カテゴリー「Bryan Adams」の24件の記事

2023年3月 8日 (水)

BRYAN ADAMS『SO HAPPY IT HURTS LIVE 23』@日本武道館(2023年3月7日)

Img_6731-2 ブライアン・アダムスのライブをただ一度だけ、『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)を携えた日本武道館公演で観たことがあったのですが、今振り返るとあれは1993年2月の武道館だったのかな? ということは、ほぼ30年ぶりに彼のライブを同じ会場で今回拝見できたわけですね。調べてみて、改めて驚きました。

これまでも何度か観るチャンスはあったのですが、なぜかそこまで無理して観ようという気持ちになれず、気づけばコロナ禍に突入していました。そんなタイミングに自分の中でブライアン・アダムス再評価期が訪れ、ここ数年彼の作品をサブスクで聴きまくっていました。そうこうしているうちに、2022年にはニューアルバム『SO HAPPY IT HURTS』も発売。さらに、再録ベストやらいろいろ配信アルバムを連発し、年明けには約6年ぶりの来日も実現。そりゃ行かないわけにはいきませんよね。自分が死ぬ前に、いや、もしかしたらアーティスト側が先に逝ってしまうことだってあるわけですから。観れるときに観ておかないと。

先週、二度(MEGADETH=LOVEという食い合わせの悪さよ)も足を運んだ日本武道館に、今週も行くことになりました。席は1階スタンド南西。正面からちょい下手といったところなので、非常に観やすい位置でした。会場入りすると、巨大なスクリーンにアルバムジャケットにも登場するモノクロの車が映し出されている。また、ステージ上にはギターアンプのたぐいやモニタースピーカーなど一切なし。これが普通になってきましたよね。

Img_6732-2 開演5分前を切ったくらいのタイミングに突如場内BGMの音量が上がり、THE 1975の「Oh Caroline」が流れ始める。すると、静止画だと思っていた車の前をブラスバンドが通り過ぎたり、タイヤを窃盗する輩が登場したり、車に犬が乗り込んだり蜂の大群が押し寄せたりと、観客の注意を惹きつけます。かつ、BGMはTHE WAR ON DRUGS「Red Eyes」、PANIC! AT THE DISCO「High Hopes」、THE 1975「If You're Too Shy (Let Me Know)」がひたすら流れ続ける。スクリーンでは最終的にタイヤのない車に対して、警官が駐禁キップを切る始末。そして、いよいよライブスタートというタイミングに、車の中からブライアンが起き上がり、カメラのほうに歩いてくる。なんだ、最初からいたのかよ(笑)。

そして、暗転した会場内に「Kick Ass」冒頭のナレーションが流れ始める。しかも字幕(英文+和訳)付きで。ありがてえ。観客のテンションもここで一気にあがる。そしてスポットライトがステージ下手側に当たると、そこにはブライアンの姿が。ドラム、ベース、ギター、ピアノ、そしてギターを持ったブライアンという編成で「Kick Ass」から元気よくライブが始まります。最近はベースを抱えたトリオ編成でのライブ(やMV)も多かったものの、事前情報を得ていなかったのでこの編成には思わずニンマリ。やっぱり彼にはギターが似合うもの。

終始セミアコを抱えて「Can't Stop This Thing We Started」「Somebody」「One Night Love Affair」と80〜90年代のヒットシングルを連発するブライアン。なぜかこの3曲はワンハーフ(2番をカットしたアレンジ)だったのですが、序盤矢継ぎ早に人気曲で畳み掛ける構成を考えるとこれで正解なのかな。この流れで聴く「Shine A Light」もセトリに馴染んでいましたね。ここではブライアン、アコギに持ち替えています。

Img_6737-2 そして、その流れで早くも「Heaven」へ。お客さん、大合唱です。あ、ちなみに武道館の客席、ほぼ埋まっていました。なんなら、ステージ両サイドの見切れ席までお客が入っていました。MEGADETHではあのへん暗幕かかっていたので、動員的には8000〜9000人の間ぐらいかな。とにかく、大入りでひと安心でした。

前々作『GET UP』(2015年)からのロックンロール「Go Down Rockin'」を挟んで、「It's Only Love」「Kids Wanna Rock」と『RECKLESS』(1984年)からの荒くれロック2連発。キース・スコット(G)とマイクスタンドを挟んでシャウトする姿も絵になりますね。

ロックパートがひと段落すると、『MTV UNPLUGGED』(1997年)に収録されたバラード「When You Love Someone」を新たなアレンジで披露。スローナンバーの差し込み具合がちょうどよい位置で、ここまで正解出しまくりのセトリなんじゃないかしら。そこから「You Belong To Me」「I've Been Looking For You」とロカビリーナンバーを立て続けにプレイして、アンセミックなロックチューン「The Only Thing That Looks Good On Me Is You」でさらにひと盛り上がり。序盤に代表曲並べちゃって大丈夫?と心配したけど、まだまだあったね(笑)。

ここまで1時間くらいかな。折り返しとなるライブ中盤はアコースティックパート。まずはピアノとアコギで「Here I Am」に入るのですが、その前にブライアンの振りでキーボーディストが新幹線の場内アナウンスの音楽をピアノで再現。会場がクスクスする中、異常にウケてるブライアン。彼のリクエストで再び披露されると、さすがにこちらは苦笑。御年63歳のブライアンくん、まだまだティーンまっただなかという印象でした(笑)。

Img_6740-2 その「Here I Am」に続いて、今度はブライアンがアコギ1本で「When You're Gone」を弾き語り。そのまま「(Everything I Do) I Do It For You」へと流れる構成も自然すぎて、この曲に拒否感が多少残っていた自分でもすんなり入っていけたほど。なんなら一緒に歌ってました。

軽やかな「Back To You」で空気が再び温まり始めると、「18 'Til I Die」「Summer Of '69」と青春アンセム2連発。この流れはズルいな。両曲とも思い切り歌い上げてしまいましたもの。特に後者はフルコーラスそらで歌える自分に驚いた。10代前半からの刷り込みって怖いね。

キラーチューンの連続でこのあとどうなるのかと思っていたら、ブライアンがおもむろに客席に向けてリクエストを募り始める。まずはジャブ程度にど定番の「This Time」。40周年ですものね。で、次の曲のタイトルが彼の口から飛び出したことで、筆者は鳥肌を立てることになります。まさか、予想もしてなかった「Into The Fire」……「Heat Of The Night」でもなく「Hearts On Fire」でもなく、「Into The Fire」ですから。しかも、ブライアンの弾き語りかと思ったら、その場でいろいろ確認しながらバンド演奏で届けてくれたのですから、そりゃもう涙ものですよ。序盤こそ若干グダっていたものの、曲が進むにつれて演奏の熱量も高まっていき、曲終盤の盛り上がりはハンパなかったなあ………いいもの聴けた。これ1曲で完全に元取れたと思いましたもの。

その後も「Let's Make A Night To Remember」や「Take Me Back」という意外なリクエストを採用し、最後はブライアン自身のリクエストと称して「Cuts Like A Knife」で真のクライマックスへ。さらに、新旧のアンセム「So Happy It Hurts」「Run To You」を立て続けにプレイするのですが、それまでセミアコとアコギのみ使ってきたブライアンが、なぜか「Run To You」ではストラトに持ち替えるサプライズ。ああ、これですよ……あのシルエットが2023年にまた目撃できるなんて。長生きはしてみるものです。

「Run To You」でバンドメンバーが引っ込むと、最後はアコギ&ハーモニカでの「Straight From The Heart」、そしてスティングロッド・スチュワートのパートをひとりでカバーする「All For Love」の弾き語りで大団円。全28曲を2時間超にわたり披露したその圧倒的なパワフルさと、いまだ衰えることない青春感は脱帽ものでした。ありがとう、ブライアン。

『CUTS LIKE A KNIFE』(1983年)以降、80年代、90年代、2000年代、2010年代のそれぞれのヒット曲、代表曲を満遍なく、バランスよく配置し、最新作からは3曲程度に抑えつつも過去数作からの楽曲もしっかり複数セレクト。40年を超えるキャリアなのにここまで考え尽くされたセトリを作れるのって、単純にすごいと思いました。自分にとって、仮にこれが最後のブライアン・アダムスのライブだったとしても、まったく悔いは残らない。そんなベスト・オブ・ベストな名演だったと思います。しばらくはまた彼の音源しか聴けないかもしれないなぁ……。

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セットリスト
01. Kick Ass
02. Can't Stop This Thing We Started
03. Somebody
04. One Night Love Affair
05. Shine A Light
06. Heaven
07. Go Down Rockin'
08. It's Only Love
09. Kids Wanna Rock
10. When You Love Someone
11. You Belong To Me
12. I've Been Looking For You
13. The Only Thing That Looks Good On Me Is You
14. Here I Am [Acoustic]
15. When You're Gone [Acoustic]
16. (Everything I Do) I Do It For You
17. Back To You
18. 18 'Til I Die
19. Summer Of '69
20. This Time [Request]
21. Into The Fire [Request]
22. Let's Make A Night To Remember [Request]
23. Take Me Back [Request]
24. Cuts Like A Knife
25. So Happy It Hurts
26. Run To You
27. Straight From The Heart [Acoustic]
28. All For Love [Acoustic]

 

2023年3月 7日 (火)

BRYAN ADAMS『TRACKS OF MY YEARS』(2014)

2014年9月30日にリリースされたブライアン・アダムスの12thアルバム。日本盤は同年10月8日発売。

スタジオアルバムとしては『11』(2008年)から約6年半ぶりの新作となる本作は、カバー曲中心で構成された1枚。THE BEATLESやボブ・ディラン、チャック・ベリー、CREEDENCE CLEARWATER RIVIVAL(CCR)、THE BEACH BOYSの名曲の中に、オリジナル新曲「She Knows Me」をミックスした全11曲入りの作品集となっており、デラックス盤にはさらに5曲(うち1曲は、ディズニー映画『OLD DOGS』のために制作したオリジナル曲「You've Been A Friend To Me」)、日本盤にはここにもう1曲追加されたボリューミーな内容となっています。

ちなみに、カバーの内訳は以下のとおり。

01. Any Time At All [THE BEATLES]
02. She Knows Me [オリジナル新曲]
03. I Can't Stop Loving You [ドン・ギブソン、レイ・チャールズ]
04. Kiss And Say Goodbye [THE MANHATTANS]
05. Lay Lady Lay [ボブ・ディラン]
06. Rock And Roll Music [チャック・ベリー、THE BEATLES]
07. Down On The Corner [CREEDENCE CLEARWATER RIVIVAL]
08. Never My Love [THE ASSOCIATION]
09. Sunny [ボビー・ヘブ]
10. The Tracks Of My Tears [SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES]
11. God Only Knows [THE BEACH BOYS]
12. You've Been A Friend To Me [オリジナル曲]
13. Help Me Make It Through The Night [クリス・クリストファーソン]
14. C'mon Everybody [エディ・コクラン]
15. Many Rivers To Cross [ジミー・クリフ]
16. You Shook Me [マディ・ウォーターズ、LED ZEPPELIN]
17. Let It Be Me [THE EVERLY BROTHERS]

60's中心の選曲ですが、これはブライアンが幼少期から10代にかけて夢中になったルーツミュージックということなのでしょう。実際、アートワークに使用された写真も、彼が16歳の頃の写真ですし(今の彼からは想像もつかないロン毛時代!)。ビートルズで「Any Time At All」を選出するあたりに、彼のこだわりや音楽的嗜好が見え隠れしますね。

本作に関しては当時の所属レーベルからの提案だったものの、すでにジェフ・リン(ELO)とともに次のオリジナルアルバム『GET UP』(2015年)の準備に取り掛かろうとしていたこともあり、当初はブライアンはこのアルバムを制作することに消極的だったんだとか。しかし、気心知れたボブ・ロック(「Kiss And Say Goodbye」「Rock And Roll Music」のみ)と、これが初タッグとなるデヴィッド・フォスターとの共同作業が与えた影響はかなり大きなものがあり、結果として非常にポジティブに受け取ることができたそうです。

レコーディングはキース・スコット(G)&ミッキー・カリー(Dr)、ブライアン(B, Acoustic G)といったお馴染みの布陣に加え、デヴィッド・フォスターからの流れで名手マイケル・トンプソン(G)も参加。さらに、ピアノやキーボードでデヴィッド自身も演奏に加わっています。アレンジや演奏自体は原曲の雰囲気を残しつつ、2000年代以降のブライアンのスタイル……アルバム『ROOM SERVICE』(2004年)や『11』で見せた“大人になった青春ロック”路線が展開されており、カバー中心ながらもスタジオ作品としてのつながりもしっかり感じられる仕上がりです。

原曲が名曲ばかりなので、内容は悪いわけがない。あと、ここでの経験は確実にジェフ・リンとの作業にも影響を与えているはずで、結果として本作から1年後に発表されたオリジナル作『GET UP』との共通点もたくさん見つけることができます。そういった意味では、本作と『GET UP』は表裏一体の兄弟関係にあると言えるでしょう。『GET UP』を楽しむ上でも、このカバー集の存在は欠かせない……というのは過言でしょうか。

大袈裟な言い方になりますが、本作を軸に過去へ遡ると『11』や『ROOM SERVICE』があり、未来に目を向けると地続きで『GET UP』あり、そこからモダンな形にシフトさせた『SHINE A LIGHT』(2019年)があり、そういった経験を経ての原点回帰となる最新作『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)がある。(あえてこういう言い方をさせていただきますが)ブライアンの音楽活動後期において、実は本作の存在ってかなり大きなものがあると個人的には思っています。

 


▼BRYAN ADAMS『TRACKS OF MY YEARS』
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2023年3月 6日 (月)

BRYAN ADAMS『11』(2008)

2008年3月17日にリリースされたブライアン・アダムスの11thアルバム。日本盤は同年3月19日発売。

オリジナルアルバムとしては前作『ROOM SERVICE』(2004年)から約3年半ぶり。その間に新曲入りベストアルバム『ANTHOLOGY』(2005年)を挟んでいるので、そこまで空いた感覚はなかったですよね。制作に関しては2005年頃からスタートし、2007年までじっくり時間をかけて続けられたようです。

前作同様、基本的にはブライアンのセルフプロデュースにて制作。オープニングトラック「Tonight We Have The Stars」と5曲目「We Found What We Were Looking For」のみプロデュースに盟友ロバート・ジョン・“マット”・ラングが関わっています。また、ソングライティングに関してもジム・ヴァランスやマット・ラングのほか、グレッチェン・ピーターズ、エリオット・ケネディ、トレヴァー・ラビンといった錚々たる面々が名を連ね、レコーディングにはキース・スコット(G)、ミッキー・カリー(Dr)などブライアンと縁の深いミュージシャンが多数参加しています。

作風的には『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)や前作『ROOM SERVICE』の流れを汲む、落ち着いた“大人のロックンロール”が中心。内省的な質感は引き続きですが、ロック感は前作よりも強まっている印象も強く、個人的には最初に聴いたときに『RECKLESS』(1984年)をより大人にさせた空気感」という感想を持ちました。そういった意味では、『INTO THE FIRE』(1987年)にも似ているのかな。ただ、あちらが背伸びをした大人感だったのに対して、こっちは2008年当時のブライアンの等身大という空気感なのが大きな違い。自然体だからこそ、聴き手側もナチュラルに受け取ることができる。そういう1枚ではないでしょうか。

序盤3曲はリラックスした演奏と歌が楽しめるミディアムロック中心ですが、4曲目「Oxygen」でギアが一段高く入り、80年代後半のU2にも通ずるテイストの5曲目「We Found What We Were Looking For」で表現により広がりが加わる。その後はアコースティックギターを軸にした楽曲がいくつか続きますが、打ち込みと同期させたM-9「She's Got A Way」をフックに、続く「Flower Grown Wild」で終盤に向けた盛り上がりを見せつつ、最後は3分にも満たない「Walk On By」でしっとりと締めくくります。アルバムタイトルにちなんだ全11曲/約44分(ボーナストラック除く)という適度な聴きやすさ含め、前作同様にロックアーティストとしての潔さが伝わる1枚です。

なお、日本盤やデジタル版では「The Way Of The World」などのボーナストラックが追加されており、アルバム自体が持つ“11”というコンセプトが崩れてしまっています。「The Way Of The World」自体はアルバム本編に足りなかった豪快なハードロックナンバーなので、これを本編に入れていたらまた流れや感じ方も違ったのかなという気もしますが、やっぱり「Walk On By」のあとに置くにはちょっと場違いかなという印象も。

本国カナダでは『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)以来17年ぶりにオリジナルアルバムでの1位獲得、アメリカでも『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』(2002年)ぶりとなるTOP100入り(最高80位)を記録するなど、やはり世間は彼にこういった力強いロックンロールとセンチメンタルなバラードを求めていることが伺えます。どちらか一方だけが突出したものではなく、双方がバランスよく混在してこそのブライアン・アダムスなのだということですね。

 


▼BRYAN ADAMS『11』
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2023年3月 5日 (日)

BRYAN ADAMS『ROOM SERVICE』(2004)

2004年9月10日にリリースされたブライアン・アダムスの10thアルバム。日本盤は同年10月21日発売。

アニメーション映画『スピリット:スタリオン・オブ・ザ・シマロン』のサウンドトラックとして制作された前作『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』(2002年)から2年4ヶ月ぶりの新作。純粋なオリジナルアルバムとしては、『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)から6年ぶりとなります。

日本盤は過去作同様ユニバーサルミュージックからのリリースですが、本作ではデビューから在籍したA&M Recordsから新たにPolydor UKと契約。心機一転で制作された今作は過去2年にわたり実施してきたヨーロッパツアーの合間に、滞在先のホテルで大半のレコーディングしたそうです。ストリングスなどの上物はあとからオーバーダビングしたんでしょうかね。

それもあってか、プロデュースはブライアン自身が担当。フィル・ソーナリー(G, Key)やヨード・ネヴォ(Programming)がサポートしつつ、キース・スコット(B)やミッキー・カリー(Dr)などツアーで活動をともにする気心知れたメンツと制作を進めた、非常にリラックスしたノリの1枚に仕上がっています。

近作は内省的な質感のアルバムが続きましたが、本作もその延長線上にある作風で、「East Side Story」を筆頭にアルバム冒頭は穏やかで落ち着いた楽曲が続きます。『RECKLESS』(1984年)での溌剌としたイメージが強いブライアンですが、今作の時点ですでに44歳。人生折り返しに差し掛かるタイミングということもあって、こうしたミディアムテンポで落ち着いた作風の楽曲中心になるのは致し方ないのかな。

ミディアム中心とはえ、すべてがバラードというわけではないので、そこはご安心を。「East Side Story」にしろ「The Side Of Paradise」にしろ大陸的なおおらかなノリを持つ楽曲で、じわじわ熱が高まっていく感じはとにかく聴いていて心地よいですし、「Not Romeo Not Juliet」「Flying」のバラード2連発を経てアップテンポ寄りの「She's A Little Too Good For Me」で従来の彼らしさが強まる。続く「Open Road」も「Run To You」をよりアダルトにした作風で好印象。さらに、タイトルトラック「Room Service」での軽やかなロックサウンドも高揚感を高めてくれる。アルバム中盤にロックサイドを強めた楽曲を固めたことで、全体のメリハリが強まって最後まで飽きずに楽しめるのではないでしょうか。

アルバム後半はセンチメンタルな「I Was Only Dreamin'」、開放感の強い「Right Back Where I Started From」、哀愁味漂う「Nowhere Fast」とタイプの異なるミディアムナンバーが続き、最後は枯れ具合が抜群な大人のバラード「Why Do You Have To Be So Hard To Love?」で締めくくり。日本盤やデジタル版ではこのあとに、ロカビリー調のロックンロール「Blessing In Disguise」が追加されていますが、アルバムの流れとしては「Why Do You Have To Be So Hard To Love?」で終わるのが綺麗かもしれませんね。

トータルで35分強という程よい尺も、近年の彼に通ずるものがあり、デジタル全盛になり始めたこのタイミングにこれくらいで収めるのは潔い。結局は根っからのロックンローラーなのかもしれませんね。アルバムの制作過程同様、旅先などでリラックスしながら楽しむのにも最適な1枚です。

 


▼BRYAN ADAMS『ROOM SERVICE』
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2023年2月16日 (木)

BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE - 40TH ANNIVERSARY, LIVE FROM THE ROYAL ALBERT HALL』(2023)

2023年2月3日にリリースされたブライアン・アダムスの最新ライブアルバム。フィジカルでの発売はなしで、デジタルリリースおよびストリーミング限定作品。

1983年1月18日に海外で発表されたブライアンの3rdアルバム『CUTS LIKE A KNIFE』は、本国カナダで最高8位を記録したほか、アメリカでも8位まで上昇。シングルカットされた「Straight From The Heart」(全米10位)、「Cuts Like A Knife」(同15位)、「This Time」(同24位)とどれもがスマッシュヒットを果たし、彼にとって出世作と呼ぶに相応しい1枚として今日まで愛され続けています。

本作はそんな代表作のリリース40周年を記念して、昨年2022年5月11日に英・ロンドンのThe Royal Albert Hallという格式高い会場にて、無観客ライブレコーディングという形でアルバム『CUTS LIKE A KNIFE』全収録曲を演奏。今回、40周年のタイミングにあわせて音源化されました。

ライブレコーディングに参加したメンバーはブライアン(Vo, G)のほか、盟友キース・スコット(G)、パット・スチュワード(Dr)、ソル・ウォーカー(B)、ゲイリー・ブレイト(Key)という布陣。原曲に参加していたのはブライアンとキースのみですが、これが今のBRYAN ADAMS BANDと理解すれば音的にも納得のいく仕上がりではないでしょうか。

10曲すべてを40年前のアルバムとまったく同じ順番で演奏するのではなく、本来M-4「Straight From The Heart」、M-5「Cuts Like A Knife」という2曲を最後に持ってきて、本来のM-6「I'm Ready」以降を4曲目に繰り上げ。そして最後に「Cuts Like A Knife」「Straight From The Heart」と並べることで、感動的な構成へと生まれ変わっています。実際、「This Time」のあとに「I'm Ready」が並んでもなんら違和感はなく、むしろキャッチーさがより増したロックアルバムとして楽しめるのではないでしょうか。

オリジナル作が40年前の作品ということで時代を感じさせる録音/音質ということもあり、現代的でクリア、かつシンプルな音で表現される名曲の数々は、ライブアーティストとして絶対的な信頼感を持つブライアン・アダムスらしさ満点のアレンジへと進化。「Let Him Know」のようにアコースティック色を強めたアレンジに生まれ変わった楽曲も存在し、単にそのままセルフカバーしているわけではないことも窺わせます。オールディーズ調の原曲アレンジも好きでしたが、無駄を削ぎ落としよりシンプルに進化した最新バージョンも捨てがたい。そこから、渋みがより増した「The Best Was Yet To Come」へとつなげ、最後はアンセミックな「Cuts Like A Knife」と、ピアノからアコギ&ブルースハープ主体のアレンジへ変更された名バラード「Straight From The Heart」で締めくくり。ひとつのライブとして流れも素晴らしいですし、ひとつの完成されたアルバムとして楽しむぶんにも文句なしではないでしょうか。

これが新たなスタンダードというわけではなく、40年後の再解釈として受け取れば、楽しみが二倍になっただけだと気づく。最近、権利の問題などもあり自身の持ち曲を再録音する機会がどんどん増えているブライアンですが、来年には最大のヒット作『RECKLESS』(1984年)がリリース40周年を迎えることもあり、今からそちらがどうなるのかも楽しみです。

でも、それよりもまずは3月の来日公演ですね!

 


▼BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE - 40TH ANNIVERSARY, LIVE FROM THE ROYAL ALBERT HALL』
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2023年2月10日 (金)

BRYAN ADAMS『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』(2002)

2002年5月14日にリリースされたブライアン・アダムスの9thアルバム。日本盤は同年6月21日発売。

コンピレーションアルバム『THE BEST OF ME』(1999年)を挟みつつも、オリジナル作品としては『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)から約3年半ぶりとなった本作は、アニメーション映画『スピリット:スタリオン・オブ・ザ・シマロン』のサウンドトラックとして制作されたもの。そういった意味では純粋なオリジナルアルバムとは言えないかもしれませんが、全15トラック中11トラックがブライアンの歌モノ楽曲なので一般的にオリジナルアルバムにも含まれています。

映画のスコアをかのハンス・ジマーが手掛けていることもあり、アルバムのプロデュースや収録された楽曲の制作にも彼の名前を見つけることができます。しかし、すべてがハンスの色というわけではなく、楽曲自体はグレッチェン・ピーターズやロバート・ジョン・“マット”・ラングなどブライアンの楽曲制作には欠かせない面々や、ギャヴィン・グリーナウェイ、エリオット・ケネディ、トレヴァー・ホーンなど英国出身のコンポーザーとのコライトにより生まれたものが中心。演奏にもキース・スコット(G)やミッキー・カリー(Dr)など気心知れたメンツが加わっていることから、ハンスとのサントラ制作というお題の下に完成した1枚と解釈できます。

「Get Off My Back」といったブライアンらしいロックンロールも収録されているものの、基本的には映画を劇的に盛り上げるため、各場面に則した楽曲が中心。ということもあってか、ムーディーなミディアムナンバーや穏やかなバラードがずらりと並ぶ大人な内容となっています。90年代に入ってから「(Everything I Do) I Do It For You」の爆発的ヒットも手伝い、バラードシンガー的な見られ方も強いブライアンですが、彼のそういった側面を愛するリスナーにはうってつけの1枚と言えるでしょう。

また、前作『ON A DAY LIKE TODAY』での内向的な作風を考えると、本作へと続いていく流れはあまり意外とは思えず、当時は「ああ、彼も大人になったし、こうやってどんどん穏やかな方向へシフトしていくんだね」と少しだけがっかりしたものです。もちろん、本作は映画のサントラありきで制作されたものなので、これがずっと続くわけではないのですが。

本作のリード曲であり映画の主題歌的な立ち位置にある「Here I Am」、サラ・マクラクランをフィーチャーした「Don't Let Go」、アコギの弾き語りから徐々に盛り上がっていく「Nothing I've Ever Known」など良質な楽曲は当然のように豊富な本作。あくまで“長いアーティスト史における、1方向に特出した表現のひとつ”として受け取れば、これもアリなのでは。もちろん、ここでの経験があったからこそ続く『ROOM SERVICE』(2004年)で、溜め込んだものが一気に爆発するわけですけどね。

 


▼BRYAN ADAMS『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』
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なお、本作はフランスやドイツ、スペイン、イタリア、ブラジルなど、リリースされる国によってボーカルの言語が異なるとのこと。映画自体がそれぞれの上映国の言語でアフレコされていることもあり、劇中で使用される楽曲(ボーカル)も合わせているようです。ブライアンは英語版のほか、フランス語版も歌唱しており、こちらのバージョンもサブスクで聴くことが可能です。なお、日本版の主題歌はZIGGY森重樹一が担当しているので、ぜひ映像で確認してみてください。

 


▼BRYAN ADAMS『SPIRIT: L'ETALON DES PLAINES』
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2023年2月 9日 (木)

LITTLE ANGELS『JAM』(1993)

1993年1月31日にリリースされたLITTLE ANGELSの3rdアルバム。日本盤は同年1月25日発売。

前作『YOUNG GODS』(1991年)が全英17位と、本国でスマッシュヒットを記録。また、同作からは「Boneyard」(33位)、「Product Of The Working Class」(40位)、「Young Gods」(34位)、「I Ain't Gonna Cry」(26位)とTOP40入りシングルが4作も生まれ、着実に知名度を高めていきます。

そんな成功の一方で、アルバム完成後にオリジナルドラマーのマイケル・リーが脱退し、THE CULTへ加入することに。リーに代わり、新たにマーク・リチャードソン(のちにSKUNK ANANSIEFEEDERにも加入)が加わり、ツアーを乗り切ります。そして、新たな布陣で完成させた勝負作となる3rdアルバム、なんと初の全英1位を獲得することになります。

前作で感じさせたハードロックの枠からの脱却、それがこのアルバムでは一気に開花しています。よりポップで華やか、それでいてサイケデリック調でオルタナティヴロック的な側面も強く感じさせるカラフルさは、当時国内専門誌で酷評されたことが記憶に残っています。いや、そんな狭い枠に捉われさえしなければ、本作は非常に完成度の高いロックアルバムとして評価できるはずなんですが。

過去作で見受けられたブラスをフィーチャーするスタイルは、リードシングル「Too Much Too Young」(全英22位)を筆頭に本作でも積極的に取り入れられています。しかもこの曲、コーラスでかのブライアン・アダムスもゲスト参加。コーラスというより、もはやサブボーカルと言ったほうがぴったりな目立ち具合なんですけどね。

このほかにも、適度な枯れ具合が心地よいミディアムチューン「Soapbox」(同33位)、ヒップホップ以降のファンキーさが活かされた「Don't Confuse Sex With Love」、ビートルズ調のサイケナンバー「Womankind」(同12位)、アコースティック色の強いバラード「The Colour Of Love」や「Sail Away」(同45位)、泣きメロっぽい湿り気がたまらないストレートなロック「I Was Not Wrong」、パワフルなギターリフとビートが気持ちよく響く「Tired Of Waiting For You」など、とにかく佳曲揃い。前作ほどのハード&ヘヴィさは皆無ながらも、ブラスを要所要所にフィーチャーした豪快なポップロックの数々で、最後まで飽きさせることなく楽しませてくれます。

グランジ全盛かつブリットポップ前夜の過渡期的時期に、こういった正統派サウンドで1位を獲ったこと自体奇跡的ですし、その成功もあって今作を携えたツアーではVAN HALENBON JOVIのサポートで本国を回るなど、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たそうとします。が、1位を獲得したものの、セールス的には期待以上の成績を収めることができず、彼らは続くベストアルバム『A LITTLE OF THE PAST』(1994年/全英20位)をもってメジャーのPolydor Recordsと契約終了。解散の道を選ぶこととなるのでした。

ちなみに、本作を含むLITTLE ANGELSのPolydor時代の3作品は2022年3月に国内廉価盤が再発されたものの、ストリーミングは国内未配信。できれば配信を通じてより多くの人に届くよう、お願いしたいところです。

 


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2023年1月25日 (水)

BRYAN ADAMS『GET UP』(2015)

2015年10月2日にリリースされたブライアン・アダムスの13thアルバム。日本盤は同年10月16日発売。

新作スタジオ音源としては70年代の名曲カバー集『TRACKS OF MY YEARS』(2014年)から約1年ぶり、新曲で構成されたオリジナルアルバムとしては『11』(2008年)から約7年半ぶりの新作。その7年の間には、『BARE BONES』(2010年)、『LIVE AT SYDNEY OPERA HOUSE』(2013年)とライブ作品も立て続けに発表されていたので、意外と空いた感覚はなかったですよね。

『11』では一部楽曲で盟友ロバート・ジョン“マット”ラングを迎え、基本的にセルフプロデュースで制作を進めていましたが、今作ではELOやTRAVELING WILBURYSのメンバーにしてジョージ・ハリスンやトム・ペティ、ポール・マッカートニーなどのプロデュースでも知られるジェフ・リンがトータルプロデュースを担当。全13曲で構成された本作ですが、新曲は9曲のみで、そのほかの4曲はその新曲のアコースティックバージョン(この別ていくのみブライアン自身がセルフプロデュース)。かつ、1曲1曲が2〜3分という古き良き時代のロック/ポップスを踏襲した構成で、アルバム自体約36分という短い尺なのです。これ、アコースティックバージョンを除いたら26分くらいなんですよ(苦笑)。

そんな短い内容ですが、どの曲もブライアンらしいキャッチーなポップロックばかり。直前にルーツ回帰的な『TRACKS OF MY YEARS』を経たこともあってか、従来の彼らしさにレイドバック感も加わり、かつジェフ・リンらしいサウンドメイクによってビートルズ・ライクな質感へと昇華されている。ソングライティング自体はブライアンとおなじみジム・ヴァランスとのタッグ中心なのですが、そもそもブライアン自身がこういうモードなんでしょう。

あと、『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)などでコラボしたフィル・ソーナリー(ex. THE CURE、ex. JOHNNY HATES JAZZ)も「That's Rock And Roll」でコライトしたほかギターを担当していたり、「Go Down Rockin'」で初期からの仲間であるキース・スコットがギターを弾いていたりするものの、レコーディングの大半をブライアンとジェフ・リンが担当しているのも、過去の代表作との大きな違いでしょうか。エンジニアリングやミキシングのみならず、演奏面でもジェフによる“ビートルズっぽさ”が大きく作用しているようです。

2023年時点での最新作『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)との共通点も見受けられ、現在に至る最新の基本スタイルはここでひとつ完成した感もあるのかな。もともと持ち合わせていた要素ではあるものの、ここまで特化させたのはヒット云々を抜きに、やりたいことをやって余生を過ごしたいという思いも強かったのかもしれません。もはや20〜30代の頃のようなメガヒットを狙うより、童心に帰って音楽を楽しむほうが合っている気がしますしね。

 


▼BRYAN ADAMS『GET UP』
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2022年7月31日 (日)

BRYAN ADAMS『CLASSIC PT.II』(2022)

2022年7月29日にデジタルリリースされたブライアン・アダムスのリレコーディング・アルバム。

本作は今年4月に発売された『CLASSIC』(2022年)に続く、80〜90年代の代表曲/隠れた名曲をオリジナルに沿ってセルフカバーしつつ現代的に仕上げた再録ベストアルバム第2弾。本作の制作理由については前回のレビューで事実/憶測含めて触れていますが、オリジナルのマスターテープが返却されない以上、だったら再録して自由に扱うしかないわなという10年くらい前のDEF LEPPARDと同じ状況なわけですね。

前作は代表曲に意外なレア曲(デビューアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)収録曲「Hidin' From Love」や、38 SPECIALに提供した「Teacher, Teacher」セルフカバー)を含めた興味深い内容でしたが、今作は90年代の楽曲が中心。前作は8曲/約35分という尺でしたが、今作は7曲/30分というミニアルバムにも近いボリューム。けど、サブスク全盛の今となってはこれくらいがちょうどいいのかもしれません。

80年代の楽曲は3rdアルバム『CUTS LIKE A KNIFE』(1983年)からタイトルトラック「Cuts Like A Knife」のみ、ほかは6thアルバム『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)から大ヒット曲「Can't Stop This Thing We Started」、7thアルバム『18 'TIL I DIE』(1996年)から「Have You Ever Really Loved A Woman?」、ライブアルバム『MTV Unplugged』(1997年)のみ収録のオリジナル曲「Back To You」「When You Love Someone」のスタジオテイク、8thアルバム『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)からは原曲どおり再びメラニー・Cをゲストに迎えた「When You're Gone」、そして9thアルバム『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』(2002年)から「Here I Am」という内訳。目玉はアンプラグドライブ初出でスタジオ音源化にまで至らなかった「Back To You」と「When You Love Someone」が、ここで初めてスタジオ録音されたということでしょうか(「When You Love Someone」はかつて、YouTubeの再録企画で披露されていましたが)。

どの曲もオリジナルテイクを忠実に再現しているものの、要所要所に数々のライブを経て培われたアレンジ/フレーズも付け加えられており、そこが新鮮に響いたりもします。また、「Can't Stop This Thing We Started」のように原曲がフェードアウトで終わっていたところを、このリレコーディング版では完奏するカットアウト方式が採られています。すべての曲がカットアウトで終わるので、そこも含めて今っぽいなと思ったり思わなかったり。

普通のベスト盤だったら1983年と2002年の録音が並列されるわけですから、音質やテクノロジーの差が気になってしまいますが、今作でのリメイクは当時の空気感(バンドサウンドの質感など)を絶妙に再現しつつも、時代の異なる楽曲が並んでも違和感を覚えないような工夫が施されており、7曲入りのいち作品としてスムーズに楽しむことができます。例えば、いかにもマット・ラング的なサウンドメイクを再現した「Can't Stop This Thing We Started」の次にシンプルなバンドサウンドの「Cuts Like A Knite」、アンプラグドライブでの生感を重視した録音の「Back To You」が並んでも、不思議とバラバラな印象は受けない。そこは録音やミックスよりも、マスタリングによる効果が大きいのかな。

原曲原理主義という一部の方には再録って不評かもしれませんが、ライブでは過去の楽曲を今の技術/表現で演奏しているわけですから、本作は感覚的にはそれと一緒なんですよね。ということで、最新オリジナルアルバム『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)のモードで演奏された過去の名曲と捉えれば、今作はスッと受け入れられるのではないでしょうか。主な大ヒット曲をこの2枚で押さえられている気もしますが、きっと今後も続く企画だと思うので、ここからは意外なセレクト(個人的には『INTO THE FIRE』(1987年)あたりの隠れた名曲カバー)にも期待したいところです。

 


▼BRYAN ADAMS『CLASSIC PT.II』
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2022年4月10日 (日)

BRYAN ADAMS『CLASSIC』(2022)

2022年4月1日にデジタルリリースされたブライアン・アダムスのリレコーディング・アルバム。

2022年に入ってからのブライアン・アダムスの精力的なリリース活動には、目を見張るものがあります。まず、3月4日にミュージカル『PRETTY WOMAN - THE MUSICAL』に提供した楽曲をセルフカバーした新録アルバム『PRETTY WOMAN - THE MUSICAL』をデジタルリリースし、翌週11日には3年ぶりのオリジナルアルバム『SO HAPPY IT HURTS』をフィジカル&デジタルで発表。そこから1ヶ月経たずして今回のリリースですからね。1ヶ月にアルバム3枚って、サブスク全盛のこの時代じゃなかったらレコード会社に嫌がられるだけですからね(ちなみに、オリジナルアルバム『SO HAPPY IT HURTS』以外の2枚はレーベルを通さず、自身の音楽出版会社Badams Music経由で発表)。

さて、今回の再録アルバムについて。当初、ブライアンはUniversal在籍時のカタログのマスターテープをすべて返却することを求めたそうですが、これをレーベルが拒否。「だったら、新たに録り直すよ」ということで、この企画に至ったんだとか。おそらく、膨大な数のマスターテープが焼失した2008年6月の米・Universal Studios火災の中には、ブライアンの名作アルバムのマスターも含まれていたのではないでしょうか(あくまで勝手な想像ですが)。また、ブライアンは数年前のライブでテイラー・スウィフトと「Summer Of '69」をコラボしたことにも触れ、彼女が最近取り掛かっている過去のアルバムのリレコーディング企画も今回の参考になったと述べています。

ということで実現したこの企画ですが、今回は全8曲/約34分という非常に現代的なコンパクトさでまとまっています。選曲的には先の「Summer Of '69」や「Heaven」「Run To You」といった大ヒット作『RECKLESS』(1984年)収録曲に加え、90年代のメガヒットナンバー「Everything I Do (I Do It For You)」、初のベストアルバム『SO FAR SO GOOD』(1993年)から名バラード「Please Forgive Me」、初の全米TOP10入りを果たした「Straight From The Heart」、デビューアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)の冒頭を飾る「Hidin' From Love」、そして38 SPECIALに提供した映画『TEACHERS』(邦題は『りんご白書』)サウンドトラック収録曲「Teacher, Teacher」のセルフカバーというレアトラックを含む、非常にバランスの取れた内容。

事前になんの情報もなくこのアルバムに初めて触れたとき、「Summer Of '69」を聴いたときは原曲に忠実なアレンジ/演奏なだったこともあり、リテイクだとまったく気付きませんでした。なので、「既存曲ばかりだし、またあとで聴くか」くらいな気持ちで放っておいたのですが、よくよく聴けばちょっとしたボーカルの節回しやトーンの違い(原曲制作時から35年以上加齢しているので、そりゃ違いますよね)も見つけられる。けど、この曲に関してはエンディングがフェードアウトではないことで初めて「あ、やっぱり違うバージョンなんだ」と気付くくらい、違和感のない仕上がりだったのです。

それこそ、M-2「Everything I Do (I Do It For You)」やM-3「Heaven」のボーカリゼーションや演奏のタッチの違い、新たに加えられたフェイクなどを耳にして「ああ、完全新録音だ!」と納得するぐらい、本作の演奏/アレンジは原曲に忠実なのです。それこそ、シンセの音色やドラムの質感も忠実にこだわっており、「Everything I Do (I Do It For You)」のみ異質なドラムサウンド(ジョン・“マット”・ラングらしいDEF LEPPARD的ビッグサウンド)が際立つぐらい。逆に、ほかの楽曲は『RECKLESS』的な質感で統一されていることにより、単なる寄せ集めとは異なるまとまりが伝わります。それこそ「Hidin' From Love」なんてアレンジ自体は原曲に近いのに、その演奏と音質の違いによって新しい魅力が伝わるほどの良セルフカバーに仕上がったのではないでしょうか。

と同時に、38 SPECIALの原曲を知らない人には新曲感覚で触れることができる「Teacher, Teacher」は、時期的にも1984年の楽曲という、3rdアルバム『CUTS LIKE A KNIFE』(1983年)〜4thアルバム『RECKLESS』期の、脂が乗り切ったブライアン(とジム・バランス)による良曲。最新作『SO HAPPY IT HURTS』とはまた違った、青臭さの残ったロックンロールを堪能できるはずです。

ブライアンによると、この『CLASSIC』は第2弾も年内リリース予定とのことで、今後も定期的にデジタル経由で発表されることになりそうです。あまり日の目を見る機会のない初期2作の楽曲含め、今の音で蘇る名曲たちを楽しむことができる、絶好の機会になりそうですね。

 


▼BRYAN ADAMS『CLASSIC』
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