CANE HILL『TOO FAR GONE』(2018)
アメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズ出身の4人組メタルコアバンド、CANE HILLの2ndアルバム。デビューアルバム『SMILE』(2016年)発表後はBULLET FOR MY VALENTINEやASKING ALEXANDRIA、ATREYUなどのヘッドラインツアーでサポートアクトを務めたほか、『VANS WARPED TOUR』に参加して実力/知名度を高めていったようです。
人気インディーレーベル「Rise Records」から発表された本作は、基本的に前作の延長線上にある内容ですが、激しさはそのままに、よりキャッチーさが増したように感じられます。
ミドルテンポ中心でグルーヴィーな作風は90年代後半以降のヘヴィロックからの影響が強く感じられるし、なおかつALICE IN CHAINSやSTONE TEMPLE PILOTSあたりのグランジバンドが持っていた危うさや、カオティックハードコアバンドらしい狂気性も備えている。ハーモニーのかまし方こそ90年代後半以降のバンドっぽいですが、僕はそこになんとなく「グランジの突然変異」的な色合いを感じました。
でもね、今AICやSTPの名前を挙げてみたものの、実は具体的に「このバンドっぽい」とか「誰それのパクリ」みたいな明確さが見えてこないのも、実はこのバンドの特徴なんじゃないかと思っていて。確かにKORNやTOOLなど90年代後半のシーンを席巻したバンドたちからの影響は、テイストとしていたるところから感じられるのだけど、直接的に「ここが誰っぽい!」という表現は少なく、そこが現代的な味付けで上手にミックスされているからこそ、「CANE HILLらしさ」が確立できているのではないでしょうか。
だから、もし1998年や2001年にこのバンドと出会っていたとしたら、「めっちゃ新しい音のバンドが出てきた!」と大喜びして聴きまくっていたんじゃないかな。
と同時に、現時点において「CANE HILLらしさ」はできているものの、「他のバンドとはここが違う!」という絶対的な個性がまだ見つけられていないという現実もあるわけで。同系統のサウンドを持つバンドたちと比べたら頭ひとつ抜きん出た印象はあるものの、そこからさらに上に行くにはそういった個性を見つけることがこのバンドには必要なんじゃないか、と思いました。
そのためには、まずは多くの人にもっと知ってもらうこと、聴いてもらうこと、観てもらうことが急務かな。本当は今年日本で初開催が決まった『VANS WARPED TOUR』に出演するといいんじゃないかと思うんですよね。
まあ個人的には、不思議とクセになる1枚なので、これからも頻繁に聴くことになると思います。