。「Solar Confinement」とか「Dreamstate」とか、今聴いても全然“アリ”だしね。

例えば、今のブルースがこういうアルバムやサウンドにソロで挑戦したのなら、それはそれで受け入れられると思うんです。メイデンに所属していながら、ソロでも同じことをやってもアーティストとして成長が感じられませんし。だけど、当時メイデンから離れていた彼に求められていたのはヘヴィメタルそのもの。当のメイデンが新しいシンガーと『THE X FACTOR』(1995年)という微妙な作品を発表したあとですもん、そりゃあ期待を裏切ったと言われるわけですよね。そこだけは残念でなりません。

なお、本作は日本盤ではオープニングが「Back From The Edge」なのに海外盤では「Space Race」と、トラックリストが一部異なります。個人的には海外盤のトラックリストのほうが好きなので、手に入れる際には輸入盤をオススメします。

とはいえ、本作は2005年に2枚組仕様で再発されて以降、国内廃盤状態。数年前にHostessから『TATTOOED MILLIONAIRE』と『BALLS OF PICASSO』の2枚組仕様が国内リリースされましたが、残念ながら本作は含まれていませんでした。なので、デジタル配信&ストリーミング配信もなし。ぜひ再評価してほしい1枚なんですけどね……ってあれ、最初に迷走って書いたけど、結局は迷走してないってこと?(笑)


※上記のベストアルバム『THE BEST OF BRUCE DICKINSON』にて、『SKUNKWORKS』収録曲「Back From The Edge」を聴くことができます。



▼BRUCE DICKINSON『SKUNKWORKS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2018 03 16 12:00 午前 [1996年の作品, Bruce Dickinson, Iron Maiden] | 固定リンク