『ロッカーズ』オリジナルサウンドトラック盤(2003)
陣内孝則初監督作品、「ロッカーズ」の公開が迫ってますが、それに先駆けて映画のサウンドトラック盤が今月発売になりました。先日、本家TH eROCKERSを取り上げたばかりですが、今回はそのサントラ盤を紹介してみたいと思います。これがね、ただのサントラと思って見過ごすとホント勿体ない1枚なんですよ‥‥
映画の方はご存じの通り、最近人気の若手俳優5人(中村俊介、玉木宏、岡田義徳、佐藤隆太、塚本高史)がバンド「ロッカーズ」役を演じるわけですが、他にも玉山鉄二等が出演してるんですね。はい、ここまで聞いて「おお!」と唸った人、テレビの観過ぎです。過剰に反応し過ぎ。「ウォーターボーイズ」に「木更津キャッツアイ」に「百獣戦隊ガオレンジャー」かぁ‥‥とか言わないそこ。
で、そういった若手俳優が実際に映画の中では楽器を弾いているわけですが(とりあえず玉木以外はそれぞれの楽器、経験者ですしね)、実際にサントラの方で彼等のパートを演奏しているのは、かのROCK'N'ROLL GYPSIES‥‥つまり、ロッカーズとはライバルといっていいだろうTHE ROOSTERZの面々なわけですよ。ルースターズのメンバーがロッカーズの曲をプレイする、これだけでも一大事なのに、更にサントラ盤の方ではそのロッカーズの代表曲("どうしようもない恋の歌"や"恋をしようよ")まで新録で収録されている、しかもそれを歌うのが花田裕之ではなくて、映画で陣内役を務める中村俊介なんだから‥‥この辺は賛否両論あるだろうけど、個人的には「映画のサントラ」という特殊なシチュエーションなわけだから、全然許せるんだよね。一種お祭りみたいなもんだしね。
実はこのサントラのプロデュースを手掛けるのが、かのスマイリー原島。フジロックに行ったことがある人ならご存じかもしれませんね、あのグリーンステージで司会をやってる人です。この人、'80年代の「めんたいロック」シーンでも切っても切り離せない存在なんですね。そんな彼にプロデュースを託した陣内‥‥やるな、と。もうこれだけで個人的には安心なんですけどね。
勿論ロッカーズの曲も多数収録されてますよ。ROCK'N'ROLL GYPSIESをバックにPOTSHOTのRYOJIが歌う"ロックンロールレコード"(コーラスにはそのスマイリー原島や、元SOUL FLOWER UNIONのうつみようこ等が参加)や、中村が歌う"キスユー"~"ジャッキー"のメドレー、テレビでも披露済み"可愛いアノ娘"、"ショック・ゲーム"といった代表曲の数々。演奏は文句なしにカッコイイ。歌は‥‥この程度なら別に気にする程でもないかな、と。そりゃもっとカッコ良くて上手いシンガーはいるけど、意外と陣内の歌い方や癖を真似してるんだよね、中村の歌。曲名を叫ぶところとかカウントする声とか、ちょっとした節回しとか特に。その辺は非常に好感持てるかな、と。やっぱり役者だね。
それ意外には最近知名度を上げつつあるバンド‥‥勝手にしやがれやゴーグルエースといった若手、POTSHOTやザ・スリルといったベテラン勢も参加して華を添えてます。そのザ・スリルが玉山をシンガーに迎えてカバーする"ソーダポップ"。これ、「めんたいロック」の裏番長的存在として君臨する、知る人ぞ知るといった存在、モダンドールズのカバー。このバンドについては後日レビューで取り上げますので、知らない人はその時までお待ち下さい。とにかく、このバンドの曲を入れるということに個人的には感慨深いものを感じますね(とかいって、俺もにわかファンなんですが)。あと、GYPSIESバックに中村が歌う"メリージェーン"のカバー。これも笑った。ワンコーラス目は普通にバラード調なんだけど、途中から‥‥まぁ後は聴いてのお楽しみってことで。パンクにありがちな、あの展開ですよ、ええ。それをGYPSIESがやるんだから、もうね。
そういえばここに参加してるThe TRAVELLERSってバンド。メンバーに武田真治の名前があるんだけど、ギター&ボーカルの人の名前も武田圭治っていうんだわ‥‥兄弟? って兄弟なのは間違いないみたいだけど、あの武田くんとは同姓同名の別人でした(→オフィシャルサイト)。ああ、このバンドも福岡のバンドなのか。成る程ね。そういう「新しい繋がり」も取り入れつつ(恐らくスマイリー原島のアイデアだろうね)、過去と未来を繋ぐサントラ盤‥‥ただの「過去の振り返り」系とか同窓会で終わってないところがさすが。
サントラにありがちなインストナンバーも数曲入ってるんですが、それを担当するのが朝本浩文であったりキハラ龍太郎(元オリジナル・ラヴのキーボードの人ですよね?)や鈴木俊介(ハロプロ界ではお馴染み)等といった、その筋では有名な方々ばかり。特にキハラと鈴木による"アメイジング・グレイス"はなかなかの出来かと。鈴木のギターがかなりいい感じですね。
最後に総括。企画モノとしては非常によく出来たアルバムだと思います。勿論リアルタイム通過組は「こんなので満足してるなんて、ありえねー!」とか怒ってるかもしれませんが、これって結局「今の若い子達」に向けて発してるんじゃないの? 映画にしてもさ、だからああいった若手人気俳優陣を起用したんだと思うし。そういう意味では俺、この企画は大成功だと思いますよ。勿論、映画の方はまだ観てないんでオールOKとは言い難いですが‥‥
けどね‥‥やっぱり一番最後に入ってる本家ロッカーズの"涙のモーターウェイ"(多分「LIP SERVICE」バージョン)になると、急に胸がキューンとなっちゃうんだよね‥‥これって結局、俺が年寄りだってこと?
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