2017/10/21

CARCASS『HEARTWORK』(1993)

CARCASSが1993年秋に発表した、通算4枚目のスタジオアルバム。当時の編成はジェフ・ウォーカー(Vo, B)、ビル・スティアー(G, Vo)、ケン・オーウェン(Dr)に現ARCH ENEMYのマイケル・アモット(G)。もともとはアモットを除く3人編成でグラインドコア/ゴアグラインドバンドとして活躍していたものの、前作『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』(1991年/邦題は『屍体愛好癖』)からアモットが加わったことでツインギター編成になり、ギターリフで巧みに構築されたメタリックなバンドサウンドと、ギターソロをフィーチャーしたヘヴィメタル的方向性にシフトチェンジ。前作でも聴けたそのメロウな要素がより強化されたのが、本作『HEARTWORK』なわけです。

今となってはメロディックデスメタルというカテゴリーは、メタルファンの間で当たり前のように定着していますが、当時は“メロデス”なんて呼び名はまだ存在しておらず、単にCARCASSがデスメタル寄りのグラインドコアだったことから“メロディアスな要素が強いデスメタル”と認識されてしまったわけです。

確かに表題曲(名曲!)や「This Mortal Coil」あたりで聴けるツインリードは完全にヘヴィメタルのそれだし、メロディアスなギターソロも完全にあっち側。時折ブラストビートなんかも飛び込んでくるものの、ボーカルさえ歌メロをしっかり歌っていたらIRON MAIDENあたりにも通ずるものがあるんじゃないでしょうか。

『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』が大好きだった自分からすると、この変化には正直最初こそ拒否反応を示しましたが、聴き込めば聴き込むほどにハマッていく自分がいたのも確か。「Heartwork」のリードなんて完全にコピーしてたもんなぁ。

グラインドコアから出発したバンドが、プログレッシヴなエクストリームメタル路線へと移行し、そこからさらに正統派HR/HM(例えばTHIN LIZZYIRON MAIDENなど)側のカラーを強めていった。本作はアルバムごとに変化と進化を繰り返してきたCARCASSがアモットという個性を手にしたことで(それに呼応するかのごとく、ビルのプレイもHR/HM化したことで)到達した、ひとつの到達点だったのかもしれません。

結局アモットは本作発表後にバンドを脱退。翌1994年には念願の初来日が実現するのでした。アモット自身は自身のハードロック志向を追求するバンドSPIRITUAL BEGGARSを結成し、1996年には『HEARTWORK』でのメロデス路線をさらに極めるためのプロジェクト(のちのバンド)ARCH ENEMYを立ち上げることになります。

一方のCARCASSは3年後に5thアルバム『SWANSONG』を発表するのですが、それについてはまた別の機会に。

あ、ちなみに僕、ビル・スティアー派です。好きなギタリストを3人挙げろと言われたら、そのうちの1人に間違いなくビルをピックアップします。



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投稿: 2017 10 21 12:00 午前 [1993年の作品, Arch Enemy, Carcass] | 固定リンク

2017/10/17

ARCH ENEMY『BLACK EARTH』(1996)

今やスウェーデンが誇る人気メロディックデスメタルバンドに成長したARCH ENEMYが、1996年に発表したデビューアルバム。当初このバンドは1枚こっきりのプロジェクトとして誕生したのですが、本作に対する評価が日本で高かったこと、また翌1997年に実現した初来日公演(CATHEDRALジャパンツアーへの帯同)での高評価が後押しし、本格的なバンドとして継続。以降、フロントマン(からフロントウーマンへ)の交代などありましたが、現在に至るまで日本をはじめヨーロッパなどで人気を博しています。

メロディックデスメタル自体、ARCH ENEMYの首謀者であるマイケル・アモット(G)がCARCASS時代の名作『HEARTWORK』(1993年)で提示したスタイルが原型などと言われていますが、このARCH ENEMYでマイケルはひとつの完成形を見せたと言っていいかもしれません。

レコーディングメンバーはマイケルのほか、実弟のクリストファー・アモット(G)、現在もバンドに在籍するダニエル・アーランドソン(Dr)、そしてヨハン・リーヴァ(Vo, B)。ヨハンはベース兼任となっています(クレジットにもこう書いてあります)が、実際にはマイケルが弾いていたようです。

さて。最近のARCH ENEMYSか知らない人には、男性ボーカルが歌っている事実に驚くかもしれませんが、この頃このバンドに出会った人間からすると、のちのアンジェラ・ゴソウ嬢の加入のほうが衝撃だったわけですよ。だって、先に音だけ聴かされて「いいボーカル入ったなぁ」と思ってたら、それが女性だと後日発表されたわけですから。まあ、そのへんの話についてはまた改めて。

で、本作ですが、やっぱり今聴いても良いですね。最近の楽曲ほど洗練されておらず、野暮ったさすら漂う楽曲の数々からはパンキッシュさすら感じられます。それもこれも、ヨハンのボーカルによるものが大きいのではないでしょうか。やれ下手だの言われていましたが、あの当時のデスメタルってこれでも十分に許された雰囲気もありましたよね? あれ、そんなことなかったっけ?

ちなみに、僕は最初にこのアルバムを聴いたときは、オープニングの「Bury Me An Angel」にこそのめり込みましたが、それ以外はちょっと拒絶反応があったかも……ぶっちゃけ、このバンドのことを本気で良いなと思ったのは3枚目の『BURNING BRIDGES』(1999年)からで、それ以降に聴き返したら「あれ、やっぱり良いじゃん」と思えるようになった口なので。

「Bury Me An Angel」は言うに及ばす、続く「Dark Insanity」もカッコ良いし、ヘヴィなミドルチューン「Eureka」も「Idolatress」もMETALLICA以降のHR/HMが持つカッコ良さが独自の解釈でしっかり昇華されている。かと思うと「Demoniality」みたいにドゥーミーなインストがあったり、アコースティックテイストの叙情的なインスト「Time Capsule」からクライマックスの「Fields Of Desolation」(エンディングのツインリードに鳥肌!)へと続いていくエンディングもあって……あれ、これ名盤じゃん(笑)。

ご存知のとおり、ヨハン、マイケル、クリストファー、ダニエル、そして現在もメンバーのシャーリー・ダンジェロ(B)という『BURNING BRIDGES』時のメンバーが昨年、『BLACK EARTH』発売20周年を記念してARCH ENEMY名義ではない“BLACK EARTH”名義で日本公演を敢行。その模様を収めたライブDVD+CDを先日発売し、さらには『LOUD PARK 2017』2日目にシークレットアクトとしてサプライズ出演を果たしたばかり。幸い僕も数曲のみですが、彼らの勇姿を目にすることができました。残念ながら冒頭の「Bury Me An Angel」には間に合わなかったものの、ラストナンバー「Fields Of Desolation」はしっかり堪能できたので、本当に幸せでした……。

ARCH ENEMY自体、最新作『WILL TO POWER』も素晴らしかったですし、こうして初期メンバーで遊んだりもできるという意味では、現在非常に充実した状況なんでしょうね。まあ何はともあれ、このデビューアルバムは彼らの原点であると同時にメロディックデスメタルを語る上では欠かせない重要作なので、最近の彼らしか知らない人はもちろんのこと、90年代のメタルシーンがすっぽり抜けているという人にもぜひ聴いてもらいたい1枚です。

なお、本作は現在までに何度か再発されていますが、2010年代に入ってからリマスタリング&ボーナストラックを多数追加した新エディションも流通しております。ジャケットがオリジナルとは異なりますが、こちらのほうがオリジナル版よりもはるかに音の分離が良いので(特にギターが)、これから購入しようと考えている方はぜひ新エディションの購入をオススメします。



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投稿: 2017 10 17 12:00 午前 [1996年の作品, Arch Enemy, Black Earth, Carcass] | 固定リンク