BULLETBOYS『FREAKSHOW』(1991)
1991年3月12日にリリースされたBULLETBOYSの2ndアルバム。日本盤は同年4月25日発売。
「Smooth Up In Ya」(全米71位)、THE O'JAYSのカバー「For The Love Of Money」(同78位)といったシングルヒットのおかげで、デビューアルバム『BULLETBOYS』(1988年)はアメリカで最高34位という好記録を残したBULLETBOYS。これに続く2年半ぶりの新作は、成功を収めた同作を踏襲する作風で仕上げられています。
プロデューサーは前作から引き続きテッド・テンプルマン(VAN HALEN、デヴィッド・リー・ロス、サミー・ヘイガー、AEROSMITHなど)が担当。カバー曲を含む構成も前作同様で、今作ではトム・ウェイツ「Hang On St. Christopher」、ブルースマンのJ.B.ルノア「Talk To Your Daughter」という通好みの選曲となっています。
VAN HALENフォロワー的なスタイルは前作同様ですが、楽曲の幅が少し広がり始めている印象を受けます。例えば、前作における「Smooth Up In Ya」をよりグルーヴィーに進化させたリード曲「THC Groove」などは、EXTREMEあたりにも通ずるファンクメタルの側面が感じられますし、「Hang On St. Christopher」でのパーカッシヴなアレンジも同様(この曲ではTHE DOOBIE BROTHERSなどで活躍したボビー・ラカインドがコンゴでゲスト参加)。タイトルトラック「Freakshow」での跳ね気味なリズムもその流れにあるものと言えます。
BULLETBOYS自身が「これからはファンクメタルだ!」と思ったかどうかは定かではありませんが、王道アメリカンハードロックにブラックミュージックのテイストを織り交ぜていくスタイルは、別に今に始まったことではなく、そもそもVAN HALENにもその色合いは少なからず含まれているので、この進化はごく当たり前のものだったのかもしれません。
ただ、そこを踏まえても楽曲の質感やバリエーションが少し広まり始めたのは、バンドとしての進化と捉えることができるでしょう。完成度自体は前作よりも質が上がっているのは間違いありませんし、マーク・トリエン(Vo)の表現力も少し上がっている。中でもミック・スウェダ(G)のアレンジ力は前作の比ではないほどに上昇しており、デビュー作の成功がバンドにもたらしたものは相当大きかったことが伺えます。
もうひとつ興味深いことに、本作を覆うダークさからはのちのグランジやグルーヴメタルのそれと近いものも感じられるんですよね。例えば先の「THC Groove」もそうですし、後半の「Goodgirl」もそう。「Do Me Raw」なんてALICE IN CHAINSあたりとの共通点も見出せる。思えばALICE IN CHAISも、結成当初はヘアメタルバンドでしたからね。BULLETBOYSが単に時代の先を読むことに長けていたのか、それとも「売れてるものは全部パ○れ!」精神だったのか……(後者のような気がしないでもない。笑)。
90年代初頭のヘアメタルバンドのアルバムとしては当時の流行が反映された、非常に聴き応えのある1枚だと思います。1991年という過渡期に発表された作品であることも災い、かつバンドがバンドなのでちゃんと正当評価されていない気がしますが、リリースから30年経った節目の今こそちゃんと評価されるべき1枚だと思います。
なお、本作はアメリカで最高69位まで上昇。大きなシングルヒットは生まれませんでしたが、「Hang On St. Christopher」はBillboard Mainstream Rockチャートで22位を記録しています。
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