2004/12/18

加藤いづみ『skinny』(1994)

 加藤いづみにとって1994年っていうのは、前年('93年)に突然訪れた "好きになって、よかった" による中ブレイクを、どう持続させるか、あるいは同曲で彼女に興味を持った人をどのようにして完全にこっち側に振り向かせるか‥‥という、恐らくこれまでの彼女の音楽人生の中で一番「戦った」1年だったんじゃないでしょうか。その結果、アルバム2枚(内1枚はベスト的内容)という、これまでで一番リリースの多かった1年だったように、あれから10年経った今、思うわけですよ。

 通算4作目となるこの「skinny」というアルバム。8曲しか入っていなってことでミニアルバムと捉えることもできますが、前述の "好きになって、よかった" 以降、そしてそれよりも前にリリースされながらもオリジナルアルバムに収録されていないシングル曲が幾つかあるにも関わらず、それらを排除してまで「オール新曲」によって構築された作品集。実験的とも挑発的とも取れますが、それ以上に「従来のファンにも、"好きになって〜" 以降のファンにも、『新しい加藤いづみ』を提示したい」という意思表明のように俺は受け取ったわけ。実際、それまでの3枚と比べると何となくだけど‥‥あぁ、何か新しいことに挑戦したいというか、更にワンランク上にステップアップしたいんだな、というような聴こえ方をしたんですね。

 聴き方によってはそれまでの延長線上にある作風だろうけど、1曲1曲と取り上げると意外とこれまでとはタッチが若干違ってきているように感じられるのね。例えばアルバム冒頭の "ハッピーエンド・カフェ" と、最後を締めくくる名曲(そして先行シングルでもある)"坂道"。この2曲は特にこれまでより更に上のステージに上がりたいという意思の表れじゃないかと思える程に、作り手側の気合いがビシビシ伝わってくるんですよ。で、個人的にはそれらが上手くいっているように感じられました。というか、シングル(実は前者は "坂道" のc/w曲でもあるんですが)を最初に聴いた時点で、思わず小さくガッツポーズをしちゃったくらい。それくらい会心の一撃だったんですよ。それもあってか、この年は彼女のライヴ、結構行ったもんなぁ。「地球を救え!」の武道館ライヴもこの年でしたっけ? あれも何とかチケット取って行ったよなぁ‥‥とか。このアルバムを聴くと、いろいろ思い出すことが多いですね。

 残念ながらそういった作り手側の意思は完全に聴き手に伝わらず、このアルバムも思った以上のセールスを記録できませんでしたが、個人的には2nd「星になった涙」に匹敵するくらいの作品集です。決して派手なスタイルでもないし、癖のある歌声が人によっては苦手意識に作用するかもしれないけど、やはりこの人は俺にとって「一番大好きな女性シンガー」ですから。贔屓目を抜きにしてもね‥‥いや実際には抜きにすることなんて出来ないんですが(笑)。



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投稿: 2004 12 18 03:15 午前 [1994年の作品, 「10年前」, 加藤いづみ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/07/05

加藤いづみ『IZUMI -SINGLES & MORE-』(1994)

  このサイトを始めた頃、まさかこの人をこういう形で取り上げることが出来るようになるとは思ってもみませんでした‥‥「ロック」っていう広いようで狭い括りが足枷になって、こういう良質なポップスを取り上げる機会を自ら失っていたわけですから。けど、昨年末辺りから、そういった枠に囚われることなく、自分が好きな音楽をバンバン紹介するようになり、そうした矢先にこの人の久し振りのアルバム・リリースの吉報が飛び込んできたわけです‥‥そう、今回は加藤いづみが'94年10月にリリースしたコンピレーションアルバム「IZUMI -SINGLES & MORE-」を取り上げたいと思います。

  このアルバムは、'91年にデビューした彼女が約3年の間にリリースした4枚のアルバムと9枚のシングルの中からシングル曲を中心に(当時の彼女は、オリジナルアルバム未収録のシングルナンバーというのが結構あったんですね)、そのC/W曲、更には未発表バージョンや完全未発表曲まで収めた、「ファンへのクリスマスプレゼント」となったわけです。このアルバムがリリースされる数ヶ月前に、加藤いづみ最大のヒット曲となった"好きになって、よかった"での中ブレイク(オリコン・トップ20入り)があり、そういった初心者への入門編としての役割も十分果たしているわけです(ま、そっちの方が本来の目的なんでしょうね)。

  シングル曲は7曲‥‥当時の代表曲といえる"好きになって、よかった"や"髪を切ってしまおう"の他、"美しすぎて"(かのガロのカバー)や"この街が好きだよ"、"さよならが言えない"といったシングル・オンリーの曲や、"どれだけあなたのことを"(アルバム「skinny」からリカットされた時のシングル・ミックスで収録)、デビュー曲"Zero"といった辺りまで収められています。残念なのは、個人的には彼女の楽曲で三本指に入るくらい大好きな "坂道" がオミットされたことでしょうか‥‥いい曲なのに、残念。

  また、シングルのカップリング曲だった"シスタームーン"と"彼がやって来る"もアルバムには今回初収録。共に彼女らしさ満点のいい曲なので、これから加藤いづみを聴こうという人にはいい取っ掛かりになるんじゃないですかね。

  けど、ここまでの音源なら、俺みたいな濃いファンなら全て持ってる音源なわけですよ。で、そういう人の為の「スペシャル」な音源が3曲‥‥"星になった涙"の別バージョン、"ナチュラル・ガール"のライヴテイク(共にオリジナルバージョンはセカンドアルバム「星になった涙」に収録)、更にここでしか聴けない完全未発表曲"あぁ、雪は降る -Merry X'mas '94-"といった曲も収められてるわけです。ま、これがアルバムタイトルでいうところの「& MORE」なわけですね。"星になった涙"はオリジナルバージョンにはなかった歌詞とメロディが追加されていて、普通に独立したひとつの楽曲として成立しています。"ナチュラル・ガール"のライヴテイクは、スタジオテイクとは違ったアレンジになっていて、彼女のライヴがどんな感じなのかが何となく伺える貴重な音源になっているのではないでしょうか。そして"あぁ、雪は降る -Merry X'mas '94-"は、まぁクリスマスソングですよね。彼女らしいスローバラードに仕上がってます。まぁオマケといった感じですよね、季節限定モノですし。

  正直なところ、今のJ-POPモノを中心に聴いてる人達に彼女の歌がどう響くのか、全然想像がつかないのですが‥‥だってここに収められた殆どの楽曲、加藤いづみ本人が書いたものじゃなくて、プロデューサーでもある高橋研が書いたものですからね。女性が歌詞を読んで、どこまで入り込めるのか‥‥ま、そういう意味ではモーニング娘。におけるつんく♂みたいなもんなんでしょうか?(男性が書いた歌詞を歌う、といった観点での話)

  その後、彼女はレコード会社移籍の際に何枚かベスト盤をリリースしてますが、個人的に一番しっくり来るのが、実はこれなんですよね。ベスト盤としても機能してるし、普通にオリジナルアルバムとしても聴けないことはないし。そうそう、ガールポップなんて言葉がよく使われるようになったのも、彼女がブレイクした頃でしたね。今現在もそういった女性シンガーもののポップスが好きな人で、まだ加藤いづみを聴いたことのないという人がいたら、是非このアルバムを聴いてみてください。中古盤屋で安く手にすることが出来ると思うんで。



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投稿: 2003 07 05 12:00 午前 [1994年の作品, 加藤いづみ] | 固定リンク