BULLET FOR MY VALENTINE『VENOM』(2015)
2015年8月14日にリリースされたBULLET FOR MY VALENTINEの5thアルバム。日本盤は同年8月19日発売。
3作目『FEVER』(2010年)で手に入れたモダンメタル路線でしたが、続く前作『TEMPER TEMPER』(2013年)ではヘヴィさ/アグレッシヴさが若干復調したことで中途半端な内容となってしまった。そこでバンドは、このアグレッションを再び初期〜2ndアルバム『SCREAM AIM FIRE』(2008年)頃までのそれに引き戻すことにトライします。
プロデューサーには初期作を手がけたコリン・リチャードソン(CARCASS、FUNERAL FOR A FRIEND、MACHINE HEADなど)と、以降バンドと長きにわたりタッグを組むことになるカール・ボウン(WHILE SHE SLEEPS、FIGHTSTAR、BUSTEDなど)を迎えた本作は、モダンメタル的な側面よりも『SCREAM AIM FIRE』やその前の1stアルバム『THE POISON』(2006年)で繰り広げられた攻撃的なスタイルへと回帰。オープニングを飾る「No Way Out」や「Army Of Noise」のようなスピードチューンはまさにその2作を彷彿とさせるものがあり、前2作ななんだったんだ?と言いたくなるくらいの開き直りが感じられます。
とはいえ、『FEVER』以降に手に入れたスタジアムロック路線も完全に捨てたのではなく、「You Want A Battle? (Here's A War)」や「Venom」あたりにその片鱗を残している。とはいえ、本作では統一感を出すために初期スタイルの味付けが施されており、結果として『SCREAM AIM FIRE』をより広く伝わるような形に進化させたスタイルのようにも受け取れる。全体的な舵切りも前2作がスタジアムロック寄りだとしたら、今作はエッジの効いたヘヴィメタル路線。ただ、単なる焼き直しというわけではなく、過去2作での経験が活きた原点回帰なので、退行というわけでもなく進化した姿を見せている。ある意味で、このバンドにおける(2015年当時の)集大成といえる1枚ではないでしょうか。
本作の海外デラックス盤および日本盤にはボーナストラックとして、アルバムから漏れた新曲群のほか、今作への布石となった2013年のシングル「Raising Hell」などを追加収録。海外盤と日本盤とでは収録内容が若干異なり、日本盤には「4 Words (To Choke Upon)」などのライブ音源、海外盤にはMOTÖRHEAD「Ace Of Spades」のカバーがそれぞれ収められています。前作がAC/DCで今作がMOTÖRHEADというのも、なんだか象徴的ですよね。
数字的には全米8位/全英3位という好記録を残しますが、今作のレコーディング終了後にバンドの要であったジェイソン・ジェイ・ジェイムズ(B, Vo)が脱退。本作を携えたツアー終了後にはマイケル・ムース・トーマス(Dr)も脱退と、本作がデビュー時からの黄金期メンバーが参加した最後のアルバムとなってしまいました。
▼BULLET FOR MY VALENTINE『VENOM』
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