BURNING WITCHES『THE WITCH OF THE NORTH』(2021)
2021年5月28日にリリースされたBURNING WITCHESの4thアルバム。
新たなフロント・ウーマンであるローラを迎えて制作した前作『DANCE WITH THE DEVIL』(2020年)から1年1ヶ月という非常に短いスパンで届けられた本作。おそらくこのコロナ禍で活動が停滞してしまうのを恐れ、こうした強硬手段に挑んだのでしょう。基本的には前作の延長線上にある作風と言えますが、今回はオペラシンガーをゲストに迎えるなど新たなトライも見受けられ、的が絞られ始めている印象を受けます。
これまで同様、DESTRUCTIONのシュミーアやV.O.プルヴァーのほか、今回は同じくDESTRUCTIONのギタリスト・ダミアも制作に参加。ローラの歌声も2作目ということもあり、聴き手側も慣れ初めており、前作で少々感じられた違和感がほぼ払拭されています。また、スラッシュメタル/スピードメタルのスリリングさとミドルテンポの重厚感をバランスよく織り交ぜた前作までの作風から、今作では後者側に比重を強め始めています。もちろん、速い曲は豊富に用意されているのですが、今作ではその“見せ方”に大きな変化が感じられるのです。
それは、これまで続いた「短いイントロダクション〜ファストナンバー」というオープニング構成が解体され、今作ではトラッドミュージック風のインスト「Winter's Wrath」からミディアムテンポのパワーメタル「The Witch Of The North」、ミドル&ファストが交互に訪れる「Tainted Ritual」という新たな構成が組まれていることからもご理解いただけるでしょう。
また、前任シンガーのセイレナよりもアクが強く聞こえるローラの歌声は、実はアップチューンよりもドスの効いたミドルヘヴィナンバーのほうが似合っており、緩急に富んだドラマチックな「Flight Of The Valkyries」や「Nine Worlds」、オペラボーカルをフィーチャーしたパワーバラード「Lady Of The Woods」、オーソドックスなハードロック「For Eternity」などはローラが歌ってこその楽曲だと言えるでしょう。そういった意味では、シンガーの特性に合わせて方向性が変化するのは、バンドを長く続ける上で必要な舵取りであり、本作ではその変化と本格的に向き合った過渡期1枚と言えなくもありません。短いスパンで2作立て続けにアルバムを制作した裏側には、実はそういった事情も含まれているのかもしれませんね。
となると、本当に意味で評価されるべきなのは続く5作目のアルバムということになるのでしょうか。そこでどう化けるかで、この4作目の評価もさらに変わってくるような気がします。なので、(良いアルバムだとは思うものの)本格的な良し悪しは次作発表時まで持ち越したいと思います。
なお、アルバムのたびに恒例となったカバー曲。今回はSAVATAGEの名クラシックチューン「Hall Of The Mountain King」にチャレンジしていますが、このアルバムの作風にもぴったりなセレクトで、MANOWARチックな漢気あふれるアレンジ含めなかなかの仕上がりです。
▼BURNING WITCHES『THE WITCH OF THE NORTH』
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