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2004年4月25日 (日)

尾崎豊『回帰線』(1985)

  あれから13回目の春。俺は相変わらずグダグダな生活を送ってます。尾崎豊がこの世を去って12年。気づけば彼が亡くなった時の年齢を大幅に越え30代に突入‥‥けど、このアルバムを聴けば、何時でも初めて聴いた中学生の頃に、そして熱心に聴いた19~20歳の頃に戻れる、そんなアルバム。それが尾崎のセカンドアルバム「回帰線」。

  1985年3月にリリースされたこのアルバム、先行シングルとしてリリースされたシングル "卒業" がヒットしたことを受けて発表、見事初登場1位を記録。シングル曲はこれと、カップリングだった "Scrambling Rock'n'Roll" 以外ないのだけど、他にも "ダンスホール" や "シェリー" といった有名曲を含むアルバムで、所謂「十代三部作」と呼ばれる初期3作の中で、個人的には作品として最も完成度が高いと思っている1枚。今聴くとやっぱり時代を感じさせるアレンジや演奏だったりする面もあるんだけど、やっぱり「歌」の響きは20年近く経った今も全く色褪せてないな、と。リマスターとかして再発すればいいのに‥‥とさえ思うんですが‥‥まぁ今度再発されたらきっとCCCDになっちゃうんだろうなぁ‥‥

  1st「十七歳の地図」は、まだ高校生だった尾崎が、10代半ばの視点で作られた楽曲で埋め尽くされていて、所々に背伸びしてる面も感じられたりして、ちょっと聴いてて切ないアルバムだったんだけど、それがこのアルバムになると、急に「痛み」を強く感じるようになるんだよね。メジャーデビューして、高校を中退したまま社会に放り込まれ、周りの友人達とは違った道を歩み出したハタチ前の尾崎が感じたことを、ストレートに綴った歌詞‥‥確かにね、青臭さって意味で言えばファーストと近いものがあるし、30代の視点で見れば「う~ん‥‥」と言わざるを得ない面も多々あるわけですが、これを尾崎が歌ったから納得できたんだよな、俺。もしこれを他の奴に我が物顔で歌われても‥‥共感出来なかったと思うし。

  ま、歌詞については‥‥実際に読んで判断して欲しいな。最近、いろんなところで「今の10代に尾崎を聴かせ‥‥」みたいな話を目に/耳にするんですが、やっぱり尾崎が通用するのって今の20代後半くらいまで‥‥「あの頃」を10代に通過した世代くらいまでなのかなぁ‥‥なんて思うと、ちょっと悲しく、そして切なく感じたりするんですが。通じないのかな、もうここで歌われてるようなことって‥‥

  凄く個人的な話で恐縮ですが‥‥俺、10~20代の頃、バンドやってまして。それでメシ食おうと思って、専門学校まで行ったのに就職しないでフリーターやりながらバンドやって。ま、尾崎が亡くなった頃はまだ学生だったんですけどね。それでも毎晩夜中までバイトして、それを全部バンドにつぎ込んで。楽器買ったりスタジオ代にしたりレコーディング費用にしたりライヴに充てたり。とにかく、バンドやるのってこんなにも金がかかるんだ‥‥って実感した頃で。

  その頃やってたバンドって、全部英語の歌詞だったのね。それはもう、完全にワールドワイドを目指してたから。本気でイギリスに行ってライヴやるって、その伝までマジで作って。歌詞を書いてたのはボーカルやってた俺なんだけど、全然違和感なくやってたのね。元々洋楽指向だったし、全然問題なかった。

  ところがさ‥‥尾崎の死に直面して。それまでも尾崎は好きで聴いてたんだけど、改めてファーストから当時の最新作「誕生」までを一晩ぶっ続けで聴いて‥‥そしたら、日本語で歌うことがとても大切なんじゃないか、って思えてきて。確かに俺はワールドワイドで活躍したいって思ってる。けど、今現在目の前で相手にしているのは、同じ言語を喋る日本人だろ。その日本人にまず理解されるのが最初なんじゃないの?って。バンド結成当初は「日本になんかホントのロックなんて存在しねーよ。こいつらに理解できないから海外行こうぜ!」とかいきがって行ってたけど、結局それって単なる「逃げ」だったんじゃないかな‥‥そう思えちゃったのね。そうしたら居ても立ってもいられなくなって、寝ずに日本語の歌詞を書き始めて‥‥次の日、それ持ってバンドのメンバーの所へ行ったんだけど‥‥全部却下されて。結局また英語で歌う日々。その頃からだよね、初めて路上でギタ-1本で弾き語りをやるようになったの。尾崎が死んで、路上で尾崎の曲を歌う人はかなり増えた。だから俺は尾崎は歌わなかった。その代わり、同じように好きだった佐野元春とか自分の歌を歌ってた。そうすることで自分自身のバランスを保ってた。けどさ‥‥1年持たなかったね、バンドは。結局分裂して。解散って形を取ったけど、俺と他のメンバーが分裂した形。俺はそのままソロでまた路上に戻って、時々ライヴハウスで歌って。仲の良かった友人にバックを手伝ってもらったりしながらね。で、分裂した楽器隊の方は新しいボーカルを捜しながら別のバンドを結成して。暫くして気づいたら、何故か俺がそのバンドでリズムギター弾いてたりもして。勿論歌わなかったけど(正確には歌わせてもらえなかった)。

  3年くらい経って、またその時のメンバーの数人とバンドを組んで。その時は日本語で歌った。当時、俺がやってたソロライヴをメンバーが観に来て、俺の歌と、俺の歌詞に共感してくれて。また一緒になることになってね。ま、そのバンドは結局、俺が帰省することになって解散しちゃったんだけどさ。

  尾崎のこのセカンドを聴くと、自分がバンドを真剣にやっていたその頃のことを思い出すんだよね。影響を受けないように、受けないようにと思いながらも、結局は一番よく聴いてたのがこのアルバムと元春の「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」だったんだよね(元春は歌詞/曲の両方で影響を強く受けた1枚)。そういう思い出深い作品。だから客観的に見るのは難しいんだよ。本来、こういう文章を書くのもね‥‥ちょっと厳しいんだけど。まぁ今日は特別な日だから。特に最近、中途半端なトリビュート盤が出たばかりだし、中途半端なベスト盤もチャートの1位を取ってるみたいだし、やっぱり自分の言葉で改めて書いておこうと思ってね、3年振りに重い腰を上げたんですよ。

  切っ掛けとしてのベスト盤やトリビュート盤はいいと思うんですよ。けど、そこで終わりにして欲しくない。ここまでたどり着いて欲しいんですよ。その価値が存分にある作品なんだから‥‥



▼尾崎豊『回帰線』
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2001年4月25日 (水)

尾崎豊『十七歳の地図』(1983)

  もう20年近くも前の作品なんだね‥‥そしてあれからまる9年か‥‥

  言わずと知れた、尾崎豊のデビューアルバムがこの「十七歳の地図」だ。アルバムを手にした事がなくても、ここには誰もが一度は耳にしたことがあるだろう名曲が目白押しだ。例えば、ドラマ「北の国から」でも純が初恋の女性から貰ったのがこのアルバムのテープであり、劇中では効果的に "I LOVE YOU" が流れた。その後'91年春にはJR東日本のCMに再び使われた事からシングルカットされ、トップ10ヒットを果たす。更に彼の死後にもドラマ「この世の果て」主題歌として "OH MY LITTLE GIRL" をシングル化し、初のナンバー1となる。彼は生前、「何で僕の曲はトレンディドラマの主題歌にならないんですかね?」と何度も口にしていたそうだ。それに対してプロデューサーは「君の歌にはやたらと生き死にが出てくるから、お洒落なドラマには向かないんだよ」と答えて、尾崎は妙に納得していたという逸話もある。皮肉な事に、彼の死後にドラマ主題歌~ナンバー1ヒットを生むことになろうとは、本人も思ってはいなかっただろう。この2大ヒットの他にも、初期の名曲として誰もが知っている(そしてリリース当時シングルとして発表されている) "15の夜" (これがデビューシングルだという事はファン以外にはあまり知られていない)、 "SEVENTEEN'S MAP" や、数年前の正月にSMAP全員が出演した事で話題になった同名ドラマの主題歌ともなった "僕が僕であるために" 等、と。つまり全10曲中半分がよく耳にする機会があった楽曲というわけである。どうしても尾崎というと‥‥一般の、音楽に疎い方々にとっては‥‥ "卒業" と "I LOVE YOU" という事になるのだろうけど、その代表曲のひとつが収められているので、(あまりそういう人はここを覗いていないだろうけど)音楽に疎い人で彼に興味を持ったのなら、まずはこのアルバムから聴くことをオススメする。そして尾崎を敬遠していた人でこれを機に聴いてみようと思った人にもこのアルバムをオススメする。とっかかりとしての1枚にしては、いきなり名盤すぎる気もするが。


  さて、ここからは解説でもなく、ましてはレビューでもない、単なる個人的な話となる事を最初にご理解いただきたい。


  最初にこのアルバムに出会ったのは、リリースしてから1年くらい経った頃だったと思う(なんて事も今冷静に考えて思いついたのだけど)。丁度シングル "卒業" がリリースされ、話題になっていた頃だ。俺が中学2年から3年に上がる時期という事になる。

  実はこの頃、俺は通っていた中学校の生徒会長になってしまった。いや、「なってしまった」はおかしいな、自ら進んでなろうと思って立候補したのだから。それ程目立つタイプではなかったし、単にそれ以前の1年間、同じ生徒会の書記として仕事をしていた事もあって前任の会長から勧められた事も大きかった。けど、立候補した一番の理由は、単純に当時の満たされない生活から抜け出したかったから、刺激が欲しかったのだ。

  両親が別居し、その間で揺れ動く当時の俺。知りたくもなかったいろんな「大人の事情」とやらを嫌でも見せつけられ、雑音の如く親類や肉親から聞かされる。14歳の俺には正直重すぎた。そんな中でも俺は、平静を装っていた。優等生だと周りから認識されていた俺は、「それ」を演じていた。

  生徒会長となった俺は、何か面白い事をやらかそうと懸命だった。当時は校内暴力だ何だと騒がれていた頃で、やはり俺が通っていた中学校もそれなりに荒んでいた。クラスメイトにもそのリーダー的存在がいたし、他校との大きな抗争(って単なる大人数での喧嘩に過ぎないが)があったり、全国紙の一面を飾るような大事件もあったし‥‥外ではそういう友人達と連みつつも、学校では生徒会長という立場をそれなりに楽しみ、家の中での重たさから解放されようと必死だった。

  塾サボって、その月謝で毎晩ゲーセンに入り浸ったり煙草買ったりレンタルレコード借りまくったり。そんな借りてきたLP盤の中の1枚に「十七歳の地図」はあった。友人から勧められた事もあったが、テレビのビデオクリップ番組で観た "SEVENTEEN'S MAP" に興味を持ったのも大きかった。で、実際に当時よく聴いたかというと‥‥そうでもなかった。いや、聴けなかった。痛いのだ。共感できるのだが、したくない自分がそこにはいた。「そこ」から逃げたかったから、みんなこのアルバムを聴いたのだろうけど、俺には「そこ」(現実)を改めて突きつけられているようで、辛かった。何でみんなこのアルバムをそんなにいいと言うんだ? 弱者の味方みたいな風に勧めた友人は言っていたが‥‥単に弱者同士の傷の舐め合いにしか思えなかった。冷静だったのか、大人だったのか、逆にガキだったのかどうかは今でも判らないけど。

  以後、このアルバムを手にするまでに6年の月日を要した。

  再び手にしたのは、先に書いたJRのCMが切っ掛けだった。受験に失敗した傷を舐め合いたかったのか、それとも単に懐かしかったのか、今となっては思い出せないが。

  痛かった、涙が出そうな程に。けど、唄っている事が全て理解できた。それはあれからの6年の間に俺がいろいろ経験してきて1周して戻ってきたから、そう思えたのかもしれない。決して19歳の俺が弱者だったとは思わない(世間的には「弱者」「敗者」だったかもしれないが)。けど、このアルバムの中にあったのは「傷の舐め合い」なんかではなく、地べたから上を睨みつける「攻めの姿勢」だった。それに気づけなかった中学生の俺。何で気づかなかったんだろう、とか今は思わない。そんな出会いがあってもいいか、とも思うし、この遠回りがあったから今の俺があるんだな、とも思う。なんて考えられるようになったのも、つい最近の話だが。

  その「再会」を機に、ミュージシャンを目指す俺にとって、尾崎豊はかけがいのない存在となった。しかし、その1年後に彼はこの世を去った。その辺の話はまた次回(セカンドアルバム「回帰線」レビュー)に取っておくとして‥‥決して目標というわけではなかったが、やはり喪失感は大きかった。よくアーティストが亡くなった時、その人の作品が聴けなくなるなんて人もいるそうだが、俺は全く逆で、むしろ尾崎しか聴けなくなった。それくらい大きな存在だったんだな、当時の俺には。

  今ではもっと冷静に捉える事が出来るから言える事だが、やはり俺は尾崎にはなれないし、なりたいとも思わない。彼が辿った道を歩みたいか?と問われれば、絶対に嫌だ。その苦悩を知れば知る程、俺の当時の苦悩なんてちっぽけなものだったんだな、とも思える。

  けど、人生をたった14年しか生きていない「俺」には、それはもう、世界が終わるかの如くの大問題だったのだ。その後の人生にもっと沢山の、もっと辛い出来事が山程ある事も知らずに‥‥

  あれからその倍以上もの人生を歩んで来た。確かに辛い出来事は山程あった。そしてこれからも、更に辛い出来事は沢山あるだろう。躓きそうになった時、ダメになりそうになった時は、またこのアルバムを聴こう。決して「傷を舐め合う」為にではなく、「攻めの姿勢」を思い出すために、闘争心に再び火をつけるために。


僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない
正しいものが何なのか それがこの胸に解るまで
僕は街にのまれて 少し心許しながら
この冷たい街の風に歌い続けてる



▼尾崎豊『十七歳の地図』
(amazon:国内盤CD

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