2003/12/28

クラムボン『imagination』(2003)

最初に断っておきますが、俺はクラムボンに関しては殆ど素人というか、初心者に限りなく近い存在です。だって聴いたことがある作品が、以前リリースされた再構築盤「Re-clammbon」と今年夏にリリースされたベスト盤だけ。あとは岡村靖幸トリビュートでカバーしてた "カルアミルク" とか、ホントそのくらい。そんな人間が初めてオリジナルアルバムに触れる機会を得た。とにかく前評判が高かったこの5作目のオリジナルアルバム「imagination」なんですが‥‥驚いた、というのが正直な感想。こんなにも判りやすかったっけ!?という、ね‥‥

どうしても彼等に対して俺、小難しいイメージがあったのよ。多分リコンストラクト盤とかから入ったからなんでしょうけど‥‥ポップ職人というよりも、もっとマニアックな世界観を大切にする、そんなユニットのような印象がずっとあって。更に原田郁子さんの声がね、そういう俺の気持ちを増長させるかのようなタイプなわけ。人間ってさ、一度そういった印象持っちゃうと、それが固定観念として残って、暫く聴かず嫌いになったりしない? 正にそれでさ、俺。ベスト盤とか買ってみたものの、数回聴いて、その後は聴く頻度がそんなに多くなかったのね(最近はよく聴き返してるんですが)。

で、このアルバム。まず聴く前に評判の良さを耳にしていたんで、ちょっと意地悪に「ふふふ、そんなにいいのか? だったら聴いてやろうじゃねぇか!」くらいの心構えでアルバムに臨んだわけですよ。もうね、ちょっとでも気に入らないところがあったら、それこそレビューしないで‥‥いや、レビューで「いいんだけどさ‥‥」とか遠回しに「判んねぇーよ!」ってのを書いてやろうかと。嫌な奴だね俺。ところがさ‥‥全然。貶すどころが、目下連続リピート記録更新中でして。後を引くアルバム?っていうのかな‥‥兎に角「余韻」を大切にする、聴き終えた後に非常に気持ちよくなれる作品だと感じたわけ。しかも聴きやすい。これが最大のポイントね。小難しさが減退してるのよ(少なくとも俺にとってはね)。

どうやら前作辺りからいろいろ変化を続けてるらしいんだけど、俺にとってはこのアルバムでの変化は非常に嬉しい方向に進んでるように思います。まず生音を重視したアレンジ。所々にエレクトロニカ的要素も感じつつ(例えば海外でいうとMUM辺りと同じ香りがしたりして)、全体を覆うのはそういった冷たさではなくて、あくまで暖かみ。それも人肌の暖かさ。適温なのよ。そういったエレクトロニカ的な色合いを持ちながらも緩やかに、まるで朝陽が昇っていくかのように段々と温度の上昇が感じられるイントロダクション "いってらっしゃい" からスタートして、緩やかなテンポの曲が10曲続き、最後に再びスタート地点に戻り、今度はゆっくりと太陽が沈んでいくかのようなアウトロ "おかえり" で終わるアルバム構成。しかも間にある10曲の歌は、全て人間らしいテンポと人間らしい温度と人間らしい高揚感と人間らしい安らぎを持ち合わせている‥‥ここが一番大事なわけ。ただ緩いだけじゃないのね。

例えば、音楽がマニアックでカルトになればなる程、そういった人肌の暖かが段々と希釈されていく。逆にポップになるにしても、人工甘味料をこれでもかと注ぎ込んだポップさとなると、その人肌の暖かさが過剰過ぎて煩わしく感じられたりする。

今回のクラムボンのアルバムを聴いてると、ミュージシャンとしてのマニアックさも十分に持ち合わせながらも決して突き放し感がない、そして程良いポップさが満遍なく散りばめられている。それは後からシュガーコーティングしたものではなくて、素材本来が持つポップさ。紙一重でそういった絶妙のバランスを保ちながらも、最終的には人としての暖かみ‥‥つまりポップさが前面に出てしまう。それがこの「imagination」というアルバムなのではないか、と俺は思うわけです。

「いや、クラムボンは前からこうだったよ!」とファンから力説されてしまうと返す言葉もないわけですが、少なくとも以前上に書いたような小難しい固定観念を持っていた俺にすれば、この発見は非常に大きいわけ。勿論、そんな理屈っぽく考えながらこのアルバムを聴いてるわけじゃないですよ(レビューを書く上で、今こういうことを初めて考えてみたわけですからね)。だってさ、このアルバムに接している時は俺、本当に無心でその気持ちよさに身を寄せているだけなんだから‥‥いやー、多くの人がこのアルバムを絶賛する理由、よ~く判りました。本当にいいアルバムですよ、これ。間違いない。



▼クラムボン『imagination』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 12 28 12:00 午前 [2003年の作品, クラムボン] | 固定リンク